魔法少女キラキラファンタジー   作:MOPX

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一致団結!! 実れ魔法少女狩人の策!!

 

踏みしめる足の感触はテンポよく、それでいて確かな手応えがあった。

いまだ先を行く鳥の先導は、「ワナ」があるはずの方向と同じだ。

 

「ナユタちゃん!! あれ!!」

 

ヒカリの声に反応して顔を上げれば、木々の間を越えて緑の煙が上がっているのが見えた。

木々が生い茂って見えないはずだが、視覚とは別の感覚が私達に伝えてくれたのだ。

 

あれは狼煙(のろし)だ。

そしてただの狼煙じゃない。

 

強い魔法力を持っていた。

モンスターがいれば、思わずそっちに誘われるであろう。

 

私達を助けたのは、あの光に違いなかった。

恐らくココは瞬時に私達が怪物に敵わないと判断し、あのワナを作動させに走った。

 

ワナが作動すれば、その怪物と相対するのは自分一人なのに。

 

あらためて、逃げ出した可能性を考えた自分を恥ずかしく思った。

 

でも、今はそんなことを考えている場合じゃない。

 

「ここまででいいよ……ありがとう……」

 

先導していた鳥に追いつき、抱え上げて反対の方へ下ろす。

ココがそうまでして守ろうとしているのは、この森自身だ。

だったら、危険にさらすわけにはいかない。

 

フクロウだかオウムだかわからない鳥は、走り出す前に立ち止まってこちらを見た。

何て言いたいのか、私にもわかる気がした。

 

「ココちゃんのこと頼まれちゃったね」

 

「うん……!!」

 

狼煙の方へと進む。

恐怖がないと言えばウソになる。

 

信じる者のために戦うなんて、私はそれで自分を納得させれるほど殊勝(しゅしょう)な人間じゃないのだ。

 

それでも、自分で目にしたものは信じたいと思った。

森を守りたいと思う少女の想いを。

 

 

茂みをかき分ける。

漆黒の巨体が見える。

 

その奥に緑の少女はいた。

傷だらけの姿で、一瞬嬉しそうな顔をした。

 

「オオ!! オヌシ達!! ブジでよかった!!」余裕があればそんな声が飛んできたのだろう。

でも、それどころじゃなかった。

 

声を上げる間もなく、ヘビ型の尻尾が飛んできた。

 

 

「てえええぇい!!」

 

ヒカリが標準サイズの両手大剣で尻尾(へび)を斬り落とす。

 

「へへーん!! 同じ手はくわないよ!!」

 

溜めのない攻撃だったが、それでも怪物の部位を破壊することはできるらしい。

斬り落とされた尻尾は地面でばたばたと動き回り――。

 

「ヒカリちゃん!! 危ない!!」

 

「え……ひゃあ!!」

 

斬り落とされた部分が分離してヒカリに襲い掛かる。

間一髪、私の声に反応したヒカリは大剣で攻撃を防いだ。

 

「ナユタちゃん!! 私のことはいいからココちゃんを……!!」

 

「うん……!!」

 

 

私がこの場ですべきことは決まっている。

 

「ナヌ……!! ドコへ……!?」

 

私はキマイラの方――へは向かわず、右手側に駆け出した。

ココの方を目配せする。

 

これで伝わったと信じたい。

 

私がここに来て初めて、引っ掛かったワナ。

長いロープは木の枝に巻きつけられたままだった。

 

手刀でロープをちぎり、力を入れる。

ぼんやりと、紫色の光を放つ。

 

やっぱりだ。

 

怪物のために用意されたワナが、私の足に引っ掛かったのがそもそもおかしかったのだ。

このロープには魔法力が込めれて、近づいたものに合わせて輪の大きさを変える仕組みだったんだ。

 

だったらもう一度、私の魔法力を込め直せば――。

 

「魔法のロープ!!」

 

縄が空中で解けたかと思うと、一直線にキマイラへと伸びた。

こちらに気づいた敵は鋭く向きを変え爪を振る。

 

縄はその下をくぐった。

狙うは足だ。

 

ロープは怪物の後ろ脚に巻き付いた。

 

「助かったゾ!! ナユタ!!」

 

聞こえた声に軽く首を振って応える。

 

「まだまだ……!!」

 

 

巻き付いたロープがさらに伸びる。

相手の両足、前足。

出来る限りの時間稼ぎをする。

 

……今の私にはこれが精いっぱいだ。

 

でも、絶対に離さない。

たとえ、私を狙ってこようとも――。

 

腕に痛みが走った。

 

「ナユタちゃん!!」

 

今度はヒカリの声が聞こえた。

私の左腕にはヘビが嚙みついていた。

 

ヒカリと戦っていたヘビは戦闘を放棄してこちらへ飛んできたのだ。

 

なるほど、この状況で狙うなら私だ。

合理的すぎて涙が出てくる。

 

「離さない……この手は絶対に離さない……!!」

 

ココの姿は見えなかった。

それでも、今度は、もう一度信じるって決めた。

 

「ナユタちゃん!! ちょっとアツッってなるかもだけど我慢してね!!」

 

「え……?」

 

追いついたヒカリが両手大剣を横に振りかぶる。

ああ、そっか。

 

