お兄さま曇らせIF√   作:栗鼠

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今話は頂いたリクエストより、「スクカ時空の激重感情なジクとアウ子」、それと別で頂いた「青年ジクと主人公の♡な話」を掛け合わせた感じの内容になってます。金ハートいっぺぇありがとナス!

また本編にあった番外をこちらの枠に移動させました。驚いた方がいたら申し訳ないです。
本編で一区切りさせたくなった次第。ご容赦いただけたら幸いです。

最後に。色々恥ずかしいのでもし消えたらユルシテ…。


新生アウ子とお兄さま

 Q.教師を辞めて、秘書のお勉強をしている美女はだぁれだい? 

 

 A.アウラちゃんですね。

 

 

 

 誘拐騒動から数ヶ月経ちました。

 

 前世の記憶も戻り、すっかりいつものアウラちゃんに戻りました。お兄さまの曇らせを啜って来なかった以前の私は本当に正気を疑いますね。それでも名前に「アウラ」がついてんでしょうか。

 

 今は前述の通りジークお兄さまの秘書になりたいのでお勉強中です。教師を辞職する際は精神病を理由にしました。

 

 辞める前にエレンくんから愛しの『お兄さまフォルダ♡』が入ったポイポンも返してもらっています。

 スゥーハァー…やっぱコイツがなきゃキマらねぇぜ…。

 

 

 生活は少し変わり、元いた屋敷を売り払ってマンションで三人暮らしを始めました。実質新婚生活ですね。その中にユミルちゃんもフリーダムにいます。

 

 勉強の傍ら、ニートというわけにもいかないのでバイトもしています。先生を続けながらでも勉強はできましたが、エレンくんがいるのでね。向こうの精神状態を考えたら辞めるの一択でした。

 

 

 

 そんな、ある日のこと。

 

 朝食はパンと目玉焼きに、サラダとソーセージ。それとコーヒー。

 

 香ばしい匂いが鼻腔をくすぐる。パンを口に入れると、サクサクとした食感の後にマーガリンの少しコクのある味わいが小麦の素朴さに合う。目玉焼きも半熟具合がちょうどいい。

 

 料理を作っているのは私です。このために栄養学のお勉強も始めました。

 

 朝早起きしてお兄さまのお弁当も作っています。張り切りすぎてど深夜から仕込みをしようとした当初、お兄さまにバレて怒られたのは濡れる(イイ)思い出です。

 

 しかし、まだお兄さま攻略にはほど遠い。

 

 いってらっしゃいとお帰りのキッス(頬)はごねにごね、「ごね」がゲシュタルト崩壊しかかってようやくOKをもらえた。

 

 身持ちが堅すぎんか? ……いえ、焦っていけません。最終目的地が王都だとしたら、私はまだウォールシーナどころか壁の外だ。巨人化(意味深)してぶち壊そうとするのは早計です。

 

 

 私の心の格闘などつゆ知らず、お兄さまはコーヒー片手に新聞を読んでいる。私のアッツアツ♡コーヒーで舌をいじめています。そんなお姿を正面からニコニコして見るのが最近の生きがいだ。どうやってソフトMにお兄さまを曇らせていくかもアウラちゃんのお仕事です。

 

「…なぁ、お前日曜の午後空いてるか?」

 

「デートのお誘いですか!!!??」

 

「うっ……朝から声がでけぇな…」

 

 映画館に行かないか──と誘われました。どうやらある映画の時代考証役の一人として、クサヴァー氏が参加しているものが近々放映されるらしい。

 勿論行くに決まっています。

 

「そりゃデートじゃないですよねェー……」

 

 まぁ当日はオシャレして行きましょう。

 

 お兄さまはまた新聞に目を戻してしまわれた。その御姿を写真で撮る。一日に数百枚規模で増えていくので恐ろしいですね、お兄さまの魅力は。

 

「………」

 

 妹を一瞬見た青い目は、「もう好きにしろ…」という感じで疲れ切っていた。げっへっへ。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 待ちに待った当日。デパートの映画館にジークお兄さまと訪れました。

 

 お兄さまはややカジュアルな装いで、私は黒のロングパンツにシャツ、それとサイズの大きいカーディガンです。

 靴は紅のピンヒール。底が折れてお姫様抱っこ展開にならないかな、という乙女心百パーセントで選んでやったぜ。

 

「ポップコーンはキャラメルがいいです」

 

「ハァ? 普通塩だろ」

 

「キャラメルですよ。ねっ、ユミルちゃ……あ」

 

 少女は今、機械にへばりついてポンポン弾けるその様子を見ている。心なしかその瞳は輝いていた。

 そっか。食べたことなかったか……。

 

(私の体に入れるなら、それで食べてみる?)

