乙女ゲー転生モノに出てくる性悪お花畑転生者女を曇らせてみたwww 作:見てアホ女がいるよ! かわいいね
婚約者を妹に取られる。家族と婚約者がやり直しを要求する。婚約者が後悔する。主人公が自分を殺すことをやめて自由になる。もう遅い、する。あらゆるテンプレざまぁ要素をお楽しみください。
何が聖女だっ! 物語の聖女なんて大体が性女じゃないの!!
「パーティーは好きだけど、この移動時間だけは億劫なのよね」
揺れる馬車の中で私は一人不満気に愚痴を漏らす。
おかしいなぁ、私転生者だよね? 転生者ってのはもっとこうチヤホヤされて『私なにかやっちゃったかしら?』とかいって愚民たちに持ち上げられる存在じゃなかったかしら?
この国の第二王子とか、公爵家に婿入りした貴公子とか、王国宰相を兼ねる侯爵家の嫡子とか攻略キャラっぽい存在はいるのに現在私と縁の深いのは筋肉ムチムチのマッチョメンな
──ゴリラルート。おぞましきルートの開拓をしてしまったのでは?
い、嫌じゃ……猿の子など孕みとうない……っ!
私の好みはもっと線の細いイケメンである。その点第二王子は実に良い。
権威も権力も名誉もついでに手に入る。最強のトロフィーといえよう。あー、溺愛されたいなぁ…!
「ゴリラ、私のこと溺愛しなさいよ」
「大丈夫? オッパイ揉む?」
「
会場である王都に着くなり私はゴリラの胸を揉んだ。カッチカチだった。
ゴリラのパートナーとして呼ばれたパーティーは現第一王子であり病床に伏せる父の代わりに王太子として王国に君臨する次期国王の生誕パーティーであった。
「じゃ、俺適当に飯食うから適当にやっといてくれるか?」
「おい、仕事しろゴリラ」
ゴリラはパーティーが苦手だった。
コミュ力はあるし、世間話も出来るが裏に政治のあれそれが入るとゴリラは政治的な意図とかガン無視するタイプだ。
清濁のうち濁った部分を飲み干せないタイプの人間である。
個人として過ごすのはいいけど、取引相手としては無能だよねと言われるタイプである。
結局のところ立食会形式のパーティーとなるとゴリラが飯を食ってる中で私が貴族と応対するのが作業になった。
もっと私に楽にさせてくれない?
「これは、ヘクター・アーレン様、フランカ・ウォルコット様。お久しぶりですね」
透き通るような銀髪。優しげな微笑みを浮かべ近づいてくる令嬢。スカーレット辺境伯家の令嬢であるコルネリアである。
「相変わらず、顔がいいわね」
「うふふっ、お褒めに預かり光栄ですわ」
「皮肉よ、まったく……」
顔がいいやつを見ると腹が立つ。同性なら当然だろう。
毒気を抜かれるといったらこういうことなのだろうと、私はため息混じりでコルネリア・スカーレットに視線を投げる。
コルネリア・スカーレットは
王国唯一の聖女であり教会勢力が権威を認める象徴。
この大陸には女神信仰というものがあり、女神から直接加護と啓示を受けた女性を聖女と言うらしい。
「苦労するわね、アンタも。同情するわ」
「いえ、そのようなことありませんわ。名誉ある役目ですもの」
心にもないことを言う聖女。伏せるように憂いを帯びた瞳を見せる。
「名誉しかないじゃない。私はもっとだらけて勝ちまくりモテまくりの人生のほうがいいわ」
「お前のそういう俗物なところ好きだぜ」
「はいはい、ありがとありがと」
ゴリラはそういってローストビーフに齧り付きながら適当そうに私を褒める。
「うふふっ、お二人は本当に仲がよろしいのね」
「ああ、俺たちは親友だからな……」
「アンタら目ぇ腐ってるんじゃない?」
どこをどう見たら仲良しに見えるんですかね。
実質ゴリラと飼育員なんですけど……。
「本当に……羨ましい」
聖女の素養はいくつかある。多大な魔力を持つ美貌の少女であり女神の秘跡を扱い、他者を癒やし、穢れと悪を浄化する。特殊な魔力を持ちうる存在。
そして、聖女最大の特徴は純潔を強いられたかのごとく先天的に不妊症であることだ。
コルネリア・スカーレットは貴族の令嬢として先天的な欠陥を保持している。
乙女ゲーで聖女といえば主人公のポジションだろう。
だが、この世界で言えば、好いた男の子を産めないこと。家庭を持てないこととイコールである。
「そんなウジウジしてるから婚約者を妹に取られるのよ」
「手厳しいですわね」
「事実でしょ」
私は鼻で笑いながら聖女を貶す。ゴリラは千切りのキャベツをひたすら口に詰める作業をしていた。
「後悔するぐらいならいますぐ婚約者のところにでも言って捨てないでって交渉したらどうなの?」
「そ、それは…」
「身分だけ立派でも所詮小娘ね。欲しいものがあるなら勝ち取りなさい。このフランカ様を見習いなさい」
私は絶対に掴んでやるわ。他の女にマウントを取れる地位を!
