お兄さま曇らせIF√   作:栗鼠

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番外編。新生アウ子ちゃん第二弾。

設定の中でどうしても辻褄合わせるのが難しい部分があり、ところどころ疑問符が浮かぶ部分があるかもしれませんが、そこは番外ってことでふわっと流してください。

オマケに109話でお蔵入りにしたボツ話あります。そこは読み飛ばしてもらって全然大丈夫です。


新生アウ子ちゃんと愉快な日常

 高校生の時に祖母が他界し、それから数年後、私が大学生の時に祖父も他界しました。

 

 社会人になって早々、家督を継いだお兄さまは日々忙しそうです。それに比べて私はのんびりしていた。手伝おうとしてもお兄さまに嫌な顔をされるので諦めました。

 

 

 

 そんな私にも最近仲の良い友人ができました。

 同じ大学に通う女性で、どこからか私が巨人研究の第一人者であるトム・クサヴァー氏と知り合いであることを聞きつけ、鼻息荒く突撃して来ました。

 

 

「ハァ、ハァー………君があのクサヴァー先生と面識があると噂で聞いてねっ!! いても立ってもいられなくなって、こうして会いに来たんだ!!」

 

「え、えーと…」

 

「おっと…紹介が遅れたね、私はハンジだ」

 

 ハンジは私服の上に白衣を着ている中性的な人物で、なぜか首にゴーグルを提げ、さらに四角いフレームの眼鏡をかけ、おまけに頭にも丸渕眼鏡を装備している。メガネ三銃士かな? 

 

「この頭のメガネはクサヴァー先生の物をイメージしてるんだ」

 

「そ、そうなんですか…」

 

「そう言えば、アナタの名前は確かアウラ…だったよね? ぜひ仲良くしてくれたら嬉しいよ!」

 

「は、はぁ…」

 

 ちなみにハンジは女性でした。

 着痩せするのか、頷いた私に抱きついてきた彼女の胸が押しつけられた。結構大きい。Dはあるかもしれない。

 

 

 

 それから食堂やカフェで場を設け、ハンジとの交流が増えました。巨人の話になると彼女はブレーキを失った暴走列車と化します。

 お兄さまほど巨人について知識のない私は、毎度話についていけません。

 

「気になっていたのですが、ハンジはクサヴァーさんを尊敬しているから巨人学がお好きなのですか?」

 

「いや、私にとって巨人学の方が大きな存在だよ。でも巨人に興味を持つきっかけだったのが先生の御本だ。私がクサヴァー先生を尊敬するのも必然というわけさ」

 

「なるほど。では最初、私に会いに来たのは…」

 

「そのぉ…巨人について語り合う仲間がどうしても欲しくてね」

 

 巨人についてはまだまだ謎が多い。

 約百年前に存在したと言いますが、化石のようにその生きた痕跡が残っているわけではない。ただ、一時地球の文明を滅亡寸前にまで追いやった事実は存在する。

 今でこそ、世界が滅びかけた──なんて話信じられないです。

 

「無数の巨人が地球を均したなんて、おとぎ話のようです」

 

「けれど実在はしたんだよ。ちゃんと史実に残っている」

 

「謎を解き明かしていくのはロマンを感じますね」

 

「そうかい!? なら一緒に君も私と巨人を調べようじゃ…」

 

「結構です」

 

「……そうか、残念だ」

 

 

 巨人学ではないですが、ユミルちゃんについてなら調べました。エルディア人の始祖であり、巨人と深い関わりを持つという存在。

 

 実際始祖ユミルが存在した、とする証拠はありません。

 始祖の存在は一部で神格化され、『ユミル教』なるものも在ります。

 

 我が家は代々このユミル教と深い関わりがあったのですが、当代のお兄さまが「神なんてクソ食らえ」精神なため、彼らと溝が出来ることになりました。

 まぁ始祖ユミルの直系とされる「フリッツ」な以上、完全に袂を分かつことは困難でしょう。

 

 かく言う私も彼らと距離を置いています。私がガチのユミルちゃんが視えていることがバレたら最後、ユミル様から啓示を受ける者────とか何とか言われ、捕らわれてしまう。連中は預言者を血眼で探していますから。

 

 

「ハンジ、これは一つ提案なのですが」

 

「何だい?」

 

「私は貴女の巨人の話に付き合い、貴女もまた私が遊びに行く時に付き合ってもらっています」

 

「………どうしたんだ、急にモジモジして?」

 

「その…あの、貴女がよければ……わ、私と!」

 

 しかし途中で待ったがかかる。

 頭を押さえたハンジが深いため息を吐きました。

 

「悪いけど、その話には乗れない」

 

「そう、ですか…」

 

「私も自分の女っ気のない見目は理解しているし、よく間違われる。しかしすでに私には巨人という相手がいるんだ」

 

「?」

 

「君の告白には応えてあげられない」

 

「……………??」

 

 何か勘違いされている気がする。そして話の中で、目の前の女性が人間ではない存在に心を射抜かれている事実を知った気がする。

 

「……あの、友だちになって欲しいって意味で、告白の意味では…」

 

