剣の勇者の成り代わり   作:min-can

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取引相手

「なぁ、これってゲームみたいだな」

 

 俺がベッドで現実逃避していると尚文が呟いた。

 

「っていうかゲームじゃね?俺は知ってるぞこんな感じのゲーム」

 

 元康がドヤ顔で返事する。顔が良いからうざくても見れるな...

 

「というか、有名なオンラインゲームじゃないか?知らないのか?」

 

「俺も結構なオタクだけど知らないな」

 

「嘘だろ!?エメラルドオンラインだぜ?流石にネット触ってんなら名前くらいは聞いたことあるだろ?」

 

「なんだそのゲーム。聞いたことも無いぞ」

 

「いやいや、エメラルドオンラインっていったらMMO日本代表みたいな所あるぞ?名前も聞いたこと無いって本当に日本人かよ」

 

「知らねぇよ!後俺は日本人だ...逆に聞くが、オーディンオンラインとかファンタジームーンオンラインとか聞いた事あるか?」

 

「は?なんだそのマイナーそうなゲーム」

 

「こっちこそMMO日本代表だっつの。お前こそどこの日本なんだよ!...なぁ鋼也?」

 

「いや、悪いけどどっちも知らない」

 

「「はー!?」」

 

「いやいや、この世界はネットゲームじゃなくてコンシューマーゲームですよ」

 

「樹まで何言ってんだ?」

 

「ディメンションウェーブですよ!ほら、この世界の終末の波の予言ともぴったりの題名です。なんちゃらオンラインなんかじゃないですよ」

 

「なんじゃそりゃ」

 

「嘘ですよね!?世界中で大ヒットのRPGゲームですよ?」

 

「聞いた事もねぇよ...えぇと?一旦情報を整理するか。俺にとってはこの世界はMMO、エメラルドオンライン。そんで樹にとってはコンシューマーゲームのディメンションウェーブ...尚文と鋼也は?」

 

「知らない。ゲームの世界だったのか?ただの異世界じゃなくて?」

 

「俺はライトノベルだな...えぇと、うーん...「次元ノ波二抗ウ勇者」って名前の本」

 

 流石に盾の勇者の成り上がりとは言えんしな...我ながら咄嗟になんとか出せたもんだ。まぁそのままなんだけど。

 

「本...あ、そういえば俺もこの世界に来る前に「四聖武器書」とかいう本読んでたんだ!じゃあ俺はそれになるのか...?」

 

「全員この世界の知識についての何かしらの媒体には触ってる訳か...ちなみにどれも名前を聞いたこともねぇな」

 

「い、一応俺の所のはアニメ化もしてるんだけど...」

 

「知らん」「同じく」「悪い...」

 

「さっき冗談で言った事だったけどさ...もしかして俺らって別々の日本から来たんじゃないか?流石にエメラルドオンラインを知らないは信じられないんだけど」

 

「僕もですね。あながち間違いではないかもしれません」

 

「まじで...?いや、確かめる方法ならいくらでもあるな。みんな、今から俺の質問に答えてくれないか?」

 

 そこから尚文の質問が始まったが、全員回答はバラバラ...もしくは理解不能だった。

 

「本当に俺達は別々の日本から来たみたいだな...」

 

「まぁ、だからなんだという話ではありますけどね」

 

「そんな事ないだろ...この世界でたった四人だけの同郷の仲間と思いきや、思い出話で懐かしむ事もできやしないんだぞ?」

 

「それはまぁ...そうかもしれませんね」

 

「ま、折角知識豊富なゲームの世界に来れたんだ!昔の事はさっぱり忘れてこの世界を楽しめば良いんじゃないか?」

 

「随分軽いな...ま、言ってる事は間違っちゃないけどさ」

 

 尚文が元康のポジティブ発言に呆れていた。

 俺もそれくらいポジティブに生きれるようになりたいな...いや、実際にもっとポジティブに考えるべきなんだ。

 盾の勇者の成り上がりの魅力的なキャラ達をこの目で見れるんだぞ?亜人の美人さんとか垂涎物だろ!他にも美人って言われてるキャラは一杯いるし、フィロリアルとかの不思議生物とか...後は尚文の料理も食ってみたい!

 

 なんかやる気出て来たな...

 

「というか、俺は知識豊富じゃないんだが...この世界のあらすじとかのざっくりした所しか知らないし。鋼也はどうなんだ?同じ本媒体だし知識に不安は無いか?」

 

「うーん、一応基本的な所は抑えられてるとは思うけど」

 

「そうなのか...くっそ俺だけ全然知識が無いのか」

 

「そうかそうか!それじゃあこの元康お兄さんが常識の範囲で知識を恵んでやろう...」

 

 元康がいやらしい顔で尚文に近づいていく。

 

「まずな、俺の知るエメラルドオンラインでの話だが、シールダー...盾がメインの職業な」

 

「うん」

 

「最初の方は防御力が高くて良いんだけど、後半になっていくにつれて受けるダメージがバカにならなくてな...高レベルは全然居ない負け組の職業だ」

 

「ノォォオオオオ!!!」

 

 尚文が叫ぶ。ノリ良いなお前...

