「えぇと、そちらからどうぞ」
「状況は読めませんが、敵ではないようですね」
「おそらくは。あ、あちらの女性がこっちのマスターです」
「同時に二騎の召喚を……?いえ、それは置いておきましょう。騎士たるもの、名乗りを疎かにすべきではありません」
鎧姿の少女が一歩進み出る。
甲冑の音が石室に響き、否応にも注目を一心に集めることになる。
「サーヴァント、セイバー、召喚に応じ参上しました。――問おう、貴方が私のマスターか?」
声を掛けられた黒衣の青年は何も応えない。答えられない。
死んだような目を更に濁らせ、目の前の少女の存在を理性が否定しようとしている。
召喚が失敗したのであれば、まだいい。
元より英霊という戦力に期待などしていない。
敵のサーヴァントなどまともに相手をせず、自身がマスターを葬り去ればそれで済むのだから。
そもそもひとつの召喚陣から二体が出現するイレギュラーだ。
触媒が正常に機能しなかったと考えるのも別におかしなことではないだろう。
だが、もし、万が一、正常に召喚が行われてしまっていたら?
かの円卓を束ねた騎士王が、聖剣を手にしたことで年を重ねることがなくなったという人物が、目の前の少女なのだとしたら?
あぁ、それは余りにも、あまりにも残酷な真実ではないだろうか。
「………………マスター?」
返事を返さない男に不信を感じたのだろう。
だが彼女に繋がる
彼女には剣の英霊として最高峰の者であるという自負がある。
その縁に繋がれていた触媒も、自身を求めて用意されたものだとはっきりと分かる。
召喚直後ということもあり、その身の証明たる黄金の聖剣も未だ隠れてはいない。
と、なれば――
「その、セイバー? 貴女を疑うようで悪いのだけど、ひとつだけ確認させてちょうだい」
おずおずと声を上げたのは白髪赤目の人間離れした美しさを持つ女性。
共に召喚されたもう一騎が自身のマスターだと告げた人物だった。
「構いません。私の姿が想像とは異なる、というのには慣れていますから」
「そう?助かるわ。貴女はこの聖剣の鞘の持ち主。星の聖剣を携える騎士王。――アーサー王で、間違いないのかしら?」
「いかにも」
彼女の疑問に、かの騎士王は満足げに首肯する。
「我が真名はアルトリア・ペンドラゴン。かつて円卓を束ね、ブリテンを治めたアーサー王、その人です」
「え、アーサー王って女性だったんですか!?」
驚きの声を上げたのは半ば空気と化していた、召喚されたもう一人。
きょろきょろと興味深げに儀式場を眺めてた少女はセイバーの名乗りに大げさに反応を示していた。
「えぇ、確かに私は男として振る舞っていましたし、その嘘が嘘として後の歴史に伝えられずに済んだのは本懐と言えます」
落ち着いて返すセイバーに対し、あーうーと意味のない呻き声を上げながら頭を抱えるディアンドルの少女。
英霊が英霊を知っている、というのは珍しいことではない。
彼ら彼女らは各地で語られる伝説上の人物であり、過去の人物だからこそ、その伝承を見聞きすることもあるだろう。
あまりにも有名な伝承であれば、聖杯由来の基本知識として授けられることさえある。
にしては少々どころではなく妙な反応ではあるのだが。
「ところで、貴女は何者ですか?」
「おっと、そういえばこちらの名乗りはまだでしたね」
セイバーの疑問の声に少女は佇まいを直し、恭しく頭を下げる。
「この度はキャスターのクラスを拝命致しました。――【ハーメルンの笛吹き男】の民話はご存知でしょうか?」
マテリアルが更新されました
クラス:キャスター
真名:ハーメルンの笛吹き男
筋力:E 耐久:E 敏捷:E
魔力:C 幸運:A+ 宝具:C++
クラススキル
不明
保有スキル
不明
宝具
不明