お兄さま曇らせIF√ 作:栗鼠
『あなたはだぁれ?』
花畑の中、茶髪の少女に抱きついた青い瞳の少女は、目を大きく開いた。
不思議そうに小首を傾げる茶髪の子供は、相手の様子にさほど気にした様子もなく、手を引いて、花びらを散らし自然のじゅうたんに飛び込む。
『ねぇねぇ、あなたの名前おしえてよ!』
それに金髪の少女は、震える唇で名前を告げる。ゆみる、と。
『そう、ユミルって言うのね! 私はアウラ。よろしくねっ!』
来世に命を紡いだ少女は夢の中でユミルと出会った時、何も覚えていなかった。
最期に彼女が選んだユミルのことも、最愛であった兄のことも。彼女の生きる糧であった人間の不幸餌も。
髭面のオッサンはともかく、アウラが自分のことを覚えていないとわかったユミルは、その後しばらく少女に抱きついて泣きじゃくった。
悲しかった。例えようのないほど心が苦しかった。
すべて忘れたままの方が、今のアウラも幸せに生きられるだろう。
でも、それは本当のアウラの為にならないのではないか。
人の不幸が美味しくて、何よりもジーク・イェーガーを苦しめて愛することがアウラの幸福だった。
それに彼女は堂々と宣言したのだ。兄に向かって。
────来世は私がもっと、幸せにするから。
ならば、ユミルはその願いに全力で協力しよう。
必殺仕事人、ユミル・フリッツ。伊達にうん千年も巨人を一人で作っていたわけじゃない。
舞台を作るべく、ユミルはコソコソと動き出した。
願わくば、眠り姫が目を覚ませばいいと思いながら。
⚪︎⚪︎⚪︎
ドーモ! ドーモドーモ!!
困ったことになった私はアウラ・フリッツちゃん。異母弟に拐われちゃった女です。
いや、どうしてこうなった?
エレンくんとは異母を持つ関係を差し引いても、教師と生徒の間柄で良好な関係を築けていたと思うんだけどな。まぁ向こうは、血のつながりが半分あることさえ知らないんですけど。
背後からスタンガンらしきもので気絶させられたところまでは覚えていて、気づいたら最低限の暮らしはできそうな白い部屋にいた。
「ぴょんぴょん〜♪」
ベッドのスプリングがよく利いて、仰向けの状態でその反動を楽しんでいたら、部屋に来た白いローブの人たちに連行される。な、何をするだァ──ッ!!
「この方が“神の使い”であると、君は申すのですね」
「はい。虚空に向かって、あのお方とまるで会話しているような様子でした」
「フム……」
おじさんや中年女性など、怪しげ満点な人たちに囲まれるようにして、祭壇の場所に座らされた私。
ヒゲをたっぷり蓄えた老人が一人に向かって先ほどの問いをした。その相手は薄い暗がりの中でわかりにくいですが、エレンくんでした。
やめなさい、そんな見るからに怪しげな人たちと同じような、見るからに怪しい首飾りなんかつけて!!
「もしそれが見間違いでないならば、貴女に問いたい」
「へ、は……はい?」
「唯一神「ユミル」様はいったい、我々に何を伝えようとしているのか、どうか教えてもらえないだろうか?」
「ユミ……えっ、………ユミル?」
ユミルちゃんがどうしたって言うんだ? というか、どうしてこの人たちユミルちゃんについて知って……いや待て、
あぁ、何だか嫌な予感が……でも冷静に見れば、この人たちって明らかに信者っぽい服着てるわ。
状況が理解できないからと、ベッドで現実逃避をしている場合じゃなかった。
「………」
「どうされましたか?」
「いえ、えっと…」
エレンくんの方をチラリと見たけど、フードに隠れて目元が見えない。
彼はユミル教の信者で、私がユミルのことを見えているのに気づいたから誘拐したんでしょうか。
確かに、エレンくんの周りでウロチョロするユミルを観察していた私を見て、前々から不審を抱いていた可能性も考えられる。だったらそこから調べられて、私の秘密がバレたのかもしれない。
どうすればいいか静寂の中で頭を回していたら、助け舟が入った。モノホンのお出ましである。
ユミルは私の前に現れると、そのまま近づいてきた。座っている私の膝から透明のユミルちゃんが生えるような状態になっても、なお近づく。
そして一瞬、意識が途切れた。
「……〜…ぉ」
「……、………!!」
それからぼんやりと人の声が聞こえて、目を覚ましたら周囲のユミル信者たちが号泣していた。
「なんて尊いお言葉なんだ……!!」「今すぐ世界中の会員に伝えるのだ! 神の使いが現れたと!!」「俺……生゛ぎでて……よ゛がっだ…!!!」────などなど、嵐のような光景である。怖……。
私は何も言った覚えがない。ということは、ユミルちゃんが私の体に入って何か言ったのだろうか。……いったい、何を、言ったんだ…?
