乙女ゲー転生モノに出てくる性悪お花畑転生者女を曇らせてみたwww   作:見てアホ女がいるよ! かわいいね

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ゴリラ無双を書きたかったのにしらねぇモブキャラがしゃしゃってきた……。なんで?


なんだこのモブキャラ!?

「すごい、本当に追い付いた……」

 

 都市ローデヴェイクにて徴収を終え、そこから1日かけてヘクター・アーレンの『雑草の騎士団(ナイト・オブ・ヴィード)』は蛮族(ウルス)の軍の後方に辿り着いた。

 

「そりゃそうだよ〜、鈍重な砲台を運ぶなんて重労働だからねぇ〜。当然、その分足は鈍るよ〜」

 

 緊張感のない声でクリストフ・パルメはケタケタと笑う。

 

「軍事とは常に合理性を追求する。ウルスの本隊が攻城兵器として極めて優れた大砲を持っていかなかったのには理由があるもんだ」

 

 彼方より見える敵軍を見定めながらアーレン卿は述べる。

 歩兵と砲兵という決して機動力として高くない兵が主体の別働隊は確かに騎馬と弓を主とする蛮族の軍にして異質である。

 

「使い慣れたナイフと使ったことのない長槍。武器としては長槍のほうが有利だが、おそらく殆どのものは使い慣れた武器の方を使うだろう。言っちまえば敵の戦闘教義(ドクトリン)に新兵器が追いついていねーんだ」

「なるほど……」

 

 要は信用と積み上げてきたものの差ということである。

 蛮族の基礎戦術は騎兵による高い機動力と突破力。奇襲や奇策の類として大砲を使ってはいたが、あくまで主力は騎馬による撹乱と機動戦が主軸であるのだ。

 

「長所と短所は表裏一体、攻城戦において無力な騎馬兵だけどこと野戦に於いては常勝不敗。類まれなる攻城兵器たる大砲だけど、鈍重な重みは騎馬の機動力を殺してしまう、ってことだねぇ〜」

「あくまで、大砲ってのは奴らにとっての補助兵装でしかねぇってことだ」

 

 各国を攻め落とし、様々な会戦において勝利を手にしてきたのはウルスの騎馬民族としての戦いという根っこが彼らを常勝無敗の帝国へと押し上げたとも言える。

 付け焼き刃を基本戦術に押し込むには余りにも大砲は革命過ぎ、騎馬戦術が優秀すぎたといえよう。

 

「ウチの国は(やっこ)さんを蛮族だなんだというが、舐められたもんじゃねぇぞ。アレはひどく合理的で苛烈な戦争国家だ。言っちまえば東大陸オールスター連合軍って考えた方がいいな」

「幸いなことに敵は戦線が広いからね〜、頭や参謀格は一級中の一級でも手足は二級線だよ〜、そうじゃなかったら帝国じゃないとまともに張り合えないね〜」

「……スタニスラフ・アンドルシュが二級線と?」

「すくなくとも敵は『大陸の半分を手中に収めた大帝(ジャンガル・ハーン)』じゃない。その倅の私兵や与力だ。数カ国を滅ぼした手合とはいえ、この世に無敵の軍なんて存在しねぇさ」

 

 アーレン卿とパルメは頭が切れる。少なくとも私が接してきた者たちの中でもトップクラスに。

 (まつりごと)は苦手と嘯くが、こと軍事においては合理性を尊び決断力の高さを持つヘクター・アーレン。

 密売人という罪人ながら王国の地理を理解し、行軍路を決め軍隊の高速移動を可能としたクリストフ・パルメ。

 

 ある意味理想的な将軍と軍師といえるこのコンビは人格的な信頼はせずとも互いの能力における信用はあった。

 

「ローデヴェイクは要塞としても補給基地としても最適な立地だった」

「本来だったら、ローデヴェイクに後方基地をおいてそこから大量の砲台を前線に補給してたんだろうね〜、そうなったら間違いなく王国の命脈は途絶えてたかな〜」

「誇れよ、ローラ。辺境伯家がやったことは百万の黄金に勝る価値がある」

 

 ヘクター・アーレンという男は虚飾を苦手とする。根本的に正直者で嘘が苦手なのだ。

 だからこそ、この男の言葉は紛れもなく本心そのものだと理解する。

 