「えっ、そうなの? …何だ、ビックリしたじゃないか!」

 

「それで、と、友だちの件は…」

 

 私には表面上の付き合いがある者は多いですが、そのほとんどが私の家柄や容姿に惹かれて近づいてくる場合が多く、ハンジのように私の内面を見て接する人間は少ないです。

 だからこれを機会に心の友を作りたい。

 

「君は面白いことを言うんだね?」

 

「えっ……?」

 

「あーあ、悲しいなぁ。私はてっきり、君がもう私の友人だと思っていたのになぁ〜」

 

「……!」

 

「まぁ、そういうことだ。答えは勿論「YES」だよ」

 

 私は思わずこの心の喜びを表現したくて、メガネ三銃士を彼女に掛けさせました。

「……何やってるの?」と聞かれましたが、私も自分が何をしているのか分かりません。

 

 私はこうして数少ない、気のおける友人をゲットしたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 お兄さまが「前世の記憶」を取り戻してから数年。私たちの仲は、一見すれば普通に見えるでしょう。

 

 実際、ジークお兄さまから直接前世について聞いたわけではありません。

 距離を露骨に置かれて私が落ち込んでいる時、見かねたユミルちゃんが教えてくれたのです。

 

 曰く、彼女がハリセンでぶっ叩いた衝撃でジークお兄さまがかつての記憶を取り戻したこと。

 曰く、前世の私がジーク・イェーガーをいじめていたせいで、今のお兄さまに距離を置かれていること。

 

 そのいじめの内容については教えてもらえませんでした。

 けれどお兄さまの私に向く怒りや憎悪、愛情……とにかく色んなものを煮詰めて出来上がった瞳を見る度に、相当なことをやらかしたんだろうと推測できる。

 

 お兄さまは私が過去の記憶を持っていると勘違いしているようで、いくら訂正してもそれすら私がお兄さまをいじめる策だとお思いになる。私が否定しても徒労に帰すばかり。

 

 

 一応お兄さまの前世の記憶を消すことが、ユミルちゃんにはできるらしい。しかし私は長いこと悩み、その申し出を断りました。

 

 今の私と『アウラ・イェーガー』だった私は違いますが、同じ存在であることは確かです。

 つまり彼女が犯した罪は、私の罪。

 

 ですから償わなければなりません。それを無かったことにして解決するのはあまりにも自分勝手です。

 それにお兄さまは「俺を幸せにしてくれないのか?」と仰った。

 

 罪を抱えた上でお兄さまを幸せにすることが、私の生きる意味で、使命に違いないのです。

 

 

《それは ちがう》

 

 ──と、ユミルちゃんは言います。

 

 

 彼女は私に幸せに生きて欲しいようです。でもお兄さまが幸せになれば私も幸せになるので、問題ありません。ブラコンなのは自覚していますから。

 

 一先ずお兄さまに見合う女性を探さなければなりません。私のお眼鏡に適う女性は中々見つかりませんが。

 

 お金や権力に目の眩んだアバズレのメス豚はダメです。それを抜きにして、お兄さまに惚れ込んだ女性でなければ! 私より可愛くて、私より頭が良くて、私よりスタイルのいい人間。ただしお兄さまより優れていてはいけません。

 子どもまでできれば完璧です。

 

 

 

 そして計画を進める上で大学生になる前、自由に動ける一人暮らしがしたかったので、その時はまだ健在だったお祖父さまに許可をいただきました。いくつか条件はありましたが、些細なものです。

 

 この話をお兄さまにしたら「ハ?」と言われた。

 

「また何を企んでるんだ?」

 

「え? べ、別に何も…」

 

「ふーん?」

 

 一瞬自分の「お兄さまのいいお嫁探し計画」がバレてしまったのかと思った。ですが反応からして違うようです。

 

「どうせ意図的に距離を置いて、俺が縋ってくるのを待つ気なんだろ」

 

「そんな気これっぽっちも無いんですが…」

 

「見え透いた罠に俺がハマると思うなよ。勝手にしろ」

 

 お兄さまからも一応OKは出ましたので、これで気兼ねなく暮らせます。

 住居は大学近くのセキュリティーが強固なマンションですし、さらにアウラちゃんはシステマを主に体術を学んでいるので、安全対策はバッチリです。

 

 

 それから大学生になり一ヶ月経った頃、私はおうちに戻ることになった。

 ジークお兄さまが「何でお前が俺の側にいないんだ?」と病んでしまったことで。

 

 ここ数年は私がお兄さまラブを見せても、素っ気ない態度を取っていたのが嘘みたいだった。何なら冷たくあしらわれることなんてザラだったのに。

 

 心のどこかで前世で散々いじめてきた妹を兄は愛しておらず、むしろ“愛を与えさせる”役目で縛り、今世の私に復讐心すら抱いているかもしれないと思っていた。

 

 でも違った。お兄さまはちゃんと私を好いていたようだ。

 その愛情は『アウラ・イェーガー』のせいで悍ましいほど歪められているだけで。

 

 本当何したんだ、お前。

 

 

 

 

 