考えてもユミルちゃんはすでにおらず、歓喜の渦に包まれる人たちに私が言ったであろう言葉を聞くこともできず、一人頭を抱えた。
今頃お兄さまはどうしてるかな。部屋にテレビはなかったし、自分のポイポンもなかったから、気絶してからどれほど時間が経ったかわからない。
多分そんなに心配されてないでしょうけど。どうせいつものように、かまってちゃんな行動だと思われているに違いない。
「あの……」
「何でしょう?
「家に帰りたいんですけど……」
近くにいた比較的幼い少女に声をかける。
するとお祭り騒ぎが嘘のように静まり返った。みなじっと私を見て、柔らかく微笑む。
「何をおっしゃいますか」
貴女様の家はここではないですか、アウラ・
危ない匂いはこれまで濃厚に漂っていましたが、ようやく現実味が追いついた。
今私は、マジにヤバい状況にいると。
⚪︎⚪︎⚪︎
捕まってから一週間。三食きっちり支給され、お風呂もトイレも生きる上では何一つ不自由のない生活を送っている。気分はお姫様だ。これが誘拐された人間の扱いとは思えない。服は修道女のような格好をさせられて不満ですが。
外界と連絡する手段は封じられていて、ポイポンを返してもらうようお願いしても「元からなかった」の一点張りです。テレビやラジオ、新聞も封じられている。
でもゲームや漫画は許された。完全にニートの道を突き進んでいますよコレは…。
ぐうたら生活が染みついて、社会復帰できなくなったらどうしてくれやがるのでしょう。
一応“神使様”としては働かされていて、新しいお告げがないか聞かれたり、信者たちに引見したりしている。
信者たちにはそう簡単に私がユミルの使いだと信じるなよ…と思いますが、祖父母つながりで私がフリッツ家の人間だと気づいた者がいたようで、神の直系の子孫であることが余計に「神使様」としての箔をつけてしまった。
「ハァ……」
外ではいったいどうなっているのでしょうか。
逃げようと思えども、私の部屋は外側から鍵をかける仕組みでそこからの出入りは自由にできず、中も窓がない造りです。換気扇は小さくて入れそうにない。部屋の外へ行く時も監視の目があり、逃走はできない。
普通誘拐なんて起きたら警察沙汰になるでしょう。でも警察は望み薄かもしれません。
だって信者の中に州知事や、他にも見たことのあるお偉い方が交ざっていたんですもの。
無理だ。詰みだ。来世はチーズ蒸しパンになりたい。
「ジークお兄さま…」
このままじゃ一生お兄さまに会えなくなってしまう。でも、逃げる算段がつかない。協力者を仰ぐべく、この可愛さで殿方をたぶらかしもしましたが、信心パワーには勝てなかった。
望みのユミルちゃんはあれ以来出てきていませんし、本当にどうしましょう。
と、その時、ノックの音がした。
「神使様、今お時間のほどよろしいでしょうか? 謁見したい者がいるそうです」
「……大丈夫ですよ。行きましょう」
ローブのフードをかぶった薄ヒゲの男性に促される。
予定にない謁見願いはたいてい、遠くからわざわざ来た偉い人間である可能性が高い。
そして移動した先の部屋にいたのは、私と同じ髪色の……。
「エレン、くん」
「………もしや、この者と神使様はお知り合いなのですか?」
「え、えぇ……そうなの。よければ彼と二人きりにしてくれないかしら?」
「…分かりました。私は外に控えております」
私を連れてきた人物が部屋を出たのを確認して、大きく深呼吸した。
何があったのか知りませんが、綺麗だった翡翠の瞳がえげつなく濁っている。
「単刀直入に聞くけど、何であんな、誘拐なんてしたの?」
「………」
「エレンくん、あのね。もしかしたら事の大きさをわかってないかもしれないけど、誘拐は立派な犯罪なの。未成年だから法では裁かれないなんて考えをしているなら、あなたは間違っているわ」
「…ふざけてんのか?」
「………ハ?」
彼の物言いに、いくら私でもカチンときた。人を攫っておいて何なのだ、その態度は。先生の説教なんて聞きたくないと?
「いつまで良い人ヅラする気だ。オレはもう、
「?」
思い出してるって、何を? 自分に秘された闇の力を?