「コルネリア・スカーレットに報いるためにも俺は負けるわけにはいかねぇ。安心しろ、俺は必ず勝ってやらァ…」

 

 アーレン卿は獲物を前にしたかのような獰猛な笑みを浮かべる。

 

傭兵の流儀(親父流兵法)を見せてやるよ」

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 俺の祖国は黄金色に染まった稲穂の中にあった。

 華の国──東方大陸における大国であり豊かな文化と豊かな国力を有していた私の祖国はその豊かさ故に腐り果ててしまった。

 

 官僚たちは汚職が蔓延り、皇帝は享楽に耽け、軍人は祖国より自分の治める地方を守ることに躍起になっていた。

 ただ一人、我らの将軍は違っていた。郭将軍は最後まで国のために戦っていたのだ。

 

 中原から河南に至るための要衝たる審陽にて六年間、郭将軍は国のために戦い続けた。

 時に野戦で時に籠城で懸命に努めを果さんと。たが、国は郭将軍を見捨てたのだ。

 

 援軍は来ず、兵糧は尽き、闘志は砕けてしまった。

 

 祖国は我らに報いてくれなかったのだ。

 

 我らの祖国は大国であった。

 兵力は負けてはなかった。文化も負けてはなかった。将の質も、技術でさえ負けてなかったと自負している。

 

「敵ながら見事である。其方たちは正しく尽忠報国の臣である」

 

 一番我々が欲した言葉を与えたのは、敵国の皇子(ゾルグ・ハン)だった。

 我々の国は腐っていた。国を民を臣下を導くはずの天子はその血脈を腐らせていたのだ。

 我が国が秘密裏に開発し祖国救済の武器としながら腐らせていた大砲を活用して見せたのは、我々が異民族と見下していた蛮夷たちであった。

 

 戦の天才と言える皇帝、有能な皇子、それを支える実質剛健な臣下たち。

 我々が欲してなお手に入れられなかったものが彼らにはあったのだ。

 

 負けるはずがないと思っていた。戦争とは、戦とは勝利に至るまでの優位を積み上げ続けてきたものが勝利する非常に合理的かつ残酷なまでの現実を見せてくる。

 

 だって我々がそうであったのだ。我々の国は勝利のための努力を怠ってきた。

 一人ばかりが頑張ろうとも、国という大きな波の前では付け焼き刃に過ぎないことを我々は身を以て学んでいた。

 

 そう、我々は勝っていたのだ。──勝っていたはずなのだ。

 

「──なんだ、それは……」

 

 西へ更に西へと征伐を行っていた、我が征西軍。

 我々は常に勝利してきた。

 ホスローを滅ぼした、オスマニアを滅ぼした、シリア城塞を文字通り破壊し尽くし、このリュフト王国の隣国であるサイジリア王国さえ滅ぼしたのだ。

 

 我らは常に優位を保ってきた。

 相手より強大な数の軍を揃えた。相手よりも高い技術力を持っていた。相手よりも精強な兵を兼ねていた。

 

「巫山戯るなっ、なんだそれはぁぁぁぁあああああ!!!!!」

 

 たった一つ、意味の分からない幻想(ローデヴェイクの大結界)に我らは戦術的な敗北を強いられた。

 

「──達っ! 落ち着け、公孫達っ!!」

 

 隣から聞こえるのはウルスに降った降将であり審陽時代からの戦友である楊叔通の声である。しかしその声にすら俺には届かなかった。

 

 勝利とは、努力とは、常に積み上げてきたもののにこそ相応しいものだろう。現に我々は常に努力してきた。勝つために、二度とあのような敗北をしないために積んできたはずだ。

 あんな惨めな思いはしないと、かつての華の帝国を取り戻すと誓ったはずだったのだ。

 

「あんなものかあってたまるかっ! あんな異常があってたまるかっ!! 何が奇跡だ、何が神だっ!! 巫山戯るなっ!!」

 

 巫山戯るな。なんでそんなものがあるのなら。なんで審陽で我らのことを助けてはくれなかったのだ。

 

 六年間、我々は戦い続けたのだ。援軍も来ない城で、懸命に戦い続けたのだ。

 病で死ぬ兵士が居た。矢傷を負い救えなかった兵士が居た。兵糧も医薬品も、矢玉すら尽きかけて。

 味方の骸を喰らいながら尚も懸命に戦った六年だった。

 

 あの時の我らの祈りは、我らの戦いは、我らの想いは……こんな小国の一砦の一月程度の籠城にも劣るほどのものだったとでもいうのか?

