剣の勇者の成り代わり   作:min-can

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城下町再び

 港町で買った荷車に武器の素材になりそうな物を詰め込んで引っ張って来たので、それなりに時間がかかってしまった...

 とはいえ、ステータスがそれなりにあるからレベル5とかの時の行き道程はかからなかったが。

 途中でナディアさんが俺の荷車に乗ってきてちょっとイラっとしたのは内緒だ。しかも一人で酒盛りしてるし...

 無心で歩けばあっという間に城下町にたどり着いた。

 ...しばらく帰るつもりは無かったのに、分からないもんだな。

 

「ひとまず城下町には着いたわね。それで?何処に居るか当てはあるのかしらー?」

 

「とりあえず...確認したい事が色々あるんで俺はそれを先に済ませてきます。用事が終われば尚文が何処に居るのかもう少し絞れるので」

 

「わかったわー。それじゃあ私は適当にぶらついとこうかしら」

 

「了解です。昼食の後集合しましょうか。町の入り口近くにある馬車乗り場にベンチがありましたしそこにしましょう」

 

「はーい。それじゃあまた後でね、コウヤちゃん」

 

 そう言うとナディアさんはひらひらと手を振ってどこかへ歩いて行った。

 それにしてもあんな格好で出歩いて大丈夫なんだろうか...まぁ滅茶苦茶強いし大丈夫か。手を出そうもんならミンチになるな。

 

「...行くか」

 

 ひとまず安心できるくらいにはレベリング出来た。残りの時間は尚文達の支援に回るのも悪くないかもしれない。

 

 まずは親父さんの武器屋だな。ついでに防具も作ってもらおう。

 

 ............

 

「こんにちわ」

 

「お...?剣のあんちゃんじゃねぇか。しばらく来るつもりないつってたのにどういう風の吹き回しだ?」

 

「ちょっと予定が狂いまして...それで、尚文には例の手紙渡してくれましたか?」

 

「あぁ。ちょっと早かったがあいつもしばらく来ないかもって言ってたから5日くらいで渡しちまったぜ。ダメだったか?」

 

「あぁいや、全然大丈夫です。本来はもうちょっと時間の余裕持たせるつもりだったんですけど、ちょっと早める事にしたので」

 

「ふぅん。まぁ何企んでんのかは知らねぇが一回盾のあんちゃんと直接会って話した方がいいと思うぜ?若干疑心暗鬼になってたからな」

 

「そうですね...実は今日会うつもりでして。まぁ何処に居るかは分からないんで探し回る事になるかもですけど」

 

「そりゃ良かった...んで?まさかそれだけ聞きに来たんじゃねぇんだろ?たった一週間ちょっとで随分ボロボロにしてくれやがって」

 

「すみません...ずっと海で経験値集めしてたんですけど、メンテナンスの仕方もわからず劣化する一方で」

 

「海だって?そりゃあんちゃんダメだぜ...ちゃんとそれ用の装備にしないと錆びるし腐る。あぁもうここなんか魔物に貫かれてるじゃねぇか...よく無事だったな」

 

 サメに噛まれた所だな。あれは本当に危なかった。レベル70とかの魔物だったからな...

 

「あはは...流石に死ぬかと思いましたよ」

 

「ったく...で?海中用の素材をこっちで集めるとなるとそこそこ時間がかかるが...」

 

「あっ、それはこっちに用意があるので!」

 

 俺は鎧の素材になりそうな物を詰め込んでいた袋をカウンターに乗せる。

 

「うぉ!すげぇ量だな...しかもそこそこ上等な素材も多いじゃねぇか!余りは素材の買い取りに出すとして、これなら色々作れるぜ?どんなのがお好みだ?一週間戦って思う所もあったろ」

 

「そうですね...やっぱり動きやすさは重視したいので軽装でお願いします。そして最悪海中戦専用でも良いんですけど、水陸両用だとなお良いですかね」

 

「なるほどな...あんまり泳ぎやすさとかばっかり重視しない方が良い訳だな。となるとこれとこれと...」

 