 そしてさらに時が経ち、私は大学を卒業して教師になった。

 担当は国語です。この職についたのは自分の夢でもあったからです。

 

 肝心のお兄さまのお相手探しは、自由を活かせる大学生のうちに躍起したものの何の成果も得られなかった。焦ってもしょうがないので、一先ず自分がなりたい先生になった。

 

 ちなみに、お金の都合で大学院を諦め同じく教員になろうとしていたハンジは、クサヴァーさんの支援を受けて巨人の研究を続けられることになりました。

 彼女がクサヴァーさんと面識があるのは私が間を取り持ったからです。二人は熱心に巨人について語り合っていた。

 

 

 一番歳の近い子は、私と片手で数えられる程度しか変わらない。

 

 新任教師が生徒にいびられるのは避けて通れない通過儀礼だと思っていましたが、そんなことはなかった。授業もふざけることなく概ね真面目に受けています。

 それでも、先生かわいいねぇ、とからかってくる生意気なクソガキはいます。

 

 ワンチャンあると思っているのか告白もされます。生憎ですがノーチャンです。

 そもそも私の愛の比重はユミルちゃんとお兄さまで大きく占められているので、そこらの有象無象が入る隙などありません。

 

 アッ……でも、最近気になっている人はいます。

 

 新米で、まだ右も左も分からない私にご教授くださった歴史教師。彼は一回り歳下の私に親切にしただけで、そこらの小僧どもが向けてくるようなやましい感情は一切ありません。そこがまたいいのです。

 

 彼は独身だという情報は得ています。ワンチャン狙ってもいいでしょう、この私が。

 

 ………いえ、ちょっと待ってください。私の恋愛を育むんじゃなくて、お兄さまのお相手を探すのが先でした。

 

 

 

 閑話休題。

 

 今働いている学校はスクールカーストで支配されています。

 

 私が関心のある人物はまずクイーン・ビーの少女。お互い顔見知りです。なぜって? 親戚だからですね。

 と言っても彼女は遠縁で、「フリッツ」の隠された名についても知りません。この秘密を知るのは我が一族くらいです。

 

 あの子は私との関係は良好ですが、中身はお嬢様全開で結構黒いので、お兄さまのお嫁候補には外れています。

 

 彼女もまたモテるので大変そうです。前に「ジョックのゴリラに付き纏われている」とイライラを隠さず愚痴っていました。そのゴリラの子は私にも偶に熱い視線を向けてきます。この間買ってきたバナナをプレゼントしたらすごく喜んでました。

 

 あとは不良の少女でしょうか。よくメッセンジャーの長身の少年と歩いているのを見かけます。

 

 彼女は私とはじめて会った時、一目散に逃げて行った。人に好意を持たれやすい私としては新鮮な反応だったので、よく印象に残っています。

 

 それと、一人のいたって平凡な少年。

 カーストにおいて影響力を持たず、だからといって下層の人間でもない人物。

 

 

 その少年の名は、エレン・イェーガー。父親は医者をやっていると人伝に聞いた。

 

 

 まさかと思いましたが、そのまさかでした。この時私は兄以外に腹違いの弟がいたことを知ったのです。

 

 お兄さまにこの件を報告したら、「世間って狭いな…」と言っていた。

 私は関わる気満々でしたが、“異母兄弟”であることを持ち出され、一切の関係を持たないように注意された。

 

 それは…確かにそうです。弟がいた嬉しさで飛び上がっていて、配慮を忘れていた。

 

 少なくとも私の名前を聞いた時エレンくんに反応はなかったから、姉の名前は知らない。もしかしたら異母兄弟がいることは知っているかもしれませんけど。

 

 そしてもし知らない場合は、父親に前妻がいたことや、姉と兄がいた事実が明るみになる。そうすればイェーガー家の関係が拗れてしまう。

 

 

 

 時折授業で会う少年を目で追いつつ、私は結局エレンくんと一言も話さないままです。それでも友達二人と仲良くやっている様を拝めるので、悪くありません。

 

 ユミルちゃんもよく教室をウロチョロしてエレンくんたちの様子を見守っています。特に彼がミカサちゃんと二人で話している時は嬉しそうです。

 

 

 まぁ、トランプのジョーカーを引くが如く、授業参観でエレンくんのクラスで教えていた時に父親と遭遇してしまったんですけど。

 

 医者だから忙しくて絶対に来ないと思ったのに、出会ってしまった。

 どうやら奥さんが体調不良で来れず、偶然休みを取れたお父さまが来たらしい。

 

 さすがパパということですね。一瞬で彼は私に気づいたし、私も一瞬で気づいた。だってお兄さまにお顔立ちがそっくりだったから。

 

 ものすごく気まずい時間だった。

 

 授業が終わったらすぐに教室を出て逃げたものの、お父さまに引き留められ、電話番号の書かれたメモを渡された。この件はお兄さまには言わなかった。

 お兄さまの幼少期を考えたら、祖父母に厳しくされる原因となったお父さまを良くは思っていないだろうから。

 

 

 

 そして後日、時間を作りカフェでお父さまとお会いして、まず謝罪を受けた。

 

