1話 扉を開いて
聖なる扉<ディバインゲート>。そこに至る道を辿る先に、父さんはいる。父の死を信じられなかった俺は、そう決意して踏み出した。
「まずは何処から行こうか……なんて、悩むより直接聞くべきだな」
思い立ったが吉日、父も何か思い浮かべた時はすぐに何か資料みたいなものを書いていた。俺もそれに習って、父と交流があった人々に片っ端から聞くことにした。
――暫くそうしていると、ある問題が持ち上がっている事に気づいた。
「みんな同じ話題で持ちきりだな」
父の手がかりはあの時と同じ、研究所の事故に関する事ばかりだった。――加えて、初都の噂で持ちきりだった。
『ポックル達が騒がしい』
『素早い猫があたふたしていて手に負えない』
『またトロンが暴れている』
今まで騒ぎにならなかった初都で、何かが起きている。求めている手がかりが無くても行く価値はあるかもしれない。そう考えた俺はすぐに駆け出した。
初都ノーマリア。目立つ様な所はこれと言って少ないが、挙げるとすれば統合世界の中で安心安全、憩いの場として挙げられている都である。入ってみた人はその噂に間違いなかったという感想が出る程だ。俺もその1人で、度々家族で噴水の近くで母さんの弁当や父さんが挑戦した料理をよく食べているほど気に入っているぐらいだ。――少なくとも、前までは。
「ひのぽっくる は ほのおのこ ひのぽっくる は かじおこす」
「みずぽっくる は おみずのこ みずぽっくる は なみおこす」
「かぜぽっくる は おかぜのこ かぜぽっくる は かぜおこす」
「こ、声がでかい……!」
早速異常事態の1つに当たった。耳を塞ぎかねないぐらい、大声で歌を歌うポックル達だ。何故そうなったのか理由は分からないが――冷静になれと自分に言い聞かせながら、考えてみる。
まずポックルはあまり人前に顔を出さない。姿を見せるとしたら大体隠れようとしてるところか、人気のない場所で遊ぶ子供の前に現れるのが基本だ。加えて普通ポックルの声は気に留めないぐらいの声で歌う。
だからこそ、堂々と姿を現してかつ、大声で歌うのが「普通じゃない」のだ。
「…これじゃあ落ち落ち情報収集も出来ないな!なんとか……」
「ひのぽっくる に ひのようじん」
「みずぽっくる に みずようじん」
「かぜぽっくる に かぜようじん」
「ぽっくるにようじん!」
ポックル達が俺に警戒したのか傘を構えた途端、何かポックルとは思えない、明るい声がした。その方向には――
「今日は元気なんだね、ポックルさん!」
「げんき は めらめら」
「げんき は すいすい」
「げんき は ふうふう」
「……えーと?」
「あ、こんにちはー!貴方もポックルさんの歌を聴きに来たの?」
「……いや、聴くも何も……」
笑顔で金髪の女の子が、騒いでいるポックルの輪に入って楽しもうとしている。俺と同じくらい――いや、俺より少し低いのか?とにかく、一目見て子供らしさを感じざるを得ない彼女に話をするべきだろう。
「ポックルさんって……うるさいと思わないのか?」
「んー、ちょっとだけ?でも楽しそうだから私も仲間に入ろっかなあって思ったんだよ!」
目をキラキラさせながら自分の考えを言うその姿に、悪意が無いみたいだ。……同時に何故だか、不思議な安心感を感じている。彼女の笑顔を見ているからだろうか。少し悩んだけれど、どのみち考えても仕方ない。思いついた考えを彼女に言ってみた。
「あのさ、もしかしてだけど――ポックルの考えてる事、分かったりするか?」
「え?」
「今さ、この辺りで色々騒がしいって話が出てるんだよ。原因の一つがこいつらでさ」
「そっか、苦手な人には嫌な気持ちになっちゃうよね。うーん……ごめんね、こう考えてるのかなーという感じで……なんというかふぃーりんぐ?みたいな」
「それでも良いんだ。……まあ問題事なのは間違いないし、場合によっては面倒な事になるかもしれないけど……」
事情を説明し、協力を提案してみる。正直、問題ごとに他人を巻き込むのは気が引ける方だったが、荒事にならないまま解決出来るなら、ポックルと話が出来た彼女の協力出来ればいいかもしれないという判断だ。
「うんうんいいよ!そういう事なら助け合わないとね!」
考える事もなく、彼女は笑顔で頷いた。協力するにしろ、こういったリスクを負いそうな事態に関わると少しは困るものだと思っていたが、快く受け入れてくれた。
「は、早いな……いいのか?」
「だって困ってるんだよね?私で出来ることなら任せて!」
(この子、見返りとかいらない……のか)
「ありがとな、何かあったら俺も手伝うよ!」
「まっかせてー!ポックルさん、お話があるのー!」
女の子はやる事を決めるや否や、楽しそうにポックルの群れへ駆け出した。その優しさと頼もしさに安心感を覚えながら、ポックルに合わせて話を始める彼女を他所に周りを見渡し始める。
「ひのぽっくる は さがしてる」
「みずぽっくる は あまやどり」
「かぜぽっくる は とばされる」
「うんうん……何かから逃げてるのかな?」
(……それにしても多いな、30匹ぐらいか…?少なくとも子供がいたらはしゃいでるんだろうな――ん?)