「ブフッ……」
「おいゴリラ、今私のこと笑ったか」
馬鹿にしやがって、全然見た目好みじゃないのに、わりと聖女とか第二王子とか軍部関係の貴族が集まる誘蛾灯みたいな存在だから利用してやってるのに転生者様の私を笑いやがったな……!
「ふっ…おもしれー女」
「お前それ言えばなんとかなると思ってんじゃないでしょうね! 馬鹿にして!! 私伯爵家の令嬢なのよ! もっと甘やかしなさいっ!!」
「オッパイ揉む?」
「なんで甘やかすイコールおっぱいなのよ! てか、男のくせに私よりでけぇ胸しやがって……! 不平等よ!!」
「……それだと俺もお前の胸揉んでも良くなっちまうが?」
「だめに決まってるでしょ!! セクハラよセクハラ!! かーっこれだからゴリラ・ゴリラ・ゴリラはっ!!」
「……うふふっ」
案の定、コルネリアさえつられて私を笑う。
「なによっ! みんなして私のことを馬鹿にして!!」
「いえっ、そうではないのです。フランカ様は本当にお優しい方と思いまして……」
「優しい……?」
どこにそんな要素が? 私けっこうあなたのこと馬鹿にしてたわよ。
いやまあ、確かに。私は顔が良くて心の広い聖女より聖女な至宝系美少女ですけどなにか?
参ったわね、もしかして心の美しさと気品が顔に出てしまったみたいね。かーっ困ったわね。美しすぎる罪ってやつね!
「このときのフランカはろくでも無いことを考えてる顔だぞ」
「黙れゴリラ。バナナでも食ってろ」
私はゴリラの口にフォークで刺したサラダをぶち込む。
黙っててくれ、お前が喋ると世界がおかしくなってしまうのだ。
ふとコルネリアを見ると彼女は微笑みを浮かべ眩いものを見るように目を細める。
「……なによ」
「いいえ、なんでもありませんわ」
◇◆◇◆◇
──光を見た。
眩い太陽のような、あるいは夜空の中で一際輝く月光のような。
フランカ・ウォルコットとヘクター・アーレンは私にとって理想だった。
「姉上っ! 見てください、この大ぶりの鱒を!!」
釣り竿を片手に、頬についた泥を気にすることなく、妹のローラはまだ生きてビチビチと跳ねている鱒を私に見せる。
「まあ、立派な鱒ね。すごいわ」
「えへへっ」
私とは似ても似つかない妹のローラ。お転婆で、破天荒で、それでいて元気で明るい妹。
周囲を困らせる厄介者あつかいされていたけれど私はこの妹が好きだった。ローラも私のことを愛していたと思う。
「どうしたものか……あれでは嫁の貰い手が……」
「そうねぇ、もう少しお淑やかになって貰えると良いのだけれど……」
父母はそう言ってローラのお転婆振りに頭を痛めてたし使用人たちも私とローラをあからさまに比べるようなことも多かった。
「せいっ! はあっ!!」
馬上にて槍を振るい、私の婚約者と模擬決闘をしてた時など使用人があまりの衝撃に倒れてしまったほどだった。
おそらく、ローラの行動は貴族のそれとは明らかに外れているのだろう。
「辺境伯家の娘だからね。武門に誉れ高いのは悪いことじゃないと思うよ」
私の婚約者のフィリウス様はそう言ってぎこちなさげにフォローしていたが、フィリウス様の側近たちは皆一様に苦笑いを浮かべていた。
「姉上っ!! 村を騒がせていた猪を狩り取ってまいりましたぞっ!!」
妹は目を爛々と輝かせ、私に誇示するかのように胸を張る。
その姿がまるで大型犬のようなそれに見えて私は可愛くてたまらなかった。
「すごいわね、ローラは」
「はいっ!! ささっ義兄上!! 今宵も一本教授願いますっ!!」
「あはは……済まないねコルネリア」
「構いませんよフィリウス様、わたくしにかっこいいところ見せてください」
「勿論、次期スカーレット辺境伯として恥ずかしい姿は見せられないさ」
フィリウス様はそう言って妹の稽古に付き合う。
私は恵まれている。良き父と良き母。良き家臣に良き妹。そして良き婚約者に恵まれた。