 私たち二人はお祖父さまの擁護下にあったから、手紙の一つ送ることもできなかったらしい。

 そんな暗い人生の中でも、彼は一人の女性と出会い、今は幸せな家庭を送っている。

 

「私はお父さまを恨んでいませんよ。お兄さまがどうかは分かりませんが…私をこの世に育んでくださっただけで、本当に感謝しています」

 

「だが、私はお前たちを…」

 

「お父さまはダイナお母さまを愛していらっしゃったのでしょう? もちろん、私たちのことも」

 

「っ……当然だ! 私と、ダイナの子どもなのだから……!!」

 

「なら、それ以上求めるものはありません。愛されている事実だけで、十分私は嬉しいです」

 

「アウラ………」

 

 お父さまは丸渕のメガネを取り、そのまま声を押さえて泣き出した。震えるその背中を私は優しく撫でる。

 私も少し泣いた。

 でも、この人と過ごした記憶がないから、号泣するほどの深い感情を抱くことはできなかった。

 

「……本当に君は、ダイナにそっくりだ」

 

「ふふ。それを言うなら、ジークお兄さまはお父さまに似たようですよ。写真見ますか?」

 

 ポイポンを操作して、お兄さまフォルダから無難なものを数枚見せる。中にはちょっとブラコンが過ぎたものもあるから、気をつけて選んだ。

 お父さまは目を丸くして、また泣き出した。

 

 そうしてカフェで過ごしたお父さまとの時間は長かったけれど、あっという間だった。

 

 楽しかった時間。でも、複雑な家庭環境が私たちにはある。

 

 お父さまは息子や嫁に前妻がいたことを話しておらず、私の方もお兄さまがお父さまを憎んでいる可能性が高い。

 だからもう会わないことを決めた。お父さまには別の家庭があるし、私たちも彼と暮らすには大きくなり過ぎた。

 

 

「それでも、他人のように過ごしていくことになっても、私はお父さまを大切な家族と思っておりますよ」

 

 

 帰り際に私がそう言うと、お父さまは私を強く抱きしめた。

 最初は「すまない」だった言葉が、「ありがとう」に変わる。

 

「お父さま……」

 

「あんなに小さかった子が、こんなに大きくなってくれて本当に嬉しいよ」

 

「お父っ……さま…!!」

 

 

 胸から熱い何かが込み上げてきて、わたしは人目も憚らずわんわん泣いた。

 

 すっかり辺りが暮れて、腫れぼったくなった瞼で家に帰ると、珍しくドライなお兄さまに心配された。

 

 


 

 

【悪魔教】

 

 

 長身の──それもそこらの男より上背のある女は、ユミル教を信仰していた。

 

 しかし宗教にドップリ浸かっていく中で、『悪魔教』なるごく少数の人間が秘密裏に信仰している存在を知った時、そのまさしく()()()な魅力に彼女は取り憑かれた。

 

 その悪魔教は一人の女性によって発起されたらしく、形の残る本ではなく口頭で信者たちに語り継がれている。

 

 曰く、それは決して歴史に語り継がれることのない、()()()()()

 この世界の真の救世主を崇めるというもの。

 

 それこそが「白い悪魔」だった。

 

 悪魔教の信者はその真の救世主の再臨を願い、今日も祈りを捧げる。

 

 

 アウラ様、どうか我々愚かな人間たちに救済を与えてください──────と。

 

 

 

 そして彼女はある日同じ名前を持つ女性と道端でたまたまぶつかってから、その女性の存在が妙に気になり、こっそり探った。

 

 気になったのは、その女性が同性の彼女でさえ見惚れてしまうほど美人だったからだろう。

 それと、不思議とその白銅色の瞳に魅かれたこともある。

 

 やがてストーk………追っかけを続けるうちに女性が不可視の存在と話している様子を目撃してしまった彼女は、女性の名前も相まって、理解した。

 

 

 ────この方が「アウラ様」に違いない! 

 

 

 

 

 

 一方最近視線を感じストーカーの存在を疑っていたアウラは、「私(たち)の悪魔になってください!」と熱烈な告白をしてきた女にたじろぐことになる。

 

 悪魔教を知らなかったアウラは丁重に断った。しかし、その後も時折熱い視線を感じている。

 

 

 この裏ではユミルが動き、アウラを悪魔教に引き込まんとする信徒を妨害し、イェレナだけ容認した。

 意図的に歴史の奥底に封じられた「アウラ」の存在を現代に残した功績を持つ女だ。

 

 ゆえに同担拒否派だが、彼女だけ許すことにした。

 

 

 余談だが、エレミカもアウラを除いて同担拒否である。

 

 二人を今世で見つけてキャッキャしていたユミルは知らなかった。エレンに所謂霊感があったことを。

 

 彼女は今アウラの背後霊的ポジションにいる。その力はエルディア人以外の人間にも影響を及ぼすことができるようになった。

 霊体ではあるが、どちらかというと神格に近い。それでもアウラが死ねば、自分も消えることを理解している。

 

