剣の勇者の成り代わり   作:min-can

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盾アニメ見返してたんですけど、聖武器って中に吸った物を後から取り出すなんて事できましたっけ?
ラフタリアの髪の毛さらっと取り出しててびっくりしたのですが...
素材全部荷馬車に積み込んで走ってる鋼也がバカみたいじゃないですか!!バカだったか。


早過ぎた邂逅

「矮小な虫ケラ共が我が領域に...ぬぐぉ!!」

 

「エアストシールドⅤ!!」

 

 ドラゴンが偉そうに口上を述べている間に、尚文はエアストシールドを頭の上に展開していた。

 

「行け!」

 

「はい!!...はぁ!!」

 

 ラフタリアちゃんがドラゴンに駆け寄って首を斬りつける。

 

「何してる!お前らも攻撃しろ!」

 

「いや、まだ挨拶の途中で...」

 

「魔物と話して何になる!」

 

 尚文がドラゴンに駆け寄って羽を掴んで地面に抑えつける。

 ドラゴンさんは必死に抜け出そうとするが、半身と頭を地面に縫い付けられてまともに動けていなかった。

 

「......エアストバッシュⅣ」

 

 俺はせめてもの情けにスキルで一撃の元にドラゴンの首を落とした。

 可哀想に...まともに戦う事すらできずに終わってしまうとは。

 

「流石の攻撃力だな。あのドラゴンの首を一撃か」

 

「まぁ竜狩りもそこそこやってるからなぁ...ガエリオンちゃん、ご飯の時間だぞー」

 

「なのー」

 

 ガエリオンちゃんは元の大きさに戻って、爪で鱗をえぐり取り、胸の辺りから肉を喰らい始めた。

 

「同族食いかよ...」

 

「成長期のドラゴンの食欲舐めんなよ。意味わかんないくらい食うんだから何でも食べてもらわないと...後、竜核か竜帝の欠片集めにもなるしな」

 

「竜核?竜帝の欠片?」

 

「竜核ってのは文字通り竜の持つ結晶の核だな。そのままドラゴンのパワーアップアイテムになる。竜帝の欠片ってのは...昔全ての竜の始祖である竜帝ってのが居て、そいつの竜核がバラバラになったのが竜帝の欠片っていうんだけど、ドラゴンは欠片を集めて真なる竜帝になるっていう共通の生存目的を持ってて、単純なパワーアップだけじゃなくて古の竜帝の知識なんかも手に入るんだよ」

 

「まぁ...要するにドラゴンの強化アイテムなのか」

 

「身も蓋もない事を言えば」

 

「小さいけど竜帝の欠片があったなのー!」

 

「お、ラッキー!...ちなみに中にはどんな知識が入ってた?」

 

「うーん...かつての竜帝はフィロリアルの女王にその核を砕かれた...なの!役にたったなの?」

 

「うーん。まぁ、伝承が事実だったって確認にはなるのかな?」

 

 正直全然役に立たない知識だけど、この程度のドラゴンの持つ欠片だし、ガエリオンちゃんのステータスアップにはなってるから結果オーライだな。

 

「フィロリアル?」

 

「良く町中で馬車を引いてる鳥の魔物だよ」

 

「あぁ、あれか...あれが?ドラゴンを?...嘘くせー」

 

「なのなの!竜帝の知識は紛れもない事実なの!」

 

「ドラゴンがフィロリアルなんかに負けるわけないもん」

 

 ウィンディアちゃんがちょっとムスッとしていた。

 

「まぁ、フィロリアルの女王は古から生きているとか、山よりも大きいとか色んな伝説があるからなぁ。もしかしたらすっごく強いのかもしれない」

 

「ふーん...ま、そこまで言うなら話半分には覚えておくか」

 

「残りは尚文が吸ってくれ。ドラゴン系の盾ならさぞかし強力なんじゃないか?」

 

「お前が使ってない辺り怪しいもんだが...ふむ、まぁまぁ悪くないな...いや、ドロップの方が良さそうだぞ。ラフタリア」

 

「なんですか尚文様?」

 

「これを使え」

 

 尚文が盾から一本の剣を取り出す。

 

「ドラグナイトソード、今ラフタリアが使ってる剣よりは優秀なはずだ」

 

「こ、これは...」

 

 俺の目から見てもなかなかの業物だ。

 

「ありがとうございます!ナオフミ様!」

 

「あぁ、手に馴染むまでは慎重にな」

 

「はい!」

 

 ラフタリアちゃんが剣を嬉しそうに振っている。剣よりも尻尾の方がブンブン振られてるな...