だからこそ、私は決して許されない。
「嘘よ……」
「嗚呼、なんてことだ……」
「ごめんなさい…ごめんなさい……」
私は
「フィリウスはローラの婚約者にする」
父の判断は正しい、仕方ないことだから。
だからそんな苦しそうな顔をしないでほしい。
「コルネリア、ごめんなさい、ごめんなさい……私が、まともに産めなかったから……」
母は自分を責めた。悪いのは私なのに、自分の肚が悪かったと、涙を流し心を病んだ。
「おかしいわっ!! なぜ私が姉上の婚約者を娶らなければならないのです!! 義兄上は……あんなにも姉上のことをっ!! 姉上だって……」
妹は強く反発した。姉の婚約者を奪うことに忌避感を感じ、激昂した。
「コルネリア……君が望むなら、僕は……」
フィリウス様は私が望むならそれこそなんでもしただろう。してくれただろう。
だから、私はその手を握れなかった。
幸せは崩れ落ちていく。
「赤ちゃん……私の赤ちゃん……」
下腹部を押さえる。うわ言のように、私はとめどなく溢れる涙を抑えることが出来なかった。
子供の頃から夢があった。
好きな人と出会って、結婚して、素敵なお嫁さんになって──そして子供が欲しかった。
私の夢は聖女になってしまったことで叶えられなくなった。
「お父様、貴方は正しい。だから、私はお父様の考えを肯定します」
だから、もう苦しまないでほしい。
「お母様、貴方は悪くないのです。だって貴方は私を愛してくれたから。十分すぎるほどたくさんの幸せを貰ったのです」
だから、もう責めないでほしい。
「ローラ、貴方は明るくて天真爛漫で、そんな姿に私は救われた。だから貴方は貴方の思うままに生きて」
だから、素敵な貴方のままでいてほしい。
「フィリウス様。こんなわたくしを愛してくれてありがとうございました。わたくしはこれ以上ないくらい幸せでした」
フィリウス様。……私が愛した貴方だから、貴方には幸せになってほしい。
たった一つの願いが叶わないなら、せめて、みんなの願いが叶うよう祈ろうと、そう思った。
「アホくさ」
フランカ・ウォルコット伯爵令嬢と出会ったのは聖女になって暫くした後だった。
「自己犠牲って嫌いなのよね。ええかっこしいってやつ? ああ言うのフィクションの中だけで十分よ」
失礼な女だと思った。私のやり方にケチをつけて、だってそれ以外最善などないじゃないのと思い。
「夢も願いも自分で掴むものでしょ。幸運の女神には前髪しかないのよ、待っていても叶うわけないじゃない」
「日々堕落してるお前が言っても説得力ないぞ?」
「はーっ!? 頑張ってるんですけど!! これでも? この美貌を維持するために毎日毎日コツコツコツコツ頑張ってるんですけど!? 乙女の美貌舐めないでくれないっ!?」
「ごめんね…」
「許す!」
思うがままに笑い、あるがままに怒り、なすがままに生きる。
強い人間の生き方だった。
傭兵上がりの成り上がり者の息子と美貌の下品姫。異物同士だからこそ彼らは奇妙にも噛み合っていた。
ああ言うのもまた、夫婦の形なのだと。私は思ってしまったのだ。
「とにかく、私が言いたいのはアンタはもっと我儘になってもいいんじゃないの、ってことよ」
「我儘って、迷惑じゃないかしら……」
「甘いわね、いい? ボイン聖女。男ってのは女に頼られるのがグッと来るのよ」
フランカ様はニヤリと企むような笑みを浮かべて断言する。
「男に貢がせた金額がそのまま貴方の価値よ」
「クソ女じゃねぇか……」
「黙りなさいゴーリライ。女の子にはねぇ、お金がかかるのよ!!」
日々の化粧代にドレスなどを新調するための金額。
当然のことながら美貌を維持するための食事に体型補正のためのコルセットや下着……。
「美少女にはお金がかかるのよ!!」
「おんなじこと二度言ってねぇか?」
「大事なことなのよ!!」
フランカ様は拳を握りしめ演説する。