 

(!!)

 

 というわけでユミルちゃん用に抹茶も買った。摂取カロリーがエグいことになりそうですが、晩ご飯を抜けばいいでしょう。

 

 

 そしていよいよ上映開始。

 

 赤い座席がズラッと並ぶ館内。映画館自体に来るのは久しぶりかもしれない。前方の中央にはスクリーンがあって、童心が蘇った。見たところ客層は大人が多い。

 

「わっ…」

 

 階段を降りていたらピンヒールのせいでつまずいた。私の両手には、PON!! CRUSH! CRUSH! PAPAPA!! でできたポップコーンがある。ユミルちゃんが超楽しみにしている抹茶味が…。

 

 

 命を──────燃やせえええぇぇ!!!!(Mio-chan感)

 

 

「あっ……ぶねぇな!」

 

 

 間一髪のところで、背後から伸びた手がアウラちゃんの胴体を掴んだ。それにより被害は少量のポップコーンで済んだ。はわわ…背中にお兄さまの熱を感じる……今日死ぬんかな私。

 

「気をつけろよ、ヒールなんだから…」

 

「……お兄さま」

 

「何だよ」

 

「この体勢って立ちバッ「黙れ」」

 

 お兄さまはさっさと席に向かってしまった。照れ隠しかな? 

 

 周りにいた人間の視線が痛いので、私もさっさと席に着きます。

 

 映画はシリーズもので、その最終章でした。既視感があると思ったら、ハンジに無理やり押しつけられたBlu-rayで見たやつだ。

 私は今世もあの変人の餌食になるのか…と思うと、泣けてきた。

 

 

「フンフン……パクパク……フンフン……パクパク」

 

 

 途中で入れ替わったユミルちゃんも初ポップコーンを楽しめたみたいです。その時のお顔は見れなかったけど、戻った後の余韻顔が至極満悦そうだった。

 

 私もキャラメルを食そうかと思い、自分の分を装備した。スクリーンには巨人がデカデカと映されている。実際の大きさほどあるかも……いや、現物(ナマ)の方がもう少し……ん? 

 

「キャラメル…」

 

「………」

 

「マイキャラメル、イズ、ダイエット」

 

 てんこ盛りだったのに、六割だ。約六割も減っている。

 ユミルちゃんが食べている時は私の太ももに挟んであった。で、彼女は片手に自分の分を持っていた。コッソリと食べたのか? 六割も……? 

 

 チラッとユミルちゃんを見る。

 

『?』

 

 違う。表情にやましさがない。味が異なるから、いくら夢中になっていても間違って食べたら気づくはず。なら…。

 

「………」

 

 犯人は沈黙を貫く。視線はスクリーンに向いていますが、私がスッと塩味に手を伸ばすと避けられた。

 

「………」

 

「………」

 

 その間にも映画はクライマックスに入り、感動的なフィナーレを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 食べ物の恨みは深いと言います。映画が終わった後、私はドラえもんパイセンに倣って温かい目で犯人を見つめ続けた。

 

 すると、耐えかねた犯人はトイレに逃げ込んだ。

 

 

 キャラメル味は美味しいですからね。妹が楽しみにしている様子を見て、「俺は塩派」とか言いながら、食べてみたくなったのでしょう。それでキャラメルの美味しさに気づいてしまったと。まぁ、だいたい事件の内容はこんなものでしょう。

 

「許さん……」

 

 一言あれば全部あげましたのに。黙って食べるのはどうなの? ユミルちゃんも何も聞かなかったみたいですし。彼女も映画を観ながらだったから、犯行に気づかなかったようです。

 

 まさしく食指が動いた、って事ですね。

 

「許さんぞぉ……!」

 

 電車内で暴れる悟空声なBBAみたいになった私は……いや、どっちかっていうとフリーザか? まぁ、ともあれかくもあれ、小さな反抗心の芽が出た。

 

 デパートの中は広い。ジークお兄さまは今のアウラちゃんが、まさか勝手にどこかへ行くとは思いもしないでしょう。覚醒してからいっつもべったりですから。

 