 

「樹...!!お前の方は!?」

 

「僕の方も...アハハ」

 

「うっそだろ!?鋼也...!!」

 

 尚文が縋るような瞳で俺を見つめて来る。う、そんな目で見るなよ...不遇扱いだったって言うつもりだったのに言えないじゃないか。

 

「お、俺の方では勇者は皆同じくらいの性能って設定だったかなぁ...!盾職は攻撃力が極端に制限されるけど、その代わり防御力と支援能力に全振りしていて、一人では戦えないけど仲間が居れば十分に他の勇者同様の活躍が出来たはずだ。後勇者四人での協力ではタンク+バッファーって感じで無くてはならないって感じのさ...!」

 

「そ、そうなのか...!良かった!!」

 

「へぇ、こっちじゃほとんど見かけない死に職だったからちょっと信じられないな」

 

「ですね」

 

「おいおいおい...俺を貶めてどうする!同じ勇者仲間だろ!?」

 

「ははっ、悪ぃ悪ぃ!そんなつもりはないんだけどさ」

 

「そうですね...すみません」

 

「いや、いいんだけど...俺が何にも知識を持ってないのは一緒だし。はぁ、先が思いやられるな」

 

「それじゃあ樹、鋼也...地形とかどうよ」

 

「名前こそ違いますけど、大体一緒に見えますね。これなら魔物の分布やキークエストなんかも一緒かもしれません」

 

「悪い。俺は小説媒体だからそこらへんは分からないわ...ゲーム同士相談しててくれ。こっちは本同士で話しとく」

 

「オッケー。ま、後でお前らにも多少は伝えとくぜ、同じ狩場に来られたら経験値が勿体ないしな」

 

「ですね。最低限の情報共有は効率の為にも必要かもしれません」

 

 それから元康と樹は楽しそうに...それでも少しバチバチとする物を感じさせながら相談を始めていた。

 

 多分、自分達二人が一番この世界の情報を知ってるからどうやって必要事項を確認して、かつ相手を出し抜いて俺TUEEE出来るか皮算用してるんだろうなぁ。

 

 今の所あいつらと盗み聞きしている奴らの中での認識としては

 

 元康=樹>俺>>尚文

 

 ...って所かな。まぁちょっとは下に見て貰ってる方がこっちも動きやすい。少なくとも最初の波までには俺と尚文が三勇教の教皇に対抗できるレベルにはしておきたい。まぁ、やり直しの描写を見る限りレベル40もあれば強化方法も相まって教皇にダメージリソースは無くなるだろ。

 

 ゲームの方の情報を集めるのも大事そうだけど、俺は尚文のフォローに回っておくか...冤罪後のフォローの仕方が決まってないんだし、最悪の事態を考えて今のうちに強化方法を共有しとくか。

 

「尚文」

 

「鋼也!お前はあっちに居なくていいのか?」

 

「あぁ、正直本の知識じゃあいつらの話にはついていけなくてさ...その代わりといっちゃなんだけど、たぶん俺だけが知ってる知識を共有しとこうかなと思って」

 

「...良いのか?」

 

「もちろん!なんかゲーム組ばっかり楽しそうでムカつくし、チーム書籍組だけで内緒で出し抜いてやろうぜ?どうせ貴重な狩場とかアイテムの知識は出し渋るだろうしな」

 

「...面白いな」

 

 尚文がちょっと悪そうな顔をする。

 

「でも、その理論だとお前も俺に黙っておく知識があるんじゃないか?」

 

 ギクッ...!

 

「そりゃあ...全部はちょっとな...そこは応相談というか、これっていうか?」

 

 俺は親指と人差し指でわっかを作る。多分今の尚文なら親切心でも受け入れてくれるかもしれないけど、やっぱり趣味嗜好的にもビジネスライクな方が信用してくれる気がする。

 

「へぇ...いいな。タダで全部渡されるよりは全然信用できる。ようするにこれはこれから俺との取引の為の先行投資って訳だ」

 

「そ。尚文には俺が行かない地域の素材集めとか、情報集めとか、単純に金銭とか...色々な物で俺の持つ情報と俺の欲しい物を交換して欲しいんだ」

 

「ずいぶんとお前有利な取引だけど...それは俺の知識が無いのが悪いな。でも良いのか?自分で言うのもなんだけど、俺ネトゲの経験とかから結構商売得意なつもりなんだけど」

