魔法少女キラキラファンタジー   作:MOPX

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秘めたる心

 

――朝。

 

あくび混じりに目を擦り、長い髪の手入れにたっぷりと時間を使う。

いつものはそのまま着替えるのだが、何とはなしに私の足はベランダへ。

城の上層から町を見やれば、日の出が『城下町』を照らして町全体がキラキラ輝いているようだ。

 

「今日という日にふさわしい日の出ですわ~」

 

そう、私はこの街の魔法少女マサヒメ。

ゆえあって、この地を治める魔法少女をやっています。

 

魔法少女に組織化は不要……というのも過去の話。

多くの人が協力し、生活していく中で必要となったのなら、抗うことはできないでしょう。

 

魔法少女とは成長し、変わっていくものなのです!!

 

「……変わっていくものといえば」

 

ぼそりと声が漏れる。

私の桃色の脳細胞を刺激するのは二人の友の姿。

 

「お二人は元気なのでしょうか……いえ」

 

魔法少女が人を……友達を信じなくてどうするのか。

それよりも、だ。

 

「私は私のやるべきことを……ですわね!!」

 

いつものように空中で三回転捻りとともに発光。

魔法少女のドレスへと身を包む。

 

今日は祭りだ。

いろんなところから客人もくる。

数えきれないくらい、たくさん。

 

「さあ……忙しくなりますわよ!!」

 

 

 

 

城を出たワタクシは日課のパトロールを始めました。

特別な日と言えど油断は禁物。

むしろこういう日こそ、気を付けなければいけないのです!!

 

「まあ最近はのどかなものですが……。こう、物足りない気もしますわね」

 

もっと、こう、みなさんが困らない程度のハプニングやサプライズが起こってもいいとは思うのですが。

……いえいえ、私は魔法少女。

人々の平穏こそが私の願い!!

決してトラブルが起きてほしいなどとは……!!

 

などと思っていたら人々の叫びが聞こえてくる。

私は意気揚々……ではなく、厳かに歩みを進めその光景を目にしたのです。

 

鹿やら猿やらの大軍が、道を闊歩しているではありませんか。

フクロウのようなオウムもいます。

何だ、と胸を撫で下ろしました。

 

どうやら大きなトラブルではなかったようです。

 

「ウオー。久々に街にきたゾ~!! 魔法少女狩人ココちゃんのお通りダー!!」

 

「テンションが上がってますわね、ココさん」

 

「おお!! その声はヒメ!! 我が友ヒメではないか!! 会いたかったゾー!!」

 

魔法少女狩人のココさん。

 

私とは古い付き合いだ。

よって怪しいものではない。

 

「森からのお越し、ありがたいことですわー」

 

「ウム。しかしここも大きくなったナ……」

 

ココさんが辺りを見渡す。

そう、最初は小さかったこの街も人が増え、住居が増えた。

だからこそ、今日のイベントなわけですが……。

 

「ヒメ」

 

「何でしょうか? あらたまって」

 

「ここまで良く頑張ったナ。ココちゃんが褒めてやるゾ!! ココだけに!!」

 

「ふふ、私ひとりの力ではありませんから。それはあなたもわかっているでしょう?」

 

「アア!! そうだったナ!! ココちゃんのKは……協力のKでもあるゾ!!」

 

 

そう、今日は記念すべきイベントの日。

だから街も飾りつけられ変身をしている。

 

道行く人々もどこか活気と希望にあふれ――。

 

「街の中央へはこっちの道でいいんですね!! ありがとうございます!! ありがとうございます!!」ブンブン!!

 

「む、あの方は……」

 

通りすがりにお礼を連呼しながら頭に下げる姿は、さながら頭突きマイスター。

確かな信念を持つ者に違いありません。

しかも青い髪と瞳とくればこれはもう魔法少女。

 

「あなたも魔法少女でしょうか? ようこそ我が城下町へ、ですわ!!」

 

「あ……はい。私、ナギサって言います。自己紹介させていただき、ありがとうございます!!」ブン!!