 

「ふむ、やっぱり強大な魔物の方がドロップが良いな」

 

「そりゃあなぁ。強い魔物だと素材で開放された剣の方が性能良いときが多いけど、ドロップの武器もたまにバカにならない性能の物が落ちる時があるから、しっかり見ておかないといけないんだよな...狩りに熱中しすぎるとその日の夜に全部見なくちゃいけなくて面倒臭くなる」

 

「ハズレても金策にはなるからやらない理由は無いな」

 

「それはそうなんだけど、一括でドロップ確認とか出来るようにして欲しいよなぁ」

 

「ま、ゲームとしちゃUIが微妙なのは事実だな。とはいえこれはゲームじゃなくて武器の機能だ。馴染みのある形にしてくれてるだけありがたいってもんだ」

 

「確かに」

 

 そんな事を話しながら、色々な魔物を倒したり、互いのパーティの戦い方を見て、互いのスキルや魔法の邪魔にならない位置取りなどを確認していった。

 

 ────────────────────────

 

「経験値は手に入らなかったが、有意義な時間だったな。盾もそこそこ開放されたし」

 

「うちのパーティにはタンク役がいないから改めてタンクのありがたさに気付けたよ。今後もずっと一緒に戦いたいくらいだ」

 

「レベリングにならないからたまになら...まぁ」

 

「約束だからな!それまでにもうちょっと歯ごたえのある狩り場を探しておく」

 

「あぁ。人数が多い分戦闘は楽だったが経験値の効率が落ちてたからな。もう少し骨のある魔物と戦いたい所だな...」

 

 そんな風に尚文と話しながら、馬車の方に向かっているとその側に一人、男と思われる姿が遠目に見えた。

 

「誰だあいつ」

 

「...冒険者かな」

 

「何か問題があって、馬車の持ち主が戻ってくるまで待ってたって所か?」

 

「それにしては堂々と立ってるような...まぁなんにせよ、本人に聞けば分かるだろ」

 

 俺達は若干の警戒を持ちながらも、そのまま男の方へと歩いていった。

 

 .....

 

「おい、こんな所になんの用だ」

 

 尚文が男に問いかける。

 

「あ?...あーやっぱりここだったか!よーやく見つけたぜ全くよぉ」

 

 男は赤色の長髪をかきあげて、こちらを嫌らしい笑みで見つめてくる。

 

「にしても見事に女とメスガキばっかだな、ハーレム気取りかぁ...?ククッ、流石は勇者様御一行だぜ」

 

「...何が言いたい。なんの用だ」

 

「用?あー、まぁなんつーか...そんなにやる気は無かったんだけどよぉ...ま、ここいらで勇者様になってみるのも一興かなってなぁ」

 

 ニヤリと男が俺の剣を見てくる。

 その瞬間俺は悟った。

 

 こいつは転生者だと。俺の剣を狙ってここに来たんだと。

 背中から嫌な汗が滲んでくる。

 

「勇者になる?お前は何を言っている...」

 

 尚文は相手を睨みつけながら盾を構えた。

 俺もそれに倣って戦闘態勢に入る...