「あっ、ついでにこれもお願いします」

 

 俺は剣からドロップの武器や防具を取り出した。

 

「あぁ、盾のあんちゃんが言ってたドロップとかいうやつか。大量にあるな...俺は在庫処分屋じゃねぇんだが...」

 

「すみません...ただ、ここにあるもの全部使って一番性能が高いのをお願いします。後ついでに剣も作ってもらえると助かります」

 

「はいはいコピーね...よっしゃ!流石に数日かかるがいいか?」

 

「もちろんです。値段はおいくらですか?」

 

「あー、使わなかった素材や装備を売った金を差し引くとして...ざっくりだが銀貨400...いや、下手したらもうちょい安くなるかもしれねぇな。まぁ素材屋の奴と相談してくる」

 

「そうですか!それじゃあ、お願いします!」

 

「あいよ!毎度あり、しばらく経ったらまた来てくれよな」

 

 俺は親父さんに手を振って別れた。

 

 ────────────────────────────────

 

 次に、俺は魔物商の所に来た。

 

「おやおや、これは剣の勇者様ではないですか!...良くいらっしゃいました」

 

「そ、そうですね...それで、例の件はどうなりましたか?」

 

「ハイ!勇者様のおっしゃる通りの亜人が売られて来ましたので適当に取り扱いましたとも...先日盾の勇者様がいらっしゃったので、口減らしの在庫処分の為という事で勇者様に頂いた金額から少々値引きさせていただきました」

 

「そ、そうですか!...良かった」

 

「それで?あの奴隷は一体どこぞの血統の持ち主なのですかな?それとも何か特殊な力が?調べましたが普通のラクーン種の価値の低い奴隷だったのですがね...私未来が見えるなどというまやかしを信じる程純粋ではないつもりでして...剣の勇者様が斡旋したのでございましょう?」

 

「え?あ、あー...さぁどうでしょうね」

 

「なるほどなるほど。そうそう話すつもりは無いという事でございますね?ハイ。私、あの短時間でそのような伝手を作った剣の勇者様の手腕には脱帽でございます、ハイ!」

 

 そうか。そういう解釈になるのか...困ったな。別に何もしてないしなんの伝手も無いんだが。

 

 まぁ良いか。これからはあまり近づかないでおこう。それに、これで少なくともラフタリアが尚文の所に居るのは確定だ。ナディアさんと探しに行って尚文が一人だったら困るからな...

 

「それで?それを確認するためだけに来たのでは無いでしょう?お噂によると剣の勇者様も今は仲間が居ないご様子...奴隷はダメでも魔物ならば...是非、如何ですかな?」

 

「あー...」

 

 確かに、奴隷はちょっとあれだけど魔物なら買っても良いかもしれない。

 ただ、結構使っちゃったり使う予定だから金に余裕がそこまで無いしな...

 

「すみません。今はあまり懐に余裕が無くて...」

 

「そうでしたか。それは残念です。まぁ剣の勇者様ならば多少噂が流れようと仲間くらい集められますか...それでも長旅となればフィロリアル等の魔物の存在は大きい事でしょうからな。次は是非ともお客様としてお越しくださいです、ハイ!」

 

「はは...それじゃあ失礼します」

 

 俺は奴隷商の所を後にした。

 ...さて、それなりに時間に余裕はあるけど後は魔法屋に行って本を買って適性を検査して、本屋で次の言語練習用の本を買って、鉱石も買わないとな...あれ、お金大丈夫かな?

