――思い出したようね。あなたの、いいえ、私の罪を。
そうだ、全部私がやったことだった。
この世界を、無責任につくり変えた。
たった一人の少女が、星空を見えるようにと。
「ナユタちゃん!? 大丈夫!? しっかりして!!」
「ヒカリ……ちゃん。私、全部、思い出した……」
「え……?」
――そう、最初から全て
だから、前の私がこの声を残した。
全てにケジメをつけるために。
「でも……私は最初に浮いてる島から落ちるように誘導をしていた……いいえ、もとからこの世界を救うなんて考えてないものね。あるいは私の死が引き金になるように設計されていた……」
「どうしちゃったの!? ナユタちゃん、すごい顔が青ざめてるよ……!!」
それでも生き残ってしまったから。
何の因果か目の前の少女をまた見てしまったから。
――だから、消極的に世界を救おうと思った。
自分に言い訳をしながら。
自分がつくったこの世界を冷ややかに見つめながら。
「ヒカリちゃん、いっしょにポッドに入ってもらえる? 悪いやつとの最後の戦い……そこにテレポートできるから」
「そうなの!? ……うん!! もちろんだよ!! でも、少し休んだ方が……!!」
「大丈夫だから」「でも……」そんなやり取りがしばらく続いた。
しょうがないから自分は世界を救いたいのだと、そんなことをうったえた。
ヒカリも自分で言っていたことなのだから、否定しようがない。
もちろん、ウソは言ってない。
ポッドの中へと入る。
罪悪感による不快さが頭を突き上げる。
あの時も、こうやって、ヒカリを――。
いや、神宮寺光を連れたのだ。
そして私だけが、そのまま中に残った。
小さな子に守ってもらって。
あってはならないことだった。
「ヒカリちゃん、ここで待ってて、外で最後の調整をするから」
「……? うん、お願い、ナユタちゃん」
外に出る。
あの時も本当はこうするべきだった。
モンスターに襲われるべきは、私だったのだ。
外にある操作用の端末から、ある操作をする。
「テレポータ―、起動」
「え……? 何これ!? どういうことナユタちゃん!?」
ヒカリの体が、黄色い光に包まれる。
私は外からその様子をじっと見る。
このままでも別に大丈夫だが、私はヒカリに微笑みかけた。
小さい子を不安にさせるのは趣味ではない。
「言ったでしょ……テレポーターよ。ここから一番近くの、比較的安全な街まであなたを飛ばす」
「……!! ウソをついたの!? ナユタちゃん!! すぐに戻して!!」
「ウソをつくのは大人の特権よ……。子供を守るためなら、どんなことでも許される」
「私達、同じくらいだよ!! ナユタちゃん!! ナユタちゃんってば!!」
ヒカリががんがんとポッドを叩く。
やがて手が光となり、それもできなくなる。
黄の少女はうなだれ、涙を流していた。
「私は……こんなの、全然望んでなかった……」
「私が望んだんだよ。……これからは全部、私が落とし前を付けるから。だから――」
――さようなら。
黄色の光がポッドから放たれる。
私は端末のモニターから成功したのを確認し、安堵した。
念のためセンサーを起動させれば「Hikari」とラベリングされたそれは、見事遠くの街で観測された。
――ああ、よかった。
心からそう思えた。
後は
本当に、何でこんなことをしないといけないんだか……。
――私が望んだことでしょう? あの子に星空を見せてあげたいって、たったそれだけのために。
ああ、その通り。
だから私の旅の目的はヒカリと旅に出た、あの日にもう叶っていたんだ。
――じゃあ、もうここで終わり?
考えたばかりだろう。
あなたの尻ぬぐいだってば。
――私でしょう?
だからあなただってば。
私はもう一度端末へと向き合う。
モードをモンスターの探索に切り替える。
見つかる。
空を覆いつくす黒い雲の中で、一箇所だけ、うねるように大地と繋がる部分を。
空を覆いつくすモンスター。
その脅威は天全てを覆い、自身の分け身を絶え間なく降らせる。
前の世界は、なすすべなくそのまま崩壊してしまった。
だが、やつもモンスターだ。
急所となる一点、核を破壊すれば消え去るはずだ。
ちょうどそれは、大型のモンスターを倒せば小型のモンスター達も消滅するのと同じだ。
やつらモンスターは、全体でひとつの『存在』。
上位のものを倒せば、その下位は根こそぎ消し去ることができる。
――全く、魔法少女モノの怪物みたいじゃないか。
そういう冗談は、今いい。
とにかくすぐに向かわなければ。
場所を確認する。
ここからわずかに北。
何でそんな近くに本体が?
というのはおそらく順番が逆だ。
研究所があるここの近くを、やつは本拠地とした。
もしくはずっと待っていたのか。
襲撃したその日から。
――よし。
私は歩き出す。
世界を揺るがす黒い柱。
そこに向かって。