乙女ゲー転生モノに出てくる性悪お花畑転生者女を曇らせてみたwww   作:見てアホ女がいるよ! かわいいね

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性悪淫乱クソメイドフランカ、王都に立つ!

 王都スタンリング。

 リュフト王国プラティナム王家の座する王国の行政都市であり、贅と気品を兼ね備えた白亜の王城を中心とする政治の中心。

 

 重要施設は主に3つ存在し、式典や儀礼、饗宴の中心であり王国行政を行う官庁舎かつ王族のプライベートスペースを兼ねるスタンリング城。

 王国の立法府であり王国に属する貴族たちが議席を持つ貴族議会、リュフト王国貴族院。

 国王の所領である王領の中でも王都における行政と治安維持を管理運営する王都行政庁。

 

 ぶっちゃけ言えば皇居と霞が関の各省庁がスタンリング城で、王国貴族院が国会議事堂と議員会館、王都行政庁は東京都庁と警視庁と考えていい。

 

 この他にも司法を掌る大審院とか商工や冒険者などの労働者階級の折衝部門であるギルドだったりがあるが、三つの政治中枢の省庁と比べればカスみたいなもんだ。

 

「おかしくない? この唯一にして無二たる王国最高の美少女である私がなんでこんな侍女服を着なきゃいけないのかしら? もしかして王族の方はそういう性癖でいらっしゃる?」

「そんなわけないだろ……」

 

 エプロンドレスをしげしげと眺めていると胃のあたりを頻りに抑えながら我がクソ親父はおっしゃった。

 どうしたん? ポンポン痛いん?

 

「私はお前を外に出すことが恐ろしくてたまらないよ……」

 

 驚いた、まさかクソ親父がこんな殊勝なことを言うとはやはり口ではなんとでも言うが親として娘に情があるのね……。箱入りの一人娘をひとり王城に向かわせてしまう。その罪悪感が彼を苦しめているのだろう……。

 

「お前は頭がおかしいからなぁ……」

「人をキチゲ扱いするのやめてくれない?」

 

 前言撤回である。コイツ私のこと1ミリも信用してないわ。

 

「頼むから、余計なことをしないでくれよ。本当に頼むぞ、ウチは今畜産や競馬が軌道に乗ってるんだ。本当な余計なことをしないでくれ」

「余計なこと? 私は必要なことしかしてないわよ?」

「絶対に頼むぞ! 王子の妃とか側室狙いとか言わないでくれよ? ただでさえ婿取りに苦心してるんだからな! このままじゃお前が末代だ!!」

 

 クソ親父が頼み込むが、正直キッカケはわからない。急に王城で侍女の入れ替えと補充を行うことになり、ウォルコット伯爵家に声がかかった。

 多分、この美しすぎる罪な美貌が男を引き寄せたのだろう。

 私ってやっぱり罪な女なのね……。

 

「はあっ!? 正気か!?」

「おい、その反応は何だゴリラ」

 

 王都にあるウォルコット家の屋敷で顔を出したゴリラは驚愕の表情を浮かべていた。

 どうしてゴリラに正気を疑われてるんです?

 

「いや、だってよぉ…お前常識ねぇし……」

「私ほど貴族の儀礼と文化に精通した淑女はいないんですけど?」

 

 これでも前世で短大に通ってたんですけど?

 義務教育も積んでない異世界人に知能で劣るとは思えないんだが?

 

「かーっ、辛いなぁ!! まさか宮廷侍女にスカウトされるなんてなー! おや、ゴリラさん貴方の役職何でしたっけ?」

「あ? 駐屯軍の外征部隊の兵士だが」

 

 あれ、こいつ近衛クビになってニートしてたんじゃなかったっけ?

 どうして私に気持ちよくマウントを取らせてくれないんだ……!