「人間はね頑張ってなくても頑張ったね、って言われたい生き物だし。愛される努力をしてないにもかかわらず、愛されたいと思ってる生き物なのよ! 友情? 努力? クソ喰らえだわ!! 勝利さえ手に入れば何でもいいのよ!!」
「クズ人間論じゃねぇか……」
「優しい世界? そんなのより私にとって都合の良い世界がほしいわ!!」
「一周回っておもしれー女」
どこまでも自己中心的でどこまでも馬鹿らしくどこまでも自由で、どこまでも傲慢。
フランカ・ウォルコットほど貴族らしくない貴族はそうは居ない。
貴族は気品と品性を重視する。だが、フランカの言うそれは、品性をぶん投げて欲望のままに生きようというそれだ。
だが、なかなかにしてそれがある種の人間の真理をついている。
「努力は嫌いよ、だって私たちは物語のキャラクターのようにはなれないもの。格好良いところも格好悪いのも含めて
──盲点だったかもしれない。
私は聖女だから、選ばれてしまった特別な存在だから。そう、在らなければならない。
私情を殺し、本心を隠し、誰もが求める理想を演じ続けなければならないと思っていた私にとって、それがどれ程救われた言葉だったか、きっと彼女は知らないだろう。
「だから私は王族と結婚してウハウハな毎日を過ごすの!」
「俺馬鹿だからよく分かんねぇけどよ、結婚ってゴールじゃなくてスタートなんじゃねぇのか?」
「ええい、黙れ黙れ。そんな正論聞きたくないわ!」
きっと貴方はわたくしのことを嫌っていたけれど。わたくしは貴方が羨ましかった。
今まで隠して、目をそらしていたこの羨望の気持ちも今では前向きに捉えられそうだから。
──だから、この道を選んだことに後悔はない。
その道が崖の上で。あとには真っ逆さまに落ちるしかない道としても。わたくしは喜んで突き進もう。
後には破滅しかなかったとして、死しかなかったとして。
わたくしは、胸を張ってわたくしの人生を誇ろう。
愚かな女だと皆は失望するかもしれない。
もっと救えたのだと怒るかもしれない。
我儘な悪い女だと、自覚している。
「わたくしは、貴方がたに奇跡を祈りましょう」
「姉上……駄目です。姉上……」
ごめんなさい
「やめろ……やめてくれコルネリア」
深い矢傷を受け、満身創痍の死に瀕した
実家の子爵家から辺境伯家へ援軍として訪れ、都市を守る守将として蛮族からの襲撃になんども立ち向かったフィリウス様。
貴方は本当に優しくて、わたくしのまえでは格好ばかりつけて、その姿がいつもわたくしの心を暖かくしてくれた人。
「逝くな、逝かないでくれ……!! 親よりも先に死ぬ娘があるか……ッ!!」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……」
ありがとうわたくしの家族があなた達で良かった。
「心から、わたくしは……」
周囲を見渡すと、皆一様に涙を流し、あるいは手を握りしめ祈る姿が見受けられる。
それがすこし可笑しかった。そして、理解したのだ。
私の幸せはここにあったのだと。願いはすでに叶えられていたことに。
「──わたくしは貴方がたの幸せを願います」
それが私の心からの
──大致命聖女コルネリア。
西部大陸における教会にて列聖された聖女。類まれなる女神の秘跡の使い手であり、城塞都市ローデヴェイクは後に聖女の砦の異名を持つ堅牢不落の城塞として信仰される。
死してなお城塞を守り続け外敵を退ける結界と疫病といった病を退ける病払いの加護がローデヴェイクにはあり、教会が認定する聖地の一つとして大司教区の一つとして認定させられている。
その死は伝説的であり、自らの命を引き換えに蛮族を退ける大結界の創造と、死に瀕していた領民の命を救い代わりに自らが塵となって力を使い果たしたとされる。
遺骸である塵は聖骸として教会の本部である教皇領の大教会に収められているとされる。