 

「そうなのか...うん。そこはまぁ、正直俺は尚文が強くなることにデメリットを感じないし、タダで持ってるものを少しでも金や素材に変えれるなら得になっても損は無いしな...」

 

「お前なぁ...色々教えてくれるみたいだから俺も親切心で言ってやるけど、俺への親切なのか同情のつもりかは知らないが、自分の持ってる商材の価値を下げるような事を言うのは厳禁だぞ?正直黙って買い叩いてやろうかと思ったからな...」

 

 びしっと尚文が俺の顔に指を突き付けて来る。

 

「う...正直俺は商売の塩梅とかあんまり分かんないし、そこら辺の容赦も込みで今からの情報提供をしようかなと」

 

「まぁ、良心に訴えかけるのも使いどころによっちゃ悪い手じゃないんだけど...それじゃあお前の先行投資とやらは俺がお前に商売の基礎を教えてやる事で帳消しにさせてもらおうかな。これからは対等な相手として取引させてもらうぞ...どうだ?」

 

「ぐ...」

 

「どうした?二束三文で売っても損にはならないんだろ?」

 

「わ、分かった...」

 

「まいどあり!...これに懲りたら二度と自分の手札を貶めるような事は言うんじゃないぞ。他にもまぁ、簡単に教えられる事は何個か教えてやるよ。そっからはお前が教えてくれる先行投資とやらを聞いてからだな...どのみち投資のつもりなら対価は待てるだろ?」

 

「そうだな...頼りにしてるぞ師匠」

 

「げ、やめろよそういうの」

 

 尚文が鬱陶しそうに、でもちょっと楽しそうに否定してくる。

 

「それじゃあ俺の番だな...ちょっと待っててくれよ」

 

 俺は元康と樹が相談事をしている机から紙とペンを取る。

 

「紙...?」

 

「あぁ、今から言う事は...なんていうか、ちょっと口頭で説明しきれる自信があんまりないのと、全部覚えるのは難しいだろうなと思ってさ」

 

 さて、どこまで教えるべきか...四聖の分だけでも充分な強化になるし、残りの眷属器の分は商材に残しておいても良いんだけど...いや、今回商売を持ちかけてるのはあくまで尚文に取引相手として認識してもらって、尚文の支援をしやすくする為だ。

 それに万が一俺の出し渋りで尚文に死なれたら寝覚めが悪すぎる。

 

 俺は強化方法をヘルプを見ながら丁寧に書いていく。

 

「尚文はその盾の強化方法を認識してるか?」

 

「えっと...魔物を倒して、素材集めとレベリングをしながらウェポンブックの盾をどんどん解放する事で、より強い盾が手に入ったり能力解放による永続強化やスキルの入手が出来る...って事でいいよな?」

 

「うん。一番基本的な強化はそれで問題ない」

 

「って事は他にも強化方法があるのか?」

 

「うん。説明すると長くなるから後にするけど、先に言うなら隠されてる機能の中でもっとも大事なのが2つと、武器固有で共有できる強化方法が20種類ある」

 

「にじゅ...!?そんなに伝説の武器があるのか?」

 

「いや、俺達四人が四聖って言われてて、その下に四聖1つにつき2つ、計8つの眷属器があるんだ。この世界では一つが人の世から消えていて七星武器って呼ばれてる。そんで親玉の四聖は一つにつき3つの強化方法、眷属器は1つの固有の強化方法を持ってる」

 

「なるほど...そしてそれを共有する事でより強くなれるって事か...なぁ、ゲーム組が知らない知識を共有するって言ってたけどさ、もしこれがそうなら秘密にしていい情報じゃ無くないか?強化方法の共有を前提とした難易度だったら即死レベルな気がするんだが」

 

「いや、序盤なら充分固有の強化だけでやっていけるくらいの難易度のはずだ。俺の小説を信じるなら...だけど」

 

「まぁそれを言い出すと、あの二人がああやって相談してるのが無為になるしな...少なくとも取引として出してるって事は強化方法の情報はお前がもう確認してる事なるんだろうし、他の知識もある程度信じて良いと思うしか無いか」

 

「ちなみに小説の中だと、四聖勇者はそれぞれが大きな問題を起こすまで互いを出し抜く事しか考えてなかったから序盤の方は強化方法の共有なんて欠片も考えてなかったな。一人が気付いてからもなかなか信じてくれなくてさ」

 

「へぇ...まぁ、自分達の知ってるゲームだって思ってるあいつらにそれぞれ強化方法が違うとか言った所で冗談とか、それぞれの武器の仕様違いとしか認識されなそうってのはわかる気がするな。俺も仕様違いだって言われたら納得しちゃいそうだしな...なるほど、ゲーム組は効率的なレベリングやアイテム集めが出来る代わりにこの世界の成り立ちとか武器の詳しい情報には疎い訳か。そういや俺の読んでた四聖武器書にも勇者の性格とか、王女の事とか、色々と書いてたな」

 

「へぇ、どんなのなんだ?」

 

「仲間想いの槍の勇者、正義の英雄弓の勇者、堅実な剣の勇者、盾は...白紙だったな」

 

 堅実...?大活躍の剣の勇者じゃなかったっけ?いやまぁ錬はある意味堅実だし...いや、この場合俺の事になるのか?堅実...喜んで、いいのか?