 

少女の頭突きをスウェイバックで躱しながら私はふんふんと頷きます。

聞けば、かの有名な水上都市からはるばるやってきたのだとか。

 

「ということは……あなたがあのナギサさんなのですね!! 魔法少女サメ使いの!! 遠路はるばるようこそですわ!!」

 

「い、いえ……私は歌姫で……。そ、そんなことより招待ありがとうございました。この街には一度来てみたかったですし」

 

「と、言いますと……?」

 

「ナギサさんとヒカリさんの旅、この街から始まったと聞いたので……。そういえばお二人はどこに? 今日のイベントには出ないんですか?」

 

唇が(わず)かに震える。

代わりに話そうとしてくれるココさんを遮り、意を決した。

その瞬間でした。

 

私達に歩み寄った影が一声をかけました。

 

「どこにいるかはきっと本質ではありません。……お二人は恐らく旅に出た。そんなところでしょう」

 

赤い髪のシスターの一言にナギサさんが驚く。

それよりも前に尋ねておくべきことがありそうです。

 

「私はヒメ、この街を統べる魔法少女です。あなたは?」

 

「セイカと言います。お二人が旅をしている時に出会い、助けてもらったものです」

 

「そうですか……あなたも……」

 

私の知らないところでも、二人は旅先で多くの人に出会っていた。

……友人として誇らしく思う。

 

「二人で、というのがまあポイントでしょう。いったい旅先でどんなことをしているのか、うふふ……」

 

「セイカさん、我が友人で(よこしま)なことを考えてはいないでしょうか? 怒りますよ」

 

「何をおっしゃります、私はとても神聖なことを……」

 

 

琵琶の音がべんべんと聞こえてきた。

音の方をみやれば、橙色の魔法少女が即興のリサイタルだ。

少女が口を開く。

 

「ま、世界を直接救ったのはあの二人なんだから、もっと良い扱いでもいいんじゃないかねえ……。な、ヒメ様」

 

「……」

 

私とてそう思います。

思いますが――。

 

「二人がそれを望まなかったのです」

 

そうだ。

二人で旅に出たいと言い出しのはあの二人だ。

でも、止めようと思えば止めれたはずだった。

 

「あんたは? それでよかったのかい?」

 

「いいわけは……ありません」

 

もしもワガママが叶うなら。

私だって一緒に付いて行きたかった。

でも、そんなことをすれば多くの人に迷惑がかかるから――。

 

だから笑顔で送り出したのだ。

友人として。

 

魔法少女は秘密の一つや二つ持っているもの。

だから、この気持ちは私の中だけでひっそりと抱えていくものだ。

 

「今生の別れではございませんもの。……二人とはまた会える日を楽しみにしています」

 

「そうかい、じゃあいいさ……。私も気ままに、世界でもめぐるかねえ。ワールドツアー……なんつって」

 

琵琶を弾きながら橙の少女は去っていく。

 

「ところでヒメ? あいつ誰だったんダ?」

 

「さあ? でも、そんなことはよいでしょう」

 

この世界はひとりひとりが違う想いを抱えて生きている。

それだけ知っていれば十分なのだ。

 

一人で抱えれる想いには限りがあっても、二人であればきっと支え合える。

あの二人を旅に送り出した時のその想いは、今も変わらない。

 

世界を守りたいと思えるヒカリと、そのヒカリを守りたいと思えるナユタ。

きっとお互いに見えてないものを、見ることができたから。

 

私も、自分の責務を果たしましょう。

 

 

 

 

中央の広場へと人は集まっていました。

多くの人の前で私は高らかに宣言をします。

 

「みなさん!! この世界は危機を乗り越えることができました!! 我々はこれを伝えていかなくてはいけません!! 次の……また次の世代が危機に陥った時に、それでも希望はあるのだと信じるために!! だから……」

 

ナユタさんが旅に出る前に残していった助言。

それは――。

 

「我々の歴史に!! 我々の街に名前を付けるのです!! たとえ、かつてのことを思い出せなくとも……これからまた、私達の営みは続いていくのですから!!」

 

名前。

『城下町』だけなのはどうも変らしい。

 

街の人たちが耳を傾ける。

私は、今は遠くにいる友人達にも聞こえるようにと、高らかに声をあげるのだった。

 

「今日をもってキラキラ歴元年!! この地は『江戸』と名乗ります!!」

 

この地は今日から江戸。

魚がおいしくて、気勢の良い魔法少女達が治める街――。

 

 

 

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