 

「フーッ、フーッ! フーッ!!」

 

 頭の血管が切れそうなほどに歯を食いしばり、掌には爪が食い込んで血が流れ出す。

 感情に身を任せて、このまま放置を続けて都市の人間を全員飢え死ぬまで待とうかとでも考えてしまいそうになる。

 

 だが、俺の中の理性がそれを悪手だと理解している。

 

「郭将軍がお呼びだ」

「ああ、わかった……」

 

 ここでローデヴェイクを滅ぼしたところで俺の気が晴れるだけの話だからだ。

 

「来たか。公孫達、楊叔通……」

 

 陣中には別働隊の首脳部が集まっていた。

 髭と髪に白いものが混ざる初老の将軍は俺が敬愛する元華国衛将軍にしてウルスの万騎将郭文沢将軍である。

 身長は160cm程と隣に並ぶアンドルシュ将軍と比べ余りにも小柄だが、勇気と健闘精神。そしてウルスの誇る新兵器である大砲の扱いに最も精通している。

 

「アンドルシュ将軍、己の失策である。謝って済むものではないが、まずは謝罪を」

 

 郭将軍はアンドルシュ将軍に頭を下げて謝罪する。

 郭将軍は間違えていなかった。当初の戦略において、城塞都市を兵糧攻めで落とすのは既定路線であった。

 そのためなら根伐りや奴隷として売り捌くだろう都市の住人に対しても、手厚い処置を考えていたこともある。

 

「最終的に判断をしたのはワシじゃ……デクスター・スカーレット。いや、聖女コルネリア・スカーレットを見誤っていた」

 

 蝋燭のように細く、縦に長い身長の老人。別働隊大将であるスタニスラフ・アンドルシュは自身の判断こそが誤りだったと述べた。

 リュフト王国辺境伯デクスター・スカーレットは無能ではないが凡庸な男と当初考えられてきた。

 半身たる辺境伯家騎士団を皆殺しにし、領地の半分以上を焦土化すれば残る臣民と自分の命を天秤にかけ、降伏するだろうと考えられていたからだ。

 

 西大陸の文化や貴族制度に詳しいアンドルシュの分析ではそこまでされれば降伏も致し方ないとそう考えられる程度に。

 

 しかし、二つの要因が征西軍をすべて狂わせた。

 一つは西大陸最大の宗教的権威である聖教。それが聖人認定する聖女という存在。

 そして、もう一つはリュフト王国辺土を焦土化し。本隊に繋がる補給路をズタズタに切り裂いた『雑草の騎士団(ナイト・オブ・ヴィード)』である。

 

 征西軍十万の軍勢の腹を満たすのに必要な物資を略奪で満たせるか。答えはNOである。

 略奪で得られる報酬など高が知れており、それこそ兵士に対する飴でしかない。それに略奪で得られる利益として最も多いのは食料より金品や人間といった資源だろう。

 

 敵国のど真ん中でまさか金品や人間を食料と交換で売買してくれる商人などいない。

 

 圧倒的兵力でリュフト王国に攻め入った征西軍はその軍の長大さによって苦しめられている。

 

 嫌がらせの範疇であるが、その嫌がらせが我々を最も苦しめているという事実。

 わかっている、敵は小回りの効く小勢であることぐらい。正面から打ち払えばなにも問題は無い筈であることに。

 

 ──一度の夜襲で本隊は馬に食わせる飼料を焼かれ、資産である羊を奪われた。

 

 王都を包囲する征西軍の尻に火が着いた瞬間だった。

 

 ローデヴェイクを包囲する別働隊はまだ辺土にあり、兵糧に関しては問題は無い筈。

 問題は相手の喉元に切っ先を伸ばしているはずの八万の軍勢である主力だ。

 

 ただそれでも、ゾルグ・ハンは無能ではなかった。座して死を待つなど征西軍はそんな阿呆でもなかった。

 

 すぐさま、征西軍より二万の別働隊を編成し『雑草の騎士団(ナイト・オブ・ヴィード)』の殲滅が告げられた。

 

