「手段はあるって……ヒカリちゃんや子供たちがどこにいるのか見当もつきませんよ? いったいどうやって……」
「あるのです。迷える子羊である私達を導く
それでピンときた。
ここに落ちる前、階段をくだっていた時にセイカが確認していたことだ。
もともと街の魔法少女が使っていたものだ。
そして、その魔法少女は街にいながら子供たちがカタコンベに迷い込んだのに気づくことができた。
「この蝋燭がセンサーみたいに使えるってこと……?」
「ビンゴです。ナユタさん」
うっすらと私の頭にある記憶で知っている。
エネルギーを放射すればその反射により物質の位置を知ることができる、と。
「蝋燭は私達の行く先を照らす灯り。魔法力を拡散し周囲の魔法少女やクソモンスターの位置、そして集中すれば一定の範囲で起こっていることをイメージとして頭で再生することができます」
「そ、そんなことまでできるんですか……?」
「街の魔法少女さんであればこうした
私はこくんと頷いた。
使うのは初めてであるし、この墓地に入る前に私やヒカリが外から建物全体を把握するのは難しかっただろう。
ある程度奥まで進んでから使い、子供たちの位置を知ろうという段取りだったのだ。
私がこれを持たされたのはヒカリが
そもそもこんな場所に一人でいて大丈夫なんだろうか。
無事でいて、ヒカリ……。
「魔法の蝋燭……!!」
この部屋の天井を越えて、上の階の十字路へ。
なるほど離れた場所のイメージがダイレクトに頭に流れ込んでくる。
近くですすり泣く声が聞こえた。
どこかの一室で見覚えのある小さな子供が二人。
大きい方の子が、小さな子をあやしていた。
「グス……お姉ちゃんごめん……私がこんなところに来たいって言ったから……」
「大丈夫!! 私が守ってあげるから!! 例のものを見つけれなかったのは残念だけど、それは次に見つければいいし」
「でも……出口だってわからないし……!! さっき見かけたモンスターがここに気づいたら……!!」
「うーん、モンスターってどうにかして倒せないかな……? こう、ニンニクをかかげたらピカ―!! 的な」
「お姉ちゃん、たぶん間違ってる、それ」
妹と思われる子がやっと笑みを見せる。
お姉さんの方は、もしかしたらわざとふざけたことを言ったのかもしれない。
とりあえず無事なようで安心するも、二人の場所を確認しないと。
そう思って部屋の外を見ようとした。
黒い影がそこにいた。
大きな子の方が一歩進んで両手を広げる。
ダメだ。
魔法少女じゃなきゃモンスターを倒すことはできない。
首無しモンスターが少女へと勢いよくを歩を進め――。
膝から崩れ落ちて倒れた。
不思議がる少女たち。
しかし私にはなぜだかわかった。
モンスターの背中には黄の傷跡。
あの一瞬で縦と横、二回斬りつけていた。
「魔法の十字斬りーーーー!! さらにトドメーーーー!!」
ヒカリがモンスターにトドメを刺すべく剣をモンスターに突き立てる。
正直オーバーキルでは? などと疑問を挟む間もなく怪物はバラバラに。
少女たちが瞳を輝かせる。
「魔法少女だ……!! 魔法少女が来てくれた!!」
妹が驚きの声をあげる。
「やったー!! 魔法少女サイコー!! サインください!!」
お姉さんの方はもうちょっと危機感を持った方がいいと思う。
「私は魔法少女のヒカリ!! セイカさんと、あとナユタちゃんって子と助けにきたよ!! 二人とははぐれちゃったけど……私がいれば大丈夫!!」
少女達が「おおー」と声をあげ、手を打ち鳴らす。
ヒカリ、怖がっていたように思えたけど特に問題なかったのかな……?