 

「お?やる気じゃーん...!!まぁ、無駄なんだけどな!!」

 

 瞬間、男の姿がブレた。

 気がつくと俺の側に居て、ナイフを振り下ろしてくる。

 

「.....ッッ!!!」

 

 辛うじて姿勢を逸らすことで、ナイフの刃を胸当てに向わせることに成功した。

 

 ギャリギャリと嫌な音を立ててナイフが胸当てを抉りながら俺の直ぐ側を通過する。

 俺は即座に飛び退いて距離を取った。

 

「あっれー...今の避けるかよ。やるじゃんロリコン勇者」

 

「はっ...はぁ...!」

 

 忘れていた呼吸を再開する...あのまま動けていなかったら俺は確実に斬られていた。

 

「鋼也!...お前!!」

 

 尚文が男に向かって突進する。

 

「遅せぇよ!!」

 

 男は尚文の後ろに回って腹を切りつけたが、金属のような音がして刃が弾かれた。

 

「硬ッテぇ!!まじかよ!!ハハッ!!流石は盾の勇者ってかぁ!?」

 

「ぐっ...!!ぐ!!!」

 

 男が何度も何度も尚文を斬りつけるが、刃は肌を通らなかった...だが、尚文も完璧には反応出来ないようだ。

 

 俺は尚文の方に全力で駆け出して剣を振るう。

 

「エアストバッシュⅣ!!!!」

 

 スキルの流れに沿って全力を篭めて振り下ろす。

 

「おっと...!とと!...っっ...やるねぇ!!」

 

 鍔迫り合いは俺の優勢で進んでいく...が。

 

「ほいっと!」

 

「ぐっ!!」

 

 逸らされて鍔迫り合いから逃げられる。

 

「わざわざ脳筋に付き合う奴があるかバーカ!!」

 

「待てお前!!」

 

 男はそのままキール君達の居る方へと走った。

 

「サディナさん!!!」

 

 俺の叫びに無言で答えたサディナさんは銛を構える...

 

「お前は後だマブ女ぁ!!」

 

 男はサディナさんの横を通り過ぎようとして、尻尾を叩きつけられた。

 

「ッテぇ...!!お前獣人かよ!!」

 

「あらー?だったら何なのかしら?...後ろの子たちを狙って、ただで済むと思ってるのかしらー?」

 

「へっ...おもしれぇ。ただの売女かと思ったが存外楽しめそうじゃねぇか...」

 

「お前!!」

 

 俺は男に再び斬りかかった。

 

「ッッ...落ち着けよロリコン」

 

「皆!!ここから離れろ!!こいつは俺が何とかする!!」

 

「で、でもよぉ!!」

 

「でもじゃない!!早く!!」

 

「そうかっかすんなって。観客が居なくちゃ面白くねーだろ?」

 

 男がそう言うとナイフから黒いナニカが溢れ出した。

 

「一旦吹き飛んでな!!」

 

 黒の奔流が俺を包み込み、はるか後方へと押し流した。

 

「な...!ぐぁぁぁあああ!!!」

 

 体中が痛みとは別の何かに侵される。

 黒のナニカから解放されると、俺は地面に墜ちた。

 

「あぐ、あ...あ?」

 

 ダメージは入っているがそれほどではない。その代わり、HPのゲージの1/4程が灰色になってしまっている。なんだこれは?

 

「いや、今はそれどころじゃ...!」

 

 サディナさん達が米粒のように小さく見える。どれだけ吹き飛ばされてるんだ...

 俺はすぐに戦線に復帰する為に全力で駆け寄った...その間に見えた光景は、地獄だった。

 

 サディナさんが男に応戦し、しばらく攻撃を受け止め続け、隙を伺って完璧なタイミングで銛が男の腹を突いたが...男はまるで何も無かったかのように動き出し、そのまま動揺して隙を見せたサディナさんに肉薄して腕を斬りつけた。瞬間、サディナさんは糸の切れた人形のように倒れ込んでしまう。

 そのままキール君も、ウィンディアちゃんも、ガエリオンちゃんも、斬りつけられると同時に同じように脱力して倒れた。

 

「...っっ!畜生!!!」

 

 最後に、ラフタリアちゃんに斬りかかろうとしたが、それはギリギリスキルの射程範囲に入れた尚文がエアストシールドで防いでいた。

 

 男が尚文を何度も斬りつける。尚文も応戦しながらスキルを駆使してなんとか追いすがるが...やはり男の動きが速すぎて対応しきれていない。

 

 ...とはいえ、幸いな事に尚文にあいつの攻撃は通用していない。だったら今は皆の事を治療しないと...!一度ナイフで切られただけなら今から治療すればまだ...!!

