乙女ゲー転生モノに出てくる性悪お花畑転生者女を曇らせてみたwww   作:見てアホ女がいるよ! かわいいね

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もっと胸にパッドいれるとかさ!


へぇ、デートかよ

 王党派とよばれる派閥にはいくつかのグループに分かれている。

 第一は中立派グループ。政争に携わらないで与えられた役職に奨励する下級官吏や技能官僚、騎士などの軍属に多いグループである。主だったところとなるとドゥエイン・アーレン男爵や王都行政長官サディアス・フレッチャー子爵、筆頭宮廷魔術師アイザック・タフト、辺境再生請負人ジェイムズ・ゴームリー男爵などが挙げられる。

 

 第二は国王側近グループ。国王フレデリック四世の側近とされる宮廷の高官である。筆頭侍従長チェスター・マーウィン男爵、近衛騎士団長レスター・アップルトン子爵、王党派領袖アーノルド・スティルウェル公爵などが挙げられる。

 

 そして第三に挙げられるのが王太子側近グループと言われる存在であった。

 

「此度は随分と数が多いな」

 

 王都駐留軍司令であるドゥエイン・アーレンはそう溢す。

 不審、畏怖、警戒、妬心、軽蔑。様々な感情がドゥエインに向けられるが本人はそよ風程度にしか受け取らず手頃な席に座る。

 

「ゔっ……胃が…胃がぁ……ッ」

 

 額に脂汗を滲ませながら、憎々しげにドゥエインを睨みつけ胃を押さえつけるサディアス・フレッチャー王都行政長官。

 

「なんか可哀想に見えてくるんだよなあ」

 

 そんなサディアスに同情の視線を送る筆頭宮廷魔術師アイザック・タフトと反対側の椅子で嘆息する近衛騎士団長レスター・アップルトン。

 

「できる部下を持つと辛いと見える」

「お褒めいただき光栄です、公子」

 

 ニヒルに笑みを浮かべるドゥエインに魔剣の手綱を引く役目(イケニエ)と化したサディアスに最低限のフォローをするスティルウェル公爵家猶子パーシヴァル・スティルウェル。

 

「側近どもはまだらしいなあ!」

 

 椅子に深く腰掛けながらタフト筆頭宮廷魔術師は声を上げる。独り言でも大声なのがデフォルトなのがこの男である。

 

「仕方無かろう、王太子が心より信頼する面々と比べれば我々は王党派であっても他派閥の人間だ。内々の事でも話せる段階というのは決まっている」

 

 アイザックの懸念をバッサリと切るアップルトンの物言いは余計な虚飾のない直言であった。

 

「それでも信頼されたいというのが臣下としての立場ではあるがな」

「いや、お前が一番胡散クセェよ」

 

 ドゥエインの妄言に対して歯に衣着せぬ言葉で返すアイザック。そういうところが政ができないと揶揄されるところであると気づいていないのは本人だけであった。

 

「この場に呼ばれるだけでも、殿下の信頼の証だ。側近たちだけでは見えてこないものも卿等であれば指摘できる。その為の場であるのだ」

 

 王太子は会議をよく開く。それが公式なものでも非公式なものでもだ。その場に呼び出されるのはいわゆる貴族議会に籍を置く領地貴族ではなく、領地を持たず、王国から役職を得て仕事を行う法衣貴族と呼ばれる面々である。

 

 日本に例えるならば、法衣貴族は国家の中央官舎に勤める官僚であり、領地貴族は選挙にて選ばれ国会に籍を置く国会議員である。

 

「それは実に光栄だ、そうは思いませぬかねフレッチャー長官」

「そこで私に振るか……? 過分余りあるとしか私は思えん」

「長官殿は謙虚ですな、過ぎれば嫌味になろうもの。自信を持って戴きたい。この私の上に立つのであればね」

「君の自信はどこから湧いてくるの……?」

 

 野心家で有能で手段を選ばない。

 ドゥエイン・アーレンは有能であり現に王都の治安維持と王領における魔物被害の低下を成し遂げた実績を持つ。

 貧民窟における大規模犯罪組織の検挙や不正を行ってきた官吏。なにより思想犯であり政治的犯罪者であるクリストフ・パルメという国際的な大物犯罪者の検挙はそれだけの価値がある。