 

「なるほど...俺が読んでたライトノベルでも大体そんな感じだな」

 

「王女が唯一のヒロイン枠っぽいからなんかちょっとビッチっぽいんだよな!」

 

「てかビッチだったな」

 

「やっぱり?ってことは王女には要注意か...他にはなんかあるか?」

 

「そこは要取引って事で...」

 

「ちっ...流石にそこまでちょろくは無いか。そりゃそうだな、有限で貴重な商材だ。なんかお前の方が情報多いから傀儡にされそうで怖いが...まぁ、そこは俺の方でも情報の裏取りをする事と....後はまぁ、信じてるぜ?剣の勇者様、同じチーム書籍組としてさ」

 

 うっ、ここで良心に訴えかけて来るのか...尚文にされると弱い。

 

「...本当にまずい情報は教えるよ。正直強化方法さえ共有出来れば、ある程度の問題はごり押し出来るはずだからさ」

 

「まぁ、強化倍率が如何ほどか分からないけど、四聖が同格な以上少なくとも4倍以上の強化は確定な訳だもんな...下手したら20倍か、まるでチートだな」

 

「まぁ、そう勘違いするくらいの強化は保証しようかな」

 

「なんか、安心感はすごいけどワクワクは減った気がするな...」

 

「まぁ、そこまでやっても勝てないレベルの敵とかもこの世界には居るから安心してくれよ」

 

「うげ!...なぁやっぱ流石にこの情報はあいつらにも渡した方が良いんじゃないか?」

 

「...一応、あいつらが俺達に狩場を教えてくれる時に渡しておくよ」

 

「ちょっと腹立たしいがそうしてくれ。流石に命が関わるとゲーム組だの書籍組だの言ってられないし」

 

「そうだな...よし!完成...!これを見てくれ」

 

 俺は尚文に強化方法を全て書いた紙を渡す。

 

「何々...強化方法の共有に大切なのは信じる事...まぁ、今の所鋼也を疑う理由は特に無いしな...ウェポンコピー、アイテムドロップ......出た!」

 

「良かった」

 

「次に四聖...げ、なんか似てる強化方法もあるな」

 

「紙に書いて良かっただろ?」

 

「あぁ。一応ヘルプに出れば後からいくらでも確認できるけど、やっぱ文字で見る方が分かりやすいな。後これ全部説明してたら夜が更けそうだ...俺も一旦完全な理解は諦めて強化方法の解放を優先してるしな」

 

 俺は元康と樹の分も書いていく...

 

「っし!全部終わった...!!これ全部やっていくのか...気が遠くなりそうだな」

 

「まぁこれからの冒険は全部それをやる時間になるし、序盤じゃできない強化方法も多いしな。大丈夫だと信じたい」

 

「確かに。後々から効きそうな強化方法が多いな」

 

「だからこそ序盤は各々の武器の強化方法だけで充分なのかもな」

 

「理に適ってるな。それにしてもなんで盾の強化方法はこう...曖昧というか、なんというか...」

 

「でも、大切だぞ?強化方法の共有なんか、盾の勇者の認識の有無で1.5倍から2倍くらいステータスが変わるらしいしな」

 

「なんていうか...さっきからバカみたいな強化倍率ばっかりだな。ソシャゲじゃないんだからさ」

 

「はは...まぁそれくらい聖武器ってのはすさまじいんだよ」

 

「なるほどなぁ...っし、こんだけのもん教えて貰ったわけだし、俺も商売の基礎をみっちり教えてやるか。取引相手として最低限の知識が無いと話にならないしな」

 

「はは、お手柔らかにお願いします...」

 

 それから、俺は尚文に商売の事をみっちり教えられた。簡単な行商なら出来るかもしれない...

 そして元康と樹にここには近づかないでくれと言われ、代わりの狩場を教えて貰った。俺は代わりに強化方法の紙を渡したけど...まぁ、明らかに何言ってんだこいつって感じの顔だったな。

 致し方ない。

 

 そうして俺達の夜はあっという間に更けていった。

 

 

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