 

 俺は財布の中身を数えながら一つずつ、用事をこなしていった。

 

 ──────────────────ー

 

「はい、結果が出たわよ。あなたの魔法適正は雷と回復ね」

 

 俺はまず魔法屋に来ていた。簡単な絵本くらいなら読めそうな気がしてきているのでそろそろ魔法文字がどんな物か知りたくなったのだ。

 

「おぉ...!」

 

 悪く無いんじゃないか?それに、雷ならナディアさんにコツとか聞けるかもしれない。

 

「...となると、この辺りが良いんじゃないかしら?雷の魔法書と回復や支援の魔法書、それぞれ初級編で合計銀貨20枚といった所ね」

 

「なるほど...ちなみに初級の雷魔法の水晶はおいくらですか?できれば安いのが良いんですが」

 

「そうねぇ。一番安いのだと、このファストボルトになるかしら。銀貨20枚ね」

 

 う...本一冊の2倍か。いくら手早く覚えれるとはいえ、やっぱりコスパは良くないんだな。

 でも、魔法を使う感覚を覚えたいし買っておくか。

 

「じゃあそれもお願いします」

 

「あら、この前国が勇者様用にって水晶を大量発注してたと思うのだけど...わざわざ買うのかい?」

 

「あー、実は盾の勇者の件以降王城には寄り付いて無かったもんで」

 

「そうなの?なんだか色々と大変なのねぇ。まぁ、あまり揉めないようにお願いね?勇者様には波と戦う使命があるのだから、内輪で揉めてもしょうがないしねぇ」

 

「はい...すみません。善処します」

 

 そうだよな...普通にちょっと申し訳なくて項垂れる。

 

「あぁ!別に剣の勇者様が悪いと言ってる訳じゃないのよ?」

 

「あはは...はい。ありがとうございました...」

 

「...はいよ。お買い上げありがとうね」

 

 魔法の水晶を早速使って魔法を習得すると、抜け殻になった水晶を返却してちょっと微妙な空気のまま俺は魔法屋を出た。

 

 .........

 

 本屋と鉱石屋の所の用事も終わって、いよいよ時間を持て余した。

 まぁ、折角だしまだ見れてない所を色々と観光しようかな...相変わらず微妙な目線は向けられるが。

 

 そういう訳で特に当てもなく行った事の無い方向に歩いていると、何やらガチャガチャと鎧装備の集団が走っている音がした。そしてそれはだんだん俺に近づいてくる...

 

 少し嫌な予感を感じながら後ろを振り向くと、メルロマルクの兵士が俺の方に迫っていた。

 

「....げ!」

 

 俺は駆け出した。

 

「お、お待ちください!!剣の勇者様!!どうしてもお願いがあるのです!!」

 

 全力で走って撒こうと思ったが、兵士の悲痛な声に足を止めてしまう。

 

「...なんですか?」

 

「ハァ、ハァ...お、王が、剣の勇者様にどうしても話したい事があると...!」

 

「王がですか?...こちらには無いので断られたと言っておいて下さい」

 

 実はちょっと怒っているのだ。別に俺が悪評を撒かれるのは良い。自分の行動の結果だから...

 でも、無かった事にとか言いながら全然そうなってない点がどうしても引っかかった。

 いくらビッチと言えど拡散力には限度があるだろう。多分クズも悪評流布に一役買っていると思うのだ。

 それはちょっと不愉快だ。もうクズの言葉は信用ならない。

 

「そこをなんとか...!勇者様にも決して悪い話ではございませんので!!」

 

 だが、別にこの兵士達が悪い事をした訳でも無い。これだけ必死に頼み込まれて頭を下げられているのにそれを無視するほどの事ではない。

 まぁ最悪どうにか出来るくらいのステータスはあると思いたい。

 

「はぁ...分かりました。昼から用事があるので、それまででいいですか?」

 

「はい!ありがとうございます!!」

 

 俺は辟易としながら兵士達について行った。

 

 ──────────────────────────────────

 

「よくぞ来た、コウヤ殿...モトヤス殿とイツキ殿は我が城に幾度か来たが、コウヤ殿だけは来なかったので少々心配しておったのだ」

 

 俺にとっては少々苦い思い出のある謁見の間で、クズが少々偉そうな態度で見下ろしてくる。

 そしてさらっと尚文を無視するその発言にイラっとする。

 

「そうですか...こちらとしてはもう寄り付く気は無かったんですけどね」

 

「ぬ...まぁ、そう言わんでくれ。勇者殿に支援が出来ていないとなると我々の沽券にも関わるのだ」

 