 何せ、二人は()()()()()()()()から。

 

 だがらといって未来や過去に干渉する力はないし、巨人の力が消えたためか、生物の肉体の改変や精神を操作することもできない。全知全能の神ではないのだ。

 エルディア人と“道”で繋がっていない今、なだれ込むように入ってきた個々の記憶や想いも、今ではいちいち覗き見なければわからない。

 

 ただ記憶をいじることや、物体に干渉する(触る)ことはできる。

 他にもユミルが把握していないだけで、できることは多くあるだろう。

 

 また、精神の操作はできないと言ったが、厳密に言えば、それらしい記憶を植え付けて対象の行動を誘導することはできる。

 彼女が頑張れば国のお偉い方を争わせて、世界を終焉に導くことも可能だ。

 

 

 まぁそんな面倒なこと、アウラが求めない限りはしない。

 

 散々巨人を作ってきたユミルはラクをしたい。力を使うのだって疲れる。

 

 さすがにハリセンでジークの記憶が戻ってしまった時は、まずいと思ったが。まさか戻るとは思ってもみなかったのだ。

 しかし結果的にアウラが幸せそうなので良しとしている。ついでにヒゲ面の男を最高に曇らせることもできた。

 

 実は以前街中でアウラがすれ違ったアニを見つけ、「ケンペイさんだ!」と近づいた時も誤って接触した拍子に、アニの記憶を取り戻させてしまっている。

 

 これも「………まぁ、いっか!」で済ませた。

 

 

 

 

 

 ──して、話をエレンの霊感のところにまで戻そう。

 

 

 かつてのように帰宅中のエレミカ(+@)の様子を見守っていたユミルは、彼女が周りにいても少年が反応しないため、自分に気づいていないと思っていた。

 

 エレンは単純に幽霊慣れしていたため、無視していただけである。敵意が少女の幽霊にないのも分かっていたから。

 

 そしていつものようにキャッキャしていたユミルは、うっかり転んだ。

 転倒の際に意識が集中した彼女の手が、不可抗力でエレンに当たってしまう。

 

 背中を押されたエレンはミカサを押し倒すように転び、少女は顔を真っ赤にした。

 アルミンはその瞬間「ニヤ…」と笑う。

 

 意図せず作り出してしまった光景にユミルは顔を覆ってまたキャッキャする。

 

「大丈夫、エレン?」

 

「……悪い、ミカサ。急に誰かに背を押されてよ」

 

「ちょっと二人とも、僕じゃないからね?」

 

 と言うアルミンは、二人の写真をゲス顔で撮っていた。これでは無罪も有罪判決が出されるというもの。

 

 詰め寄るミカサからアルミンが逃げ、呆れた様子で二人を追うエレン。

 犯人である少女は相変わらずキャッキャしていた。

 

 ユミルは気づかなかったのだ。場を去る時、エレンが一瞬彼女に視線を向けたのを。

 

 そしてその翡翠の瞳が、限りなく濁っていたのを。

 

 

 

 ユミルが自分のやらかしに気づくのは、しばらく後のことだった。

 

 帰宅中にエレンに声をかけられ「ちょっと先生に相談したいことがあって」と人気のない公園に連れ出され、背後からスタンガンで一発KOさせられたアウラ。

 

 エレンは笑う。

 笑って、言う。

 

 

 

「よう、アウラ・イェーガー」

 

 

 

 ユミルはやらかした。しかしこれは同時にチャンスになると考えた。

 

 何だかんだでアウラのことを愛しているジーク。妹に向けられていると思い込んでいる家族と恋慕の間で未だどうすべきか悩む男に、白黒つけさせる機会を与えることができる。

 

 草むらに隠していたトランクにアウラを入れた少年は、何食わぬ顔で歩いて行く。エレンがアウラを殺すなら止めるが、攫うだけなら使える。

 妹がいなくなれば、数日もしないうちに男は探すだろう。

 

 

 そして、そうすれば────。

 

 

 

 

 

(続く)

 


 

【人物】

 

 

・ハンジ

 

巨人に恋してしまったメガネ。

化学教師にはならず自分の夢を突き進んでいる。

アウ子の親友ポジ。

 

 

・歴史教師(エルヴィン)

 

アウ子に想いを寄せられているが、本人は全く気づいてない。

出勤中にたまたま蛞蝓の交尾見かけて「ふふっ…」って笑うタイプ。

 

 

・ヒストリア

 

校内随一の美少女。腹黒。

アウ子を親戚のお姉さんのように思っていて、かなり懐いてる。

 

 

・ゴリラ

 

お昼時、アウ子に「これあげるね」とバナナをもらった。ものすごく嬉しい。

 

 

・不良少女(アニ)

 

ユミルちゃんの被害者その2。

前世の記憶が戻ったおかげでベルトルトと距離が近づいたけど、逆にアウ子見る度に過呼吸起こしそうになる。絶対今世では関わりたくない。

 

 

・メッセンジャー(ベドドド)

 

「アニ……!?どうしたんだ、アニィーーッ!!」

 

 

・グリシャ

 

