叫んだ。
必死に、必死に、叫んだ。
ノドが痛くて張り裂けそうなくらい。
だってそれしかやり方を知らなかったから。
自分の想いを声に乗せれば、きっと届くはずと信じたから。
「ナユタちゃーーーーん!!」
私の体は黄色い光になっていく。
イヤな感じは全くしない。
きっと自分を助けてくれるんだろうとわかった。
それでも――。
目の前のナユタちゃんの、ちょっと悲しそうな顔だけが焼き付いて。
そのまま私の意識は飛んでいった。
●
「ここは……」
辺りを見渡せば、街のど真ん中。
周りの人たちがちょっとびっくりしていた。
私は「何でもないです!!」ってアピールをする。
とにかく今はナユタちゃんのところに戻る方法を考えないと。
……考えるのは苦手だけど。
「まずは状況を整理しなくちゃ……!! ナユタちゃんみたいにできるかはわからないけど……!!」
空は相変わらず真っ黒だ。
いいや、その黒さをもっと増している気がする。
何か良くないことが起きるのだけは私にもわかった。
そして、ナユタちゃんはそれを一人でどうにかしようとしている。
街の人達がざわついているのが、聞こえてきた。
「あれは……!!」
遠くの空には黒い渦。
私達が訪れた廃墟よりもっと向こうを中心として、何かがあった。
まるで台風にような渦が――。
あれ……?
台風ってなんだろう?
渦巻きは知っているけど……。
私はそれを知らないはずだった。
だから誰かに教えてもらったはずだ。
「ずいぶんと派手なことになってるねえ……世も末って感じさ。くわばらくわばら」
「あ!! あなたは……!!」
私の横にはいつの間にか琵琶を持った女の子!!
橙色のその楽器から心地の良い音色が奏でられた。
後ろには、レコードを大量に積んだリアカーだ。
「ワオンちゃん!! どうしてここに!?」
「いやあ、私もシジョーカクダイってやつを目指してね……着いてみればこの通りさ」
私達がこの街を出て数日で廃墟に着いたから、ワオンちゃんも割とすぐに自分のいた街から出たということ。
前向きになってくれたのは嬉しい……んだけど。
「どうしたんだい、その顔。……そういえばナユタのやつがいないね。どこにいるんだいこんな時に」
「実は……その……」
私はあんまり整理できないまま、勢いでしゃべった。
早くナユタちゃんを助けに行きゃなきゃだけど、ワオンちゃんを放っておくわけにもいかない。
事情を話せば私なんかより良い案を出してくれるかもしれないし。
話が終わった時、ワオンちゃんから「チッ」って音が聞こえた。
……まさか『舌打ち』じゃないよね?
私達、夢と希望を叶える魔法少女が舌打ちだなんてそんな――。
「あのバカ……。思わず舌打ちしちまったよ。ヒカリを守るってそういうことじゃないだろ……」
「あ、あの……?」
「あ~気にしないで。とにかくあんたはあのアホのところに行きな」
「あ、アホ……!?」
ナユタちゃんはいかに賢くて良い子か説明している時間は……さすがにない!!
「で、でも……!! 廃墟に行くまでって何日もかかったの!! 間に合うかな……!?」
「問題ないよ。リアカーを貸す。いいかい、ヒカリ。あんたの剣はこう……すごい勢いだろ? リアカーから後ろに思いっきりぶっ放せばどうなる?」
「……!!
「そう思い込んどきゃ大丈夫だよ」とワオンちゃんが頷く。
思い込むも何もそうとしかならないと思うけど……?
ワオンちゃんはもうリアカーを傾けてレコードを地面にばらまいていた。
ショギョームジョーというやつらしい。
リアカーへと乗り込んだ私は、あることに気づいてひょこっと身を乗り出す。
「……? ワオンちゃんは? いっしょに来てくれると心強いんだけど……」
「私はやることがあるからね。……あの黒い渦みたいなの、モンスターだろ? ナユタひとりでもダメ、あんたが助けにいっても、それだけじゃダメ……もう一手、いるのさ」
「そうなんだ。よくわからないけど……頑張って!!」
手をきゅっと握ってエールを送れば、ワオンちゃんは穏やかに手を振ってくれた。
ワオンちゃんが何をしようとしているかは、わからない。
けれど、きっと大事なことをしようとしてくれるのだと信じた。
だって、ワオンちゃんも魔法少女だから。
「さあ、行かなくちゃ……!!」
私は
ふと、思った。
私はいつからこの剣を持っているんだろうって。
……考えてみればこの世界で目を覚ましてから、ずっと持っていたのかも。
この世界で私をずっと守ってくれた剣。
もしかしたら、記憶を失くす前から大事なものだったのかもしれない。
だから――。
「ありがとうって……伝えなきゃいけないんだよね」
私の瞳は、一本の光の帯を映し出す。
後ろを向いているけど、この道はきっと未来に続いている。
そう信じて。
「待っててナユタちゃん!! 私が絶対助けにいくから!!」