 

 俺は藁にも縋る思いでサディナさん達の方に走った。

 

 ─────────────────────

 

「皆!!」

 

 俺はまずキール君達の方に駆け寄った。傷は思ったよりもずっと浅くて血が少し流れているだけだった。息も意識もある...なのに、全く動けないようだった。

 

「兄ちゃん、これ...変なんだ。体が全く動かねぇ...!!」

 

「どうなってるの...」

 

「な、なの...」

 

「だ、大丈夫...なのか?」

 

 とりあえず命に別状は無さそうで良かった。しかし、なんだ?この状態は...

 俺は取り出したヒール軟膏を皆の傷跡に塗った。

 

「ひとまずここで安静にしててくれ。俺はすぐに尚文に加勢してくる...!」

 

「兄ちゃん...!絶対、勝ってくれよ!!」

 

「....あぁ!」

 

 俺はキール君達に背を向けて、次にサディナさんの方に向かった。

 

「サディナさん!」

 

「良かった。コウヤちゃん、無事だったのね...ごめんなさい。まさかあれを何もなかったみたいに受けられるとは思わなくて、迂闊だったわー」

 

「体は大丈夫なんですか!?」

 

「動かない以外は問題ないわ...あの男、呪いのナイフの力だーって言ってた。こうやって動けなくなってるのも、あの一撃が効かなかったのも、全部あのナイフの力みたい...」

 

「情報、ありがとうございます...あいつは、俺が。俺達が倒してみせます。だからサディナさんは皆と待っててください」

 

「あのナイフにさえ注意すれば、今のコウヤちゃんなら充分戦えるはずよ...しっかり相手の動きを見て、冷静に対処するの。そうすれば、コウヤちゃんなら絶対、大丈夫だわー」

 

「...はい!」

 

 俺はサディナさんの激励を背に、男の元に駆けだした。

 

 ─────────────────────────────

 

「ふっっっ!!」

 

 俺は男の死角から斬りかかった。

 

「ずかずか足音が聞こえてんだよバーカ!」

 

 男はそれを避けて逆に俺に斬りかかる。

 

「ッッ!!」

 

 俺は斬りかかった時の勢いそのままに前転してそれを回避する。

 前転から立ち直る瞬間を狙って襲い掛かって来たが、それは尚文が盾で受け止めてくれる。

 

「あいつらは大丈夫だったのか!!?」

 

「命に別状は...ない!!けど、動けないみたいだ...!!」

 

 俺は、尚文を盾にしながら...あるいは尚文に守って貰いながら男に斬りかかる。それに合わせるように隙をついてラフタリアちゃんも的確に虚を突くが、男はそれにすら対処してしまう...反応速度が速すぎる!

 

 俺達から少し距離を取って自慢するようにナイフをふらふらと振っている。

 

「良いもんだろ?あれは俺のお気に入りの呪いでね...意識ははっきりしてるし表情や声も自由に出せるのに体だけが全く動かねぇ!...あの状態で嬲ったり犯したりすると最ッ高に楽しいんだぜ?」

 

「ッッ...!お前...!!」

 

 俺は全力で斬りつける。

 

「うぉっと危ない!...へへ、そうカッカすんなって!あいつらはお前らを殺した後に楽しむからさ、今は心配しなくていいぜ?」

 

「ふざけんな!!雷鳴剣Ⅳ!!!」

 

「ッッッ...!!んな大振り当たんねぇよ!!」

 

「なら、これならどうだ...シールドプリズンⅤ!!!」

 

 尚文が男を盾の結界に封じる。

 

「鋼也!思いっきりぶちかませ!!」

 

「あぁ...!言われなくても!!!」

 

 俺は怒りをぶつけるように力を込めてスキルを放つ。

 

「流星剣Ⅴ!!!」

 

 結界が解けると同時に、数多の流星が斬撃を成して降り注いだ。

 

