剣の勇者の成り代わり   作:min-can

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どうでも良い誤差なんですけど、ちょっとコウヤのレベル弄りました。
原作が割とすいすいレベル上がってるんですよね...ちょっと塩梅が難しいですし、内容は変わらないので良いんですけど。
そんな感じでちょくちょく大筋が変わらない範囲でセリフとか変わってたりするのでよければまた見てやってください。


再会

 後1時間程度で目的地に到着する予定だ。

 今回はリユート村を通るルートでルロロナ村に向かっていたので、戻ってきた第一の目的である尚文が居るかどうかを村人に訊ねてみた。

 

「盾の勇者...?そういえば最近は見ないな...」

 

「俺も...」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

 もしかしたら拠点を移したのかもしれない。とはいえ、連携の確認を約束してる訳だしそれほど遠くには行ってないと思うんだけど...

 

「おーい!あんた剣の勇者様だよなぁ!」

 

 そんな事を考えていると、新しい村人が俺の方に駆けて来た。

 

「......はい」

 

 一応変装したつもりだったんだが何故バレた。周囲がざわざわし始める。

 

「えっと、なんで分かったんですか?」

 

「そりゃあんた、自分で馬車を引っぱって旅する変態だって随分噂になってるぜ...にしてもあんたも大変だなぁ。勇者様なのに色々と陰謀じみた事に巻き込まれてよぉ...」

 

「噂に...まじか。んんっ!えぇっと...陰謀じみたって言ってましたけど、俺が悪い事したと思ってないって事ですか?」

 

「そりゃあ、剣の勇者様が盾の悪魔の悪行を庇ったなんて噂が流れた時は良い気もしなかったがね...この前の暴力事件なんかは、周りで見てた奴が剣の勇者様が突然斬りかかられて応戦しただけだって話してたからなぁ。色々と噂が流されてるがどれも盾の勇者の話からするとイマイチしっくり来ないし、なんだかかえって怪しく見えて来るってもんだ。本物の勇者様を見れば余計になぁ?」

 

「そ...そうですか...」

 

「まぁ、とにかくきな臭い事には変わりねぇな。勇者様の仕事は波と戦う事だってのに、色々と大変そうだとは思ってるぜ...っとそうだ。俺は盾の勇者に伝言をもらってるんだ」

 

「尚文から?」

 

「あぁ。なんでも、お前の家を拠点に借りてるから会う時はこっちに来てくれってよ...」

 

「え、あ、そうなんですか...伝言ありがとうございます」

 

「なぁに、盾の勇者にはこれを貰ったもんでね、仕事しなかったらバルーンの刑だ」

 

 村人がお金のマークを指で形作る。

 

「なるほど。それは一大事ですね」

 

「ほんとだぜ全く...ま、噂は所詮噂だ。あんまり気負わないようにな」

 

「ありがとうございます」

 

 村人は背を向けて去って行った。

 

「えぇっと、剣の勇者様なんですよね...?」

 

「あー、はい。あはは...それじゃあ失礼しますね?」

 

 俺はそれだけ言い残すと一目散にその場から逃げ出した。

 

 ....ふぅ。それにしても、尚文が俺の拠点を利用していたとは...まぁ、海から近くて雨風凌げて、ラフタリアちゃんの故郷となれば利用するか。

 まぁ、なんで俺の拠点と分かったか疑問だけど。まぁ、なにか俺である証拠を残してしまったのかもしれない。

 

 俺は皆を待たせてる場所に戻ってルロロナ拠点へと向かった。

 

 ───────────────────────

 

「俺達の村...あの時のままだ」

 

「キール君大丈夫?」

 

「...おう!ここにラフタリアちゃんが居るんだろ?それに...俺はここを復活させるために来たんだ!これくらいなんともないぜ!」

 

「そうだね」

 

 キール君を撫でる。

 

「そういえばお姉さんがコウヤちゃんと出会ったのもここなのよねー。思えば不思議な縁もあったものねー」

 