今世も大変っちゃ大変な人。

でも貴様が始めた物語だから。

 

 

・イェレナ

 

目をハートにして今日もひっそりアウ子をストーキングしてる。

 

 

・アルミン

 

一日に一回は「ニチャ…」ってしてる。

 

 

・ミカサ

 

恋する乙女。

 

 

・エレン

 

ユミルちゃんの被害者その3。

前世思い出して脳内グッチャ。当然アウ子には前世の記憶があるだろうと思ってるし、それを隠して曇らせライフを謳歌してんだろうと思ってる。

 

 

 

 

 

 


 

【オマケ】

 

(109話の『チキチキ⭐︎ラブマシーン』で初めに書いていたもの。終盤まで書いたんですが、途中で納得行かずオクラにしました。キャラの掛け合いがお気に入りで、もったいなかったので出します。本当に途中で終わってます。以下オクラ文)

 

 

 

 

 

「地ならし」が始まっても、地上での争いは続いていた。

 

しかしマーレ側に当初の勢いはもはやなく、どんどんパラディ島側に押される。

それもそうだろう。世界を平らにするエレン(悪魔)の侵攻は、すでに始まってしまった。もう止めることは不可能であると、兵士たちの顔には諦念の色が浮かぶ。

 

また《鎧の巨人》も壁の崩落に巻き込まれてかけたガビたちを庇ったのち、エレンが()()()()()()()を解いたことが災いして、装甲の剥がれたライナーは人体に大きなケガを負う。

 

さらに戦いの合間でアルミンたちも、エレンの選択に混乱を隠せなかった。

104期生は幼なじみを非難するアルミンや、エレンの行動を肯定するジャンなど、仲間内にも亀裂が生じていく。

 

 

そんな中、「地ならし」の発動でマーレ軍の生存を絶望視し、撤退する飛行船。

 

地上からその様子を見ていたのは、マガトとピーク。壁の硬質化が解かれる時壁の上で戦っていた彼らは、ピークがマガトを咥え内側の建物に飛び乗ることで、どうにか事なきを得た。

 

「賢明な判断だろう。今はマーレにこの事態を一刻も早く知らせることが先決だ」

「マガト隊長、アレを止める術はないのでしょうか……」

「…無理だろうな。しかしまだ、戦いは続いている」

 

銃を持ち戦うマーレ兵と、雷槍を打ち込むパラディ島勢力。

どちらかが全滅するまで、このまま殺し合わなければならないのか。

ーー否、「地ならし」を止められなかった以上、今のマーレ軍がこれ以上戦うのは得策ではない。無駄に死人を増やすだけだ。

であれば降伏も視野に入れなければならないと、マガトは判断したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

「ーーーーあっ!」

 

夢の中で急速に体が落下するような衝撃のあと、男は跳ね上がるようにして状態を起こした。

全身はビッショリと汗で濡れており、チカチカと視界が明滅する。

 

「え」

 

起き上がった時に伸ばされた男の手。そこに接するのは柔らかい感触。

男が見るとそこには、服がところどころ血濡れになった元仲間、アニ・レオンハートの姿があった。

 

彼女は自分の胸をつかんでいる手に瞳を丸くし、直後その腕ごとつかんで背負うように腰を屈め、地面に倒した。

カハッと、大きな衝撃に男は肺にあった呼吸すべて漏らす。

ついでアニは寝転がった男の顔面へとストレートのパンチを繰り出した。

人体から鳴ってはならない音がし、男の体が大きくはねて弛緩する。

 

「死ね……この、ヘンタイ」

 

凍てついたアニの視線が下へと注がれる。己よりもよっぽど小さい彼女に簡単に背負い投げされた男、ジークは折れた鼻から出血する血に溺れかけつつ、冷や汗を流す。一瞬クサヴァーさんが見えた。

 

 

「いったい、何が……」

 

そう言ったジークは、先ほどから地面を伝って感じる揺れに視線を向ける。

 

そこに広がる光景は、大型の巨人が列になって練り歩く姿。

呆然とした男は何が起きているのか理解する。

 

「地ならし……」

 

地を轟かす行進を前にして、アニが今の状況を語る。

 

彼女は巨人と思わしきアウラ・イェーガーを見てから、動けずにいた。そんなアニはエレンとジークが接触する一連の様子も見ていた。

 

「ガビに撃たれたエレンの首が、あんたの手の上に落ちるところは見た。その瞬間エレン(アイツ)の首から白いゲジゲジみたいなのが生えてきたんだ」

「え、気持ち悪…」

「あぁ、キモかった」

 

そして空に到達するまでの光を受けた白いゲジは長さを増していき、暴れ狂うように蠢いた。それに繋がった生首は上下左右に動いて、みるみるうちに巨大化した。このエレンの変化は、恐ろしく早い時間で起こったものである。

アニはエレンの生首に異変が起こった段階で動いていた。

 

白いゲジは人の脊髄へと姿を変え、生首は人間の頭蓋骨へと。

 

異形の巨人化から気を失っていたジークをさらえたのは偏に女型の瞬発性や機動性が生かされたからであろう。彼女が少しでも行動するのが遅く、仮にこれが重量のあるヨロイであったら、間に合っていなかった。