 征伐部隊の総大将は征伐王の嫡子であるウランフ。聡明で戦士としての矜持をもつ誇り高い荒野の英雄だ。

 シリア城塞において暗殺教団の教祖を弓による狙撃で殺し、500里先の敵の将軍の脳天を弓で貫いたほどの天才である。

 

 周囲を固めるのはこの西大陸で元傭兵からウルスに仕官し万騎将に成り上がったヴァンダルや勇猛果敢な山岳騎馬民族(マージャル)の戦士ケストレル・イシュトヴァーンといった足の早い騎馬を中核とする編成である。

 

 籠城には主力なりえない騎馬部隊の突破力と機動力を活かし、面倒な雑草を刈り取る。ただそれだけの話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──征伐部隊二万は誰一人として帰ってこなかった。

 

 『雑草の騎士団(ナイト・オブ・ヴィード)』というふざけた名前は一瞬にして我らを畏怖させる理解しがたいナニカになった瞬間である。

 

『本隊はあと一月も持たない』

 

 有利なのは此方なのに追い詰められている。

 そんな奇妙な感覚であった。

 

『ローデヴェイクを完全に破壊して都市機能を失わせる。退くにしても進むにしても、こうなればローデヴェイクを完全に潰して後顧の憂いを断つ』

 

 我が別働隊がこれ迄の戦略を変更し、リュフト王国に出血を強いる方針に変換したのは間違いなく『雑草の騎士団(ナイト・オブ・ヴィード)』の影響である。

 

『辺土を焼き払い、住民をひとり残らず殺し尽くし財貨を奪い家々を焼き尽くす。和睦するにしても戦争を継続するにしても、空白地帯を作り緩衝地帯をつくる。恨まれようが構わん、リュフトという言葉を歴史上の言葉に変えることも厭わんぞ、ワシは』

 

 アンドルシュ将軍もその方針に賛成した。

 政治的空白地帯を作ること、それによる緩衝地帯を作ること。

 サイジリア王国出身のアンドルシュ将軍からすれば祖国を焼くより隣国を焼くほうが遥かにマシという考えなのだろう。

 

『ローデヴェイクを完膚無きまでに滅ぼした後は街道を通って王都プラチナムの本隊に合流する。その後はゾルグ・ハン次第であろうな』

『退くなら撤退支援。攻めるなら砲台による一斉射撃じゃろうて』

 

 そして我々はその作戦すら失策にしてしまった。

 忌々しい大結界によって。

 

「アンドルシュ、アレは西大陸でよくあることなのか?」

「聖女というものはワシも知っている。だが、あれ程までに戦略に起因する現象は初めて見た」

 

 戦術クラスにおいては、秘跡と呼ばれる各種の奇跡はある。それこそ、大砲を出した時にあった死兵の軍がそうだ。

 あの攻撃で此方も数少ない将兵が犠牲になったからだ。

 

「──退けぬな」

 

 征西軍首脳部の厭戦意識は高い。特に旧華国出身者を主とする郭将軍の軍にはその意識は高い。

 祖国を離れ、異国の地で屍を晒す。征西軍として参戦し5年以上も祖国から離れているのだ。

 

 それでも退くことは出来ない。華国人は被征服民なのだ。何かあれば異民族であるオイラト人の機嫌を伺う立場である。

 

「転戦する! 砲台を幌に詰め込め、時間との勝負になるぞ!!」

 

 郭将軍は立ち上がり、決断する。

 アンドルシュ将軍も察したのか、ため息を一つ吐くと自身の側近に命を下す。

 

「撤退のふりをするぞ、できるだけゆっくりとな。此方に焦りがあると思わせてはならん」

「はっ!!」

「公孫達、貴様は幌馬車の輸送を頼む。黄金より価値のある仕事だ。貴様にしか頼めん」

「承りました」

 

 やるべきことはたった一つ。この大砲を本隊に届けること。

 

「馬術に優れたオイラト人と馬を何頭かいただきます」

「構わん、馬が潰れるのは仕方あるまい。全50門のうち20門。貴様に預ける」

 

 リスクは分散しなければならない。残りの30門は別働隊が厳重な警備の上運ぶ。そうした理由はただ一つ

 

「雑草の騎士には気をつけろ……神出鬼没な妖魔のような男に違いない」

 

 この戦役における最大の懸念事項のためだ。

 敵は二万の軍勢を消し去り、餓えと乾きで本隊を追い詰めた戦術の天才である。

 