「そうだったのか?」

 

「そうよー。ここの海でレベリングしてたコウヤちゃんがラフタリアちゃんの家の跡地を修繕して拠点にしててね。誰が帰って来たのかなーって近づいたのが始まりだったのよー」

 

「へぇ...!」

 

「えぇ!?あそこラフタリアちゃんの家族の家だったんですか!?...なんか悪いことしたな...」

 

「そんな事ないわー。誰かに使ってもらう方がお家も嬉しいでしょうし、そのお陰でこうして村の子達の事を手伝ってもらえてるんだから」

 

「そうですか...なら、まぁ...」

 

 そんな事を話しながら歩いていればすぐに懐かしき俺の拠点にたどり着いた。

 一旦、城下町に持っていく物とここで使う物をみんなで選り分けて整理した後、拠点をドアを叩いた。

 

「尚文ー?居るか?」

 

 コンコンとノックをしたが返事は無かった。

 ガチャリと扉を開けると、俺以外の誰かが利用しているのがわかる痕跡があった。

 

 あっ、机の上に俺が解読した絵本が乗ってる。

 ...なるほど。確かにあそこには俺が日本語で訳を書いてある。そこから俺の拠点だと推測したわけか。

 

「...こんなボロ屋で暮らしたり、馬車引っ張ったり、勇者って変な奴しかいないの?」

 

「それ全部俺に刺さってるから...」

 

「そうだ!俺の家も...!」

 

 キール君が突然家を飛び出した。

 

「ちょ、キール君!?」

 

 俺も追いかける...しばらくすれば、キール君の家の跡地があった。

 辛うじて柱が機能しているが、何かしらで力がかかればすぐにでも崩れそうだ。

 

「........」

 

 キール君が悲しそうな顔をする。

 

「...大丈夫。俺達が絶対立て直してみせるよ...だから、どんな家だったか後で俺に教えてくれよ?」

 

「...おう!えっとなぁ、ドアに木の飾りがしてあって、窓はこれくらいの大きさでここにあって、中にはおっきな暖炉と...」

 

「そうそう。ここに棚があったわよねー」

 

「そう!それでそれで...」

 

 途中参加のサディナさんも合わせてキール君の家がどんなものだったか脳内で描いていく...

 

「家、かぁ...」

 

 珍しくウィンディアちゃんが悲し気な顔をしていた。

 

「大丈夫?」

 

「...!!うっさい!なんでもないわよ!」

 

「なんでもある反応なの」

 

「...っっ!!?」

 

 ウィンディアちゃんが顔を真っ赤にする。

 

「なんでもないって言ったらないの!わかった!?」

 

「はいはい。わかったわかった」

 

「なのー」

 

「適当に返事しない!!」

 

「おい兄ちゃん!ちゃんと聞いてんのかー?」

 

「ごめんごめん!...それで?」

 

「あぁ!それで...」

 

 そうしてさっきの続きをしようとしたが、断念する事になる。

 

「....何してんだ、鋼也」

 

 聞きなれた、しかし久しぶりの声が聞こえる。

 

「尚文...!久しぶりだなぁ!」

 

「あぁ...久しぶり。そんなボロ小屋見て何をしてたんだ?...随分仲間も増えて...仲間ってか子供?保護者でもやってんのか?」

 

「否定したい所だけど、半分そうだな...」

 

「はぁ!?あんたが私の保護者とか冗談でしょ?」

 

「一応お父さんに託されてるんだけどなぁ」

 

「勝手に言ってるだけよ!」

 

「随分うるさいガキも仲間なんだな。なんか...大変そうだな」

 

「ガキ...あんたねぇ!」

 

「はいはいストップ!!今日はやけに機嫌悪いなウィンディアちゃん...」

 

「ガルル...!」

 

「まぁいい。積もる話もあるだろうし、一旦腰を落ち着けよう...そうだ、お前の作った拠点を勝手に使って悪かったな。宿代の節約にもなるし丁度良かったんだ」

 