「まさか、習得したの? 邪王炎殺黒龍波を……」
「………」
「無言で女性の胸ぐらをつかむのはやめなさい」
「ッチ」
舌打ちをしてエレンくんは私の胸ぐらを離した。
彼が思い出したのは闇の力ではなく、記憶らしい。前世の記憶。
デジャブを感じる。お兄さまと似たような状況ではなかろうか。
戦犯は………ユミルちゃんだな?
被告人ユミルを頭の中で呼んでみましたが、姿を現しません。代わりに脳内にせせらぎのような微かな音で、「ごめんなさい…」と聞こえた。報・連・相は大事にしましょうね?
「…うん、何となくエレンくんの状況は理解したわ。でもあなたが私を攫った理由がやっぱりわからない」
「忘れたとは言わせねぇ。オレにしたこと、仲間にしたこと、全部」
「…………わ、たし、お兄さま以外にも何かやらかしてるの…?」
「いい加減やめろ、その演技。吐き気がする」
「アウラ・イェーガー」の被害者はお兄さまだけだと思っていたのに、他にも多数いるの?
前世の私は本気で何を仕出かしたんだ? 思い出せないし、思い出すのも怖い。だって少し前まで普通だった少年が、ここまで豹変したんだもの。
でも、思い出さなければ何も始まらないのも、薄っすらとですがわかっています。私がお兄さまに償うには、知るべきものなのだと。
「……覚えてないの。嘘だと思われても、本当に…覚えてない」
「………ふざけんな」
「ふざけてないッ! 本気で私は言って──」
「ふざけんなよッ!!!」
肩をつかまれて、壁に背中を打ちつける羽目になった。
エレンくんの目はわずかに血走って、見開いた目からは大きな瞳がありありと覗いて見えた。
「お前は、お前は人の不幸が大好きなクソヤローで!! オレも、お前の兄貴も、他の人間も散々傷つけて、そのクセ最後はその罰も受けずに勝手に死んじまったような!! そんな、そんなクソヤローなんだよッッ!!!」
少年の瞳から涙がこぼれた。一筋こぼれると後は止まらなくて、次々とこぼれ落ちる。
震えるその体を抱きしめて、慰めるべきなのかもしれない。けれど、今の私にそんな慈愛に満ちた行動をする余裕はない。
ユミルが私がお兄さまに仕出かしたことをぼかした理由がわかった。
言えないようなことばかり「アウラ・イェーガー」は行っていて、まぁ、それは薄々理解していたけど、そもそもその精神がエレンくんの言うとおり「クソヤロー」で、その事実を知った私がひどく傷つくと思ったから、ユミルは言わなかった。いや、言えなかったのか。
「何で、死んじまったんだよ……」
「………」
「何でお前は、オレを生かしたんだよッ!!!」
「……知らない」
「答えろよッッ!!」
「知らないって言ってるでしょ!!」
異母弟を突き飛ばしてしまった。呆然としている少年の顔から目を背けて、逃げるようにドアを開ける。控えていた男性に声をかけると、すぐに自分の部屋に戻った。
色んなものが頭の中で煩雑して気持ち悪かった。
何も、考えたくない。何も。
「ジークお兄しゃま……」
◻︎◻︎◻︎
エレンの様子が最近おかしい。
そうアルミンに切り出したのはミカサだった。
教科書をバックパックに入れながら、アルミンは少し考えるようにして「エレンにも色々あるんじゃないかな」と返す。
「確かに僕らが誘っても、「用事があるから」って先に帰るよね」
「……すごく怪しい」
「アルバイトでも始めたのかもしれないよ? 一応エレンって医者の息子だし、今のうちから受験のためにポイント稼ぎをしてるのかも。僕も欲しいアニメのグッズがあるから、アルバイトしようかなぁ」
「アルバイトなら別に、私たちに隠さなくても…」
「恥ずかしいんだよ、きっと。アルバイト先に来られたら嫌なのかもしれないし」
「………」
「そんなに気になるなら、今度エレンに直接聞いてみようよ」
「…うん」
二人は並んで廊下を歩きながらポツポツと会話をかわす。普段なら二人の間を埋める少年がいれば、もっと他愛ない話で盛り上がる。
方やオカルトマニア少女で、方やいじめられっ子気質のオタク少年だ。ジャンルの違う二人の緩衝材になるのがエレンだった。
「…あ、
廊下の向こうからクインビーを中心にジョックが並んで、ゾロゾロと取り巻きを連れて歩いてくる。
自然とアルミンとミカサは隅に寄って、ATフィールドを発した。学校の頂点に立つ二人に関わりたくないという心情である。
