剣の勇者の成り代わり   作:min-can

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アニメ、アトラ可愛すぎておったまげました。
アトラが立ったぁ!
後村の子供たちもロリショタ共に可愛すぎてどうしましょう...このまま集めるといよいよコウヤがロリショタコンの謂れを否定できない感が...



再起

 あれから皆を馬車に乗せて、俺達は一息つくことが出来た。

 

「あいつの使ってたナイフ...」

 

 手を触れようとすると、バチリと電流のような痛みが走って弾かれた。

 

 危険:不正なアイテムに接触しました。ただちに離れるか破壊してください。

 

 危険...か。よっぽどやばいなんかがあるんだろうな。

 確かにあんな凄まじい力が何のデメリットも無いとは思えないな。よっぽどこの世界や勇者にとって有害な物なんだろう。

 

 俺は魂癒水を飲んで回復したSPでスキルを放ちナイフを破壊した。

 思ったよりも簡単に壊れたな...おもちゃのようなナイフだったらしい。呪いを与える事に特化している物だったようだ。

 

 そんな事を考えていると、ナイフの装飾から赤黒い靄があふれ出す。

 

「...!!?」

 

 急いで離れたが、溢れ出た靄は凄まじい勢いで俺に纏わりついた。

 

 最悪だ...破壊は早まったか?でも、もし他の奴にこんなものが渡ったらと思うと壊さない訳にもいかないし...

 

 ザザッ...!

 

 俺の視界に写るステータス魔法にノイズが走る。

 

 嫌な予感がした俺はステータス画面を開くと、全ステータスの一部が体力と同じように灰色になっていた。体力に至っては戦いの時の減少も相まって、半分以上が灰色になってしまっている。

 だいたい3割くらい削られたのか...?中位のカーススキルと同じくらいの呪いがかかってるな。

 

「...仕方ない。どの道誰かがやらなきゃいけなかった事だ。尚文は攻撃できないから俺とラフタリアちゃんしか動けない以上、俺がこれを受けるしかなかった...そう思うしかないな」

 

 最後の最後まで、最悪な置き土産をしていきやがる...

 

 馬車に戻った俺は死体に油をかけて燃やしてやった。

 いくら最低な事をしていたであろう男でも、死体まで弄ぶ必要はない。さっさと弔ってやるのがせめてもの人道だろう。

 

 いや、人を殺した罪をこうして弔ってやったんだと軽くしたいだけか。

 

「....終わったか?」

 

 尚文が問いかけて来る。

 

「うん」

 

「酷い顔してるぞ...少し休んだらどうだ?」

 

「いや、はやく皆を治療したい...出来るかは分からないけど、治療院で解呪をしてもらおう。次の波には間に合わないだろうけど、更に次の波までには動けるようになってないと辛い」

 

「そうだな...俺もHPが7割程呪いで削られてる。いくら防御力があると言ってもこの数値は不味いな」

 

「7っ!!?お前それ、俺の攻撃で本当に死にかけたんじゃ...」

 

「...体力ゲージって赤色になるんだな」

 

「瀕死じゃないか...!!じゃあ俺、本当にあと少しで尚文の事を...」

 

心臓が制止するような感覚の後、急速に鼓動が高まって来る。

 

「死んで無いから問題ない。それよりお前はどんな被害を受けた?」

 

「い、いや...そういう訳には...!だって...!」

 

「気にするなって言ってるだろ...まずは被害の確認だ。さっさと答えろ」

 

「.........俺は全ステータス3割にHPが半分近く削られた。他の皆は体が動かない呪いだけかな」

 

「ズタボロだな...ほんと、あいつがバカな慢心野郎で助かったな。最初から本気で戦われてたら俺達全員死んでた」

 

「うん...」

 

「お前が出会った時言ってた、全ての強化を駆使しても勝てない敵ってのはあいつみたいな奴の事だったのか?明らかにこの世界の理から逸脱した力だったよな...本人はチート武器とか言ってたが、盾の翻訳ズレか?」

 