「あぁそれは全然...というか俺の適当な補修で数週間も保ったのか?」

 

「いや、流石に俺も何度か手は出したな...まぁほとんどお前がやってたから簡単なもんだった」

 

「なら良かった...そうだ、ラフタリアちゃんは?」

 

「ラフタリアなら海で食料調達だ」

 

「ラフタリアちゃんが...俺行ってくる!!」

 

「待ってキールちゃん。お姉さんも行くわー」

 

 二人が海の方へと駆け出した。

 

「なんだありゃ」

 

「あの子...キール君って言うんだけど、この村出身でラフタリアちゃんの幼なじみなんだって」

 

「なるほどな...ラフタリアとアイツを会わせに来たのか?」

 

「うん。前約束してた連携の確認と新しい仲間の紹介ついでにラフタリアちゃんをキール君と会わせたいなと思って」

 

「そうか...この村の住民を集め始めたんだったか?お前も色々大変そうだな。噂の事もあるし」

 

「はは...そうだな」

 

「まぁ今日は海でのレベリングは切り上げて作業をするつもりだったから、ゆっくりしていけよ。それとも他の場所に用事でもあるか?久しぶりの城下町だろ?」

 

「うん。一応城下町にも用事はあるけど」

 

「わかった。まぁ面倒は見てやらんが、変な事をしないか監視くらいはしててやるから、お前はそっちをさっさと済ませてこい。連携の確認なんかは明日にすればいいしな...夕方までには帰って来いよ。夜までガキのお守りなんてごめんだ」

 

「まじで?じゃあ、お願いしようかな」

 

「了解。んじゃまた後でな、俺は薬の調合をしてくる」

 

「まだやってくれてるんだ」

 

「お前が金稼ぎに使えって言ったんだろ?ドロップの武器も城下町に流通しすぎて値段が崩れ始めてるから親父に言われて一旦休止しててな...他の金稼ぎも色々試したが、今の所薬の調合が一番コスパが良い。最近はエネルギーブーストで品質を上げる方法も見つけたし、しばらく薬の値段が下がるまでは自作と盾の調合で平行生産だ」

 

「なるほどなぁ...しまったな。ドロップの武器を売りに行こうかと思ってたんだけど、それならやめておくか」

 

「そうだな。だけどまぁ、性能がいい剣なら問題ないはずだ。武器なんて上に行けば行くほど値段が跳ね上がるしその分需要もある。価格帯の低い粗悪な剣だから価格破壊が起こっているだけだ...それも、国外や離れた場所に上手く流せば問題ないんだが、短期間に城下町の中で全部処理してしまったようでな。そりゃあ一旦需要も無くなる」

 

「まぁ、よっぽど大量なら輸送しても利益が出るかもしれないけど、所詮は勇者二人分でしか無いもんなぁ」

 

「あぁ。そこらへんも考えて城下町内での販売に絞ったんだろうが...まぁ倉庫にでもしまって細々と処分するべきだったな。そこらへんは親父にも伝えてある」

 

「流石は尚文先生だな」

 

「黙れ。さっさと行っちまえ!」

 

 しっしと手で払われた。

 

「あはは、行ってきます!」

 

「あぁ」

 

 尚文の背中を見送る。

 

「それじゃあ...ウィンディアちゃんとガエリオンちゃんも、あんまり遠くに行かないように。後、尚文は怒ったら怖いと思うから、迷惑は絶対かけないように!」

 

「わかったなの。お姉ちゃんはガエリオンに任せるなのー」

 

「私がガエリオンの面倒を見るのよ!」

 

「どっちも頼むよ」

 

 ギャーギャー言って去っていく二人も見送って一人になった。

 

 よし、まずは尚文の言う通り性能の良さそうなドロップだけ売却して...ウィンディアちゃんとキール君の武器は、ドロップしたのがまだ現役だから今はあれで良いか。後はまだ作れない鉱石の購入と、新しい魔法書と、魔物商の所に...あぁ、サディナさんかキール君について来てもらわないと。

