願いを叶える、その為に   作:こまつな

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 まもなく日も落ち、世界に宵が満ちようとする頃、キャスターは城へと帰還した。

 

 同行したライダーは戦車で乗り付けると主張したが、壊れかけの車両に乗せられるのはちょっと、と拒絶されれば返す言葉もない。

 戦車を曳く神牛たちもランサーの魔槍による負傷が癒えておらず、供給に乏しいウェイバーが負担を嫌ったという部分もある。

 

 出迎えたのは伽藍堂のホール。

 衛宮切嗣の手でブービートラップ満載の迎撃拠点になるはずだった出入り口は、諸々の事情により無防備な最低限の整備で放置されていた。

 

「――キャスター、これはどういうことだ」

「ライダー?」

「え?何がですか?」

 

 その空気の変化に、ライダーだけが気付く。

 

 未熟なウェイバーが理解していないのはまだいい。

 

 だが、キャスターの反応はなんだ?これもまた演技か?

 それとも交渉に特化した英霊であるが故に、本当に戦の気配に気が付いていないのか?

 

 彼の困惑を余所に、奥からは女騎士を携えた貴人が姿を見せる。

 気配こそ感じないが、アサシンも陰に潜み隙を窺っているのだろう。

 

「……マスター?」

 

 誘いこまれたかという警戒も、隣に立つキャスターの困惑でどっちつかずのものと化してしまう。

 あるいはそう見せることも予定通りなのか、彼女に限ってはそれすらもわからない。

 

「ねえキャスター、今更変なことを聞くようだけど……貴女は、()?」

「――キリツグ様ならそのうち気付くと思ってましたけども」

 

 少女は諦めたように嘆息を付く。

 それは諦観というよりも、罠にかかった獲物を前にするかのようで。

 

 自然、ライダーの警戒は跳ね上がる。

 

「以前お話をしましたよね。当初セイバー様は捨て駒として喚ばれたと考えていたと。なので裏切りを抑制する為に、報復の逸話を持つ名を騙るのは、別におかしなことではないでしょう?」

「えっと、それはそう、なんだけど……」

「アイリスフィール、分かっていたはずです。……彼女に口では勝てません」

 

「かといって疑いを晴らさないわけにもいかないと。さて、どうされますか?」

 

 小首をかしげ、にんまりと笑みを浮かべながら、これすらも予定通りであると言わんばかりにキャスターは続きを促す。

 

 セイバーは動けない。

 彼女は未だ願望を捨てきれない。

 騙されていたのか、騙されていたとして、どこからどこまでだったのか、それを聞かずに、動くことは出来ない。

 

 アサシンは動かない。

 彼女が何者であったとして、元マスターの無法が覆されるわけでもなし。

 故に静観。既に彼らとは無関係に活動出来るというのもそのスタンスを後押ししている。

 

 ライダーも動かない。

 アレの言葉が信ずるに値せずとあらば、通常通りの聖杯戦争に移行するだけの話。

 内輪揉めで数を減らしてくれるのなら、わざわざ消耗を重ねる必要もない。

 

 黄金の君は観劇に耽っている。

 こうなったのであればもはや手を出す理由も無し。

 彼女達の織り成す物語を最後まで鑑賞するだけだ。

 

 

 かくして、アイリスフィールの右手に刻まれた奇跡の一角が、輝きを帯びる。

 

「キャスター、令呪を以って命じます。【貴女の真名を教えて】!」

 

 奇跡は確かに受領された。

 

 命じられた少女の口元は半月に歪み、恭しく、貴人に対する礼を成す。

 

 

 全ての始まりそのものを、彼らは見落としていた。

 それはキャスターがセイバーと()()()召喚されたこと。

 ハーメルンの笛吹き男を名乗る少女が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()現れたという事実。

 

 英霊召喚の触媒というものは、使用したところで劣化するわけではない。

 既に召喚されているという点で、候補は次点以降に変遷こそするだろう。

 だが同時に召喚が成されたのであれば、それはアーサー王に所縁のある円卓の関係者となるはずだ。

 縁も所縁もないドイツの民話の登場人物が現れるなど、本来有り得ない。

 

 つまるところ、あの場にはあったのだ。

 聖剣の鞘の縁がセイバーと結びついたように。

 キャスターと現世とを繋ぐ、勝るとも劣らない触媒が。

 

 

「それでは改めまして、ワタシはキャスターのサーヴァント」

 

 

 その触媒の名は、()()

 

 己の魂と引き換えに――聖杯の降臨と共に命を落とす、

 ドイツの錬金術師が――アイリスフィール・フォン・アインツベルンが、

 願いを叶える為――聖杯戦争に勝利する為、

 降霊術によって――英霊召喚によって、

 

 人ならざるものを呼び出した。

 

 

「真名は」

 

 

 その逸話を満たすモノ。

 その伝承に語られる者。

 

 その名は――

 

 

 

「――メフィストフェレスと申します」

 

 

 

 

 

 


 

マテリアルが更新されました

 

 

クラス:キャスター

真名:メフィストフェレス

 

筋力:E 耐久:E 敏捷:E

魔力:C 幸運:A+ 宝具:C++

 

クラススキル

 

 劇場作成:A

 陣地作成の互換スキル。聴衆を飲み込む詩を弄す場を整える技能。

 彼女がそこにあるだけで、その場は須らく演ずるに足る舞台と化すだろう。

 

 小道具作成:C+

 道具作成の互換スキル。魔術によって演劇のための小道具を作成できる。

 また、C-ランク以下の魔術系スキルを一時的に習得することも可能。

 その場合、素体となっている少女の適正により氷の属性が付与される。

 

保有スキル

 

 物語りの悪魔:A++

 無数の悪魔伝承が集約されたのがメフィストフェレスという悪魔の原型であり、悪魔として処刑された少女もそのうちのひとつとして束ねられた。

 演技をするだろう。神話を渡ることも、風聞を揺らすことも出来るだろう。

 人々の情動を揺らすことも、もちろん、騙すことも。

 

 このスキルはA+ランクの演劇、伝承審美、吟遊詩人、煽動、詐術スキルとして扱う。

 

 無辜の配役:B-

 キャスターは伝承に語られる悪魔そのものではなく、役柄に当て嵌められた過去の人間(キャスト)である。

 中世を生きた吟遊詩人が悪魔ではなかったと証明する手段は、現代には残されていない。

 

 このキャラクターは真名とスキルを任意に偽称出来る。

 それによって能力が変化するわけではないが、多才な彼女は与えられた名を器用に演じきるだろう。

 

 

宝具

 ■■■■■■■■■■■ ランク:C++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1

 

 メフィストフェレスは模範的な物語の悪魔であり、ファウスト博士から言葉巧みに魂を奪おうと試みた。

 ■■■■■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。

 

 召喚時に自動発動。令呪一画分に相当する強制力を受け、■■■■■■■■■■■■■■。

 ■■■■■■■■■■とき、召喚者から魂を奪う。また、■■■■■■■とも魂を騙し取ることが出来る。

 

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