 馬に跨がり、街道を進む輸送部隊。

 軍であれば数十日かかる距離も少数精鋭かつ馬の扱いに優れたオイラト人ならば数日とかからない。

 

『はっはぁ! 大したもんじゃねぇか中華(シナ)人!!』

 

 オイラト人の若い青年が騎馬民族(オイラト)の言葉で俺に呼びかける。

 

『遊びではないぞ、ハドゥ! 征西軍の勝利は我々にかかっているのだ!!』

『はっ! なら余裕だな、俺たちの速さに辿り着けるとは思わねぇッ!!』

 

 ハドゥの言っていることはよく分かる。オイラト人の機動力は世界において最高峰と言えるだろう。

 特に平野を駆けるスピードは他の追随を許さない。山岳であるならばイシュトヴァーンらのマージャル人が他の追随を許さないが、こと街道を駆けるのであれば最速と言っても過言ではない。

 

『それよか、そろそろ幌馬車の馬が限界だぜぇ! 馬を替えるべきだ!!』

『むっ……』

 

 そして何より馬に関しての機微に敏い。生まれながらにして馬とともに生き、過ごす彼らにとって馬は貴重な財産であり家族である。

 

 先行して本隊との合流を目指す輸送隊はおおよそ100名前後。対してそれに追従させている馬の数は500頭はくだらない。

 人を乗せる馬、幌馬車を牽く馬、そして替えのために荷物を乗せずに走る馬。

 

『あいわかった! 牽引の馬を替えよう。もう一踏ん張りだっ!!』

 

 此処から先は焦土化された辺土地帯を越える。当然草一つ生えないまでに痛めつけられた土地で補給の術はなかった。

 王国中央地帯に入れば水や飼料を得られるだろうが、当然主戦派の諸侯の土地を潜り抜けて王都まで進軍せねばならない。

 

 兵は拙速を尊ぶ。間違いではなく最善だと考えられていた。

 だからだろう、それが相手にとって読みやすい手であることに。

 

「ぐあっ!?」

「ぎゃっ!」

「……はぁ?」

 

 突如として、右手から矢を射掛けられた。

 矢を射抜かれて崩れ落ちるオイラト人の若き戦士に悲鳴を上げて倒れ込む馬。

 

 よく見れば右方には木々に紛れながら矢を放つ敵国の兵士たち。

 そして前方には軽装に身を包み、鉄兜を被る男の姿があった。

 

「燃えよ、我が赫槍よ……!」

 

 丹田に力を篭め、視界には火花が散る。

 轟々と右手に持つ朱槍は炎を纏い、赤く、紅く焔を纏わせる。

 

 馬上から跳躍し、腰から腕にかけて力を篭め穿ち放つ槍の一撃。平屋の家程度ならば一撃で焼き崩す俺の渾身の一撃はまっすぐに街道で佇む騎士に向かう。

 

『やるな、華の国の侠勇』

 

 耳に通ったのは、懐かしき故国の言葉。

 男はそれを容易に受け止めた。

 焼ける槍の柄を気にせず、掴み取り無力化する。

 

 ──俺は理解した。

 

 この男だ。この男が、雑草の騎士だと。

 俺たちの軍を、俺たちの戦略を、俺たちの夢を崩そうとした大敵であると。

 

『生きてるかハドゥ』

『うぐぅぅぅ、痛ぇよぉ……』

 

 ハドゥは右肩を射抜かれ、左手でそれを抑えている。

 言語に支障なし、痙攣も無し。現状即効性の毒の類は無い。

 

『ハドゥ、砲台をすべて破壊しろ』

『なっ、正気か!?』

『俺たちはここで死ぬ』

 

 ハドゥは信じられないとばかりに目を見開き、呆然とする。

 腰に備えていた柳葉刀を引き抜き、俺は目の前に佇む騎士に相対する。

 

「俺の名ハ、童州の公孫達、字は子雲!!」

「傭兵上がりの騎士ドゥエイン・アーレンの子、雑草の騎士ヘクター・アーレンだ」

 

 俺は初めて天に感謝した。

 この男に殺されるのが俺で良かった。

 

「殺すッ! 殺すッ、殺すッ、殺すッ、殺すッ!!」

 

 虚勢を張り、震える心を鼓舞する。

 一目みてわかった。俺はこの男に勝てないことに。この男によってこの戦争は滅茶苦茶になったことに。

 