 

「再就職したの?」

「古巣に戻っただけだ。どうも俺ぁ近衛騎士には向かん、守るよりぶっ殺すほうが得意だからな」

「そのナチュラルに思考が野蛮なのどうなの?」

 

 駐屯軍とは王都行政庁直下の治安部隊である。司令官は王国駐屯軍司令。略して国軍とも呼ばれる王領における治安維持と魔物や匪賊の討伐に駆り出される部隊だ。

 部隊は治安部隊と外征部隊に分かれており、ゴリラの職務は魔物討伐や匪賊討伐といった王都から各王領、または諸侯領へ派兵される外征部隊である。

 

「えっ、じゃあなんで王都で油売ってんの? 干された?」

「あー、間違いじゃねぇな。功績を立て過ぎたみてぇで今は新隊を預かって教練してらぁ、多分あらかた形になったら別の部隊に飛ばされて教練だな」

「ふーん、教導隊ってわけね。つまんない、クビになればいいのに」

 

 ゴリラ卿の卓越した能力を後進の育成に役立ててほしいっ! 的な奴ね。遊ばせるのも勿体ないし功績をあげさせて昇進させてもポストの問題もある。なにより厄介なのは……。

 

「アンタの父親、警邏騎士の親玉だものね。特別扱いできないってやつかしら」

 

 ドゥエイン・アーレン。彫りの深い顔立ちに鋭く冷たいクール系の顔立ち。影のあるイケメン。40を既に越えているはずなのにどう見ても20代ぐらいにしか見えないルックスは貴族では噂になっていた。

 

 可哀想に、コイツ父親のイケメン遺伝子を受け継がなかったんだな。

 

「んー、そういうわけじゃねぇんだが……まあ似たようなもんか」

 

 ゴリラは言葉を濁して複雑そうな顔をする。相変わらず顔芸ができない男だ。戦場なら兎も角、貴族としては致命的とも言える。

 

「相変わらず嘘のつけない男ね。信用も利用もされるけど、切り捨てられもするわよ。アンタ」

「かもなぁ、でもこういう生き方しか出来ねぇんだ。俺は一本の剣でいい。難しいことの領分はお前の領分だろ」

「人に難題押し付けるだけ押し付けて逃げる気? 私他人に仕事押し付けて帰るやつ嫌いなのよね」

 

 父親程の器量はない。武の頂点かもしれないが他人に対する共感性や他人に合わせる能力は著しく低い。だから貴様はゴリラなのだ。

 

「まあ、暫くは俺も王都暮らしだ。会う機会もあるだろうさ」

「数少ないプライベートをお前に使うの嫌なんだけど」

「俺はお前と会うためなら多少の無理は出来るぞ」

 

 なんでそんな好感度高いんですかね?

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 宮廷侍女。特に王宮に務める侍女に求められるのは能力以上に王家に対する忠誠心と血筋である。

 王族の身の回りの世話を行い、宮中の清掃や立食会の準備、食事や勉学。それを取り仕切り補佐するのが侍従の勤めである。

 

 王国筆頭侍従長チェスター・マーウィン男爵は国王の側近にして家令業務を取り仕切る王宮における実力者である。

 物腰は穏やかで常に仏のようなアルカイックスマイルを浮かべるハゲ頭の老人だが、その立ち振舞いには隙がなく。背筋に針金でも入っているかのような姿を見せる。

 

「おはようございます、皆さん」

「「「「おはようございます!!」」」」

 

 マーウィン男爵が声を掛けると、立ち並ぶ使用人達から返答が響く。

 白い調理服を身に着けた宮廷料理人から作業服を纏う庭師、エプロンドレスや執事服を纏った給仕に礼服を纏う事務員。

 彼らの頂点に立つのがマーウィン侍従長である。

 

「本日より王宮に新しい人員が入りました。彼女らにはレア様付きの侍女として働くこととなっております。それに対して人員の移動もあります」

 

 端的に朗々とした声が響く。いい声してるじゃないの、耳が孕む……!

 

「フランカ・ウォルコット嬢。中央諸侯ウォルコット伯爵家のご令嬢です。博学で経理に長け礼法に精通しています」

 

 禿げてなければ惚れてたかもしれない。私の自尊心を擽る言葉を与えてくれるなんて、きっと私は特別な存在だと思いました。

 

「侍女長はソフィア・マイヤー女史です。」

 

 髪型を頭頂部で一纏めにしたシニヨンヘアの侍女が一歩前に出る。

 

「ソフィア・マイヤーです。貴方がたを歓迎しましょう」

 

 年齢は40ぐらいでくっきりとしたほうれい線と丸眼鏡を着けた中年女性だが、真一文字の唇と鋭利さを思わせる切れ長の目が厳格さを漂わせる。そんな侍女であった。

 