 押しては引いての精神です。今日はこの反逆の狼煙とともに「引き」の精神を見せつけてやりましょう。

 

 

「ねぇ、ユミルちゃん……あのさぁ……わたしとぉ…イケナイコト、しよっかぁ……」

 

『…?』

 

 

 そんな感じでデパート巡りを始めた。

 

 何だかんだで一番楽しかったのはゲーセンだった。

 “健全”アウラちゃん時代は縁の無かった場所です。

 

 学生時代、友だちと帰りに寄ってワイワイワイ、ワイワイワイ──みたいな。そんなありもしない記憶が過ぎってくる。あれ、なんか目から白くてドロッとしたものが出てきたかも…。まぁ本当に出たら病院ですね。

 

 ユミルちゃんは鰐を叩き殺しまくり、私は銃でミイラを殺すゲームで淡々とヘドショを繰り返した。ナンパして来た輩もいましたが、私が真顔でゲームをやっているとすぐに消えました。

 

 長時間同じ場所にいると見つかる可能性があるので程々にし、また別の場所へ移動する。ちなみにポイポンの電源は切っています。

 

 

「次はどこに……おっ?」

 

 

 視線の先で、ベンチに座って泣く少女を見つけた。ユミルちゃんよりもっと小さい。まだ未就学児かもしれない。

 

「大丈夫?」

 

 しゃがみ込んで、目線の高さを合わせる。声色も柔らかくして、優しく微笑むことも忘れません。

 

「ふえっ……!! ままが、ままがね…」

 

「お母さんとはぐれちゃったのね?」

 

「………うん」

 

 迷子の子供を見捨てるほど人間性を捨てちゃあいないので、迷子センターに連れて行くことにした。

 

 抱っこした少女の話を聞くと、おもちゃ屋で欲しかったぬいぐるみを買ってもらえず、その後未練たらたらで残っていたらはぐれてしまったらしい。

 

 ちゃんと子供は見ておいて欲しいですね。

 この世には兄に発情する女がいるように、幼い少女にギンギンになる変態さんもいます。

 

「あ…」

 

 ちょうどおもちゃ屋の前を通った時、少女の瞳がクマの大きなそれに吸い寄せられた。

 

「………買ってあげようか?」

 

「え?」

 

 元々丸い瞳が、さらに丸くなる。そのまま溢れてしまいそうだ。

 

「…ま、ママがしらない人にはダメ、って……」

 

 その理論で言うと、私に抱っこされてるのはアウトじゃないか…?

 でも、少女曰く私はオッケーらしい。ママと似てるから、だそうだ。

 

「……じゃああのぬいぐるみ私が欲しいから、ちょっとお店に寄るわね」

 

「? …う、うん」

 

 お買い上げされたクマを大きめの紙袋に入れてもらう。それを提げて、今度は手を繋ぎながら迷子センターに着いた。

 

 放送してからすぐ、お母さんらしき人物が子供二人と一緒にやって来た。

 なるほど。三人の子供とおもちゃ屋の組み合わせじゃあ、子が迷子になるのも仕方なかったのかもしれない。

 

 会った瞬間に母は子を抱きしめて、子は母に縋るように泣いた。

 

「あの、本当にありがとうございます! 何とお礼を言ったらよいか……!!」

 

「…いえ、偶然通りかかっただけですので」

 

 それと、とクマを少女に渡す。もちろんお母さんは「受け取れません…!!」となります。しかしアウラちゃんはすでにそれを避ける方法を編み出しています。

 

 

「私のストレス発散としてサンドバッグにされるより、小さい子に大切にされた方がぬいぐるみも幸せですよ」

 

 

 おかしいですね。和やかな空気がちょっと凍った。

 でも無事にクマを押し付けられたので良しとしましょう。

 

「アウラおねーちゃん、ありがと──っ!!」

 

 母親は最後に深々と頭を下げ、家族四人、仲良く手を繋いで歩いて行った。

 

 クマは、幼子の手の中に。

 

 

 

「………」

 

 

 なぜか、無性に外の空気を吸いたくなった。

 

 ここのデパートは屋上が駐車場になっている。私が歩き出すと、少し遅れてユミルちゃんも付いて来た。

 ぎゅっと、手を握られる。不思議と今はそこに感触がある。

 

「……あれかな、あの…犬夜叉のかごめと桔梗みたいな…」

 

『………』

 