この場にはポックルが沢山いるからか、視線に映りやすい。そんな中で俺が目にしたのは赤い猫だった。ポックルの大声に怯えているのか、威嚇する様に腕を振り続けている。
「あー……猫の相手ってどうやればいいんだろう」
猫の相手なんてあまり経験した事がない。母の手本を参考にするなら、顔と顔を同じ高さに合わせる、だろうか。ものは試しと言わんばかりに近づいたら、脅威が増えたと思ったのか唸り声を上げる。――彼女は俺の頼みを聞いてくれたんま。こっちも身体を張るしかない。刺激しない様に、距離を空けてから説得をしてみる。
「……えーと、とりあえずあの子が落ち着かせてるから安心してくれるか……?ほら、あれ――」
「ひのぽっくる は もえる」
「みずぽっくる は ながす」
「かぜぽっくる は とばす」
「わわー!みんな落ち着いてー!」
「――あれぇ!?何があった!?」
安心させようと、女の子の方に指差した先には、跳ねながら暴れてるポックルと、それを見て慌てて落ち着かせようと試す女の子だった。――失敗した、という感じにしては何か妙だ。伝わるか分からないけど、怯える猫に視線を向けて待つよう手で合図した後に、女の子の方へ駆け出した。
「大丈夫か!?」
「ご、ごめんね〜!多分怒らせちゃったぁ〜!」
「……いや、あいつだ!」
観察して見えたのは、ポックルでも猫でも無い影だ。発見した人が言うには、自我を持った属性と呼ばれた存在。生き物の様に動いても、ほんのわずかな自我故に意志がない、見える幽霊の様な存在――子供遊びの様な災害――名前はリウム。
「……なるほど。多分、ポックルを慌てさせたのはこいつが原因だな」
「えーと、それじゃあこの子たちを大人しくさせればいいんだね!」
「そう言う事だ!下がっててくれ、俺の番だ!」
こうなった以上、前に出て止めるなら戦いは避けられない。揺れながら火と水と風を好き放題に吐き出したり、抵抗する様に傘を振るうポックルとリウム達に向き合い、ポケットから丸い装置を取り出す。
「力を貸してくれ、父さん……行くぜ、イグナイト!」
その願いに呼応する様に、手甲の形に変形する。手にはめると同時に、炎が手のひらに現れるが、火傷するようなものじゃない。俺にとって、炎は熱いものだけじゃない。俺自身から湧き上がる、自分の気持ちと思えるものだ。
その炎に感じ取ったのか、ポックルもリウムも、俺の方に視線を向けた。
「お前ら聞こえるか!これ以上暴れるなら本気で止めにかかるからな!」
俺の声に反応するように、周りが余計に騒がしくなる。――少なくとも落ち着く気は無いらしい。
俺がこれからする事を示すと言わんばかりに、手のひらで燃える炎が広がる。周りの意識が俺か、その炎に集中していくのを確認して、笑って見せた。
「だったら遠慮無くぶつけさせてもらうぜ!纏めてかかって来いよ!」
大変お待たせしました、1話でございます。
まずは初都ノーマリアでの話になります。原作じゃ光パネルが出ないのにあの子がいますね??
こんなペースですが投稿頻度を上げる努力を絶やさず頑張っていきます…!