 

 婿養子とは言え、ドゥエイン・アーレンは傭兵上がりの血筋も知れぬ男。貴族社会における異物であり、異端である。

 当然、ドゥエインを忌避する貴族は多いし、露骨に見下す貴族も多い。本来であるならば血統に拠らない存在など盤石な国家であれば認められるようなものではないのだ。

 

 成り上がりものが成り上がれるという下地は国家に余裕がないことと同義である。安全な処方薬(貴族)ではなく劇薬(成り上がり者)を頼らざるを得ないとはそれだけの理由がある。

 

 ドゥエインに対する微妙な緊張感を孕みつつある中、重たげな扉の開く音が会議室内に響く。

 

「──待たせたな、皆」

 

 王族特有のプラチナブロンドの頭髪。前髪は眉にかかる程度で襟足は短く刈り揃えている。鼻は高く、精悍な顔立ちをした男。美貌という点では弟に劣るが、総じて真面目そうな雰囲気を持つ好青年。

 王太子ウィリアム。至尊の座に最も近きその人が居た。

 

「殿下のためであれば、我ら家臣一同いつでも馳せ参じましょう」

 

 椅子に座る面々は王太子の姿を視認するや直立し敬礼の形を取る。代表して口を開くのはスティルウェル公爵家猶子であるパーシヴァルだった。

 

「ありがとう、卿等の忠義は私には勿体無いほどだ。腰掛けてくれ、卿等の力が必要なのだ」

 

 王太子ウィリアムは温厚篤実にして優渥である。苛烈という印象から最も程遠く、他人の心に寄り添える男と言えるだろう。

 真面目で精力的。努力を惜しまず、頑張り屋で勤勉。他者に対する思い遣りに秀でて、公明正大を主として、教えには敬虔で倫理観も高い。

 家族に対する愛情を持ち合わせ、臣下に対して寄り添おうとし、民衆に対して誰よりも心を砕いている。

 

 周囲に愛され、周囲にその分の愛情を持って接する。それ故にカリスマ性もあり次期国王としての素質を認められている。

 

 立派な人間ではある。理性的で家庭的。王としての責務をよく理解しており、その活動も精力的といえるだろう。

 大凡、人間性という区分であれば人でなしの自分と比べれば十人中十人がウィリアムを選ぶ。

 

 だからこそ、ドゥエイン・アーレンは深く理解してしまっている。

 

 この男では東の蛮族(ウルス)には勝てない、と。

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

「お招きいただき光栄ですわ、アーレン様」

「誰だお前は?」

 

 王都の一等地にある貴族屋敷。質素な佇まいながら、清潔に整えられた屋敷は使用人たちの腕がいいこと他ならない。

 

「まあ、酷いですわね。よもやわたくしの顔をお忘れで?」

「腐るほど見てるが、なんだその口調は? コルネリアの真似事じゃねぇかフランカ」

「うふふふふ」

 

 違う、俺の知ってるクソ女はもっと腹から声出して笑うんだよっ! とヘクター・アーレン様は私の存在そのものを否定する。

 

「やっとまともな女になったわ……大変だったわよ」

「おいどうすんだよドーラ。フランカがつまんねー女になっちまった……」

「いや、これがまともだからね兄貴?」

 

 兄貴が変な女に誑かされていると理解したサンドラ嬢と我が師ソフィアによって変わった私。そう、私は理解したのだ真の淑女とはなにかを!!

