狛枝(憑依)in犯罪都市米花   作:超高校級のNeet

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五話

 

 

「部屋に籠るの飽きたな……」

 

 

 ごろん、とベッドに横になりながら呟く。

 

 

 一週間ほど前、お気に入りのカフェ屋で殺人事件が発生した後。犯罪者ホイホイのコナン君達と出くわさない為にホテルで身を隠し続けていた。

 

 しかし喉元過ぎれば熱さを忘れるということわざがある様に、僕は既に先週の恐怖を忘れ、外を出歩きたい気分になっていた。

 

 

 だって暇なんだもん。

 

 

 子供か、とツッコミたくなるような理由だが真剣に暇なのだ。

 

 このままでは僕はどうにかなってしまいそうだ。

 

 

 と、いうのもそれなりに重要な言い分がある。

 

 それは僕のーー正確には狛枝凪斗の【超高校級の幸運】が主な要因だ。

 

 

 コナン君達と出会うのが怖くて引き篭っているのが現状なのだが、そのせいで暇を持て余している。

 生命に関わる事なので暇がどうたらとか抜かさずに籠城が正解なのだが。

 

 しかし、何も行動を起こさねばそれはそれで不味い。

 

 

 僕の幸運は望む事態を引き起こす。

 それが良くも悪くも、という枕詞が付く、が。

 

 つまり“暇”をどうにかしたいという願いにより、何かしらの事件に巻き込まれる可能性があるのだ。

 

 ぶっちゃけ、某運命の夜なこの世全ての悪に汚染された聖杯の方がまだ方向性を指定出来るだけマシなんじゃないのか? というポンコツぶりだ。

 

 暇が原因で外出する理由付けの為に、火遊び(ガチ)されて大炎上(物理)されるホテル、なんてこともありえるのだ。

 

 そうなれば僕は晴れて宿無しの身。

 新たなる宿先を求めて旅立たなければならなくなる。

 ついでに従業員も新たな宿先を探す必要が出てくるな。HAHAHA。

 

 ……ただの無意味な予想なのに、完全にない、と言いきれないのが歯痒い所だ。

 

 

「……にしても、暇だなぁ」

 

 

 またぞろボヤき、仰向けになって天井を眺める。

 何か良い暇潰しの道具はないものか。

 

 このままだと干物になってしまうよ。

 

 

 うーん……。

 ゲーム機でも買おっかなぁ? 

 

 数本ソフト買えば1ヶ月は余裕で引き篭れるだろう。

 昔のゲームは難易度が高いのが多く、クリアするのが難しいと聞く。

 

 やりごたえは十分あるだろう。

 

 

 だがまた外に出かければ事件に遭遇してしまうかもよ? という思いが脳裏に過ぎる。

 

 けれど僕はもう退屈な環境に耐えきれなかった。

 

 僕は勢いよくガバッと跳ね起きた。

 

 

 ーー買いに行くか。家庭用ゲーム機。

 

 

 

 

 

 

 ★ ★ ★

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーむ。

 買うならどれがいいだろう。

 

 

 僕は今近所の大友デパートの5階。

 ゲームショップに来ていた。

 

 

 陳列された商品を順に眺めていくが当然の如く目新しいものは見当たらない。

 

 Nintendo64、セガサターン、プレイステーション等最新機種があるものの、未来人たる僕にとっては過去の産物だ。

 

 しかし僕がゲーム機を触り出したのはDSからだ。

 ここに陳列されているゲーム機はそれ以前に発売されたものばかり。

 

 1周まわって新鮮な気持ちになってしまう。

 

 

 こういうのを見ると、若干のタイムスリップも入ってる事もあるし、本当に名探偵コナンの世界に入り込んでしまったんだなとしみじみ思う。

 

 

 ……こんな場所で偶然コナン君達と遭遇とか、ないよね? 

