魔法少女キラキラファンタジー   作:MOPX

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魔法少女と魔法少女

 

――それで、許されると思っているの。あなた自身は?

 

「……っ」

 

「ナユタちゃん!!」

 

私は変身できなかった。

頭に残っている妖精の声が――。

 

私自身の罪の記憶が、それを遮った。

わかっていたことだ。

私にその資格はない。

 

それでも――。

 

「ヒカリ……!!」

 

私はヒカリの手を取った。

あの時、放してしまった手を。

 

「うん……ありがとう……」

 

「ありがとうって言いたいのは……こっちだよ」

 

ヒカリの姿が立派なドレスに飾られる。

心なしか、背も少し伸びたか。

 

もしも世の中が平和だったなら、こんな風に大きくなったんだろうか。

 

敵は動く気配はない。

いける。

このまま攻撃さえ通せば――。

 

「いくよ……!! 魔法のエクス――」

 

黒い渦が、膨張した。

 

「え?」

 

「危ない!!」

 

私は咄嗟(とっさ)にヒカリをかばった。

風が、無数の刃になって私達を襲った。

 

「うわああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!」

 

「きゃああああぁぁぁぁああああぁぁぁぁ!!」

 

二人分の悲鳴と共に私達は地面へと転がった。

敵は何もせずに待ってくれてたんじゃない。

 

こっちが攻撃をする一瞬に狙いを定めていたのだ。

合理的、かつ無慈悲に。

 

「ヒカリ……だいじょう……!?」

 

「う、うん……私は……」

 

ヒカリの右腕は血を流して垂れ下がっていた。

私が(かば)いきれなかったせいだ。

そして――。

 

ヒカリの手にしていた(プラスチック)は、根元から折れていた。

 

「ごめんね……ナユタちゃん、みんな……せっかくみんなが頑張ってくれたのに、これじゃあ……」

 

「……」

 

着飾ったドレスは、みっともなくズタズタに。

信念である剣は容赦なく折られた。

魔法少女は、モンスターに敗北した。

 

これで終わりなのか?

本当に……。

 

いや――。

 

 

――まだ、私がいる。

 

 

「ヒカリ!! もう一回両手大剣だよ!!」

 

「え……!? でも、もう……私の右手は……それに剣だって!!」

 

「私に考えがあるから!! 敵がもう一度攻撃する前に早く!! 私を信じて!!」

 

「……ナユタちゃん?」

 

本当に、自分でも馬鹿げた話だと思う。

こんな風に意気込んでうまく行くのは物語の中だけだってわかってるはずなのに。

 

でも、もしも。

 

私がこの世界をつくった時に胸の中にあったものが。

 

 

――強く信じれば叶う、物語のような世界であったなら。

 

 

「私に夢をみることを思い出させてくれたのは、ヒカリだよ!! だからもう一度だけ……信じて!!」

 

「う、うん……!!」

 

 

黒い渦が勢いを増した。

ただひたすらその巨大さを増し、こちらへと近づいてくる。

 

迎え撃つはドレスと普通の服の少女が二人。

 

この戦いの、この旅の終着点。

 

 

私の頭にあったのはひとつのことだ。

この世界では、想い入れのあるものなら何だって魔法少女の力になる。

だからこそ、ヒカリはこの星を変身アイテムとして、最後の姿に変身することができた。

 

おそらく、その想いが深ければ深いほど大きくなる。

 

脳裏によぎっていたのは、私がこの世界を変えてしまった日のこと。

この左手で、引き金を引いた。

世界に対して抱えきれないほどの、罪の意識を。

つまり――。

 

――想いをこの左手に宿していたのよ。過去の世界の分を全部まとめて。

 

だったら――。

 

 

私は左手を引きちぎった。

 

 

「ナユタちゃん!?」

 

「私はこの左手を……変身アイテムにする!!」

 

私の左手が天を突き破り、紫の巨大な剣となる。

ヒカリは何かを言いたそうにしていたが、ぐっとこらえて無事な左手でその剣を掴んでくれた。

私は空いた右手でヒカリの手を取る。

 

『今、那由他の想いを力に変えて!!』

 

『闇を斬り裂く光の剣!!』

 

 

これが魔法の――。

 

いや――。

 

 

『魔法少女のエクスカリバァァァァァァァァ!!』

 

 

巨大な紫の剣が黒い渦を横断する。

激しく吹き荒れるそれをものともせず、剣は振り下ろされ――。

 

 

黒い渦の核を、破壊していった。

 

 

飛び散るように激しい風が吹き荒れた。

私はヒカリの体を抱き止めながら、見ていた。

 

それは心が晴れていく様に似ていた。

 

声が聞こえた気がした。

 

 

――これでお別れね。紆余曲折あったけど……あなたがそういう結論を出したんなら、よかったんじゃない?

 

――過激なことばっかり言って全然役に立ってなかったじゃない。

 

――文句なら鏡でも見ながら言いなさい。それじゃあね、もう出会うこともないけれど。神宮寺光を……ヒカリを大切にしてあげてね。……さよなら。

 

――……。あなたは私自身でしょ。だったらあなたはずっと私の中にいる。

 

――イヤだってこと?

 

――ええ、イヤよ。あなたみたいな感情が、私の中にあるなんて。でも。

 

 

――それを受け止めて私は生きていきたい。ヒカリといっしょに。

 

 

「ナユタちゃん……今のって!!」

 

どうやらヒカリにも聞こえたらしい。

妖精()の声が。

 

「妖精さん!! 話す機会、全然なかったけど!! 私はあなたがどんな人だったのかわからないけど……それでも……これまでありがとう!! ナユタちゃんを……私を導いてくれて……ありがとう!!」

 

ヒカリの声が夜空の下で響き渡る。

そう、今は夜だったらしい。

 

嵐が過ぎ去った後に残っていたのは、満点の星空だった。

 

 

 

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