「やっぱりおかしいわよ、もう二週間も経つのにお姉様が見つからないだなんて…。警察は何してるのよ!」
「俺たちで情報を募ってみないか? 何か手掛かりが見つかるかもしれない」
クインビーとジョックの会話を盗み聞きするに、どうやら無断欠席しているアウラ教師の話らしい。
彼女は二週間前から学校に出勤しておらず、間もなくして家族が捜索願を出したというのは噂になっている。なまじアウラが美人かつ生徒から人気があった分、その噂の広まりも早かった。
「アウラ先生どうしたんだろうね。マフィアの事件に巻き込まれたんじゃないか、って話もあったけど」
「……ねぇ、アルミン」
「何、ミカサ?」
ミカサはハッとした様子でアルミンを見た。
「エレンの様子がおかしくなったのって、先生が学校に来なくなってからじゃない?」
「えっ? ………あ」
そう言えば、そうだ。エレンの付き合いが悪くなったのも二週間前からだ。
いや、もっとしっかりと思い返せば、その前から時折エレンは二人を置いて先に帰っていた。
単なる偶然ではないかとアルミンは思う反面、妙に引っかかる。ミカサはアルミンより顕著で、「まさか、エレンと先生が…!?」と、あらぬ方向に思考を飛躍している。恐らく生徒と教師の禁断のラブストーリーを妄想しているのだろう。
「五寸釘と、藁人形が必要ね……」
「ミカサ、何をする気なのか想像がつくけど、アウラ先生を呪うのはやめようね?」
「フフ…エレンは私の
不気味に笑うミカサに、アルミンは苦笑いした。
「でもアウラ先生、早く見つかるといいね」
「アルミンはヒストリアたちに協力しないの? 前はよく先生を見るたびに挙動不審になってたじゃない」
「……高嶺の花は僕みたいな人間には手が届かない。だからいいんだよ。その代わり、僕には二次元があるから…」
悟りを開いた表情を浮かべていたアルミンの視線がその時ふと、一点の場所で止まった。
不思議に思ったミカサも同じ場所を見つめる。彼女には廊下を歩く他の生徒が視界に映った。
「どうしたの、アルミン?」
「……いや、さっきエレメンタリースクールぐらいの女の子が、曲がり角を歩いて行ったのが見えた気がして…」
「ただの生徒じゃないの?」
「…………と、透明だったんだ。服もボロボロだった」
ゴーストを見てしまったかもしれない。顔を青くするアルミンに対し、ミカサの白い肌が紅葉に染まる。その類を熱心に研究する彼女にはドンピシャ案件だった。
好奇心のまま昇降口とは別方向の廊下を突き進む少女に、アルミンも慌てて後を追う。
ちょうど曲がり角を右折しまっすぐに行った正面には職員室があり、左手には教師用の玄関、右手には階段がある。用がなければ生徒が通ることはあまりない。
「……っ!」
「何か見えたの、アルミン!?」
「い、一瞬だけど、階段から子供が降りて、そのまま真っ直ぐに消えた!」
ゴーストは職員用の玄関の方へ走って行った。直線に進む二人はそして、目撃する。玄関の中央に立つ、二人の男を。
一方はバケツとデッキを持つつなぎを着た男で、もう一方はスーツを着たヒゲ面の男。
(リ、リリ、リヴァ…リヴァヴァ清掃員……!!)
かつては裏社会の大物と噂されており、一部を除く学校の人間から恐れられている男、リヴァイ。
彼が廊下を清掃している時に生徒がその廊下を通れず、遠回りをしていくことはままある。
そんな男の前にいるヒゲ面の男は、蛇に睨まれたカエルのように一歩も動かない。リヴァイが「オイ、どうした」と声をかけても、白目を剥いたままだ。
アルミンとミカサは顔を見合わせて、頷く。ゆっくりと音を立てぬよう後ずさり、逃げることを決めた。
しかし二人の身じろぎした小さな音が男の耳に入った。三白眼が少年少女を射抜く。
「何だ……職員室に用か?」
「わ、私たちは、その…」
「あっ………」
「…? アルミン?」
少年の視線が、ヒゲ面の男の背後に固定される。先ほど見たゴーストと同じ特徴の子供が、男の背後に隠れるようにして立っている。金髪の髪が小さく揺れて、ひょっこりと片目だけアルミンの方をとらえた。
よくよく見れば子供の髪の色と瞳は、ヒゲ面の男と似ている。これはゴーストのSOSなのかもしれない。
ここで放って去るというのは、アルミンにはできなかった。何せ、そのゴーストには
ここで男の助けに入らなければ絶対に呪ってやるという、スゴ味が────ッ!!