 

「かつてエール片手に魚の干物をつまんでいたお前は輝いていたぞ!!」

「エール、干物……? なにかしらそれは?」

「なんてこった、クソ女の記憶が封じられているっ!」

「侍女長の教育の成果ね。教育教育教育教育教育教育教育教育教育教育暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力暴力洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳洗脳」

「あっ…あっ……あっ……」

 

 あ、だめです。痛いの嫌なんです。執拗に左手首を鞭でしばくのはもう嫌なんです。

 

「ちんこまんこちんーこ、まんまんちんまんちんこ──」

「あっ、また壊れた……」

「おい、なんてことをしてくれてんだ、フランカがあまりのストレスでちんこまんこの歌を歌い始めたぞ!!」

「口塞いで、水ぶっかけるしかないわね」

「妹よ、その教育が許されるのはウチだけなんだわ」

 

 アーレン家の闇が垣間見えているがどうでもいい。

 仕事行きたくねぇなぁ……。

 

「これ以上は危険だ…。しょうがねぇ……殴って治すぞ」

「えっ?」

 

 閑話休題。

 

「殴って治るのは家電だけだっつったろ!!」

 

 私は激怒した。人を一昔前のブラウン管テレビだと思い込んでいる邪智暴虐なるゴリラを成敗せねばならぬと理解した。

 

「またイカレ女に戻ったけどどうするのこれ?」

「ドーラ、この女はイかれてるぐらいが丁度いいんだ。癖になるんだ」

 

 ゴリラは腕を組みながらしきりに頷く。

 

「だからといって鳩尾にいれるのはいかんやろ、人体急所やぞ?」

「女の顔を殴るわけにはいかねぇだろ」

 

 そこは人によるとしか言えないんだが? 癖になったらどうするんだが? ちょっと痛みで興奮しかけたんだが?

 

「クソッ、痛みに耐性が出来てしまってる。こんなことじゃ私は変態女よっ!!」

「それもとからでしょ変態女」

「黙れメスゴリラっ!! アンタの好みはガッチリムチムチ体型なことはわかってるのよっ!!」

「殺す……!」

 

 瞬間、サンドラ・アーレンから表情が消え去った。ぴえっ……怖い。

 

「おめぇのは冗談になんねぇから止めろ」

「チッ、命拾いしたわね」

 

 ゴリラはメスゴリラの肩に手をおいて制止してくれた。よくやった、そのままその暴力女を留めておけ。

 ククク、この世界の兄弟姉妹は基本的に潜在的ブラコンシスコンばかりだからなぁ……! お前たちの兄妹愛って美しくないか?

 

「てか、こう見るとアンタも貴族のお坊ちゃんなのよねぇ」

 

 こじんまりとしつつも庭園がありゲストルームを完備した屋敷。塀が屋敷を囲い、あくせくと目障りにならない程度に使用人たちが働く。

 

「そう大したもんじゃねぇよ。男爵家って言っても名ばかりだからな。譜代の家臣なんざ居ねぇし、大体が親父の昔馴染だからな」

 

 そういってゴリラは嘆息する。

 貴族の使用人は身分や家柄が重視される。ここにおける家柄とは商人や富農、それ相応の資産を持つ所謂中産層にあたる身分の存在だ。

 領域貴族であれば村の村長格の家柄の生まれだったり、法衣貴族であれば商家や貴族家の次男、三男坊などがこれに当たる。

 

 代々貴族家そのものと取引があるそれ相応に力をもつ家柄と言えるだろう。

 そういった家の生まれから代々貴族家に使用人や騎士として仕えるようになるのを譜代家臣と言う。

 

「執事長や財務官、庭師以外は元傭兵だ」

 

 ドゥエイン・アーレンが元傭兵という話は有名である。その界隈でも有名人であり度重なる戦場を渡り歩き、貴族の令嬢を射止めたことはリュフト王国において美談として伝わっている。

 

「だからこそ、ウチはよその法衣貴族の家と比べても異質よ」

 

 サンドラは諦めたように発言する。

 法衣貴族のスタンダードから外れている、その自覚があるのだ。

 

「ウチの家と縁を結びたがるのなんてろくな家が無いわ。家柄だけあっても経営が成り立たない家。後ろ暗いところがある家……だから、ウォルコット家みたいな真っ当に歴史があって、きちんとしている貴族家の令嬢なんて普通ウチに来ないわ」

「へぇ、アンタ中々見る目があるじゃない。その調子で私を讃えなさい」

「すごいのはウォルコット家であって貴女じゃないのだけれど……」

 