「別に、必要無いですよ...一人でもなんとかやれてますし。それより残り二人の支援に力を入れたらどうです?」

 

「ハハ...そうはいかぬとも。我は三勇者に等しく強くなってもらいたいと思っておるし、世界の為にもそうすべき義務がある。早速という訳では無いが...持ってこい」

 

 クズが命令するとガラガラと大量の水晶が乗っている台車が現れた。

 

「勇者殿の為に魔法の水晶を用意している。是非とも有効活用して欲しい...あぁ、ついでに魔法適正も調べると良いだろうな」

 

 そう言うと、身なりの良さそうな魔法使いっぽい人が水晶を持って俺に近づいてくる。

 

「必要無いです。適性は調べましたし、魔法は魔法書で覚えるんで」

 

 スキルがあるし、今はそこまで魔法に価値を感じていない。まぁMPのステータスが死んでいるから覚えるに越したことないのは事実だけど。

 

「ぐぬ...どうしたというのだコウヤ殿よ。一体何が不服だと言うのじゃ?」

 

「別に、不服って訳じゃないですよ。ただ、この国の支援は必要無いって言ってるんです」

 

「なんじゃと?それはどういう意味だ...既に他国と伝手を持っていると言うのか!?いや、そのような報告は...」

 

「無いですよそんなもの。まだしばらくはメルロマルクに居るつもりです」

 

「では何故...!」

 

「......」

 

 なんかちょっとむかむかしてきたな。

 

「俺はただの勇者として戦います。メルロマルクの、あなた達の私兵になるつもりはありません...」

 

 あの時、尚文を見捨てられないと決めたあの時。

 俺はもうこの国に頼らないと決めた。それが道理だと思うから。

 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって訳じゃないけど、尚文を見捨てて手に入れようとしていた物はすっぱり手放す事に決めた。

 せめてそうでもしないと、人を見殺しにしようとしたあの時の罪悪感に飲まれそうだ。

 

 それに、あの頃と違って俺は力を手に入れた。まだまだ、勝てない相手は沢山居るけれど...最低限我を通せるだけの物は手に入れたつもりだ。

 これからももっと強くなる。

 

「何かこの国の人々に危機が訪れていて、勇者の力が必要だって言うなら...その時は連絡してください。勇者としての務めはきちんと果たしますので」

 

「....そうか。分かった、必要無いと言うのであれば仕方がない。必要となればまたいつでも言ってくれれば支援させてもらおう」

 

「...ありがとうございます」

 

「.........早速だが、東にある村に凶悪なドラゴンが棲み着いておる。その勢力圏は日々拡大していて、いよいよ我が国民の居住域に接触しつつある。冒険者には手が追えず、モトヤス殿もイツキ殿も別の問題に対処していて手が出せていない。そのドラゴンの討伐を頼めるか?」

 

 ガエリオンか。まぁもし倒したなら当たり前のように死体は処理するとして...別に依頼を受けたからって絶対殺さなきゃいけない訳でも無い。要するにドラゴンの脅威さえ無くなればいいのだ。

 彼の持つ竜帝の知識は絶対に欲しいし、仲間に勧誘してみるのはどうだろうか?

 自称最弱の竜帝だし、戦って勝てたら案外上手くいくかもしれない。流石に槍直しみたいな封殺をしたら嫌われるだろうけど、そこまでの実力差は無いだろうし...

 ウィンディアやメスリオンなんかも助けられるなら助けたい。

 竜帝としてのプライドがそれを許さない可能性はあるけれど、折角試せる機会があるならやってみるべきだろう。

 

「分かりました。今日すぐには無理ですけど、近日中に向かいます...それで良いですか?」

 

「うむ。危機は迫りつつあるが、まだしばらくの猶予はあるだろう。きちんと準備をし向かうのが良いであろうな...ではよろしく頼むぞ、コウヤ殿」

 

「はい。それじゃあ失礼します」

 

 俺はクズに軽く一礼して謁見の間を出た。

 

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