「いや...そのままチート武器で合ってる」

 

「というと、なんだ?やっぱこの世界はゲームだったのか?」

 

「それも違う...多分。ここまで巻き込んでしまったし、本当は尚文には目の前の波に集中してもらいたかったから黙ってたけど、俺の知ってる事を伝えておく」

 

 ここから上手く言いくるめる手段なんか思いつかないし、もうこれは言わざるを得ない状況といって差し支えないだろう。それに、正直今の俺に尚文に嘘をつけるような余裕は無い。

 

「あぁ...頼む。せめてあいつがなんなのかくらいは知っておきたい」

 

 俺はそこから尚文にあの男のような転生者の存在を説明した。

 

 この世界における波という厄災には神を僭称する上位存在が関わっている事。その上位存在はこの世界を滅ぼそうとしている事。その為に異世界からこの世界に害を与えることが出来るような性質を持つ人間を転生させて暴れさせている事。奴がその一人で、そういった転生者には場合によって本人達がチートと呼ぶ歪んだ力を持つ武器や能力が与えられている事。

 

 そして、転生者達に課せられた目的の一つが俺達聖武器の所持者を殺して楔を緩める事である事。

 

「楔...?」

 

「あぁ。四聖武器ってのはこの世界を支える楔なんだ。四聖が機能する事でこの世界は維持されていて、四聖が居れば波の脅威度も下がり間隔も広がるけど、一人減るたびにその勢いはどんどん増していく...そして四聖を全員欠いた状態で波が発生したり、波の途中で四聖が死ぬと、その世界は文字通り滅ぶ」

 

「俺達は存在するだけで楔となってこの世界を守っている訳か...異世界の一般人にそんな役割押し付けるなよ。本当にクズだなあいつら」

 

「まぁ、それは最初からそういう仕様だからこの国の人とかは関係ないし...そんな訳で、この世界にはあんな転生者みたいな奴がゴロゴロ存在する。俺達は波に対処しながら、いずれはそいつらとも戦っていかなきゃならないんだけど...今まで尚文に言わなかったのはまずは波に集中して確実に力をつけてから協力をお願いしたかったからだ」

 

「なるほど...な。まぁ確かにあんな奴らが居るなら身構えるしかないな」

 

「そこまで神経質にならなくてもそれほど高い頻度で会う事は無いと思うけど、今回は不幸な遭遇だと思って...」

 

「本当にそうか?あいつは俺達を探していたようだったが...」

 

「それは...」

 

「お前の知識、確かに正しいんだろうさ...今の所異なる点は見当たって無いんだろ?大方、物語の中盤か終盤で転生者の誰かが暴れて激戦になるんだろうが...もう俺達は出会ってしまったぞ?これからもそうじゃない保証はあるか?」

 

「......」

 

 内心懸念している事ではあった。本当に俺の知識は正しいのか...今回の一件は一旦信じようと思えていたそれを再度疑わざるを得ない物だった。

 

「...悪い。疑心暗鬼にするつもりは無かった。ただ、そういう懸念はしておいた方が良い...それだけだ。俺も今日の事で完全に目が覚めた、いくら盾の勇者だって言っても死ぬときは死ぬ...防御を抜かれる事も、絡め手で殺されることもありえるってな」

 

「それは...」

 

「お前を責めてる訳じゃない。ただ、ずっと防御力が高いせいで考えてもいなかった戦いへの自覚が生まれただけだ...まずはお前の所の奴らを治療院まで見送ったら親父に防具を作って貰って来る」

 

「そうだな...うん。それがいい」

 

「金稼ぎも大事だが、レベリングにももっと力を入れた方がいい事も分かった。安心しろ、そこら辺のバランスは最低限弁えてるつもりだ...想定する相手は強い方がいい。今日のあいつよりももっと理不尽な奴らと戦う事を想定してこれからは強化していくさ」

 

「あぁ...頼む。今日だけでも尚文が居なかったら何度もやられてたタイミングがあった。一緒に戦ってくれるとありがたい」

 