 不都合なことは聞き流す。これが王都に来て新たに私が手に入れた新能力(チートスキル)である。

 多用すると職場でアンタ人の話ちゃんと聞いてる? と言われ、いつまでも仕事ができない無能扱いされるので使用には注意を払う必要がある。

 

「まあ、ウチのクソ親父(ダディ)にも弱点はあるわよ。子供が私一人しかいないこととか」

 

 貴族の責務の一つに世継ぎを残すことは重要な責務である。

 だからこそこの世界には生殖機能の有無を測る魔法があったりするのだ。

 この魔法、実は案外侮れないものであり聖女や聖人の発見装置としての側面もあったりする。

 教会の権威が貴族家に対して影響がある一因ともいえよう。

 

 クソ親父(ウォルコット伯爵)の妻──私の母親は私を産んで亡くなった。普通であれば再婚し、継室を迎えるものであるが親父は首を縦に振らなかった。

 

 なにか理由があったのは想像に難くない。

 だが、今更それを知ろうとは思わないし、知るべきではないと思う。過ぎた話だし蒸し返したところでどうにもならない話だからだ。

 

 誰にだって、墓場まで持っていきたい話の一つや二つはある。

 

「ガキは数で数えるもんじゃねぇだろ」

 

 不意にゴリラはそう呟いた。

 

「命は数で語るもんじゃねぇ。一つ一つが掛け替えのなくて、代わりにはなれねぇもんだ」

「ゴリラ……」

 

 理想はそうかもしれない。あるいはもっと平和な世界なら誰もが肯定したかもしれない。そんな発言をこの男は時々宣う。

 

「フランカが二人居てみろ。どうなると思う?」

「殺し合って対消滅するんじゃない?」

「おい、お前ら。私をなんだと思っていやがる? そんな野蛮なことする理由がないでしょう」

 

 偽物が居たら合法的に排除して、闇に葬りますよ。直接的にやり合うわけないじゃない。

 

「あら? あらあらあらあら」

 

 私が致し方なく猿たち(アーレン兄妹)の飼育を行っていると屋敷から高くよく通るソプラノボイスが耳を通る。

 

「ヘクターのお友達かしら」

 

 華奢な身体に豊満な胸。肌は白く、厚めの化粧。

 濃いめのブロンドヘアを靡かせながらその女性は笑みを浮かべる。

 

「母親だ」

 

 ヘクターは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべながら短く私に伝えた。

 お前のかーちゃんまだ何人か産めそうだなって思った。

 

「へぇ…そうなの。ふぅん……」

 

 その目をよく知っている。吟味するような目だ。

 

「オッス、おらフランカっ! 趣味は競馬と札遊び!! もちろん金を賭けることが大好きよ」

「え…あ、そ…そう……」

 

 おかしい。素直に趣味を広言しただけなのに、ゴリラの母親はドン引きした視線を私に送る。

 

「あとは酒を浴びるように飲んで、塩味の濃い肴を摘みながら闘鶏を見るのも好きね」

「……ヘクター、友達は選んだほうが良いわよ?」

「おう、俺が選んだ友達だ。イカれてておもしれーだろ?」

「選ばれし存在……ってコト!?」

 

 ワァ……!

 ゴリラが出会った初めての異性の友人。それはフランカ・ウォルコットで当時は15歳ほどでした。

 私という特別な存在に出会えたゴリランダーは幸運と言えるでしょう。おらっ崇めろ!

 

「良いでしょう、私の素晴らしい会話デッキ……ライスに合わせるおかずは何が至高であるかを繰り出すわね……!」

「そのデッキはやめろーーーっ!!」

「あ、アンタ……それは死人が出るわよ……」

「わ、私の子どもたちがアホみたいになってる……」

 

 震え上がるゴリラ兄妹。困惑する母猿。

 繰り出されるのは切り札(ジョーカー)……ウォルコット伯爵家、門外不出調味料『焼肉のタレ』を所持する私……。

 

「……ヘクター、何度もいいますが友人を選びなさい。こんな頭のゆるそうな馬鹿女と付き合うと旦那様の評価が……」

「わーってるって。確かにフランカは下品でうるさくて猿みてぇな女だが……」

「おい、誰がさるかに合戦だって?」

 

 私はウキーっ! とけたたましい声を上げてゴリラの脛を蹴り上げる。

 悲しいかな、私の蹴りに私の身体はあまりに貧弱だった……。端的に換言すると足首を捻った。

 お前もしかしてマーズランキング三位だったりしない?