「ぐぁぁあああ...!!」

 

 男の断末魔が聞こえる。

 

「やったか?」

 

 砂煙が晴れて...そこには、あっけらかんとした男が立っていた。

 

「なーんてな?」

 

「お前...」

 

「これは絶対防御の呪いだ。俺に直撃する一定以上の威力の攻撃は全てこの呪いに防がれる...いままでこれを破れた奴は居ないぜ?」

 

「んな...!」

 

 だからってあの流星剣を無傷でって...下手したら尚文レベルのすさまじい防御力だ。

 

「そろそろ種明かししてやるか...このまま戦っててもつまんねーしなぁ。俺のこのナイフはな、いわゆるチート武器って奴だ」

 

「チート?」

 

「そ!このナイフにはありとあらゆる呪いが込められてる。体だけが動かなくなったのも、吹き飛ばされたのも、お前の体力の最大値が削られてんのもぜーんぶ呪いってワケ。他にもまだまだあるぜぇ?斬られると死ぬ呪いとかなぁ!」

 

「...!!!」

 

 俺はすぐに男に斬りかかった。

 

「まぁ待て待て!折角だしもう少し楽しんでいけよ...な?」

 

 男は俺から少し離れると、楽しげにフラフラ攻撃を避けながら話を続ける。

 

「これから死ぬお前らに、どうやって殺されるかくらいは教えておいてやるよ...まずお前らの手足をあの女共の前でじっくりと削ぎながら切り落としてやる。そんでその後は芋虫になったお前らの目の前であの女共を飽きるまで犯し尽くす...!そんで全部楽しんだら最後はお前ら全員死ぬまで俺のサンドバッグだ!!な?悪く無いだろ...?」

 

「お前...」

 

 沸々と怒りが湧き上がってくるが、それではダメだ。冷静に、落ち着いて対処しないと勝てない...

 懸命に怒りをこらえる。

 

「鋼也...やるぞ」

 

「あぁ...」

 

「あ、ちなみにさ...」

 

 瞬間、男の姿がぶれて、俺は辛うじて剣でナイフの斬撃を防いだが吹き飛ばされる。尚文も同じように吹き飛ばされた。

 

「俺のレベルは100だぜ?」

 

「100...!?ぐ!!」

 

「おらおらおらどうしたぁ!!一発でも当たったら終わりなんだぜぇ!...防ぎきれるかぁ!!?」

 

 男が高速移動しながら俺にナイフを振るい続ける。

 俺はそれを避け、往なし、防ぎ、倒れ込みながら辛うじて回避していく...

 

「はっ、...はっ、はぁ...ぐっっ!!!」

 

「しぶといねぇ!!全く...嫌になるぜ!!」

 

 縦横無尽に動き回る男の攻撃に俺はすぐに息も絶え絶えになった。

 スキルを放つ隙もない...!!

 まずい...!!当たる!!

 

「お前の相手は俺だ!!イカレ野郎!!」

 

 尚文が盾で男を殴りつけた。

 

「...っ全く痛くねぇよバー...ッッグ!!!」

 

 視界が封じられている男にラフタリアちゃんが斬りかかるが、何故か止められてしまう。

 

「...は!見えないからってやられるほど甘くねぇぜ?...お前もすぐに観客席に送ってやるよたぬき女ぁ!!」

 

「へ...キャッ!!」

 

「ラフタリア!!」

 

 男のナイフがラフタリアちゃんに当たる前に、俺の剣が男の腹に向かって吸い込まれていき...

 

「チッ!!」

 

 やはりノーダメージで防がれた。

 

「ラフタリア!!大丈夫か!!?」

 

「...!は、はい!...おかしいですね、確かに少し斬られたはずなのに...」

 

「邪魔しやがって!!」

 

 男は再び俺を標的にして斬りかかってくる。

 

「....ッッ!!」

 

 それらをしっかりと受け止めて...受け止めて?何かがおかしい。さっきのラフタリアちゃんの事もそうだ。

 

「おいおい!考え事かぁ!?」

 

「...はっ、ぐっ...!!」

 

 再び高速移動による連撃が行われる...

