お兄さま曇らせIF√   作:栗鼠

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久々の番外。わたくしは生きていましたヨォ!フゥン!!(シ゛ェ◯一ドンネタ)
最近また進撃が熱いので筆が進みました。
一応続く予定ですが、この後をまだまったく書いていません(構想はアリ)。恐ろしいですね。


IF√[小さな殺人鬼(リトル・モンスター)
七つまでは神の内


 ♪────────

 アーウラ、アウラ

 ウーララ、アウラ

 アーウラ、ウララ

 Uh, uh-huh, uh-huh

 ────────♬

 

 と、美声を披露してるのは誰だぁ〜い? 

 

 ──アウラちゃんだよ! 

 

 

 

 天上天下唯我クソ幼女ちゃんもなんと、5歳になった。お父さまと壁内に来てから1年弱が経ちます。

 誕生日はハンネス家で盛大に祝ってもらった。おばさんのごちそうを堪能した後は、プレゼント開封タイムである。

 

「わぁ、えほんだ!」

 

 キースおじさんからは絵本でした。マーレと壁内は言語は同じですが、文字が違います。

 まぁ、アウラちゃんはすでに壁内の文字をマスターしていますし、何なら『お父さまごっこ』で見る新聞の内容もガッツリ理解しています。

 

 ですがここは普通の幼女ちゃんらしくいきましょう。絵本を開き、わざとらしく誤読するのです。

 

「かわ()い、おひめ()まが…」

 

「そこは「かわいいおひめさま」だぜ、アウラちゃん」

 

「かわいい、おひめさま……。………あ!」

 

 私がハッとしておばさんを見ると、食器を片づけていた彼女は首を傾げる。

 その次にアウラちゃんはハンネスおじさんを見て、おばさんを指差し、「おじたんの、かわいいおひめさま!」と言った。

 二人は顔を見合わせ、直後真っ赤になる。新婚ホヤホヤな二人である。

 

 

「俺からはコレだぜ」

 

「お()け?」

 

「まだアウラちゃんにお酒は早ェかなぁ…」

 

 リボンを解いて袋を開けると、中身はクマのぬいぐるみだった。私が壁内の生態系について気になり色々と聞いていた時、クマがいると知って驚いていたのを覚えていたのだろう。ちなみにゴリラはいないらしい。お前のナマの雄叫び(ドラミング)、聞いてみたかったよ。

 

「な、なぁ…クマのぬいぐるみと絵本、どっちの方が気に入った?」

 

「うーん…」

 

 私がキースおじさんににより懐いているため、対抗意識を燃やしているハンネスおじさん。

 しかし、どうあがいてもおじさんは一番になれません。アウラちゃんのナンバーワンはジークお兄さまですからねぇ…。

 

「キースおじたんのえほんも、ハンネスおじたんのクマさんもすき!」

 

「ぐっ………」

 

 二つを両手に抱えてニッコリ微笑むと、おじさんは心臓を押さえて倒れた。とどめに「ありがと、ハンネスおじさんだいすき!」と抱きつくと、彼は安らかに眠った。

 

「あっ! おばたん、アウラもてつだう!」

 

 逝った男は無視し、私はプレゼントを机の上に乗せて、おばさんの元へ向かう。

 ハンネス家にはしょっちゅうお世話になるので、こうした好感度稼ぎは大切である。

 

 そうして夕食の片づけをしている最中、私はポロリとこぼすわけです。グッと堪えたように、それでも押さえきれない涙を目尻に溢れさせて。

 

 

「おとう、たん……」

 

 

 するとおばさんは優しく抱きしめ、背中を撫でてくれた。

 

「ふっ……うえっ」

 

 無理に明るく振る舞っていた幼女ちゃんは、とうとう泣きはじめたのでした────。

 

 

 

 まぁ、当然これは演技です。

 

 すでにお分かりかと思いますが、5歳になった目に入れても可愛い娘の誕生日の日に、グリシャ・イェーガーが帰ってきていません。キースおじさんの場合は忙しい身のため仕方ありませんが、実父がいないのはさすがにアウラちゃんもおこです。

 

 本来なら、帰ってくるはずだったのです。しかしおそらく何かトラブルがあったのでしょう。

 

「おとーたんは、アウラのこときらいになっちゃったんだぁ…!!」

 

「アウラちゃん……」

 

 おばさんに抱っこされている私の頭を、ハンネスおじさんが優しく撫でます。

 二人の曇った表情をしっかりと見てから、自分の表情を隠すようにおばさんの胸に顔を埋める。

 

(グッヒッヒ……)

 

 さて、かわゆい娘の誕生日に来れなかったお父さまには、どんなプレゼント(曇らせ)を差し上げましょうか。

 …えっ、アウラちゃんはあげる方じゃなくて、いただく方だって? 

