聖杯戦争。
それは七人のマスターと七騎のサーヴァントが織り成す魔術儀式。
「
「繰り返すつどに五度」
「ただ、満たされる刻を破却する」
英霊とは、幾多の伝承に語られる英雄達の影法師。
聖杯とは、英霊を生贄として奇跡を叶える蟲毒の壺。
「―――――
この白亜の城で今まさに英霊召喚を成そうとするのは、それを主催した魔術師のひとつ。
御三家と呼ばれるアインツベルンの婿、魔術師殺し、衛宮切嗣。
「――――――告げる」
召喚陣に掲げられているのは、英霊と現世を結ぶ触媒と成りえる聖遺物。
それはとある伝承で語られる聖剣の鞘。
求めるのはその主。
「――――告げる」
「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」
「聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」
「熱っ……!」
だがここに、イレギュラーがひとつ。
召喚の儀式を見守っていた彼の妻、アイリスフィール・フォン・アインツベルンの小さな悲鳴が混じることになる。
「誓いを此処に」
意識を割くわけにはいかない。
「我は常世総ての善と成る者」
召喚は止められない。
「我は常世総ての悪を敷く者」
既に繋がりかけている強大な何かとの縁を手放しては何もかもが台無しになるのだから。
「汝三大の言霊を纏う七天」
妻の安否を気にかける意識を全力で押さえつけ、最後の一節を唱え上げる。
「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
瞬間、陣がまばゆい輝きに包まれる。
自分の中に確かな繋がりが生まれたのを確信し、彼はようやく愛する女性に何が起きたのかを確認する。
視線の先には右手を押さえる彼女の姿。
白過ぎる程に白い肌に刻まれた、不可思議な紋様。
令呪。
それは聖杯戦争の参加権であり、強大な力を持つサーヴァントを御すために与えられる絶対命令権。
「なんだって……?」
それは、つまり。
「サーヴァント、セイバー、召喚に応じ……む?」
「お招きいただきありがとう御座いま……す?」
聞き覚えのない声が聞こえる。
声に釣られるままに振り向いた先は召喚陣。
それは誰も予想していなかった光景だった。
――現れたのは面持ちの異なる二人が少女。
かたや荘厳な青の鎧に身を包んだ金髪碧眼の少女。
かたやドイツの民族衣装に身を包んだ黒髪に橙の瞳の少女。
至近距離で顔を見合わせている彼女達だけではなく、儀式に立ち会った全ての者が言葉を失っていた。