 それから事務官や護衛の近衛騎士そして同僚の給仕を紹介される。

 

「アレクサンドラ・アーレン嬢、王女殿下付きの給仕では最年少です」

「アレクサンドラ・アーレンよ、気楽にサンドラと呼んでちょうだい」

 

 ゴリラの妹だ……。

 ふわりと軽い巻髪でツリ目気味の青い瞳に艶のある金髪。

 ゴリラの妹には似つかわしくない可憐さがありながらどちらかと言うと美人系の面立ちをしているのは父親のドゥエイン・アーレン似なのだろう。

 

「以上が王太子御息女レア様直属の侍従となります。励むように」

 

 王族の直系にして王太子唯一の娘付きの侍女である。

 ただの領地貴族の令嬢にプラスされる看板としてはかなり美味しい。この私に箔が付くってものね。

 

「何を隠そう、私は家事手伝いの達人……!」

 

 家で寝てると豚になるわよ。が口癖だった前世の母──木佐貫花子の技術をすべて受け継いだ正統後継者である。家事洗濯料理に関しては21世紀の知識と経験を持つチートを持つ女、それが私。

 

 恐ろしい女だった……、うるせぇ花子と言い返したら厚い脂肪によるボディプレスをお見舞いされる。とんでもないノーマルポケモン、それが花子だった。

 

「ギャハハ、余裕……!」

「確かに見事な手際でしたが、口調を改めなさい。淑女として品のある行為を心掛けなさい」

「申し訳ないわ、意味もなく結果を残す天才で本当に申し訳ないわ」

 

 ビンタされた。しかも無言で。

 

「ぼ、暴力はいけない……」

「愛の鞭です」

 

 令和価値観の女子に昭和の論理を持ってくるのはコンプラ的にアウトですよ! いいんですか、人気投票で最下位になって炎上するのは貴女なんですよ!!

 

「貴方には能力があります。それは素晴らしいものですが、王宮の侍女は淑女たる気品が求められます」

「ハイ……」

「相手より尊敬を受けたければ、自身が尊敬に足る人物でなければなりません。礼節にたる言動や行為を受けたいのであれば、自身が礼節をこなさなければなりません。聡明な貴方ならおわかりでしょう」

「ハイ、スミマセン……」

 

 無言で二度目のビンタ。無表情に繰り出されるノールックのそれは、見た目以上に痛いし、怖い。

 

「言葉はハキハキと言いなさい。主張は相手に伝わらなければ意味がありません。我々に言葉があるのは相手と相互理解を深めるためです。言葉にしなければ、気持ちも想いも伝わらないのです」

「ビンタはすごく痛いので辞めてもらいたいです」

「痛いほうが覚えられます」

 

 私この女嫌い……!

 

「クソッ、嫁修行の通過点でしかないただの腰掛けに本気になるなんてあのロッテンマイヤーもどき、ただしゃおかないわ!!」

 

 私は激怒した。必ずやかの邪智暴虐のソフィア・マイヤーを除かねばならぬと激怒した。

 あんな奴クソなソフィアでクソフィアで十分だわ!

 

「折檻に鞭を使わない程度なんてむしろ優しいくらいよ」

「メスガキ……」

 

 そういって私に話しかけてきたのはゴリラの妹である雌猿である。

 

「サンドラで良いわよ、あなた本当に兄さんの言う通りの人なのね」

 

 アレクサンドラ・アーレン。私と共に現国王の孫娘であるレア・プラティナム付きの侍女となった同僚である。

 因みに年齢は10歳。この世界に児童労働法はないことをまざまざと見せつけられる証拠である。

 

「あいつ私のことおもしれーしか言わないと思うんだけど」

「興味がない人間は視界に入らない。貴女、私のことなんて兄さまの付属品としか見てないんでしょ? だから、私のことなんて見てないし視線だって一度も合わせてない」

 

 10歳児の思考か、これが……?

 

「あら、図星みたいね。やっぱり本当のこと言われたら多少は意識するのね」

「ソンナ事ナイワヨ、ワタシアナタニ興味津々」

「傲慢で他人を見下しがち、基本的に一部の人間以外に興味なんて持てないんでしょ? どうせ私のことなんて人の形をした猿とでも思ってるんでしょ?」

 

 こいつ転生者かな? アーレン家の教育はどうなってるんですかね?