「お前さえっ!! お前さえ居なければっ!! お前さえ居なくなればっ! 俺達の明日は繋がるッ!!」

「悪ぃな、お前らが居ると泣くやつが居るんだ」

 

 お前さえ居なければ、勝ってたのは俺たちだった。

 お前さえ居なければ、郭将軍の夢は崩れなかった。

 お前さえ居なければ、百年後に笑えてたのは俺たちだった。

 

「──だから、死んでくれ」

「ほざけぇーーッ!!」

 

 朱槍を構え、真正面から突っ込んでくる雑草の騎士。

 それに対し俺は柳葉刀に纏わせた焔を真空の刃として放つ。

 何だって良かった、少しでもこいつに傷を負わせれば、少しでも時間を稼げば。砲台の鹵獲を防ぎ、ハドゥたちが破壊する時間を稼げる、と。

 しかし、嗚呼。だがしかし、だ。それでも俺の見込みは甘かったのだろう。

 

 熱い、胸が焼けるように熱い。気づけば、眼の前には此方を正眼にて見つめる雑草の騎士。

 俺の胸には朱槍が穿たれ、鮮血の華が咲く。

 

 ──夢を見た。

 鈍色に柳葉刀に写るひどい顔の男の姿を。

 それは俺だった。

 

 祖国を失った。家族を失った。戦友を失った。

 誇りも、財産も、夢も、明日も。何もなくなってしまった。

 

 我らの祖国は審陽の陥落から一年も経たず滅んでしまった。

 生きる意味を見出だせず。柳葉刀を己の首に添えた。

 

『死ぬつもりか? 公孫子雲』

 

 不意に俺に声をかける男が居た。

 頭巾をつけ、ボロボロになった灰色の平服を身に着け、長年の籠城で足を患った華国最後の英雄郭文沢将軍だった。

 

『華の国はまだ滅んでいないぞ』

 

 詭弁だ、と。俺は力なく言ったような気がする。

 俺達の国は滅んだじゃないか。どうしようもなく腐り果てて、どうしようもなく手遅れだった。

 

『この中原の土地は(あら)ゆるものを飲み込む。人も民族も文化も、だ』

 

 郭将軍は瓦礫の上に座り、理性のある瞳で俺を見ていた。

 

『オイラト人は中華化する。この大地を征するということは中華となるということだ。我々の文明と文化は滅びない』

 

 いずれオイラト人はこの肥沃な土地を統治するようになる。そうすれば彼らは定住の道を選択するだろう、と。

 

『お前の力が必要だ。童州の公孫子雲。華人の有用さと有能さを示し、彼らに華化を選択させる。華の国は滅んだが、その後継国家を我々で創り上げるのだ』

 

 俺は反発した。それでは死んだものはどうなるのだ。俺たちが抗った意味はどうなるのだと、死んでいった者たちを裏切る行為だと。

 郭将軍はそれもそうだろう、と答えた。

 

『今を生きるものを裏切る行為だろう。だが、百年後に我らの同胞が今と同じ立場に立ったまま、征服された奴隷として生きるのを認めるのか?』

 

 言葉が出なかった。

 

『己は構わない。今を生きるものは我らを裏切り者と蔑むだろう。恥知らずと嗤うだろう。構わない、百年後、中華にオイラト人と同等の地位を持ち、或いは政治の中枢に我ら華人を送り込むためなら、己は千の罵倒を受けて死んでも構わないのだ』

 

 百年後に笑う同胞がいれば、恥知らずと死んでも構わない。

 

『西へ征こう。極西の果てに華人の栄光があるのだ』

 

 血を流し、轡を並べる、共に戦う。そしてオイラト人に認めさせるのだ。華人の優秀さを、華人は我々の民であると。

 

「──だから、大丈夫です。将軍……」

 

 貴方が生きているのなら、きっと叶うはずなのです。

 泥に塗れ、身体の末端が冷えるように冷たくて、意識が朦朧としてきた。

 

「──我、々の…明日は、きっと……」

 

 きっと、来るのだから。

 百年後に笑うのは我々だと。




・焔を使う剣使いが出てくる
・なんか漏瑚みたいな事を言うキャラが出る。
・ゴリラが強キャラ
たぶんこの作品は呪術廻戦のパクリだと思います。
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