 

「尚文!!少し時間を稼いで...くれっ!!」

 

「わかった...!」

 

「今度はお前か?まぁいいぜ...どの道全員死ぬんだからなぁ!!」

 

 尚文が男に襲いかかると、大人しく男は尚文を斬りに向かった。

 

 その間に、俺は隙を伺いながら違和感を整理していく。

 そういえばこいつは最初からおかしかった。

 捉えられない程の速度で動いたかと思えば、眼の前で振るわれるナイフは目で捉えられる速度だった。

 斬撃も、胸当てにかするだけで深い傷跡を作るくらい強力なはずなのに、ラフタリアちゃんも皆も...それこそナイフで手を斬ったくらいのダメージしかなかった。

 絶対防御なんて物があるくせに、わざわざ俺の攻撃を避けたり受け止める事が多かった。

 そして最後の攻撃、なんでラフタリアちゃんに動けなくなる呪いをかけなかった...?

 

「回数...いや、個数制限か!!同時に発動出来る呪いに限りがあるんだ!!」

 

「あ?...あぁ、ピンポン大せいかーい!!おめでとうおめでとう!!...で?だからなんだってんだ?」

 

 男が尚文を蹴り飛ばして俺の方を見て来る。

 恐らくあの超速移動も、強力な斬撃も、見えてないはずの攻撃に反応出来たのも、全て呪いの力ってわけだ。

 

「チマチマ切り替えてるのを見るに、同時発動出来るのは2個って所か?俺を吹き飛ばした時はHP削りと吹き飛ばしの2種類、俺に斬りかかった時は斬撃強化と体が動かなくなる呪いの2種類...そんな所か?」

 

「チッ...さっきからうぜぇな。だったらなんだって言ってんだよ!!」

 

 男が俺の目の前に現れて減速する事無く俺の胸を斬りつけた。

 

「ッッ...!!」

 

 斬られたが、俺の防具は破られること無く刃を弾いた。

 

「あ?...ただの布じゃねーのか!?」

 

「そうだよ!!」

 

「チッ!!」

 

 斬りつけたが、男は一瞬で回避しており空を切った。

 

「尚文程じゃないが俺にだってそれなりの防御力はある。強化無しで俺の事を斬れると思うなよ?」

 

「はっ!だったらむき出しの肌を切れば良いだけだ!!」

 

 男が再び一瞬で俺の目の前に現れて、事前に置いておいた剣とナイフがぶつかった。

 

「は...?」

 

「シッッ!!」

 

 再び剣が空を斬る。すぐに俺は少し飛び上がって、背中に斬撃を食らう...が、強化の呪いは入っていなかったので防ぎきった。

 そのまま空中で振り向く。

 

「水斬波Ⅴ!!」

 

「ッッッ!!!」

 

 男は絶対防御でそれを受け止める。

 

「な...なんなんだテメェは...」

 

「お前の能力はムラが大きすぎる。強化しているのといないのとじゃ雲泥の差があるよな...お前、実際のステータスは俺達と同等かそれより低いくらいだろ?」

 

 恐らく素のステータスは敏捷特化のかなり尖った能力値になっているのだろう。素早さだけは強化無しでもかなりのものがある。

 

 だから敏捷を強化されれば見る事も叶わない...が、直前で解除された後の攻撃に反応出来る程度には遅い。

 筋力を強化すれば俺のスキルと鍔迫り合いしたり防具にデカイ傷を作る事もできるが、強化無しだと普通のナイフ程度のダメージしか与えられない。

 そしてなにより、サディナさんに鍛錬を付けてもらって数週間程度の俺ですら稚拙に感じてしまうほどに芸が無い。技がない...どこを狙いたいのか手に取るようにわかる。

 そりゃそうだ。こんな便利な力を持ってるならわざわざ技を磨く必要なんてないのだ。狙いたい場所を好きに狙えば後は動けなくなった相手を嬲り殺すだけの作業だ。

 

 この様子だとあのスピードに対応するために知覚処理能力の強化のような物も使っているのだろう。

 そうなればもうあのスピードでの攻撃は脅威にならない。

 

 サディナさんの言っていた意味が良くわかった。理解して、冷静に対処すれば絶対勝てない相手じゃない。

 

「さっきからうぜぇなお前!!ちょっと防げてるからって調子こいてんじゃねぇぞ!!?」

 

 男がより苛烈に俺を責め立てる...!!