 

 そのプレゼント(曇らせ)が、私にとってのプレゼント(愉悦)になるからいいんですよ。

 

 腕がなりますね。ここは腕の見せどころです。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

「だぁれ、おじたん?」

 

 

 それが、グリシャ・イェーガーがハンネスの家に訪れ、娘に言われたひと言だった。

 

 

 

 話は少し遡る。

 

 彼、グリシャ・イェーガーは元はこの壁内の住人ではなく、壁外のマーレという国から紆余曲折を経てやってきた。息子と祖父母をマーレに残し流刑になった彼は、罪人である。はるか昔に大国マーレを倒し、1000年以上もの栄華を誇ったエルディア帝国。しかして近代になりマーレが反逆を起こし、さらにそれを成功させたことで、エルディア帝国の栄華は終わった。

 

 グリシャはそのエルディア帝国の復権を望む一人である。

 

 そして現在はマーレで罪をなしたエルディア人の流刑地であり、反逆を起こされたエルディアの王が多くの民を連れ、遷都した場所に彼はいる。

 

 グリシャの目的はエルディア復権の鍵となる、始祖の力を探すことである。始祖の力を持つ、隠れた壁内の王。東奔西走。その捜索を、医者という肩書きを活かしながら行っている。そのため、彼は壁内に住まう唯一の肉親である娘と離れることが多い。

 

 毎度娘と離れるたび、彼の胸は張り裂けそうになる。娘が目にいっぱいの涙を溜め、「いちゃないで!」と足にしがみ付かれた時は、自分の使命を投げ捨ててしまいたくなる。だが、それはできない。なぜならこれは、()()()()()物語だからだ。

 

 

 して、そんなグリシャ・イェーガーは娘の誕生日のある日、帰路につく最中に病人の老婆とその孫に出会した。

 

 医者である彼はその二人を放っておくことができず、老婆の病状を診ることになった。

 

 その後薬を出し、謝礼は断り家に帰ろうと思ったものの、馬車を走らせるにはすでに遅く────結果として、老婆や孫に押し切られる形で彼らの家に泊まることになった。

 

 

 その結果の、娘の「だぁれ、おじたん?」である。

 

 

 

 

 

「ア、アウラ……お、おおっ、おとーたんだよ?」

 

 

 グリシャは座り込み、医者の鞄を地面に置いて手を広げる。

 

「しらない、メガネのおじたん」

 

 アウラは父親から顔を背け、ハンネスの妻にしがみつく。グリシャの顔が汗でぐっしょりになっていく。

 

「お、遅れてすまなかった。帰る途中に病気のおばあさんと出会ってね。それで……」

 

「しらない! メガネのおじたんなんか!」

 

「あ、アウラァ……ッ!!」

 

 今にも膝から崩れ落ちてしまいそうになるグリシャ。彼はそこで、カバンに目を留めハッとする。そうだ、私は娘のプレゼントをカバンに入れておいたのだ──。

 

 プレゼントはうさぎのぬいぐるみである。うさぎを選んだ理由は、娘が「あのねあのね、もりさんにはね! うさたんやくまたんがいるの!」とはしゃぎながら言っていたからだ。クマは彼の中で食害のイメージがよぎったため、うさぎに決まった。

 

「ほ、ほらアウラ、ウサギさんだよ…!」

 

「………」

 

 チラリと、アウラは父親が動かすうさぎを見る。ジッ…と注がれる白銅色の視線に、グリシャは神ユミルに祈った。

 

 

「アウラは、クマたんのほうがすき!!!」

 

 

 グリシャは地面に手をつき、絶望した。

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 これだから、曇らせるのはやめられねぇぜ!! 