 

「そのあとあんたを持ったまま、大型巨人の間をぬって逃げた」

「あの隙間をか…?」

 

大型巨人の進行する間には、たしかに女型が通れるスキマはある。

しかしそれを実行するとなると、相当の決断力がなければできまい。女型の15メートル級であれば、超大型の膝ほどしかない。

 

それでもアニはジークを連れて逃げた。その理由はやはり、アウラの存在であろのだろう。

 

 

「アニちゃんは何で、俺を助けたんだ?裏切り者ってことはわかってるだろ」

「…あんたが死んだら、怖いから」

「え?告はーーーーーーすみません嘘だから拳を構えないでください」

「ジーク・イェーガー死んだらあんたの妹はきっと、暴走する。それが怖いんだよ、私は」

「………」

「私はアウラ・イェーガーの協力者だ。四年間に私が、どうやってパラディ島から逃げたかも知ってるんだろ。ジークとアウラが王家の血を継いでいることも知っていた。なんならユミル・フリッツのことも、知ってた」

 

彼女はユミルが戦鎚の本体の結晶に触れ、溶かすのも見た。

 

すべては始祖ユミル、あるいはアウラ・イェーガーの計画通りに世界が動かされているのではないか?ーーと思い至ってから、背筋の悪寒が止まらない。

まるでそれは悪魔にでも、魂を売ってしまったような感覚に思えて仕方ないのだ。

 

「王家の秘密を言ったら私も父親もぶっ殺されるけど、もう今更だろ。パラディ島の奴らだって、マーレだって気づいてる」

「殺されるって…?」

「約束だよ。父親と会える代わりに、私はアウラ・イェーガーが漏らしてはならないと告げた情報を、話してはならない、ってやつ。あんたの妹、怖い顔で言ってたから、「殺す」って」

「………」

「どうせマーレは終わる。そうしたら私のお父さんも……死んじゃう」

 

アニは拳を握りしめる。

「地ならし」を止められなかった以上、たどる未来はパラディ島以外の壊滅。世界連合軍が今更立ち向かったところで、幾千もの大型巨人に勝てる見込みなどない、決して。

 

ジークは耳をかいて、口を開く。

 

「それで、結局何が望みなんだよ」

「……私の父親だけでも助けてって頼んでよ、アウラ・イェーガーに」

 

それはしかし、無理な相談だ。アウラはすでにエレンに食われた。

 

もう妹がいない以上、交渉はできない。

今思い返せばユミルが泣いていたのも、アウラが本当に、死んでしまったからなのかもしれない。そんな少女が取ったのが、エレンの手。

 

始祖はすでに寵愛の子を亡くして、この世界を見限ってしまった可能性もある。

 

本来は王家の血を継ぐ巨人と始祖を持つ人間が接触して、力を発揮することができるはずなのにも関わらず、今のエレンはジークを必要とせず動いている。

それはユミルがエレンに協力しているからこそ、起こっている現象なのだろう。他に推測のしようがない。

 

 

「は?」

 

アウラとの交渉は妹が死んだためできないーーというジークの言葉に、アニは眉間にシワを寄せる。

彼女は人差し指を出し、男の背後を示した。

 

ちょうど木に寄りかかるようにして、座っていたジーク。彼が後ろを向くと、誰かが寝ている。

アニの戦士服の上着を体にかけて、丸まっている女性。服の下は生白い足や腕がのぞいていて、何も身に纏っていないことがわかる。

 

「逃げる途中で、頭蓋骨の巨人が蒸発する肉片のそばに転がってたんだよ」

「……アウラ」

 

その言葉に反応するように、閉じていたまつ毛が震えて白銅色の瞳がのぞく。

そしてジークを視界に入れると体を起こして、ヨロヨロと四つん這いになって歩き出す。扇情的な姿であるが、ここに鼻の下を伸ばすムッツリゴリラはいない。

 

「なぁ、アウーー」

 

兄の言葉を無視し、アウラは膝の上に頭を乗せて寝出した。口が寂しいのか親指を咥えて、小さな寝息を立てる。

妙な幼さが、言動の一つ一つに滲み出ており、アンバランスさがかすかな不気味さを感じさせる。

 

「何か、変じゃない?」

 

アニがジークへ視線を向ける。

男は中途半端に引きずられた上着を取り寝ている妹に袖を通させながら、口を開く。

 

「妹が何なのか、何を考えているのか、正直言ってわからない」

「………」

「座標でエレンと接触した時、アイツは「アウラが始祖を有していた」とも言っていた」

「え?始祖はーーーーいや、何でもない」

「その口ぶりだと、俺がまだ知らないことをアニちゃんは何か知っているみたいだけど……ともかく、これ以上考えても無意味だろうな、っていうのが俺の感想だ」

 

ジークの本音の中には、考えたくないという気持ちもある。考えれば考えるほど、妹の狂愛にまみれた彼は精神を蝕む結果にしかならない。

 