魔法少女の力は私には影響しない。

それなら私ごと斬ればいい。

 

「魔法の回転斬りーーーー!!」

 

コマのようにくるくると黄色い渦が突っ込んでくる。

 

アツッ、アツツ。

心地よい温もりが私の体を駆け巡る。

 

それはそれとして、ヘビは粉微塵に消滅していった。

 

しかし、良いことばかりではない。

 

いくら張り切ってみたところで、私の小さな手には物理的限界があったのだ。

尻もちを付くと同時に手を離してしまった。

 

キマイラの二つの頭は縮んでは生え、体中を縦横無尽に移動していた。

ロープを片っ端から食いちぎっているらしい。

やはり、モンスターは異質としか言いようのない怪物だ。

 

「ナユタちゃん……!!」

 

ヒカリももう限界が近いのか、両手大剣がすっかり小さくなっていた。

一人であのヘビの相手をしていたのだ。

これでは必殺技を使うのも無理だろう。

 

「ごめんヒカリちゃん……私が不甲斐なかったから……」

 

「ううん、そんなことない。だって……」

 

奥の木陰から緑の影。

私も気づいた。

きっとココが助けに――。

 

「何……あれ……?」

 

出てきたのは緑色のでかい弓だった。

いや、弓というよりは巨大なボウガン。

申し訳程度についた車輪でちょっとずつこちらに進んでくる。

 

あれがキマイラを倒すワナ――。

 

「遅れてスマナカッタ……。コイツを倒すにはギリギリまで近づく必要がアッタ……」

 

ボウガンの影からひょこっと顔を出したココはそう言っているように思えた。

キマイラが即座に反転してボウガンへと突っ込む。

無慈悲なまでに直線的。

緑の輝く武器(ボウガン)と、緑の少女を一蹴(いっしゅう)のもとに破壊するつもりなのだ。

 

 

「ナユタ……ヒカリ……オマエタチに会えてヨカッタ……。ワタシだけだったらソモソモこいつを引きつけることすらできなかった……」

 

キマイラが、跳躍した。

 

「ワタシの魔法力の特性は『設置』すること。この弓自体が三日三晩、私の魔法力を溜めたワナだ……さて」

 

 

「悪しきモノよ……此処(ここ)から立ち去れ」

 

 

キマイラが、勢いのまま二つの頭を――。

 

 

 

 

 

「魔法の弩号弓(バリスタ)!!」

 

 

 

 

 

キマイラがの二つの頭が消し飛んだ。

 

放たれた緑色の巨大な閃光はもはやレーザービーム。

あの巨大な怪物を飲み込み、塵芥(ちりあくた)も残さない。

 

全てが終わった後、森には静けさが戻った。

異形の怪物が消えた元の姿。

 

巨大なボウガンが音を立てて崩れる。

(かたわら)にいた緑の少女もその場にへたり込んだ。

 

私とヒカリは顔を見合わせて微笑む。

お互いが無事を確認するように。

 

そして、今回の戦いの殊勲(しゅくん)賞の少女へと駆け寄るのだ。

当の少女はだらしのない顔をしていたけど。

 

「ウオー。さすがに疲れたゾ……」

 

「ココちゃん!! お疲れさま!! 最後の必殺技、すごいかっこよかった!! ナユタちゃんもすごい頑張ったよね!!」

 

「私は……時間稼ぎをしただけで……。……ココ」

 

ココが不思議そうな顔をする。

いまさら気にするような子じゃない。

 

それでも、謝っておきたかった。

 

「私……最初ココの姿が見えなくなった時、逃げ出したと思って……。ココがこの森を大事にしてるって知ったはずなのに……」

 

「ハハハ。気にするナ。最後には信じてくれた……そうなのだろう? 私もナユタとヒカリを信じた。お互いサマだな!!」

 

信じれないと思っていたのは、私の弱い心だ。

心の奥底では私は信じたいと思った。

 

「ほら、ナユタちゃん!! 考え事してないで、変身ハグだよ変身ハグ!! 変身ハグチャンス!!」

 

「え」

 

「オホ。ナユタがいいなら……ワタシもいいゾ……?」

 

「何でちょっと照れて上目遣いなの……!! やらないですよ、変身ハグ!!」

 

「え~~~~!?」

 

はい、もう一回やり直し。

信じれないのは私の弱い心。

でもなんか信じたい的なアレで……。

 

頭が重たくなった。

自分の語彙(ごい)が酷くて頭痛がしたのか?

いや、この感覚には覚えがある。

 

「クルッポ~~~~!!」

 

「わわ……また頭にオウムが……」

 

「フクロウだってばナユタちゃん!!」

 

「ウム!! すっかりナユタの頭を気に入ったのだな!! ワタシも嬉しいゾ」

 

何だか楽しく終わりみたいな雰囲気を出してるけど、私の頭はそれどころじゃない。

爪、けっこう痛いんだけど。

 

でもまあ、この鳥のおかげでココを助けに来れたのも事実だし。

お礼くらいは言っておくべきかな……。

 

「オウムさん……ありが」「クルッポー!! クルッポー!!」「ああああ!! 爪をたてないで!! 髪をつっつかないで!!」

 

静かだった森に、笑い声が響く。

ちょっとだけ、こういうのも悪くないと思った。

 

 

 

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