 

 ──おっと、アウラちゃんのキャラがブレてしまっていますね。自慰自慰。

 あっ、間違えました。自重自重。

 

 

 お父さまの絶望顔を拝むことができ、しばらくは心の中で巨人とスキップが止まらなかった私。もう完璧に決まった。最高だ。

 

 お父さまの絶望を搾りとって飲んだ曇らせは、ハンネス夫妻とは隔絶した味わいがあります。お父さまには一生曇っていてほしいです。

 

 もちろんこのクソ幼女ちゃんが、適度に幸せもあげますからね。…ゲヘッ!(ゲス太郎)

 

 

 して、現在は余韻曇らせを味わっています。

 

 誕生日から数日経った今も、アウラちゃんはまだ拗ね中。お父さまを「メガネのおじさん」と呼び、距離を空けて暮らしています。私の行動一つ一つにお父さまは「あぁ…」ですとか、「うぅ…」ですとかステキな声を出すものですから、アウラちゃんはニッコニコを隠すのが大変なのです。まぁそろそろ拗ねムーブもやめ時でしょう。

 

「……アウラ?」

 

 夜、普段は別々のベッド(部屋は同じ)で寝ている私とお父さま。先に娘が眠った部屋に入ったお父さまは、目撃するのです。お父さまのベッドに入って、丸くなっている私を。さっき散々とお兄さまを思い出して泣いたので、バッチリと私の顔は腫れぼったくなっています。

 

「……ごめんな、アウラ…お前に寂しい思いをさせて…」

 

 空気の振動を間近で感じる。薄目を開けると、お父さまが私の横に座り込んでいた。

 

「本当に、ごめんなっ……」

 

 このタイミングで、お父さまの気配に気づき「おとーたん…?」と起き上がったアウラちゃん。そんな私にお父さまは顔がグシャグシャの状態でゆっくりと近づき、抱きしめる。その手にはまったくと言っていいほど力が入っていない。幼女の力でもきっと、簡単に解けてしまう。

 

 そしてその弱々しさが、私に「愛」を感じさせる。

 娘が愛おしくて愛おしくて仕方ないという、お父さまの愛。

 そんな娘への愛がゆえに生まれる大きな感情。それらがお父さまの力を奪い、こんな弱々しさを生む。

 

 たまらない。

 

 もっともっともっと私を愛して、私に愛されて、堕ちていけ。

 

 

「アウラを、一人にしないでね」

 

 

 愛が地球を救うなんてバカバカしい話だと思います。

 

 けど、この愛が今、一人の人間(悪魔)を救っているのは確かです。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 アウラ・イェーガーの誕生日から月日が経ち、アウラははじめて父親の往診に付きそえることになった。普段はまだ幼いこともあり、彼女は父親が出かける時はハンネス宅に預けられている。たまにキースの元に預けられることもあった。

 

「アウラおとーたんのおしごとみるの、たのしみ!」

 

「いいかい、私の側を離れてはいけないからね」

 

「わかった!」

 

 これはグリシャの主観を含んだ意見だが、娘のアウラはとてもかわいい。

 

 ただ実際、アウラはあの気難しい性格のキースでさえ「……お前の娘はかわいいな」と言わしめている。ハンネスなど、「うちの子にしてぇな…マジで……」とメロメロだ。そしてその発言をグリシャの前でするたび、ハンネスは彼に睨まれる。

 

「アウラ、もう一度言うが、私からは絶対に…」

 

「だいすきなパパからはなれない!」

 

「グフッ」

 

 ギュッと父の足にしがみついた娘に、グリシャは天に召されかけた。

 

 

 

 そしてその往診以降、アウラは時折グリシャに外へ連れて行ってもらえるようになった。

 時には船に乗り、時には見知らぬ人と肩を並ばせて荷馬車に乗る。

 壁内ではあれどアウラにとっては新鮮な“外”に他ならず、移ろう景色を彼女は前のめりになって見つめる。

 

 その姿を見たグリシャは、気づかされた。

 

(あぁ、私はまたこの子を……)

 

 “外”は危ないからと、狭い世界に閉じ込めようとしていた。その事実に気づいた彼は、強く手を握る。

 

「どうしたの、おとーたん? どこかいたいいたいなの?」

 

「…いや、大丈夫だよ」

 

 父親から外へと視線を戻したアウラ。キャイキャイ騒ぐ彼女の様子を、二人の側に座っていた老人は微笑ましそうに見つめていた。

 

 