 後ウィンディアちゃんの養育費も換金しておくか。こっちは急がないからなるべく高レートで交換できるように魔物商に頼んでおこう。

 荷馬車もそろそろ俺の改造じゃ限界が来てるからちゃんとしたのを買うか...引っ張る魔物はどうしようかな。ドラゴンが居るからフィロリアルは論外だし、というかガエリオンちゃんが気が向いたら引っ張ってくれるからある意味半分解決してはいるんだよな...スピードは良いけど中が異様に揺れるから基本は俺が引っ張ってるけど。折角購入した魔物がお役目御免になってしまうのはお金が勿体ないし可哀想だ。

 

 まぁ...今のままで良いか。最悪ガエリオンちゃんがもっと成長すれば空飛べるし。

 

 とりあえずサディナさんを呼んでくるかな...

 

 ─────────────────────────

 

 海辺に行くと、サディナさんがキール君と成長したラフタリアちゃんと一緒にお話ししていた。

 

「おーいサディナさん!」

 

「あらーコウヤちゃん。何かあったかしらー?」

 

 俺は三人の元に駆け寄る。

 

「剣の勇者様...お久しぶりです!」

 

 ラフタリアちゃんが笑顔で俺に挨拶してくる。

 

「久しぶり。随分大きくなったなぁ...」

 

 もう記憶にあるラフタリアの姿になっていた。完全に高校生から大学生程度まで成長している。ちょっと敬語使うか迷ったもん。

 

「はい。ナオフミ様のおかげです...!えっと、改めてお礼させて下さい。ナオフミ様の事も、キール君の事も村の人達の事も...ありがとうございます。これからもサディナ姉さんと一緒にどうかよろしくお願いします....!私もナオフミ様の下で頑張りますので!!...次にお会いした時にはどうしてもこれだけは伝えたかったんです」

 

 思わず見惚れそうな笑顔で俺に感謝を伝えて来る。

 う...サディナさんで耐性を付けてなかったらやられてたかもしれん。流石はメインヒロイン...

 

「うん。ありがとう。微力ながら、村の復興のお手伝いをさせてもらうよ...尚文の事もよろしく頼むね。口では色々言うかもしれないけど、尚文にとって唯一の大事な仲間だと思うからさ」

 

「それはもう!私はナオフミ様の剣ですから...!」

 

「あらー。ラフタリアちゃんが立派になってお姉さん嬉しいわー」

 

 サディナさんがラフタリアちゃんをぎゅっと抱きしめる。

 

「もう、サディナ姉さん...」

 

 てぇてぇ...じゃ無かった!この空間を壊すのは若干辛いが、この中の誰かが居ないと村の人が居た時に本物かわからない。

 

「えっと、邪魔してごめんなさい。今から城下町に行って他の子が魔物商の所に来てないか確認するので出来ればサディナさんか...二人のどっちかに来てもらいたいんですけど」

 

「あらー、じゃあ名残惜しいけどお姉さんが行くわー。二人はまだまだ話したい事もあるでしょうし、今日から波まではここに居るんでしょー?」

 

「そうですね。ゆっくり体を休める為に城下町か港町には行くかもしれませんけど、後の数日は尚文達と行動できればと思ってます」

 

「本当ですか!?」

 

「もちろん。どの道後数日で出来る事は少ないし、ずっと旅で疲れもあるだろうからリフレッシュの為にも、こうしてみんなで過ごす方が良いと思うし...波での連携も取らないといけないからその確認も必要だしね」

 

「良かったね、キール君!」

 

「おう!またラフタリアちゃんと遊べるなんて夢みたいだ!」

 

「うん...本当、夢みたい」

 

「あらー。まだまだこれからよー?もっと皆を集めて、きっとあの村での日常を取り戻してみせるわー」

 

「よぉし俺も頑張るぜ!!」

 

「えぇ。私も!」

 

 ルロロナ村のメンバーが再び決意を新たにしていた。

 

 よし。俺もしっかり頑張らないとな...こんな光景が見れるなら、報酬には充分だ。

 

 ─────────────────────────

 

 城下町に到着した俺とサディナさんは、奇異な視線に晒されながらも用事を迅速に終わらせていった。あんまりだらだら動いてたらまたクズに呼び出されたり三勇教の刺客に襲われたりするかもしれないからな...