「そ…そうなんです! 先生に少し用があって!」
「そうか」
「えっと…もしかしてスーツの方も先生方に用があって来たんですか?」
「…多分な。俺と出会してからこのままだが」
「それなら、僕らがこの人と一緒に行きますよ! リヴァイさんはお仕事がありますし…!!」
「それならお前たちは帰る時間だろう」
「大丈夫です! それにいつも綺麗に清掃してくださること、とても感謝してるんですッ!! だから…」
涙ながらにアルミンは語った。この涙は恐怖から流れているのだが、少年の内心には気づかぬままジッとアルミンを見つめたリヴァイ清掃員は、「……そうか、わかった」と一言残し、二人とすれ違うように去る。
通りすがりのリヴァイに肩に手を置かれたアルミンは、男の気配が無くなってから膝から崩れ落ちた。
「こ、怖かったぁ…!!」
「何してるのよ、アルミン!」
「は、はは……ははは…」
そして、二人の近くで銅像になっていた男は、少年のから笑いを聞いてようやく正気を取り戻す。
何か、何か恐ろしい目に遭った気がする……。だが、男は何も思い出せなかった。
「あの、来客の方ですか? でしたら誰か先生を呼んできますよ?」
アルミンが親切に話しかける。
少年とミカサを目にした男は虚をつかれたような表情をし、「じゃあお願いするよ」と返した。
教師を呼び行ったのはミカサで、彼女は見知らぬ男と二人きりになるのが嫌だったらしく、率先して動いた。
残されたアルミンは男の背後にいた守護霊と思しきゴーストについて聞いてみようとしたが、訝しまれても無駄に傷つくだけなので、そのことは聞かなかった。
その代わりに男が何用で来たのか、尋ねてみることにした。
「少し、妹の件でね」
「妹さんですか」
「…なぁ、君とさっきの女の子はもしかして恋人か? ………あぁいや、男女二人で仲が良さそうだから、ついそう思ったんだ。気を悪くしたらごめんね」
「いえ、僕とミカサは友達ですよ。これから一緒に帰るんです」
「ミカサちゃんって言うんだ。君は?」
「僕はアルミンです」
「……アルミンか」
「はい」
アルミンは若干痩けている男の顔をまじまじと見た。特徴的なメガネと、長いヒゲ。その容姿をどこかで見たことがある気がして、考え込む。最近ではないが、だいぶ前に………と、そこで「ん?」と思い出した。
そうだ、授業参観に来ていたエレンの父親と似ている。医者の男も丸渕メガネに薄いヒゲを生やしていて、意識すればするほどそっくりに見える。髪の色や瞳の色こそまったく違うものの。
「アルミン、先生を呼んできたよ」
そこで、男と少年の会話は途切れた。
ミカサに呼ばれて訪れたのは教頭で、男を応接室に案内する。
「「……!」」
教頭が呼んだ男の名前の後に続いた苗字に二人が驚いた中、立ち止まった男は懐のケースから取り出した名刺を一枚、アルミンに手渡した。
「ここで君たちに会ったのも何かの縁かもしれない。もし何か……妹の件について知ったことがあったら、いつでも連絡してくれ」
「………は、はい」
男が去り、アルミンが持つ名刺をミカサがまじまじと見る。
その苗字はやはり行方不明になっているアウラ教師と同じだ。
「あの人が、アウラ先生がよく語っていた超絶カッコイイお兄さん、か…」
「授業中に一度話題に出ると、5分以上は話が脱線する例の……」
「………」
「………」
「……そろそろ帰ろうか、ミカサ」
「…うん、そうね」
まったく似ていない兄妹の容姿に意表を突かれつつ、複雑な心境を抱えたまま二人は学校を後にした。
その翌日から、エレンが学校に来なくなった。
【人物】
・アルミン
ま……まど◯ギの新作映画が公開だって……!!?こうしちゃいられない!
・ミカサ
藁人形と五寸釘はネットで買った。
・リ、リリ、リヴァ…リヴァヴァ……
お掃除の能力検定はもちろん1級。
・新生アウ子
メンタルバッキバキ。
・アウ子のポイポン
持ち主が誘拐された直後エレンの手に渡り、兄の誕生日にしていたパスワードを解除され、お兄さまフォルダが見られてしまった。中には隠し撮りしたものや寝顔を至近距離で撮ったものがある。
・ユミルちゃん
走るの疲れちゃった。
・エレン
昔の中途半端ライナーに近い状態。
・ジーク
一部記憶がない。