 高速移動攻撃は見てからでは対処出来ないから予め剣を置いておく...見て対処出来る高威力か行動不能の呪いが籠った一撃は確実に受け止める...これを徹底すれば時間が稼げる。

 

 高校生の頃ドはまりしたゲームと似てる。初見だとキレそうになるくらい理不尽にしか見えない攻撃だって、何度も繰り返せばパターンが見えて来る。パターンが見えれば余裕ができる。余裕ができれば攻撃の隙も見えて来る...!!

 尚文とラフタリアちゃんの協力もあって、ついに一筋の活路を見出した。

 

「シィィッッ!!」

 

 先回りした俺の剣が男の胴を捉える...!!

 

「てめっっ!!」

 

 絶対防御に力を回せば、手札がぐっと減る...!!

 

「はぁぁぁぁ!!!!」

 

 そのままラフタリアちゃんと両側から男を全力で斬りつけていると、後ろから尚文ががっしりと男を羽交い絞めにして抑えつけた。

 

「なっ...!!ぐ!!クソ!!」

 

「攻撃に反応する防御って言ったよな...生憎...盾の勇者なもんでな!!攻撃は出来ないんだよ!!」

 

「離せ!!クソが!!!」

 

 男がブンブンと体を揺すって暴れるが、尚文は懸命に抑えつける。

 

「鋼也!!俺ごとやれ!!お前じゃないと無理だ!!!」

 

「...っっ。あぁ!!」

 

 一瞬、躊躇いそうになったが俺は剣を上に掲げる。

 

「ナオフミ様!!?」

 

「問題ない...!!俺は...盾だ!!絶対に耐えきる!!」

 

「クセェ事言ってんじゃねぇよ!!まじでぶっ殺すぞクソが!!」

 

 男が俺が飲み込まれたのと同じような黒い瘴気をナイフから生み出す。

 

「クク...!このままお前の体力を削りきってやるよ!!防御力が高いからって死なないと思ったか!!?バカが!!分かったらさっさと離しやがれ!!」

 

「舐めるな...!!」

 

「クソッ...なんでだよ死にてぇのかバカが!!!」

 

 俺の剣から蒼いエネルギーの奔流が立ち昇る。周囲には荒々しい波のようなイメージが現れる。

 ...EPも全て注ぎ込み、剣の消費軽減補正をもってしても俺のSPのおよそ半分を消費して力に変える。

 

「グラム...ジャッジメントⅢ!!!」

 

 蒼の奔流が一筋の刃となって、男に襲い掛かる。

 

「....っっっっぐ!!!!!」

 

 絶対防御の障壁がそれを阻むが、じわじわと男に近づいていく...このままなら俺の刃が奴に届く...が。

 

「....くっっ!!」

 

 不味い...このままだとスキルの発動時間の方が先に尽きる...!!

 

「くそ...くそぉっ!!!」

 

「は...はは...あっはっはっは!!!」

 

 男が高笑いをしている最中、それは俺の耳に聞こえて来た。

 

『『『龍脈よ、我等の想いを聞き届けたまえ。力の根源たる我等が希う。真理を今一度読み解き、彼の者に仇名す障壁を打ち砕く活路を与えたまえ...!!』』』

 

「「「雷獣臨舞!!」」」

 

 サディナさん、ウィンディアちゃん、ガエリオンちゃんの三人で合唱魔法を行ったのか!!確かに、口と頭が無事ならば魔法は打つことは出来る...!

 いつもなら魔法を放つ素振りがあればすぐに接近して殺せばよかったが、今のあいつにそんな余裕は無い...!完全に意識外からの一撃だ!!