「ジーク、ピークの予想が正しければ、「地ならし」……いや、始祖の力を使うこと自体王家の、それも巨人の力を持つ者とエレンが接触しなければならないんでしょ?」

「……流石、ピークちゃん」

「ソレって一度接触をすれば、エレンはそのまま始祖の力を扱えるの?」

「いや、本来なら()()()()接触が必要になるはずだ。だが俺と意見の合わなかった弟はユミルと手を組んだ」

「………マーレを裏切ってまであんたが成そうとしたことって、何なの」

「ソレを教えるにはまだ、俺とアニちゃんとの信頼関係が築かれてない」

「私は助けた恩人だってのに、ひどい言葉だね」

「恩人だろうとアニちゃんがマーレ側じゃないって、100パーセントの確証が得られたわけじゃない」

「…わかった。あんたの目的は聞かない。じゃあ座標にアウラもいたの?」

「いなかった……けど、いたのかもしれない。俺とエレンが来る前に」

 

肝心の女は居眠り中だ。何か情報を聞き出せる状態でないことも、先ほどの言動をみてわかった。

 

「どうしようかね、これから。立場的に俺はマーレ側からもパラディ島側からも敵だ」

「……あんた本当に、何企んでたの」

 

今現在二人は、壁外側にいる。アニは壁内側だと戦いの混乱に巻き込まれるのと、ジークが拘束される可能性を踏まえて、リスクを負って今のところ誰の手も届かない場所へと移動したのだ。

 

アニが取った選択は彼女の首を絞める行為だったのかもしれない。

彼女が助けずとも始祖ユミルか、もしくはアウラが守ったかもしれないのだから。

 

でも残るのは“結果”のみ。

アニがジークを助け、転がっていたアウラを拾ったという事実だけ。

 

ブラコン女と秘密を共有する中で、見てきた二人の兄弟の姿に絆されたなど、あり得るはずがない。

 

彼女が深く息を吐いた。

 

 

 

 

 

「あぁ〜…どういう関係性なのかわからないけど、ちょっといいかな?」

 

 

二人の視線が、声のした方へ向く。そこにいたのは両手を上げて立っていたハンジ・ゾエ。彼女の後方では一頭の馬と、ソレに繋がれた荷車もある。荷車は大きく破損しており、つぎはぎに直された後が存在する。

その上で簀巻きにされ縄で荷台に固定されている人物を見るなり、「ヒィッ」と、声が上がった。ジークのものである。彼は脱兎の勢いでアニの後ろに隠れた。

 

「……獣の、クソ野郎の声がした…」

 

重傷を負っている男、リヴァイの瞳がかっ開き、顔を動かす。

顔を真っ白くさせたジークは生まれたての子鹿のように震えて、手を合わせた。どうか亡霊であれーーと。

 

「よぉ……クソヒゲ」

「ヒッ」

「こんなに早く再会できるとは、嬉しいぜ…なぁ、オイ」

「ヒイッ」

「クソメガネ、今すぐこの縄を解け」

「うんうん、今動いたら出血で死んじゃうからダメだよ、リヴァイ」

「…ッチ」

 

純度120パーセントの殺気がジークに突き刺さる。

 

ハンジはリヴァイを宥めながら、草の上で転がっている女や、アニを視界に入れていく。

 

「地ならし」が起きているにも関わらずジークがいることや、敵同士であるアニと男が共にいる現状への疑問。

そして巨人化したはずのアウラが、右足まで生やして人間に戻っていることへの疑問。

 

「私たちとしては戦わないで、話し合いたいわけないんだけど…どうかな?ジークはともかくアニ、「地ならし」を止めたいーーという点では、君と意見が一致すると思うんだ」

「アレを見て、まだ止めようって気があるの?正気じゃないね」

「はは…正気じゃないよ私たちは、とっくの前から」

 

真っ直ぐに、しかし冷えた碧眼に射抜かれ、アニはツバを飲み込む。

何か言葉を紡ごうにも、うまく言葉が出てこない。巨人化する体力がアニやジークに残っていないことは、ハンジにバレているだろう。それでも武装をしていない人間に負けるわけがない。

 

しかし「地ならしを止める」という言葉を前にして、アニの気持ちが揺らぐ。一縷の希望が今、目の前にあるかもしれない。

 

本気だ。ハンジは本気で地ならしを止める気でいる。

 

「………わかった」

「そう言ってもらえてよかったよ。…と、その前に、一応ジーク・イェーガーの方は拘束させてもらうよ」

「殺さないなら好きにして」

 

ジークは抵抗しようにも人類最強の睨みを受け、痛みにより調教済みの体がすくんでしまい、両手足を縛られた状態で地面に転がされ、ついでに口に布を咬まされた。

 

その後アニはジークの話も踏まえつつ、エレンがユミルと組み「地ならし」を起こしている事を語る。

座標で

 

 

 

 

 

(ジークが終尾の巨人に巻き込まれず、アウラの人格が完全に廃人になっている状態。その後ジークがエレンやユミル、アウラを救うべく動く……みたいな流れだったんですが、纏まらずボツりました。最後はアウラが生き残ってハピエン?になる流れ)

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