 明らかに私が10歳だった頃より人間の機微に聡すぎるんですが……。

 

「私の名前だって、正直覚えてないんじゃないかしら」

「そんな事無いわよ、マンドレイクガンダーラでしょ」

「……」

 

 ゴリラの妹は何も答えてくれない。

 なんだろう、ツッコんでくれないと私がつまらない人間みたいじゃないですか。

 

「サンドラよ、サンドラ・アーレン」

「あれ、もっと名前長くなかったかしら?」

 

 サンドラは胡乱げにため息を吐く。

 

「別にいいわよ、仰々しいのは嫌いなのよね。だからサンドラでいいわ」

「はぁ……そうですか……」

 

 なんだろう、王宮勤めになって箔とかつくはずなのにすごく息苦しい。上司はクソフィアだしメスガキはボケ殺しだし。

 くそっ、なんでゴリラみたいにノリが良くないんだ!!

 

「おセンチですわ! こんなの病むわよ!!」

「やむー?」

 

 ククク、幼気(いたいけ)で純粋無垢な幼女にイケナイことを教える感覚。こんなの絶頂モノよ!!

 

「ウォルコット嬢、場を弁えなさい」

 

 なんでこんなところにクソフィアが居るのよ!!

 あ、はい。監視ですね、わかります。生意気言ってすいませんでした。

 

「と、言うわけで今日は姫様のご家族について勉強するわよ」

「家族ってとーさまやかーさまのこと?」

「カカカ…キキキ…コココ……、ロイヤルファミリーに対する研究は欠かしたことのない元祖玉の輿系女子。それが私よ……」

 

 頬を刺すような鋭い目線が背後から感じる。

 なんだろう、睨むの辞めてもらっていいですか?

 

「まず姫様のお父様──ウィリアム殿下はこの国の王太子。王位継承権の筆頭、次期国王にあたるわね」

「国王っておじーさまのこと?」

「そうね、お祖父様のフレデリック陛下はこの国の王。国家元首になるわ」

 

 国王フレデリック。表舞台に姿を表さないこの王は数年前より身体を悪くしており、王としての実務の殆どは王太子のウィリアム殿下が代行している。

 年齢は50半ばで現代日本からすれば人生の折り返しを過ぎた頃だが、一部の妖怪や魔族などを除き、この世界では高齢にあたる。

 

「陛下には三人の御子がいて嫡子たるウィリアム王太子、シルヴェスター公爵家に嫁いだカミラ様、第二王子のデズモンド殿下。姫様にとってお父様と叔父、叔母にあたるわ」

「おばさま?」

「あら、ご存じなかったかしら?」

 

 レアはコクンと首肯する。なんだこの小動物めいた可愛さは……腹立つ。

 許せなかった…私より可愛い生き物が存在するなんて!!

 

「リュフト王国には三大公爵家と呼ばれる王家庶流の領地貴族家が存在するわ。ゴールドスタイン、シルヴェスター、アンブロンズ。地方貴族最大の権威を持ち王位継承権を持たない、王国の三大諸侯家よ」

 

 切り替えて知識でマウントを取っていく。お前は私の下だ。

 なぜか頭の中のゴリラがなにガキに対して本気(マジ)になってんだ…? おもしれー女。という言葉が頭を(よぎ)る。

 

「王族でありながら王族にあらず。あくまで地方諸侯に対する取りまとめ役であり調停者。それが三大公ね」

 

 王家とは王国における調停機関である。当然法を敷き、税を徴収し、単位を決め、行政に則って政治を行う。

 その中には領地同士の小競り合いや裁判もある。しかし、一つ一つの裁判すべてに王家が関与するかと言われればそれはキャパシティ的な意味で不可能である。

 そこで登場するのが三大公である。現代日本でわかりやすく言えば領内の揉め事は領主が対応する地方裁判所。領地同士の争いであれば三大公が対応する高等裁判所。

 地方でも三大公では手に余る問題や王領内の揉め事は王家直々に対応する最高裁判所。そういうふうにイメージしてもらえれば分かりやすいだろう。

 