 そんな風に考えていると、三人の方から凄まじい量の雷が俺へと殺到した。

 

「な、ぐ...ぐぁぁぁあ!!!」

 

 体をすさまじい痛みが走る...!!雷に体中が侵されている。

 

「な、ん....え?」

 

 グングンと減少する体力のすぐ傍、俺のステータスが凄まじい勢いで上昇していた。一瞬同士討ちかと思ったが、強化魔法だったようだ。継続ダメージのおまけつきで。

 ...これなら!!!

 

「はぁあああああ!!!!」

 

 グリップを今一度強く握り直し、全力で剣を振り下ろす...!!

 バキバキと音を立てて、障壁が崩れていく...!

 

「ま...待て...!!ふざけるな!!」

 

「ああああ゛あ゛ぁ゛ぁ゛────ッッッ!!!!」

 

 喉が張り裂けそうな程に叫び、ついにその時は訪れた。

 剣が地面へと突き刺さり、完全に振り下ろされる...砕け散った障壁を超えて、蒼の斬撃は男の肩から胸にかけて完全に切り裂いていた。

 

「あ...がっ...!!」

 

 男が倒れる。

 そして、後ろにいた尚文は...

 

「ぐっ...あぐっ!!」

 

 同じように肩から胸にかけて深い切り傷が入っており、血が滲んでいた。

 

「尚文...!!」

 

 俺は雷で痺れてフラフラの体で尚文の元に駆け寄って魔法を唱える。

 

『力の根源たる剣の勇者が命じる。理を今一度読み解き、彼の者を癒せ!!』

 

「ツヴァイト・サンダーヒール!!」

 

 魔法で尚文に治療を施し、剣から取り出して軟膏やらなにやらをとにかく塗りたくる。

 

「ツヴァイト・サンダーヒール!!...ツヴァイト・サンダーヒール!!」 

 

「...も、もう充分だ」

 

「ナオフミ様...!!ご無事ですか!!?」

 

 ラフタリアちゃんが尚文に駆け寄る。

 

「あぁ...もう大丈夫だ...っっぐ!!」

 

「おい、完全に癒えてないんだからまだ!!」

 

「心配するな...それより今はあいつだ」

 

 尚文がフラフラと立ち上がり、男の方へと歩いていく。

 

「あぐ...痛テェ...くそ...くそ...」

 

「おい...あいつらや俺にかかった呪いを解け」

 

 尚文が男の手から離れているナイフを蹴り飛ばして座り込み、髪を掴んで問いかける。

 

「くそ...くそが...!!くそ...!!」

 

「おい...!!」

 

「....ははっ...誰が解いてやるかバーカ...勝手に死んでろゴミ共が...」

 

 それだけ言うと男は力尽きてしまった。

 

「....チッッッ!」

 

 尚文が苛立ちながらどっかりと座り込んだ。

 

「なんだったんだこいつは...ふざけやがって」

 

「...尚文。ごめん...俺...」

 

「...気にするな。お前は良くやってくれた。あそこで手を抜くようだったらそれこそ俺は死んでたかもしれん」

 

「でも俺...尚文を傷つけて、人を殺して...」

 

 全力であいつを倒す事だけを考えていた思考に余裕が出来て、力尽きる様子を見て思い知らされた。

 俺は、人を殺したんだ...

 

「気にするな...とは言わん。だが、あいつは死んで当然のクズだった。お前は成すべきことを成しただけだ...なんなら俺のせいにすればいい。俺がお前に命令してやらせたんだ。俺が殺したのと一緒だ」

 

「...いや、ありがとう。大丈夫...俺は一旦、みんなを集めて来る」

 

「分かった。俺は少しここで休む...ラフタリア、鋼也を手伝ってくれ」

 

「でも、ナオフミ様....」

 

「俺の事は大丈夫だ。それともあいつらをあのまま地面に倒れさせておくのか?」

 

「...わかりました。剣の勇者様、お手伝いします」

 

「うん、ありがとう」

 

 俺はラフタリアちゃんと一緒に皆を馬車の方へと運んだ。

 

 

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