「それはもちろんだが...元康と樹は強化を縛った状態じゃ逃げる事も出来ないよな」

 

「それは...俺達でなんとかするしかない」

 

「はぁ。なんで俺があんなクソ共を守ってやらないと...とは思うが、まぁこの世界の楔だってんなら仕方ない。それに、上手くいけば鋼也級の仲間が二人増えるんだろ?死ぬほど面倒だがあんなバケモノ共と戦うならどうしても欲しい戦力だ...一応、手助けは考えておく...一応だがな!ほんとは俺の冤罪を疑いもせずクズ共に便乗したあんな奴等には関わりたくもない!」

 

「ありがとう」

 

「ったく...こんな事一人で抱え込んでんじゃねぇよ。ただでさえこの世界の奴等も他の勇者もクズばっかりなんだ。お前ひとりで無理する必要ないだろ...もう俺は、お前の役に立てるくらいの力は持ってるだろ?」

 

 尚文が俺の背中をバシバシと叩く。

 

「うん...う...あれ?違...これは...!え?」

 

 ボロボロと涙が溢れて来る...なんだこれくっそ恥ずかしい!!

 いくら色々あってメンタルに来てたからってこんなの...!

 

「ははっ、泣いてんじゃねぇよ、どんだけ思い詰めてたんだ全く...」

 

「違...ずずっ!これは...」

 

「まぁ今日だけでも色々あったしな。俺は馬車であいつらの面倒見とくから、落ち着いたら帰ってこい」

 

 そう言うと尚文は馬車の方に去ってしまった。

 俺は蹲って涙が収まるように懸命に堪えるが、一度あふれ出した物はなかなか留まってくれない。

 

 ...仕方ないじゃないか。この世界に来てから、辛い事に色々苛まれてた。尚文は当然のように理不尽に差別されているし、それに対して我慢できずに提言すれば俺まで陰口叩かれる始末...そりゃ普通に接してくれる人もいっぱい居たけど、それと同じくらい嫌な物を見る視線も受けて来た。ぎこちない態度で接する人もいっぱいいた。

 信頼できるようにと頑張っていた仲間達は俺の元を離れていった。

 話を全く聞いてくれないような奴だっていたし、終いには襲い掛かってくる始末。変な噂やら悪い噂もどんどん流れるし。

 原作知識があるから上手くいく事だっていっぱいあったけど、それでも思い通りいかなかった事もたくさんあった。

 慣れない旅で疲れがたまったりもした。何度も死にかけた。あまりに凄惨な魔物の死体を見て眠れない夜もあった。人を殺してしまった、尚文を殺しかけた...

 

 違う。尚文の方がずっと嫌な目にあっているはずなんだ。これからも遭うはずなんだ...それこそ、自殺してしまうほどの怒りに飲まれてしまう目に遭うんだ...なのに、あいつの前で俺がこんな情けない...俺がしっかりしていないと、尚文の事を支えるって決めたんじゃないか。それに、サディナさんとの約束の事も...ルロロナ村の皆の事も俺が頑張ろうって...

 

 そりゃ途中からは尚文にも協力してもらうつもりだし、女王が帰って来たら明確に差別を受けていた尚文を中心に据えてメルロマルクは動いていくだろうから、尚文に矢面に立ってもらうつもりだったけど...

 それでもその時まではせめて俺が少しでも多くの子を集めておこうって...

 ウィンディアちゃんやガエリオンちゃんの事も、託されたからには俺がしっかりしないとって。

 

 錬が居るはずの場所に、俺なんかが立ってしまった以上は、せめてやれることは全力でやらないといけないんだって...そう思って...

 

 そうしてしばらく...ようやく涙は止まってくれた。

 

「はぁ...どんな顔して戻れば良いんだよ」

 

 ひとしきり泣いて心のモヤモヤはすっきりした。そうすると浮かんでくるのはどうしようもない羞恥心だ。

 いい年してみっともない。本当に恥ずかしい...