 武器屋の親父さんに性能の良さそうなドロップ品を預け、前回のお釣りとして金貨6枚と銀貨60枚を貰って、そのお金で必要な物を買い揃えた。ついでに、今使ってるよりも大きな幌馬車を購入して乗り換える事も出来た。

 

 最後の用事として魔物商の元に向かう...

 

「これはこれは剣の勇者様!前回の件から一週間ほど経ちましたかな?」

 

「お久しぶりです...早速ですけど、新しい子は来ましたか?」

 

「申し訳ありませんです、ハイ。居場所の分かる者については持ち主に交渉を仕掛けては居るのですが、なかなか色良い反応は頂けず...他国に出荷された者で確保できたのは幾人か居るのですが、いかんせん輸送に時間がかかってしまっておりまして...もうしばらくお待ちいただかなければなりませんです、ハイ」

 

「そうですか...まぁ、何人か交渉が成立してるならひとまずは安心です」

 

「今はまだ村の奴隷を購入して間もないですからな。よほどの欠点を抱えている商品でもなければ仕事を覚えさせたばかりの奴隷を手放すのは面倒くさがるでしょう...一応更に金を積めば交渉出来なくは無いのですが、あまり必死になってしまうと私や剣の勇者様がルロロナ村の奴隷をどうしても集めたがっていると思われて、嫌がらせや金稼ぎに使われる可能性もあります。剣の勇者様の求める奴隷に関しては全て、私自らが交渉を行っておりますので前回のような事は起こりませんし、なるべく悪いようには致しません...どうかそれでご容赦願いたいです、ハイ」

 

「いえ、そう言った駆け引きに関してはあなたの方が専門でしょうし、その腕は信頼してます。その分の利益は与えられるよう努力するつもりですので、これからもお願いしますよ」

 

「もちろんです、ハイ!...それで、本日の用は商品の入荷の確認だけですかな?」

 

「いえ。一つはこの財宝の換金のお願いと、魔物紋を購入させて欲しい事と...後は念のためここに居る奴隷を確認させてもらって良いですかね?村の奴隷が混じってるかもしれませんし」

 

「かしこまりましたです、ハイ」

 

「それじゃあサディナさん。確認してきてもらっていいですか?」

 

「分かったわー」

 

「部下にご案内させます。彼女を案内してきなさい」

 

「はっ!!」

 

 サディナさんは部下に連れられてテントの奥へと行った。

 

「あ...財宝についてなんですけど、こっちの小さい袋の物は俺達の物なんでいつものレートかそれ以上で良いんですが、こっちは他人に預かってる物なんで、相場の仲介手数料でお願いします。具体的には5%くらいで良いですか?」

 

「...かしこまりましたです」

 

 おっと、流石にこっちに都合が良すぎたか?あるいはそうやって見せかける事で金をむしろうとしているのか...不味いな。魔物商の協力を得られなかったら今後がかなり厳しいんだけど...

 ちょっと賭けにはなるが、どの道もはや全てが原作通りいけるとは思えないからやれる事はやっておくか。

 

「んんっ!そういえば、この店は魔物の卵くじなるものがあるとか」

 

「...はい!ご用意しております!!剣の勇者様、魔物を買うおつもりで?」

 

 途端に魔物商がテンションを上げた。

 

「あの中からフィロリアルの卵だけを抜き出して俺に買わせてくれませんか?」

 

「...は、はい?フィロリアルの卵がご所望でしたらこちらに...」

 

「いいえ。卵くじの中のフィロリアルの卵だけです、手間賃は支払いますから。ついでに孵卵器と魔物契約に必要な一式も買います」

 

「か、かしこまりましたです...そこまでおっしゃられるのなら、そうさせていただきます」

 

 魔物商が頭上にはてなを浮かべながら作業してくれる...

