ガンダムビルド艦隊これくしょんビビッドアーミー 〜ビスマルクとプリンツ・オイゲンの奇妙な…〜 作:星龜
時間は、やや遡る―。
深海の鎮守府の住人の1人である
悠久の地八戦神
の1人である。
黒野一家がビビッ島に旅行に行った時に、深海と一悶着を起こして以降、紆余曲折を経て、深海の鎮守府の住人の1人になったのである。
そして…
この日の夜…
撫子は自室で、深海と
激しく愛しあっていた…
…が…
「ちょっと待て、深海…。」
と、快楽の中、深海を制止する撫子。
「どうした?
もうギブアップか?」
と、撫子をからかう深海。
「そうではない…。
異常事態だ…。」
と言う撫子。
「異常事態?」
と、顔をしかめる深海。
「うむ…。」
と、起き上がる撫子。
「異常事態とは何だ?」
と訊く深海。
「この鎮守府のどこかと
『悠久の地』が繋がった
のじゃ。」
と言って、ベッドから降りて、着物を着る撫子。
「何だと?」
と、顔をしかめながらも、深海もベッドから降りて服を着始める。
そして、深海と撫子は、部屋を出る―。
「どういうことか、わかりやすく説明しろ。」
と、暗い鎮守府の廊下を歩く深海が、前を歩く撫子に説明を求める。
「八戦神の誰かが『ヒマつぶし』をするために『悠久の地』への入口を地上に繋ぐ時
たまに外国にも繋がってしまう時がある
のじゃ。」
と言う撫子。
「それが、ここだと言うのか?」
と訊く深海。
「うむ。」
と答える撫子。
そして…
「ここじゃ。」
と、ビスマルクの部屋の前で止まる撫子。
「おい、ビスマルク!!
プリンツ!!」
と、ビスマルクの部屋のドアを叩く深海。
しかし、ドアが開く気配はない…。
「ムダじゃ。
ビスマルクの部屋は『悠久の地』と繋がったことで、この世界から切り離されておる。」
と言う撫子。
「どうすれば、その『悠久の地』とやらに行ける!?」
と訊く深海。
「心配せんでもいい☆
じきに戻ってくる☆」
と楽観的に言う撫子の胸ぐらをつかむ深海。
「どうすれば『悠久の地』に行けると訊いているんだッ!!
言えッ!!」
と、瞳を血のような紅に変化させる深海。
「無理じゃ。
さっきも言ったように、ここと『悠久の地』が繋がったのは偶然じゃ。
ビビッ島からならともかく、日本から『悠久の地』に行くことはできぬ。」
と言う撫子。
「貴様も、悠久の地の神だろうッ!?
なら、『悠久の地』に行くための抜け穴の1つや2つ、知っているだろうッ!!」
と怒鳴る深海。
「何なんじゃ?
その謎理論は…?」
と苦笑する撫子。
「言えッ!!」
と、深海の額から角がはえた…。
本気で怒っている証拠だ。
「わかった…。
わかったから離してくれ…。」
と撫子に言われ、胸ぐらを離す深海。
「食堂に行け。
みんなを起こしてくる。」
と言う深海。
「おいおい…★
何もそこまで」
と言う撫子に
「俺の家族が危険な目にあっているんだぞッ!!」
と深海は言い放って、家族を起こしに行った…。
◇
深夜の2時過ぎ―。
食堂に、深海の家族全員が集められた。
「どうしたの、深海?」
と、眠そうな目をこすりながら訊く時雨。
「みんな…
こんな時間に起こしたりしてすまない。
だが、緊急事態なんだ。」
と、就寝中の家族全員を夜中に起こしたことを謝りつつも、今、起きていることを説明する深海。
「ビスマルクとプリンツ・オイゲンが『悠久の地』とやらに連れ去られた。」
という深海の発言を聞いた夜空が
「また『悠久の地』か…!!」
と憤った。
「そこで俺は、ビスマルクとプリンツ・オイゲンの救出に行くことにした。」
と言う深海。
「簡単に言っておるが…
深海…
それがどれだけ危険なことなのか、わかっておるのか?」
と言う撫子。
「覚悟の上だ!!」
と言う深海に
「そうではない!!
