願いを叶える、その為に   作:こまつな

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「だから、貴方の傘下に加わるつもりなどないと、何度言えば分かるのですか」

「そうは言うがな、おぬしにはあやつを御せておらんではないか。アレを野放しにするのは余とて許容できん。心得のあるものが上に立つべきであろう」

「あの」

 

 セイバーとライダーが果てのない議論を重ねている。

 その焦点となっているのは、この集団を誰が率いるのかということだ。

 

 英霊達は我が強く、どちらも生前は王として国を治めた者。

 相手の傘下に入るなど、易々とは選択出来ないだろう。

 

「ライダーを頭に据えるのは僕も賛同できない。ウェイバー・ベルベットはロード・エルメロイから聖遺物を奪取したのだろう?聖杯戦争が時計塔から軽視されているのは所詮極東の魔術儀式に過ぎないからだ。彼らを徒に刺激するのは悪手だろう」

「ぐぬぅ、それを突かれるとなぁ……」

「あの!」

 

 加えてアインツベルン陣営とウェイバーたちはそもそも別の勢力ということもある。

 元々そのつもりで準備していた前者とは違い、彼らは突然この集団に引き込まれたに等しい。

 反りが合う合わない以前に、擦り合わせの時間を必要とするのは当然のことだろう。

 

「アサシン、君はどうするつもりだい?」

「キリツグ殿に身分証を用意していただきましたので、冬木を出ればそこで離脱となりましょう。飛行機の搭乗手続きも……聖杯からの知識に齟齬がなければ問題ないかと」

「聖杯の知識なんてあまり信用するものでもない。旅行ガイドのひとつでも買っておいたほうがいいですよ」

「あのっ!!」

 

 対して退場を予定しているアサシンとギル君の二騎は和やかなものだ。

 どちらも主を裏切って殺害した身ではあるが、それは呼び出したほうに明確に責がある。

 彼らの精神性を損なわせるものでは、決してない。

 

「なんでワタシ縛られてるんでしょうか!?」

「キャスター、自白した罪人に縄を打つのは騎士――衛視の仕事でもあります。何が疑問なのですか?」

「だって拘束するなら口枷も着けるべきです!やろうと思えばこの状態でも割と好き勝手出来ますよ!?」

 

 そして簀巻きにされて転がされている自称悪魔の少女も、一応旅団のメンバーである。

 この集団を纏め上げた立役者ではあるのだが、雑な扱いをしていることには誰からも非難の声は挙がらない。

 本人さえもある程度容認していることから、その扱いは推して知るべしだろう。

 

「っと、ちょっと失礼します」

 

 件の少女は芋虫のように這いずると傍らに置かれたトランクの前に陣取り、

 

『キャスター、急を要するので連絡を入れさせてもらった』

『ロード、教会の様子はいかがでしたか?』

 

 当然のような笑顔で送られてきた魔術的通信に対応を始めていた。

 

『…………聖堂教会を敵に回すつもりか?』

『アサシン様からは教義的に許容できなかったと聞いています。これに関しては宗教対立を無視して呼び出したあちらの責でしょう』

 

 それは彼女が今日一日持ち歩いていた物品。

 ハイアットホテルで一度手放し、ロード・エルメロイの傘下に確保されたモノ。

 その折にマーキングを施されていたのも、脱落した彼が冬木教会へ保護を求め状況を認識するのも、交渉が可能な陣営に話を繋ごうとするのも、あらかじめ予想されていたことだった。

 

『納得はしておこう。それで、どこまでが君の予定通りなのかね?』

『おおよそ三割ほどでしょうか?連れの女性が婚約者だとは思ってもみませんでしたし、アサシン様へは当然の事実を指摘したまでです』

『何騎引き込んだのか、聞いても問題は?』

『残存六騎のうち五騎を。二騎は自然消滅を選ぶとのことなので、残留はワタシも含め三騎の予定です。――貴方であれば値札に何と記しますか?』

『ふむ……時計塔のロードの後ろ盾、その値付の権利というのはどうかね?』

『では自由と権威と闘争を。それで貸し借りはゼロといたしましょう』

『よかろう。こちらは一足先に引き上げる。……ああそうだ、言伝をひとつ頼まれてくれたまえ。ウェイバー・ベルベットに、私の研究室に顔を出すようにと』

 

 周囲の面々も静まり返り、その交渉を黙って耳にしている。

 あきれてものも言えないとはこのことだろう。

 

『ありがとうございます。良き戦争でした』

『皮肉にしか聞こえないな。そちらも良き終結を』

 

「というわけです」

「どういうわけだよ!?」

 

 事実上の死刑宣告を受けたウェイバーが思わずツッコミを入れるのも無理はない。

 サーヴァントの残留という異常事態をどう誤魔化すのかと頭を悩ませていたのが馬鹿らしいほどに、盤面の内側であっさりと解決策を見出していたのだから。

 

「奥様、本当にキャスターを信じられますか?今のは完全に残留を見越した根回しですよ?」

「ごめんなさい、ちょっと自信がなくなってきたわ……」

 

 かくして舞台の幕は下りる。

 

 不幸から救われる少女がいる。

 不幸のままの少女もいる。

 不幸になった少女もいれば。

 不幸を免れた少年がいた。

 

 葦を救う主ではなく、足を掬うが精一杯の、悪に巣食う悪魔であれば。

 

 三流の喜劇くらいがちょうどいいのではないだろうか。

 




次回からエピローグに入ります。
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