 

 ────────────────────────

 

 馬車に乗り込むと皆が俺の方を見ていた。

 

「お、やっと帰って来たか鋼也」

 

「...ただいま」

 

「あらー、目元も鼻もまっかっか。ナオフミちゃんに聞いたわ...ごめんなさい、コウヤちゃんがそれほど思い詰めてたなんて思わなくて...そうよね。ただでさえ勇者として一生懸命なのに、村の事も色々背負わせちゃったわよね」

 

「や、やめてください!!そういうんじゃ無いです!!」

 

「そうだぞ。ただでさえそんなに心が強く無さそうな奴だ、お前らもあんまり鋼也に負担ばっかりかけるんじゃないぞ!」

 

「分かった!」

 

「ごめんなさーいなの」

 

「......ごめんなさい」

 

 三人が体が動かない状態で謝って来る。

 

「やめてくれって!いつも通りで良いから!!謝るような悪い事何もしてないから!!...尚文!!」

 

「ククッ...心が弱そうなのは間違って無さそうだが?」

 

「うぅ...」

 

 俺はジトっと尚文を睨む。

 

「ナオフミ様?あまり剣の勇者様をからかっては可哀想ですよ」

 

「その言葉が一番効くんだけど...」

 

「まぁ、半分冗談にしても少しは仲間を頼っておけ。少なくともそこの酒女は信用してるんだろ?もっと何でも言えば良いんだよ...大体、お前は秘密主義が過ぎるんだ。これに懲りたら少しは素直になるんだな」

 

「....うん」

 

 俺は皆の方を向き直った。

 

「皆、俺が弱かったからこんな目に遭わせた...ほんとうにごめん。だから、俺...もっと強くなってもっと頼りになるよう頑張るから...だから、それまで俺の事を、その...えっと...あぁもう恥ずかしい!!」

 

 俺はガシガシを頭を掻いてからもう一度姿勢を正して皆に向き直る。

 

「ぅ...お、俺の事を...助けて欲しい。俺と一緒に、戦ってくれますか...?」

 

 オミットさん達の事がフラッシュバックして、少し不安になりながら皆の方を見る。

 

「もちろんだぜ兄ちゃん!!」

 

「えぇ。一緒に頑張りましょー、お姉さんももっとコウヤちゃんの支えになれるよう頑張るわ」

 

「もとよりコウヤの為に全力なのー!」

 

「....助けてもらったし、それくらいなら」

 

「皆...ありがとう。ありがとう...」

 

 嬉しいような、なんとも言えない感情が俺の中で渦巻く...それは、俺の胸の中にこびりついていた黒い感情を拭い去ってくれた。

 それでもまだ残る重いしこりもあるが、それは多分流しちゃいけない物だ。

 

 だから...今はこれで良いんだ。

 

「さて、と。こっ恥ずかしい寸劇を楽しんだところで、そろそろ戻りたいんだが...そこのドラゴンは動けないな、どうする?」

 

「尚文お前な...好き勝手言いやがって...んんっ!馬車については大丈夫。元々帰りは俺が引っ張るつもりだったし」

 

「やっぱり...あの噂は本当だったんですか?」

 

「噂?」

 

「剣の勇者様が、馬車を所構わず引っ張って楽しんでいる変態だって...」

 

 ラフタリアちゃんが苦笑いしながら尚文に答える。

 

「い!?」

 

「お前...まさか自分で馬車引っ張って旅してたのか?」

 

「それは...だって!トレーニングにもなるし!馬車引っ張る魔物を買う余裕もそんなに無かったし...!!そんで慣れたら、あれ、もう引っ張る魔物要らなくね?って思えて来て...」

 

「...お前、如何にも一般人ですって顔しといてたまに結構えげつないよな。軽く狂ってるぞ?」

 

「い...良いから!引っ張るからな!!それじゃあ出発!!」

 

 俺はそそくさと逃げ出して縄を掴み、馬車を引っ張り始めた。

 う...ステータスが下がってるからいつもよりも重い...。

 

 俺は中の会話が聞こえないように、必死で外の音に集中しながら駆けだした。

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