 

 

 僕はふと考えてしまった最悪の展開に備えて、周囲を見渡す。

 

 ゲームショップだと言うのに周囲には大人しかおらず、子供連れの人もいない。

 そういえば今日は平日だったっけ。

 

 なら一般小学生な彼らは学校に登校している筈か。普通の子供なら学校をサボってゲームショップに来れるわけが無いよね。

 

 知らないうちに額から垂れた冷や汗を拭う。

 

 

 ならばもう心配は不要。

 じっくり腰を据えて吟味しよう。改めて商品を眺めて行く。

 

 ……というか、今更だけどゲーム機とかは元の世界の物が普通にあるんだな。

 

 他はパチものしかないのに。

 

 仮面ヤイバーが仮面ライダーのモロパクリなように、テレビアニメや漫画作品もほぼパクリ的なものが殆どだ。

 

 まあ原点が存在しない以上、この世界に登場した全てがオリジナルだ。

 どれだけそれがパクリっぽくてもこの世界ではそれが正統派一次創作なのに変わりないのだろう。

 

 

 でも、正直このタイトルはないと思う。

 

 何だよ星のベイビーって。

 確かに赤ちゃんは何でも口にするけども。

 

 元の世界では連作ゲームとして出てたんだけど、続編は出なさそうだな.

 

 僕はそっとソフトが陳列されていた棚を後にした。

 

 

 

 

 他にも色々物色して店内を見て回り、何を購入するか悩んだ結果、任天堂のスーパーファミコンを買うことにした。

 現代ではどうやらNintendo64が最新機種のようだが僕にとってはどちらも昔の機種なのだ。

 それならば面白そうなソフトがあるか否かで決めるに限る。

 

 僕は目を付けた何点かのソフトとスーパーファミコンをレジに持ち込み購入した。

 

 

 そして僕は引きこもり用の食料もついでに買い、いざ帰ろうとエレベーターに搭乗する。

 

 両指に食い込む重量に少し買い込み過ぎたかなと反省しつつ、エレベーターに乗り一階へ降りようとした時、事件は起きた。

 

 

 

 

 ぐら、と足元から振動を感じた。

 

 おおっと。

 両手に荷物を抱えてる僕はバランスを崩し、たたらを踏んだ。

 

 

 ぐら、ぐらぐら、ぐらぐらぐら、と。

 

 

 それは次第に大きくなっていき、筐体全部が暴れ馬、ロデオマシーンの如く激しく揺れる。

 

 

 ーーそう、地震が発生したのだ。

 

 

 突如地震が発生し、盛大に足元が揺れる中、僕は体幹バランスにとどめを刺され尻餅を付いた。

 

 無理に立ち上がっても再度転びそうなので大人しく体育座りで地震が収まるのを待つことにした。

 

 

 けれど僕は薄々勘づいていた。

 

 たかが地震に出くわして転倒するだけで終わるはずが無いと。

 

 僕の才能がーーこれだけで終わらせる筈が無いと。

 

 

 この時点で結末を察していたが、まだ無事に帰宅出来る可能性もある。

 口に出してフラグになるのを恐れ口を噤む。

 

 何事も起きませんように。と。ただ祈る。

 

 

 暫くすると次第に揺れは収まっていった。

 

 が、ここでトラブルが発生。

 

 

「……さっきから、このエレベーター全然動いてないよな」

 

 

 同乗していたカップルの片割れである男がどうしようもなく変えられない現実を口にした。

 

 そう、エレベーターが動かないのだ。

 必死な祈り虚しく、僕達は閉じ込められてしまったらしい。

 

 

 僕はまた“不幸”が来たか、と死んだ目で天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

 それから数時間が経過したが、未だ助けは来ないでいる。

 

 エレベーターの中は空調が効いておらず、夏という季節も相まって蒸し風呂のような暑さである。

 堪らず僕はTシャツを脱ぎ上半身裸になっていた。

 

 カップルの人達(結婚されていた)の夫さんも服を脱いでいたが、流石に女性である彼女は人前で脱衣する事に躊躇いがあるようで暑さに喘いでいた。

 

 

「いやあ、すみません。飲み物頂いちゃって」

「気にしなくて良いですよ。こういう時はお互い助け合わないと」

 

 

 僕がそういうと、

 優しい方ですね、と朗らかに言う彼に心が痛む。

 

 

 ーー巻き込んだの明らかに僕だからなぁ。

 

 

 純朴な眼差しに耐えきれず、そっと目を逸らす。

 むしろ僕がその負債分に見合う助けが出来ていないんですよ。申し訳ないがご勘弁頂きたい。

 

 彼ら坂田勇次と坂田明美ご夫婦は来週旅行に向かうらしい。

 その際記念に写真を撮ろうと言う話になり、カメラを買いに来た帰りだったのだとか。

 

 だから何も持ってなくて助かりましたよ! 

