夜は好きだ。訪れる静寂、暗い青、或いは紫そのものに染まる景色。
闇が好きだ。何者も、私の時間を奪うことが出来ないのだから。
だからこそ――
「……」
私の
「……貴方達も静かにさせてあげましょう」
私の【
朝は嫌いだ。聞こえ始める声と音、余計な色とりどりの景色。
光は苦手だ。私がしたい事を、時間を奪って遮られている気がするから。
「…五月蝿いわね」
夜通った道は、野次馬の溜まり場になっていた。心地良かった場所もこの通り、騒がしくて不快な気分の雰囲気になってしまう。
「……はぁ」
正直言ってこんな明るい時は動きたくないのだが、そこまで怠けるほど堕ちている私じゃない。どんな手がかりだろうと、都合の良い時間と場所にあるとは限らないのだ。
「……行きましょうか」
壊れた自律機械が佇み、人が賑わうその場所から静かに立ち去る。私はどうしても、見つけなければならない。
「……どこにあるの」
それは、私にとって、大切なもの。私が私でいるために、必要なもの。私の知らない誰かを知るための――
「……私の記憶は」
ただ一つの手がかり、ユカリという私の名前をあてにして。
青年はうつ伏せになりながら、前にある窓を見つめていた。その視線に映っているのはビルの景色――そして、上の階にある窓。
「……」
静かに狙撃銃を構える。スコープを覗き、窓を凝視する。狙いを見つけ、息を整える。
「……ふぅ」
息を吐いた瞬間、大きな銃声が鳴り響いた。ひび割れた窓、貫く弾丸。その後に、狙われた対象は動きを止めて――倒れた。
「――ターゲットダウン」
主犯が突然撃たれ、その取り巻きと人質は唖然とし、治安維持の部隊が突入を始める。今頃ビルの中は大騒ぎだろう。――だが、青年は気にも留めない。
「……」
直後、近くで爆発が起きた。青年は静かに特徴的なナイフを構えて、出口の扉へ向かって静かに近づく。直後、強く開かれたと同時に。
「2人か。仕掛けておいて正解だった」
男が仕掛けた爆弾に巻き込まれかけたのか、明らかに余裕がなくなった犯人の仲間が銃とナイフを手に突入する。
「……ふん」
切られる前に、撃たれる前に――仕留める。犯人片方は首の右側に切り傷、もう片方はナイフが刺さっていた。
「……指揮系統を失えば、集団だろうとこんなものだ」
腕を伸ばし、ナイフを自分の腕の方に引き戻す。刃に付着した血を払うと、小さな球体にしてポケットにしまった。
「……【レティント】を引き出すまでも無かったか」
眼鏡を整えた後、端末を取り出して連絡を始めた。
「こちらレグザ、依頼を終わらせた。依頼主に報告を頼む」
簡潔に報告を済ませ、青年は髪を靡かせながら別のビルに飛んでいく。彼にとって、何事もなかったかの様に。
かくして、一つのビルで引き起こされた出来事は激しくも、静かに幕を閉じた。
闇編です。情報量多めに見えて少なめ…?