(……どうか、お前は自由に羽ばたいてくれ)

 

 

 もう一人の息子であるジークに両親の密告の(かような)選択をさせてしまったからこそ、グリシャは息子への罪悪感と共に、より強く娘の自由を願う。

 

 青い空へと羽ばたいてほしい。その人生ではいつか好きな仕事を見つけ、好きな人と出会い、やがては子をもうけるのだろうか。いずれにせよ、そこに王家の血を残す使命を課せたくはない。

 

(いや…そもそも、この子が大人になる姿を私は見ることができない)

 

 九つの巨人の力を継いだ者の宿命。13年の命。

 

 

「わっ!」

 

「…ッ、アウラ!」

 

 その時、馬車が大きめの石にぶつかり揺れた。グリシャはとっさに頭を外へ出していた娘の手をつかみ、放り出される前に抱き留める。

 

「危ないだろう…! 気をつけなさい!」

 

「………ご、ごめんなしゃい…」

 

「……あっ! いや、大きく怒鳴るつもりは…」

 

「…ううん、アウラがわるいの。ごめんね、おとーたん」

 

「………次からは、気をつけるんだよ」

 

「…うん」

 

 すっかり大人しくなってしまった娘の頭を、グリシャは軽く撫でるように触れる。

 せめて自分が生きている間は、この愛しい存在を守ってあげたいと思った。

 

 

 

 

 

 それから午後のこと。

 

 往診を終えシガンシナ区へ戻る途中、アウラの腹が鳴った。昼食は弁当を持参していたが、すでに成長期な子どもの腹は空っぽのようである。

 

「夕飯には少し早いけど、何か食べにいくかい?」

 

「うんっ!」

 

 ということで、二人はレストランに寄ることにした。レストランとは言っても、そこは酒を飲んでいる客が多い。ただ家族連れもチラホラと見受けられるため、その地域に密接した場所のようだ。

 

「アウラあれたべたい!」

 

 何時でも幼女ちゃんムーブを忘れないアウラは、メニューが読めない(体である)。そのためほかの者が食べていた料理を指し、グリシャも娘と同じものを頼むことにした。

 

「………」

 

「……ん? どうした、アウラ?」

 

 ふと、グリシャはそわそわと動く娘に気づく。

 料理が待ち遠しいのかと思ったが、それとはまた様子が違う。

 

「あぁ、トイレに行きたいのかい?」

 

「…うん」

 

 グリシャは店の隅にある共用トイレまで付き添い、扉の側で待つことにした。

 

 ──と、その時である。店内がざわついた。

 

 

「…何だ?」

 

 

 気になったグリシャがその場から離れ様子を見てみると、入り口近くの席に人が集まっている。

 

 その人だかりの中心では一人の子供が喉を押さえ、苦しげな声を漏らしていた。グリシャは慌てて駆け寄り、人をかき分ける。彼が医者だと明かすと、かき分けていた道が自然と開いた。苦しげな表情の子どもの側には、その母親らしき人物もいる。

 

「た、助けてくださいっ!! この子が……!!」

 

 グリシャは母親を宥め、子どもの状態を診る。遠くから様子を見てうっすらとそうではないかと思っていたが、やはり誤嚥のようだ。

 速やかに彼が対処すると、幸いにも子どもの口からべっとりしたパァンが出てきた。

 

「パァンを食べる時は、しっかりと噛むんだよ」

 

「はい…」

 

 子どもが母親に泣きながら怒られている周囲で、拍手が起こる。賞賛の言葉とともに人々に囲まれそうになったグリシャは、「すみません…」と頭を下げ、人混みを抜ける。テーブルの方を見たがアウラはいないため、まだトイレにいるようだ。

 

「もしかして、お腹を壊しているのかな…」

 

 心配になったグリシャはトイレの扉を叩いた。しかし中から反応はない。そこでもう一度ノックをする。

 

「アウラ?」

 

 返事が、ない。

 

「…開けるよ、アウラ?」

 

 鍵はトイレの中からかけられる造りになっている。金属の棒を引き、出っぱりを作る仕組みだ。そうすると内側から引いた場合、中のそれが引っかかり鍵の役目を果たす。

 

 

 はたして────、扉はスムーズに開いた。

 

 

「アウ………」

 

 

 そしてそこに、アウラの姿はなかった。

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