深海の命に関わると言っているのじゃ!!」
と叫ぶ撫子。
「どういうことだ?」
と訊く深海に
「まず、深海の決意を挫かせてもらうが…
深海自身が『悠久の地』に行くわけではない。」
と言う撫子。
「何だと…?」
と、顔をしかめる深海。
「言ったであろう。
如何に
そこで…。」
と、撫子は
紙人形を入れた洗面器
を出した。
「何だ、それは?」
と訊く深海。
「妾の禁断の秘術の1つ
式神生成
の儀式に使うモノじゃ。」
と言う撫子。
「式神…?」
と首をかしげる深海。
「今の言葉でいうところの
アバター
じゃ☆」
と言う撫子。
「ふざけるなッ!!
そんなモノで、ビスマルクとプリンツを救えるかッ!!」
と怒鳴る深海。
「ふざけてなどおらぬ。
これ以外の方法で、今すぐ深海を『悠久の地』に行かせることはできぬ。」
と言う撫子。
「お兄ちゃん…。
気持ちはわかるけど、10分くらい待てば、帰ってくるよ。」
と、過去、2度も『悠久の地』に行ったことのある夜空が深海をなだめる。
「そういう問題ではないッ!!
俺は、俺の家族に手を出す者を許せんのだッ!!」
と言う深海…。
この、黒野 深海という男…
異常なまでに家族想いな男で、この男の家族に手出ししようものなら、相手が神仏であっても許さない。
そして、家族に危害を加えた者には、命をもって償わせる…。
ようするに、黒野 深海は
サイコパス
なのである…。
「だったら、撫子の言う通りにしてよ。
たとえ、アバターだとしても、それはお兄ちゃん自身でもあるんだから…。」
と、深海を説得する夜空。
「わかった…。」
と、一応、納得する深海。
「なら、とっとと始めろ…!!」
と撫子に言う深海に
「簡単な話ではないと言ったであろう。」
と言う撫子。
「自分から話を振っておいて、それはないだろう!!」
と怒鳴る夜空。
「『式神生成』に必要なモノは
深海の血
じゃ。
それも、深海自身と同等の力を持たせるのなら
致死量に近い量の血が必要
じゃ。
出血多量による死は、人間と深海棲艦のハーフである深海でも、例外ではないのじゃぞ?」
と言う撫子。
「舐めるな!!
血を抜いたくらいで、この俺がくたばるか!!」
と言う深海。
「やせ我慢しおって…★」
と撫子は立ち上がり、薙刀を出す。
「始める前に
末期の酒
を飲め☆」
と、腰に下げている
「ふざけるな!!
酒など飲んでいる場合か!!」
と、酒を断る深海。
「いいから飲め。」
と、撫子がしつこく勧めてくるので、深海は仕方なく、飲むことにする。
「これでいいのか?」
と、瓢箪を返す深海。
「うむ☆」
と瓢箪を受け取る撫子。
そして
「左腕を出せ。」
と言う。
深海が突き出した左腕をつかむと、撫子も瓢箪の酒を口に含み、深海の左腕の手首に酒を吹きかけた。
今から、撫子が何をするのか悟った時雨は、娘の秋雨、梅雨葉、雨葉達を食堂から退室させた。
夜空と深空も、今から起きる惨劇を見まいと、目を固く閉じていた。
「では、いくぞ…。」
と、静かに言う撫子。
「いつでも…!!」
と、力強く言う深海。
撫子は、薙刀を振り上げると…
深海の左腕の手首めがけて、薙刀を振り下ろした―!!
「!?」
不思議と、痛みが無かった…。
斬り裂かれた深海の左腕の手首から流れ出る血が、洗面器に落ちていく。
洗面器の中に置かれていた紙人形は、あっという間に真っ赤になった。
「深海…!!」
「お兄ちゃん…!!」
「にぃにっ!!」
と叫ぶ、時雨、夜空、深空に向かって
「これしきのことで、うろたえるなッ!!」
と一喝する深海。
「カッコをつけるな☆
そろそろ
意識を失う頃
じゃろうて☆」
と言う撫子。
「この黒野 深海をみくびるな…ッ!!」
と撫子を睨みつける深海だったが…
(バカな…!?
これしきのことで…!?)
と、撫子の言う通り、深海は意識が朦朧としてきた。
「俺は…
黒野 深海…ッ!!
こんなことで…
俺は…ッ!!」
と言い残し…
深海は意識を失った…。