ウワサには聞いていたけど水上都市はキラキラのピカピカ!!
出会った魔法少女のナギサちゃんの問題も一件落着!!
そうして私達が港から船に乗り込むときもナギサちゃんが見送りしてくれた。
ナギサちゃんは、どうやらナユタちゃんになついたみたい。
何度も何度も「ありがとうございます!!」と頭をぶんぶん振る姿に、まんざらでもなさそうなナユタちゃん。
そんな様子を見て、私の気持ちも何だか温かくなってしまう。
ずっと見てたからわかる。
ナユタちゃんは、誰にだって優しいのだから!!
……なんて言っても本人には全力で否定されちゃいそうだけど。
水上都市から出て、船は次の港町へ。
変わった建物があったから私達は入ることにした。
そこは――。
「いけーーーー!! みんな頑張れーーーー!! ほら、ナユタちゃんも!!」
「い、いけ……。……。全員応援するのって誰も応援してないのと同じでは……?」
「いいからいいから!! 腕振って!! ああ危ない!! ひっくり返せ!! でも粘って!!」
「ぜ、全員一度に応援してる……」
私達がいる場所は席が円形にずらっと並ぶ場所。
中央の砂場では、何匹かのカニさんが互いのハサミをぶつけあっている。
競カニ場。
それがこの場所の名前。
港町で一番人気のある場所で、みんなごヒイキのカニさんを応援しにくるんだって!!
ルールはいたってシンプルで、砂浜のに放たれた数匹のカニがお互いをひっくり返して最後まで残っていた子の勝ち。
一試合ごとに参加できるカニさんの大きさとかが変わっていてとっても楽しめる!!
ちなみに入場ドングリを一回払えば、一日中席で応援ができるよ!!
「いやー!! 私も初めてくる場所だったけど……お客さん達も盛り上がってとっても楽しい場所だねナユタちゃん!!」
「……」
「ナユタちゃん……? おーいナユタちゃん? それ試合の表だよね?」
「……あ、ごめん。集中してると気づかなくて……」
ナユタちゃんが手にしていた表には各試合に参加するカニさんの名前。
過去の試合の結果も書いてあるみたい。
「前の試合の記録から次に勝ちそうなカニが予想できないかな……って」
「おお!! そんな楽しみ方もあるんだね!! カニさん達が頑張っているのを見るだけで楽しいから思いもしなかったよ!!」
表にはペンでいろんな書き込み。
この試合で勝ちそうなカニさんには二重丸で印がつけてあった。
花丸とかにしてもかわいいと思うなあ。
歓声が上がった。
砂浜では大きめのカニがやや小さいカニをハサミでひっくり返していた。
ナユタちゃんが予想していた子の勝ち!!
「わ!! すごいやナユタちゃん!! どうやってわかったの!?」
「え……いや……これまでの戦績とか砂との相性とか試合展開を予想したりとか……」
これまでの結果からそんなことまでわかるなんて。
私達魔法少女の力でも未来がどうなるかなんてわからないから、純粋にすごいと思った。
まるで、魔法みたいだ。
「私もやってみる!! どうしたらいいのかな!!」
「と、とりあえず前の試合の結果とかを確認していくと……いいと思う……」
表をもって、ペンを片手に。
気分はさながら仕事のできる秘書さん!!
次の試合のカニさんの情報を確認していく――。
あれ……?
「どうしたのヒカリちゃん……?」
「このカニさん、今まで一回も勝ってないみたい……」
次の試合に出てくるカニさんの中で一匹。
なぜだか私はそのことに胸がきゅっと引き締められる気分になるのだ。
「勝負ごとだからね……。数匹いて勝者は一匹だけだし、勝てないカニの方がよっぽど多いのかも……」
ナユタちゃんの言っていることはもっともだ。
たとえばカニさんが10匹いて、勝てるのが1匹だけなら、9匹のカニさんは負けてしまうことになる。
だから、予想するなら勝ったことのあるカニさんを選ぶ方がいいんだろうけど――。
「私、次はこの子を応援しようかな……」
「……」
「あ、ごめんねナユタちゃん!! 予想の仕方とか教えてもらおうかと思ってたのに……!!」
「ううん、私も次はその子を応援しようかと思ってたから」
「ナユタちゃん……!!」
やっぱり、ナユタちゃんは優しい。
試合のアナウンスが聞こえる。
砂場にカニさんがずらっと並ぶ。
私達の応援するカニさんはちょっと小柄で頼りない。
それでも、これまでずっと頑張ってきたんだろうな、と思えた。
きっとこのカニさんだけじゃない。
他のカニさんたちも私達の知らないドラマを持っていて、応援してくれる人がいて一生懸命頑張っているんだ。
だから恨みっこなし。
私の心が私のものであるように、他の人の心は他の人のものであるから。
それでも、いっしょの想いの人がいるのは嬉しいなと思った。
「頑張れー!!」「頑張って……!!」
大勢の歓声の中で、私とナユタちゃんの声も確かにそこにあった。