「そしたら、私もかごめと桔梗みたいになってるのかな?」

 

 まぁ私のかごめがいて、そして会うことがあっても、その時はドッペルゲンガーで済ませてしまうだろう。

 私にとって、私自身の価値は低いから、大して気にならない。

 

 彼女がユミルの「かごめ」だったからこそ、大分ビックリしたんだ。

 

 

 それから屋上に行く前に自販機でアイスを買って、ちびちびと食べた。

 

「……寒っ」

 

 冬の気配が近づく時にアイスは失敗だったかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 ジークは「ごめん」の一言を出すために、「タタカエ……タタカエ……!!」と呟いていたかつての弟のように、トイレの手洗い場に立ち己の感情を整理していた。

 

 ちょっとした好奇心だったのだ。お隣のポップコーンに手が伸びてしまったのは。

 

 しかし予想外の美味さで、拳でガッツリと掴んで盗む方法で犯行を犯した。

 

 彼には「まぁ、許してくれるだろ」という考えもあった。実際に、妹は兄ならば無体を働かれても喜ぶような女だ。

 

 ただ、食い物の恨みは深かった。

 

 

 トイレから戻ったのち妹が居なくなっていることに気づき、ジークは二十分ほど待った。

 その後は拗ねて出歩いているのだろうと判断し、連絡を入れた。

 だが応答はなく、これはいよいよ────と、探し回っている。

 

 

(食い物一つでそんなに恨むかよ!? ちょっと食っただけだろ…!)

 

 

 そこから妹を叩いたかつての地雷を踏み、他の地雷も次々と爆発した。

 

 周囲の景色が目まぐるしく変わる。本格的な寒さが近づく中で、顔中を汗でぐっしょりと濡らす男は側から見て異様だった。

 

 心臓の辺りがバクバクと、強く脈打つ音が聞こえる。

 

(俺が……)

 

 焦茶の長い髪は探すと結構いる。似通った後ろ姿を見かけるたびに、息が上がって行く。デパートの中はかなりの大きさで、体力のある男でも全体を探し回るとなると一苦労する。

 

(どこだよ、本当に…っ)

 

 前世の記憶がフラッシュバックする。

 

 

(アウラッ……!!)

 

 

 

 天使の顔で、その中身はゲロ以下の臭いがプンプンする女だったアウラ・イェーガー。

 

 兄を曇らせることに固執して、人間の不幸が美味しいサイコパス野郎で、しかしまともな精神も一応持っていた。

 

 おまけに、未曾有の死にたがり。

 

 

 そんな女は今世も“妹”として生まれ、そして覚醒してから兄を堕とそうと躍起している。

 

「甚だ」が過ぎる妹だ。でもそんな妹を兄も愛しているのだから仕方ない。嫌いになれたらとっくの昔に嫌いになって、切り捨てている。

 

 エレンにはアルミンやミカサといったイイ感じの仲間がいるのに、ジークにはいなかった。いるのはヤバイ妹と、そんな女を愛する別ベクトルでヤバイ少女。

 

 特級が二体。ジークに天与呪縛(フィジギフ)があったらどうにかなっ────いや、どうにもならなかったかもしれない。

 

 

 

 そして、どれほど走ったか。とうとう限界が来た男は、柱に寄りかかって頭を押さえた。

 合間合間に入れた連絡もやはりダメで、ゼェゼェと、息が漏れる。

 

 沸騰しそうな頭が思考をも侵す。目頭がふいに熱くなり、唇を噛んだ。

 

「どこ、行ったんだよぉ……! 畜生ォ…!!」

 

 ジークは語尾がコウメ太夫みたいになりながら、フラフラと歩く。

 

 その時聞こえたのは、スピーカーのノイズが混ざった電子音。

 

 

【迷子のお知らせです────】

 

 

「シーナ」という少女が迷子になったらしい。

 この時思考がろくに働いていなかった男は、「妹が迷子なんです…」と迷子センターに向かった。放送にあった子供はすでにそこに居ないようだった。

 

「えっと……娘さんじゃないんですね?」

 

「妹です………」

 

「あの…お水飲まれますか?」

 

「……はい」

 

 疲れ切った男に、少し口元を引き攣らせた女性が紙コップに入った水を差し出す。

 飲み終わると多少マシになったジークの脳が疑問符を出した。

 

(迷子、センター……?)

