「カタコンベに着きましたわね。ナユタさん、ヒカリさん、足元には気を付けてくださいまし」
「……」
「どうしましたか? ナユタさん」
「セイカさんの目つき、もとに戻ってるな……って」
「はて……? 何のことでしょうか?」
とぼけるセイカはおいといて、私達はコタコンベの入り口である地下階段をくだっていた。
街の魔法少女は入り口にいたモンスターにやられたらしいが、そんな気配はなくあっさりと入ることができた。
ランプを手にセイカが先頭を行き、私とヒカリは周囲を警戒しながら後に続く。
ヒカリは心なしかプルプルと震えていた。
「わ、わわ……。薄暗くてお化けでも出てきそう……。な、なな、ナユタちゃん……怖かったら私にいつでも……」ぴちょん「ひえええ!?」
「……。落ち着いてヒカリちゃん。あれはしずくの垂れる音だよ……」
そう、これが魔法少女の弱点。
見えない力を信じることのできるがあまり、見えないものに対してやたら敏感になってしまう。
どうやらヒカリはお化けが苦手らしかった。
「セイカさんは……聞くまでもないですかね」
「ええ。ここにいるのは悪霊型をはじめ、大分類としてアンデット型のモンスター。私達、魔法少女
私は頷いた。
あれとはここを出る時に成人男性からもらったもののことだ。
何の変哲もない
「よろしいです。もう少し進んでから使いましょうか」
「うんうん!! 私はちょっとその……手が震えちゃってるから、怖いとかじゃないだけど」ぴちょん「ひょああああぁぁぁぁ!?」
「ヒカリちゃん……動けない……」
ヒカリが抱き付いて私は身動きが取れなくなってしまった。
その様子を見て、なぜだかセイカは思案顔を見せる。
「ヒカリさんが攻め……? いいえ、そんなはずは……」
「セイカさん……?」
「何でもありません、先を急ぎましょう」
攻め?
特性で言えばヒカリがアタッカーなのだが。
ヒカリの手を握ってあげながら、私達は階段を降りきり、奥の部屋へと進むのだった。
●
部屋一つ分のスペースに小机に椅子、そしていくつかの本棚。
どうやらここはカタコンベの管理人が
もちろん、今は何の役割もなく、私達以外は誰もいないわけだが。
「人がいない部屋って……何だかちょっと不気味かも……」
ヒカリの言いたいことはわかる。
人がいるはずの場所でありながら、人がいた形跡が一切ない。
何となく、異質さを感じる。
セイカは身を
「ホコリに靴の跡があります。サイズ、数からみても二人はこのまま進んでいったのは間違いないでしょう」
あの小さな姉妹はやっぱりここに来たということだ。
モンスターもいるのなら早く探さないといけないけれど……。
私の体には、いまだヒカリが巻き付くように接触していた。
「……ヒカリちゃん。やっぱり怖い?」
「い、いやだなあナユタちゃん!! これでも私はナユタちゃんの先輩魔法少女だよ!! 魔法少女として、これくらいの状況」……ス「ぎょええええぇぇぇ!! 何か!! 何か聞こえたよ!!」
「落ち着いてヒカリちゃん……。たぶん、風の音とか声みたいに聞こえただけ」……ケス「え……」
……。
何か聞こえた気がするが気のせいだろう。
思い込みでそう感じる現象があったはずだ。
なので、これは私とヒカリが怖がったことによる錯覚で『マホウショウジョ……ケス!!』
……!!
「伏せてください!! 二人とも!!」
セイカの声に反応して身を屈める。
カタカタと机が動き出す。
地鳴りのように床が
入り口と出口が黒いベールで覆われる。
閉じ込められた。
次の瞬間には黒いガスのようなものが部屋を飛び回っていた。
ヒカリの絶叫が聞こえる。
唯一、セイカだけが荷物を取り出し対抗しようとしたが――。
「ヒカリちゃん!!」
「な、ナユタちゃん……!!」
衝撃で私達は離れ離れに。
そのまま自由落下で闇へと落ちていく。
マホウショウジョ、テキ。
マホウショウジョ、ジャマモノ。
マホウショウジョ、コロス。
「気を確かに!! ナユタさん!!」
我に帰れば赤い髪の少女――セイカも私のすぐ横で自由落下していた。
「足を垂直に下げて!! 両足から着地をするのです!!」
「ええええ!? 絶対に骨折しますよ、それ!!」
頭から落ちるよりかはマシかもしれないけど!!
そもそもどうやって体勢を変えるんだ!!
そんな想いを抱えつつバタバタと向きを変える。
こんなことでどうにかなるとは思えないけど――。
スタッ。
「ほんとだ着地できた」
「魔法少女特有の着地術です。信じる者は救われるということです」
どうやら本能的に魔法力が両足に集まったことで無事だったらしい。
便利だな、魔法力。
しかし喜んでなどいられなかった。
辿り着いたのはまるで
ヒカリははぐれてしまったのか、周囲にはいない。
そして、黒い霧のような物体が私達の周りを飛び交っているのだ!!
「わああああぁぁぁぁ!? こいつらが悪霊型のモンスター!? 動きが早すぎて気持ち悪い!!」
「あらら。周りを囲まれてしまいましたね」
それだけではない。
奥の方からぞろぞろと漆黒の首無し亡者どもがこちらに向かって来ているのだ!!
ヒカリがいない以上、私とセイカで何とかするしかない。
正直、ヒカリなしでどこまでやれるかなんてわからない。
いくら悪霊型モンスターの専門とはいえ、セイカもこの数では苦戦は免れないはずだ。
それでも、やる。
こんな苦難、さっさと切り抜けてやる。
どこかで子供たちが、そしてヒカリが危険に
「セイカさん!! ここは協力して」「魔法の聖水ーーーー!!」ポイポイパリンガシャン!!
!?
私が言い終わる前に、大量の瓶が周囲に巻き散らされる。
割れたガラスから霧が噴出し、周囲を赤く染め上げていった。
悪霊型モンスターが悲鳴を上げる。
聖水による霧がいたるところに巻き散らされているのだ。
高速で動いているのはむしろすごい勢いで死地へ突っ込むようなもの。
悪霊型はそのまま粉々に散り、霧散していった。
しかしまだだ。
奥からやってきた首無し軍団は聖水による霧をものともしない!!
「今度こそ!! 私に何ができるかはわからないけど……でも決して諦めたり」
「魔法のフレイルーーーー!!」ブオンブオンブオンブオン!!
……。
敵陣に突っ込んだセイカはそのまま首無し軍団をちぎっては投げ、ちぎっては投げ。
一騎当千、獅子奮迅、無双乱舞。
そんな感じでいろんな武器を活用してモンスター達を殴殺していった。
全てが終わった時には、黒い死骸の中心にたたずむ赤いシスターの後ろ姿。
……彼女がどんな表情をしていたかは定かではない
しかしこちらを向いた時には、いつもの糸目ニコニコ笑顔でこう言うのだった。
「クソモンスターどもはひとまず倒しました。しかし子供たちとヒカリさんを探さなければいけません。そして、私達にはその手段があるのです!!」
どうやら魔法少女悪霊祓いは、めちゃくちゃ強いらしかった。