 そうして、フィロリアルだけの卵くじが完成したが...まだ数が多い。

 

「念のため確認なんですが、この卵の中にゼルトブルに輸出するフィロリアルレースの競争羽を育てている牧場から売られてきた卵はありますか?」

 

「み...3つございますが、よくご存じで。流石は剣の勇者様といった所ですかな?もしやその牧場の卵が欲しかったという訳ですかな?それでしたら私の方で牧場のご紹介を...」

 

「いえ!その卵3つから選びます。もちろん手間賃は更に払うので!!」

 

 多分そのうち2つがコウとサクラだ。

 3分の1...成功すればフィーロ爆誕。失敗してもラフタリアちゃんに良く懐くフィロリアルか、よくわからないフィロリアル...まぁ、悪くない賭けなんじゃないか?少なくとも何もせずに尚文がこの中からフィーロを手に入れると信じるよりは分がいいはずだ。そもそもラフタリアちゃんの奴隷紋消去イベントが起こるかも怪しい。そうなれば尚文はここに来るかもわからないのだ。だったらせめてフィロリアルを所有していれば今後のフィトリアや婚約者とのフラグになるし、最悪の問題は回避出来るだろう...まぁその場合元康がどうなるかわからないのも怖いけど。

 

「か...かしこまりました。正直何をお考えなのかは分かりかねますが、より多く儲けられるというのならば疑問は全て流しましょう...この3つになります。どれに致しますか?」

 

「うーん...うーーーん...!!!」

 

 わからん...分からんけどできれば引き当てたい...!!

 

「あらー。そんなに迷うならお姉さんが選びましょうか?」

 

「サディナさん!村の子は居ましたか?」

 

「居なかったわー。残念...もう少し待ちましょうか」

 

「そうですね。後、卵については後悔したくないので自分で選びます」

 

「あらー、そこまでの話なのねー」

 

「あの、それほど重要な事なのでしたら3つ購入するのは如何ですかな?」

 

「いえ、すみません。俺のパーティにはドラゴンが居るからフィロリアルは飼えないので、これは尚文に渡す為の卵でして...尚文もフィロリアルを複数養育する余裕は無いでしょうし」

 

 一応方法があるにはある。卵が孵るのを確認して、尚文にフィーロを確実に渡し、他2匹は無理矢理ドラゴンと共存させて俺が飼うか、売ってしまう...けどなぁ!正直ガエリオンちゃんの食事だけでいっぱいいっぱいの今、フィロリアル飼うのはなぁ...!孵ってから売るってのも責任問題的にちょっとなぁ...!しかもコウに関しては成長後の姿を知ってしまってる訳だし。今ならまだ割り切る事が出来るけど、ヒナを見たら多分俺は売る事が出来ない。

 ただでさえ魔物くじ、手間賃、奴隷紋、孵卵器と盛大に金を使ってしまっている。ここは非情になるしかない...そうだ!最悪尚文の元にフィロリアルが居さえすればそれでいい...!!

 

「こ、これにします...!」

 

「かしこまりました。それでは孵卵器等々の準備を...」

 

「あっ、まだ孵さないので孵卵器は起動しないようにお願いします」

 

「かしこまりましたです、ハイ」

 

 こうして俺は大きな賭けに出たのだった。

 

 ───────────────────────

 

 こうして、俺はフィロリアルの卵をサディナさんに大事に抱いてもらいながら城下町を後にした。

 出来ればフィーロかコウがいいなぁ。

 それにしても、今回は迅速に動き回った甲斐あってか何かに襲われたり声をかけられることもなかった。

 

 いやぁ良かった良かった。

 後は波まで尚文達と過ごすだけだ...まぁ、特に許可は貰ってないけど。

 

 そうして俺は新しい馬車の引き心地に満足しながらルロロナ村へと帰還するのであった。

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