 涙が出てくる、だって女の子なんだモン……っ!!

 

「すげーおもしれーだろ? 考えりゃわかるのにわざわざ行動に移して最終的に自爆するんだぜ? こいつは本物だわ」

「本物ってなによ!! 人を天然みたいに例えるんじゃないわよ!!」

「本物ね……これ」

妹猿(いもざる)ぅーー!」

 

 アレクサンドラ(ブルータス)お前もか。

 ヘクターたちの母親──ミリアルテ・アーレンは力が抜けたようにため息をつくと一言『わかったわ』と口にして屋敷に戻る。

 その姿を確認して、私は呟く。

 

「ありゃヤバい女だわ」

 

 猿たちは私の言葉に深く頷いた。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「酒ッ! 飲まずには居られないッ!!」

 

 王都二番街に一際賑わう酒場。

 高級志向という程でもないが、安酒場というわけでもないちょうど良さ。

 ドレスコードは無いが店に来る人はみな身なりは清潔であり、どこか落ち着いた雰囲気のある客層である。

 

「量はいまいちなんだが、俺でもわかるぐらいには味はいい。そこがこの店の良いところだな」

「ゴリラ、お前の店選びは最高だ。やるじゃない」

「私としてはもっと落ち着いた雰囲気のほうが良いのだけれど……」

 

 そんなことを宣うディクシーコングに対し、私は鼻で笑いながら嘲笑する。

 

「「あんな格式張ったところにいると肩が凝る」」

 

 ゴリラと意見が一致した……解せぬ。

 

「人生の楽しみってのは色々あるだろうが、うまいもんを食って、好きなものを飲む。これに勝るもんは早々ねぇだろ」

「相変わらず色気より食い気ねぇ、あっ店員さーん! お酒新しいのもってきてー!!」

「品がない……」

 

 淑女が大声でジョッキ片手に酒を注文する。

 貴族令嬢としてはありえない姿だと。サンドラは頭を抱えはじめた。

 

「女フランカ…、一気飲み!! 逝きます!!」

「おお、いいぞ。やれやれ」

「バカ兄貴! 止めなさいよ!!」

 

 喉ッ! 流し込まずには居られないッ!!

 

「はぁ…馬鹿みたいな飲み方をする人が居ますね……」

 

 そんな雰囲気を咎めるかのような声が私の背後で囁く。

 小柄な体躯に不釣り合いなほどの大きな帽子。頬にはそばかすがあり茶色の髪を三つ編みに編み込んだどこか田舎娘のような少女であった。

 

「宮廷魔術師ですね」

「ええ、そうですよ。畏れ多くも陛下よりその席に置くことが許された宮 廷 魔 術 師のアンナ・ラフキンよ」

 

 自分の役職を強調するかのような口調にはありありと傲慢さが滲み出ている。

 可哀想なやつだ、自分の役職しか誇れるものが無いのね。ぷぷーっ!

 

「ふーん、それでなんで私達にダル絡みしてきたの? 暇なの?」

「ぷぷっ、アップルトンに殺されかけた女が随分と余裕そうですね」

 

 なんだァ、テメェ?

 

「ドーラ、よく見ろ。このフランカの顔は苛ついてる顔だ。こうなると攻撃的になるから酒を注いだり適当に褒めときゃ機嫌が治る」

「ゴリラっ! なに私を珍しい動物みたいに観察してるのよっ!!」

 

 クソッ、割と合ってるし心当たりがある。

 コイツどちらかと言うと体育会系の陽キャだったんだ!! 前世の私なら『あっ……ッス、はい……それじゃ……』ってなるところだったわね。

 

「だが、今の私には輝かしいばかりの美があるっ!!」

「急にどうしたのこの女?」

「不安になると自分の自信のあるところを誇張するんだ。フランカは小せぇ女だからな」

「誰がほとんど胸なしニックだ!? えーーっ!!」

「無いのは胸だけじゃなくて器だと思うのだけれど……」

 

 二度目の人生、豊胸のために努力は惜しまなかった。

 結果、胸の感度が良くなり胸イキを覚えたことが唯一の成果だった。

 

「オマエ、私の話を無視するとはいい度胸ですね」

「え、まだ居たの?」

 

 こいつ友達居ないのかな?