 という彼にはホント申し訳ない。

 

 

 何せ、僕にはこの“不幸”が来た原因に心当たりがあった。

 

 

 

 ーー実はホテルの部屋に籠りきりの際、つい魔が差して暇潰しの為に幸運の実験を行っていたのだ。

 

 

 行った実験はコイントスの裏表当てゲーム。

 

 

 最初は二分の一の確率で、次は四分の一、八分の一と倍々になって行くコイン当てでどれ程狙った面を出せるか興味本位でやってみたのだ。

 

 無論、普段なら貴重な幸運を無為に消費するなんて決してやらない事だ。

 だが退屈は人を殺すとの言葉があるように、あまりにも暇だった僕はどうかしていた。

 

 

 そんなコイン当てゲームの結果だが。

 試行回数百回中、百回表が出た。

 

 百回とも連続表ともなれば、日常生活では決して使うことの無い単位の確率になる。

 

 辞め時を逃し、あと一回……あと一回だけ……、と繰り返し気が付いた時には百回の大台に乗っていた。

 

 流石に不味い、とそこで弾け飛んでいた理性を取り戻し終わりにしたのだが。

 

 今、その分の揺り戻しが来ているに違いない。

 

 

 ああもう、なにやってんだ僕! 

 なんて下らない事に幸運を使ってしまったんだ。

 

 途中から楽しくなって『どれだけいけるかな?』って試すんじゃなかった.! 

 

 

 僕がそうやって頭を抱えて落ち込んで居ると、この状況下故に悲観してるのだと勘違いした勇次さんが励ましてくる。

 

 それが更にこんな善良な人を巻き込んだと知って精神的ダメージが来てしまう。

 

 

 いや、ほんと巻き込んですみません。

 

 

 

 

 

 

 それから気を取り直し、雑談を交わしていると。

 明美さんが余りの暑さに耐えかねたのかばたり、と地面に倒れ伏せる。

 

 

「お、おい大丈夫か!?」

 

「……ぅ、……うあ……」

 

 

 勇次さんの呼びかけにも答えず呻き声を上げる彼女。さっと額を触り体温を確認すると高熱を発していた。

 

 ……間違いない。

 彼女はこの閉所の猛熱で熱中症を引き起こしていたのだ。

 

 

 現在呼び掛けにも答えないほどの状態だ。

 以前の僕は身体が弱かった為、何度か熱中症にかかった事がある。

 

 それでどれだけ症状が悪化しているか分かるのだが彼女はかなり深刻だ。

 

 

「勇次さん、彼女熱中症になっているみたいです。しかもかなりの重症!」

 

「え、えぇっ!? 熱中症? ……ど、どうしたら」

 

「まず身体を冷やさないといけません。しかしこのままだと救助が来る前に持つかどうか……」

 

 

 すると勇次さんは彼女の服をいきなり脱がし始めた。

 

 

「え、あの……大丈夫ですか?」

 

「明美の命の為です! 俺は気にしません!」

 

 

 あまりにも漢気溢れる言葉だった。

 僕という他人がいながらも即判断を下せる男の人は中々いないだろう。

 

 本来なら冷たい場所に身体を動かした方がいいのだが、生憎ここは四方八方閉じたエレベーターの中。

 

 何処に動かしても同じ。

 意識が混濁している以上、水を飲ますというのも難しい。対処療法として身体をひたすら扇ぐか濡らして発熱を抑えるしかない。

 

 僕はスーパーファミコン本体を開封して説明書を引っ張り出し、それを勇次さんに渡す。

 

 

「手で風を起こすよりはマシなハズです。団扇があるならそっちの方が良いんですが」

 

「ありがとうございます。助かります」

 

 

 それから持っていたポケットティッシュを濡らしながら身体を拭いたり、身体を扇ぎ出来うる限り熱を冷まそうと試みる。

 

 

「頑張れ、明美……!」

 

 

 

 

 僕達がそうこうして小一時間奮闘した後。

 ようやく救助の人達がやって来て僕達をエレベーターから解放してくれた。

 

 

 坂田夫妻はその後呼んだ救急車によって運ばれて行った。

 

 後日お礼をしたいのでこの住所に来てくださいと言って手渡して来た紙をポケットに入れて僕は帰路についた。

 

 

 昼前には帰宅予定だったと言うのに、既に日はどっぷりと暮れて真夜中になっていた。

 

 

 

 今回の事件で一つ僕は教訓を得た。

 