 

 だがこの場で今更戻るのも妙に気まずい。それに妹が迷子(?)なのは事実であるのだし、そのまま押しきった。

 女性は話を聞きながらメモを取る。

 

「名前はアウラ……。焦茶の背中まである長髪で、白っぽい目、ですね。ご年齢は?」

 

「23」

 

「……妹さんのご年齢は?」

 

「23です」

 

「スゥー……………あっ、はい。分かりました」

 

 女性は紙に取ったメモを見つめて、うーん、と首を捻る。それからカウンターの奥の方にいた数名と何か話し合い、戻って来た。

 

「あのー…もしかしたら、なんですが」

 

 聞かされたのは先ほど迷子だった子供を連れて来た女性の話だった。

 その人物も確認した際に「アウラ」という名前で、外見の特徴も一致している──と。

 

「ど、どっちに向かいました!?」

 

「あの…その、少し落ち着かれた方が…」

 

 迷子センターに過呼吸を起こしそうな状態で来た男だ。事務の人たちが心配するのもさもありなんなわけで。

 

 それでも去った方向を聞いたジークは、礼を言って嵐のように去った。

 

 

 

 窓から見えた光景は、すっかり紅くなっている。

 

 吐き気がして、動悸がして、気を抜けば足元から力が抜ける。だから地を踏みしめて、男は走るしかなかった。

 考えないようにしていた方向に思考が進む。

 

 

 妹は死にたがりで。

 

 最期だって、愛するジーク・イェーガーと生きるよりユミルとの死を選んだ。

 

 でもこうして今は一緒に生きている。

 

 でも。

 

 でも────、

 

 

 

「アウラァ……ッ、う、うぅ……」

 

 

 ジークは子供のように泣いた。

 

 妹が死ぬんじゃないかと。消えてしまうんじゃないかと思い、自然と足が運ぶ場所は空の見える場所だった。

 

 

 

 そして、そこに。

 

 

 

 

 

 

 

 ⚪︎⚪︎⚪︎

 

 

 アイスも食べ終わって、ぼんやりと空を見ていたらボロボロのお兄さまが来た。

 

 えっ………………?(脳内停止)

 想像以上に精神に来てらっしゃる……?(きゅん)

 

 ど、どうしたんですか? そんなにアウラちゃんが心配だったんですか? えっ…かわい……。べそべそ具合が幼少期のソレだから余計にクる。

 

 ────あれ? 心肺停止したはずなのに私生きてる? こうしちゃいられねェ!!! ポイポンで動画を………。

 

 

「どう゛ぢで電源ざん゛がづい゛でな゛い゛の゛お゛お゛ぉ゛!!!?」

 

 

 いけないいけない。切ったのは私でした。あの時の私を殺したいですね。起動までのこの時間に、お兄さまのご尊顔が撮れなかったら死ぬしかねぇよなぁ…!! 

 

 そんな感じで泣きベソになっていたら、お兄さまが真ん前にいた。両肩をがっしり掴まれる。おい握力を考えろ。

 

 何だか先ほどの今なので、抱きつかれるとアウラちゃんにはまだない母性が目覚めてしまう気がする。つまり………これは赤ちゃんプレイ? 

 

「ごめんん……」

 

「可愛いですよお兄さま、大丈夫ですか?」

 

「だか、ら…」

 

「落ち着いてください、ヒッヒッフーです」

 

 お兄さまは本格的にダメそうだった。やったねアウラちゃん! 曇らせのトキメキで今日の晩ご飯(意味深)が進むぞぉ!! 

 

 

「お兄さま、そろそろ帰────んっ?」

 

「………」

 

「っ、ん」

 

 

 腰に腕を回される。至近距離にある青い瞳は涙でぐちゃぐちゃだ。これを作り出したのが私だと思うと、口角が吊り上がる。

 けれど今回の軍配はお兄さまに上がったかもしれない。

 

 この、自分で「引いて」の作戦を企てておきながら、負けだと思った。

 

 

 熱くて、思考が粘着質に溶けて行く。さっきまで感じてた寒さが嘘みたいだ。

 

 そのままズルズルと物影の方に引きずられて、壁に縫いつけられて、両手が絡まった。

 あの家族の繋ぎ方と全然違う。

 

「ふふっ」

 

 思わず笑うと、お兄さまは片眉を上げた。それでも文句を言ってくることはなかった。

 

 

 

 静寂の中にあるのは、二人の息遣いだけ。

 

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