「王位継承権を持つのは直系王族の男児、ついで王族最優秀と目されるスティルウェル公爵家、最後が直系女児ね」

「スティルウェル?」

 

 この国の王位継承権はかなりややこしい。

 

「そうね、直系王族の男児は現国王フレデリック陛下の息子であるウィリアム王太子とデズモンド第二王子の二人になるわ。もし二人の直系王族が即位できない状態となると、スティルウェル公爵家から王を輩出することになる。これは王室典範に記載されているわね」

 

 スティルウェル公爵家は王家にとって唯一の直系外の王位継承権を保持する公爵家と言われる。その存在は特殊でありスティルウェル公爵家の当主は国王自ら直系外の王族を任命するというものである。

 当然時代によっては適格者なしということで任じられることもなく非常設の爵位であるともいえる。

 現スティルウェル公爵は国王フレデリック陛下の叔父にあたるアーノルド殿下であるが、その歳は70を超えた妖怪の域に達している。

 それ程の年齢であれば隠居して爵位を子息に譲る選択肢もないわけではないが、スティルウェル公爵家は血縁による譲渡は決して認められない。

 スティルウェル公爵家は王家嫡流外における最高王位継承権を保持する唯一にして無二の公爵家である。その爵位の継承は国王による任命と養子縁組によって脈々と受け継がれるものであった。

 実際アーノルド殿下のご養子にして次期スティルウェル公爵家当主は直系王族からさらに血の離れたパーシヴァル殿下である。

 

 それ故にスティルウェル公爵家は王族最優秀の能力を持つものが爵位を受け、王位継承権の最末尾に名を連ねると言われている。

 その立場故に王家の長老格として王国の政や軍事に対して大きな影響を及ぼし、病で伏せているフレデリック陛下の代わりとして王太子とともに一部政務を代行する存在でもあった。

 

 王都において貴族議会派のゴールドスタイン公爵、外戚であり宰相位を持つナヴァロ侯爵に対抗する王党派の筆頭としてアーノルド・スティルウェルの存在はリュフト王国における重しとなっている。

 

 まあ、今の姫殿下には解らないだろうから説明しないけど……。

 

 ここでスティルウェル公爵家のことについて説明しても多分混乱するだけで理解できないと思う。それぐらいスティルウェル公爵家という家は複雑であるのだ。

 

「分かりやすく王族と呼ばれるのは姫様のお祖父様とお父様、叔父のデズモンド殿下、スティルウェル公爵とご猶子パーシヴァル様。五人ね」

「パーシヴァル?」

「ほらあれよ、あの樽みたいなお腹をしてて、ホッホッホって笑う」

「ぶーちゃん?」

 

 この女あのデブのことぶーちゃんとかいってんのかスゲェなおい。

 傍目から見たらえっちな同人誌に出てくる種付けおじさんにしか見えない王族の恥知らずな見た目なのに幼女から好感度はしっかりと握っているとは……。

 後ろから咳払いが聞こえるが聞こえなかったことにしよう。私は過去を振り返らない女、常に目指すは輝かしい未来なのよ!

 

 だからこそ、私は理解している。この娘の未来は決して明るいものではないのだ。

 王家に生まれた女児は政治の駒でしかない。それはここが中世的価値観をもつ男尊女卑社会であるからだ。

 王位を継ぐことはなく、国内諸侯や各国の王家に対するカードとして政略の手駒として扱われる。

 

 私が行っているのは、その片棒に過ぎない。後にこの娘が嫁ぐ際に、最低限の礼節と儀礼、そして知識を詰め込むために慣れない教師の真似事をしているだけに過ぎない。

 

「せんせぇ、どうしたの?」

「んーなんでもないわ。そうね次は姫様のお母様について勉強しましょうかしら」

 

 男が生まれれば、彼女の価値は大きく下がる。産まれずともその穴はデズモンド第二王子やスティルウェル公爵家が埋める。

 女にとって冬の時代。管理された井の中でしか生きられずその中でしか幸せを見つけることができない哀れな女。

 

 哀れであることと不幸せであることはイコールではない。だが、私なら傍流王族の妻としての立場はともかく直系王族の娘などという立場は御免だ。

 

 だからせめて今は幸せなお姫様で居られる時間ぐらい噛み締めさせることぐらい肯定してもいいだろう。

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