 

 もう乗り物には金輪際関わらない方が良い、と。

 

 

 僕が乗り物に関わるだけで多種多様な“不幸”に遭遇してしまうのだ。

 

 今回だけでも他人の命に関わる事件が起きた。

 例えそれが自動車であれ、自転車であれ、昇降機でさえ乗り物であるというだけで超自然的な力が働き被害を与えてしまうだろう。

 

 僕だけならまだいい。

 

 いや良くは無いけれど、それはいつか自分の“幸運”となって帰って来るから耐え切れる。

 

 だが他の人達にしてみればなんの前触れもなしに起きる災害だ。

 人の噂も七十五日ともいうが己の体験した悲劇は忘がたい傷跡となって永遠に残る。

 

 自分の傷を薄れさせるため、記憶を風化させる為に家族や友人、知り合いに自分が体験した悲劇を語る人が殆どだろう。

 

 そこで時が経つにつれ、やがて事件が発生する際、特定の人物が近くにいる際頻繁に起こる、と話が上がる。

 

 一度や二度ならともかく、何十件と騒動の渦中に入れば、こいつが事件を起こしているのではないか? 

 という疑問が湧き上がり、僕の身元探しが始まるだろう。

 

 事実無根な与太話とは違い、一定の事実があればそうなる可能性はありえてしまう。

 

 楽だから、と今まで階段を使わずエレベーターに乗っていたがこれからは其れすらも封印せねばなるまい。

 

 

 とりあえず生命に差し障りがでない状況以外では控えた方が絶対良いな。

 

 

 そう僕が決意を改めホテルに帰ると、疲れた身体に鞭打ち階段を使って宿泊している部屋まで辿り着く。

 

 

 つ、疲れた。

 ただゲーム機を買うだけでこんな事態になるとは思わなかった。

 

 幸運の無駄使いによる自業自得? 

 それはそう。

 

 ぐうの音も出ないほどの正論だ。

 以後気をつける事にしよう。

 

 

 

 ーーさて。

 色々アクシデントがあったけどこれで念願のゲームが出来るぞ。

 

 

 いそいそと本体を開封しSFCケーブルをテレビに突き刺す。

 適当なソフトを手に取り本体に差し込む。

 テレビのリモコンを操作し、画面を切り替える。

 

 ホテルによってはテレビにケーブルが接続出来ない所もあるみたいだが、僕は運良くそのハードルを超えることが出来た。

 

 そこの所良く確認せずに購入してしまっていたので、安心したのはここだけの秘密だ。

 

 

 ともかくこれで準備万端だ。

 

 ケーブルヨシ、ソフトヨシ、画面ヨシ。

 

 やっと迎えた家庭用ゲーム機にテンポ良く指差し呼称する。

 

 

 さあ今からお楽しみのゲームをやるぞ! 

 電源に指を構え、バチンと勢い良く押して起動させる。

 

 準備は良いか? 僕は出来ている。

 

 

 ーー電源、スイッチオン! 

 

 

 しかし機体はウンともスンとも言わず沈黙を示す。

 赤いランプすら付かず、テレビ画面も黒色のまま。

 

 あ、あれ? おかしいな……。

 何度もツマミを掴んで上下に動かすがピクリとも動かない。

 

 

 な、何でだ。なぜ反応しない……? 

 それから僕は暫く奮闘したが、一向に成果は振るわなかった。

 

 もう諦めようとしたその時。

 

 

 バチバチ、と部屋に異音が鳴った。

 

 

 何だこの音……。

 

 音の発信源を探していると、スーパーファミコンから聞こえているのが分かった。

 

 試しに本体を持ち上げて耳をくっつけてみる。

 

 バチバチバチバチィ、と音は段々激しく唸り声を上げている。

 

 

 もしかしなくてもヤバいのでは? 

 慌てて放り投げようとしたが、時すでに遅し。

 

 

 ボンッと音がしたのを切っ掛けに上がった黒煙をモロに顔面で受け止めてしまった。

 

 ケホケホと咳き込むこと暫し。

 

 

 まだ幸運の収支が釣りあって無かったのか、とか。

 

 普通こんな壊れ方しないだろ、とか。

 

 色々ツッコミたいことがあるけれども。

 これだけは言わせて貰おう。

 

 

 ーー爆発オチなんてサイテー! 

 

 

 

 その日僕はふて寝した。

 

 

 

 

 

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