 

「癪に障る女ですね、フランカ・ウォルコット……!!」

「え、なんで私の名前知ってるの? 怖…、ストーカー?」

 

 眼の前の宮廷魔術師の女はいきなりキレた。

 最近の若いやつって沸点低いわね。キレやすい若者っていうの? 大人になって欲しいものである。

 

「……ッ!!」

「止せよ、飯屋で何するつもりなんだ?」

 

 宮廷魔術師の女が杖を握りしめると、いち早く動いて杖をひったくったのはゴリラだった。

 

「……ヘクター・アーレンですか、あなたのことはよく知ってますよ……、近衛から叩き出された男だとか」

「この女をワンパンしたら追い出されたんだ」

「はぁ? 責任をこっちに押し付けないでもらえる? 近衛が肌に合わないって言ってたのはアンタでしょ!?」

「それはそれ、これはこれ」

 

 お前、花子みてぇなこと言ってんじゃないわよ!!

 忘れもしないわ、あれは私がまた木佐貫家の住人だった頃……好きなアイドルの握手券を取るために死ぬ気でバイトしCDを爆買いしようとした時。

 

『そんなにおんなじCD買ってどうするの!! どうせ当たらないんだから一個にしときなさい!!』

 

 と反対されてしまい。

 

『握手券を取るためには十枚買いしなきゃまず土俵にすら立てないわよ! ソシャゲのガチャだって十連が基本でしょ!? 試行回数増やさなきゃ意味ないじゃん!!』

 

 と反論するものの伝家の宝刀。『よそはよそ、うちはうち!!』とけんもほろろに止められた悲しき過去……。

 

 まあ、その金で課金した結果ソシャゲでSSRの高レアイケメン手に入れたから損はしなかったが……。

 

「フランカ・ウォルコット!! 私の顔を忘れたのですかっ!!」

「知らん、こわ……」

 

 すみません、初対面ですよね?

 

「いや、会ってるわよアンタら」

「マ? どこで?」

 

 サンドラはため息を吐いて私の耳に囁く。

 

「貴女が近衛騎士団長に喧嘩売った時、アイザック・タフト筆頭宮廷魔術師の側に居た女よ」

「そんなモブキャラ一々覚えてるわけないでしょ」

 

 あんな量産型ラノベの最初に主人公に喧嘩売って負けた結果量産型オナホになりそうな女に脳のキャパ使うとか面倒臭いんだが?

 私は顔のいい男しか覚える気無いんだが? 雑なノイズのような記憶はポーイするタイプなんだが?

 

 なんでサンドラはドン引きしてるんですかね。

 おい、ゴリラなんでお前がやれやれみたいな雰囲気出してるのよ。

 

「こういう女なんだよ、フランカってのは。だから期待すんな」

「むぐッ……覚えていることですね!!」

「たぶん三分も覚えてねーぞー!!」

 

 そういって宮廷魔術師の……なんだっけ、アンネ・フランク? まあいいや、別に大した女じゃないでしょ。そいつが去っていった。

 結局何がしたかったの?

 

「『天才』アンナ・ラフキンにそんな態度取れるの貴女ぐらいよ」

「おい、なによその二つ名……私のほうが相応しくないか?」

「いやお前は天才じゃなくて『変態』だよ」

「おっ? やんのか『森の賢者』?」

 

 相変わらず失礼なゴリラに毒づくも当のゴリラは何処と吹く風とばかりに酒を呷った。

 

 そして私はこのときの判断を、一生後悔することとなる……。




必要な日常回は見せたということだ。(貯め回終了)
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