その時だった。
部屋の机がカタカタと震えだした。
棚が踊るように跳ねる。
黒いモノが大量に部屋へ飛んできた。
コウモリだ。
縦横無尽に飛び回るそれが、黄の剣をかいくぐりヒカリの体を傷つけていく。
「……ヒカリ!!」
私は思わず声を出していた。
届かないはずだとわかっていたのに。
コウモリが一箇所に集まっていく。
見たこともない人型の敵へと変わっていく。
人の言葉を話さぬはずの異形の怪物から、声が聞こえた気がした。
マホウショウジョ……ケス。
子供たちの表情に恐怖の色が浮かぶ。
ヒカリがその身で守るように二人の前に立つ。
剣を握るその手は、震えていた。
●
「……た、たた大変!! ヒカリがコウモリみたいなモンスターに……!!」
「……!! 落ち着いてくださいナユタさん。みなさんはどこにいるのですか?」
「この上の……広めの部屋の……ああもう!! うまく説明できない!! こういう時に限って……!!」
「いえ、それだけわかれば十分です。この道をまっすぐ行き階段を上りましょう。駆け足で」
私とセイカは走り出した。
通路の脇から飛び出してきた首無しモンスターをフレイルで瞬殺しながら、セイカが聞いた。
「本当にコウモリだったのですね……!! ナユタさんの見たクソモンスターは!!」
「はい……!! 何か群れみたいなやつでしたけど……!!」
「そいつこそがこの地域のクソボス……クソクソモンスターの、バンパイアです!!」
バンパイア。
私の頭にもその名前はぼんやりと残っている。
あれ……?
「バンパイアって本当にいるんですか……!?」
「ナユタさん……クソモンスターがどのような形をしてようが
「確かにそうなんですが……」
黒い
思えばこれまでのモンスターもそうだった。
あいつらの姿は、記憶にあるはずのもので、実際には存在しないはずのものだ。
何の法則性も持たないはずの化け物どもが、どうしてそんな姿を取っている?
――誰か作った人間がいる。そうでしょう?
「ナユタさん……?」
「何でもないです……!! 急ぎましょう!!」
階段を上る。
通路を跳ね回るカボチャ型モンスターは私が気づいた瞬間セイカの突き立てたナイフで破裂していた。
強いぞ、魔法少女
そうだ、今は迷ってる時じゃない。
モンスターの正体なんて考えてもしょうがないことだ。
待ってて、ヒカリ。
それだけを考えて私は奥へと進んだ。
●
「あそこの部屋です!!」
「わかりました!! 突貫しましょう!! ふん!!」
セイカが扉に向かって聖水を放り投げる。
勢いよく扉に当たったそれから赤い煙が弾け、部屋の中へと流れ込んでいく。
仕込みは万端。
並みのモンスターであれば今ので全滅している。
そのまま扉を蹴破り突入する。
危険かどうかなんて考えなかった。
ヒカリの無事しか頭になかったのもあるし、セイカが既に完全武装をしていたのも大きい。
だから、暗闇で覆われた部屋に不安もなかったし、私は必死にヒカリの名前を呼んでいた。
だって敵は、私達が考えるよりも遥かに強大な力を持っていたのだから。
「きゃああああぁぁぁぁ!!」
え?
誰の叫び声だ?
私には、一瞬わからなかった。
だってそれは、今まで息をするようにモンスターを倒していたセイカのものだったからだ。
「せ、セイカさん!? 大丈夫ですか!? どこ!? セイカさん!?」
見えない。
わからない。
未知だ。
未知の空間が私の周りに広がっている。
イヤだ。
どうして?
声が聞こえた気がした。
地響きのように思い音が、頭に響くように。
マホウショウジョ……ケス。
「そうだ……!! 蝋燭……!!」
あたりをぼんやりと紫の光が照らす。
子供たちは、無事だった。
部屋の隅で、お姉さんが妹を守るように覆いかぶさっている。
そして、部屋の奥には私に信じられない光景が映っていたのだ。
黄の少女が黒い十字架に張り付けられていたのだ。
「ヒカリ……!!」
「う……ぅぅ……」
小さなうめき声をあげるヒカリ。
暗闇に目が慣れれば、その姿が明らかになってくる。
いつもの戦士の服ではない、ただの洋服。
ヒカリは変身を解除させられていた。