願いを叶える、その為に   作:こまつな

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「はっはっはっ!元気そうだな娘っこ!そんなにウェイバーに会いたかったか!」

「おじさまもお元気そうで!先生を追いかけて飛び出していったと聞いて、いても立ってもいられなくなりまして」

 

 なんなんだこの状況。

 それがウェイバーの率直な心境であった。

 

 住宅街のど真ん中。

 少ないとはいえ人通りもある中で、見知らぬ少女が親しげに手を振ってきた。

 それをライダーが気安く持ち上げたと思ったら少女も気にすることなくハグを返す。

 

 ウェイバーだって何も知らなければ知人との再会だと思ってしまうだろう。

 ――少なくとも、何も知らない通行人達の目には、そう映っているだろう。

 

 彼は完全に状況に置いていかれてしまっていた。

 

『よく見ろ、こやつ、サーヴァントだぞ』

『……っ!!?』

『動揺を見せるな。どの道この場で開戦とはならん。情報戦のために動いておるのだろうよ。――だが拠点が割れるのが早過ぎる。警戒を切らすな』

 

 家主は魔術とは一切関係のない一般人。霊地にかすりもしない平凡な地脈。

 ライダーの戦術眼から見ても、彼らが拠点を置くマッケンジー家は隠密性の一点が極端に抜きん出ている。

 

 では、たまたま偶然サーヴァントがマスターと離れて一人で歩いていたのに遭遇したと?

 手元の地図にはこの周辺の地形がしかと記されているというのに?

 そんなことはありえるはずがない。

 

 昨夜の戦闘後に跡を付けられたのかとも考えられるが、そのような気配は感じられなかった。

 であれば、奴自身の能力か。はたまた、アサシンとでも関わりがあるのか。

 ――脱落したはずの、アサシンと。

 

『よいか、我らの強みは情報が他に渡っておらん事だ。師弟関係にあるケイネスとやらを除けば、昨夜のやり取りでしかお前を知ることは出来ん』

『……分からないことが、強み?』

『何も知らん者から見たお前は、時計塔という組織の上位におるロードとやらを出し抜いた刺客だ。落ち零れなのだと言って誰が信じるものか。あの陰険な魔術師の言葉など、他の連中には負け惜しみにしか聞こえておらんだろうよ』

 

 ぞくりと、王の言葉がウェイバーを震わせる。

 日本への渡航も、召喚の儀式も、昨夜の戦闘に到るまで、彼が自身を客観的に見る機会は訪れなかった。

 ケイネスの追っ手に捕まることなくそれを成し遂げたことそのものが偉業と呼べるのだと、考えもしなかった。

 

 ただライダーに振り回されているだけの自分が、ロード・エルメロイよりも警戒されている?

 そんなことは、想像すらしていなかった。思考の隅にすら挙がらなかった。

 

 自尊心を擽られながらも、彼はこの場で自分に出来ることを探し始める。

 

『近接ステータスは軒並み最低値(E)。傾向からしてたぶんキャスターだと思うけど……魔力が(C)しかない。幸運ばっかり妙に高い(A+)って、なんなんだこいつ』

 

 マスターに備わった霊視により、サーヴァントのステータスは看破される。

 魔術師のサーヴァントらしく身体能力は低いが、魔術師のサーヴァントらしからぬ平凡な魔力。

 

 着ている装束はドイツの民族衣装、ディアンドル。

 だが隣には世界地図が印刷されたTシャツを着ているライダーもいる。

 衣類から由来を判断するのはやめておいたほうがいいだろう。

 

「積もる話もあるだろう。立ち話もなんだ、我らとて居候の身だが腰を据えようではないか」

「マッケンジーのお爺様にはワタシも初めて会うんです。変な子だと思われないでしょうか……?」

「孫を訪ねてきた娘を追い返すような御人ではあるまいよ。……根掘り葉掘り聞かれるかもしれんがな!」

「ちょっと待てええええぇぇぇぇ!」

 

 ウェイバーが必死に思考を回しているうちに拠点に招き入れることになっていた。

 

 いやそうなるか?そうなるか普通!?

 明らかにこちらを狙い撃ちしてきた敵を拠点に招き入れるのか!?

 

 衆人環視の中でそれを口にしない程度の分別は、かろうじて彼にもあった。

 

「あっ……その、ごめん、ね?迷惑……だった、よね……」

 

 彼の叫びに、少女の笑顔が曇る。

 遠巻きに見ていた人々はひそひそと話し始め、居たたまれない空気が場に満ちていく。

 

 圧に押されてしまった彼には、もはや押し黙ることしか残されていない。

 

『お前なぁ……』

『いやどう考えても演技だろこれ!?僕が悪いってのか!?』

『たわけ。キャスターの用意した場で会談に挑むつもりか?まだこちらの陣地に引き込んだほうがマシではないか』

 

 正論だった。これ以上ないほどのド正論だった。

 そしてそれに納得してしまった以上、返さなければならない言葉も決まっていた。

 

「~~~~ああもう!変なことしたら叩き出すからなっ!」

「あっ……ありがとうっ!ウェイバー君!」

 

 たとえそれが生まれて初めて見るほどの満面の笑みだろうと、絆されてなんかない。

 

 絶対こいつは性格が悪いと、彼の心には確信が満ちていた。

 

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