魔剣と始める、清く正しい健康的な復讐生活   作:げげるげ

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なお、ワンミスでゲームオーバーだけど、たまにワンコイン入れられる奴が居る模様。
ただし、コンティニュー先は別ジャンル。


第2話 人生はオープンワールドだけど、難易度調整はされていない

 とある竜の話をしよう。

 逆襲の時代。

 あるいは、勇者の時代。

 魔王や魔人相手に、蛮族の如き人間たちがゲリラをかまして、盛大に争っていた激動の時代。

 そんな時代に自らもまた、覇を唱えんとする竜が存在していた。

 

 その竜の生まれは、ずっと昔。

 まだ人類が虐げられていた暗黒の時代――あるいは、竜が圧倒的な強者だった竜の時代に生まれた『亜竜』だった。

 人類よりは強く。

 驕り高ぶった魔人よりは強く。

 けれども、古龍や魔王よりも圧倒的に弱い。

 そんな種族として生まれ落ちたのが、その竜だった。

 通常、その程度の強さの亜竜は長生きできない。

 人類には殺されなくとも、魔人の集団。あるいは、亜竜よりも上位の竜種族。強力なモンスター。そいつらの『ちょうどいい獲物』として認識されるのだ。

 絶対強者からは程遠く、単なる獣の延長。

 それが、その竜が生まれた亜竜種族としての宿命だった。

 

 しかし、その竜は同族よりも賢かった。

 狡猾だった。

 そして、それ以上に貪欲な個体だった。

 中途半端な強者として生まれたその竜は、だからこそ、自分よりも強者たちが持っている何もかもを欲しがったのである。

 ならば、どうするか?

 その答えが、『下剋上』であり『逆襲』だった。

 自分よりも強い者を打倒し、食らい、成長する。

 それこそが、その竜が導き出した自らの宿命に対する答えだった。

 

 その竜の逆襲は常に、地獄と隣り合わせだった。

 戦う相手は格上。

 性能差は歴然。

 死闘と敗走は日常茶飯事。

 竜として生まれたプライドなどは、瞬く間にゴミクズへと変わった。

 だが、それでもその竜は勝利を重ねた。

 強者の行動を観察し、少しでも隙が生まれる時間帯に奇襲を仕掛けて。

 時に、自分よりも圧倒的に弱い人類から学び、即席の罠を仕掛けて。

 あらゆる屈辱と敗北を重ねて、それでもその竜は成長した。数百年をかけて、少しずつ少しずつ、元の種族の面影が無くなるまでに成長――否、変質して。

 気づけば、その竜は強者の側に立っていた。

 

 古龍を食らって。

 魔王を撃退して。

 人類からは災害として恐れられる。

 そのような竜として君臨するようにまでなっていたのである。

 

「あ、おい! 逃げたぞ、あいつ!」

「カカカ! 中々賢いネ、あのトカゲ!」

「笑うちょっ場合じゃなかぞ!」

「あー、小刻みに移動している上に、遮蔽に隠れて移動していますね」

 

 そして、勇者という名の蛮族たちにボコボコにされた。

 油断していたつもりはないというのに、完膚なきまでに罠に嵌められた上でのフルボッコだった。辛うじてその竜が逃げ切れたのは、恥も外聞もなく最速で損切りの判断ができたおかげである。

 あるいは、他の竜を狩った経験があった所為か、勇者たちの認識の中に『竜は逃げにくい』という先入観が幾分かあったからかもしれない。

 もしくは、フルボッコにされてもまだ五割ほど余力が残っている状態で、その余力を全てつぎ込んだガチ逃げするとは思わなかったからかもしれない。

 それはもう、知性ある竜ならば『えー、ただの人間相手にガチ逃げぇー? 竜として生きてて恥ずかしくないんですかぁー?』と煽られても仕方がない生き恥ランナウェイだったが、そこに後悔は無かった。

 むしろ、その竜には歓喜の感情すらあったのだ。

 

『ああ、そうか。そういう強さもあったのか』

 

 その竜が勇者たちから学んだのは、数の強さだった。

 自分だけが強くなるのではない。

 『自分たち』という集団を強くする手法。

 その竜は、さらなる躍進のため、群れることを覚え始めたのだ。

 当然、上手くはいかない。

 知性ある竜は、逆襲の象徴であるその竜を嫌って。

 知性なき竜でも、そもそも飼い慣らす技能など持っていないその竜には難しい相手だ。

 故に、その竜の最初の取引相手は人間だった。

 逆襲の時代なれども、まだ弱い人間たち。

 その言語を覚え、拙い言葉で交渉することが、覇道の始まりだったのだ。

 

 

 竜でありながらも、餓狼のように貪欲で。

 竜でありながらも、群れることを選んだ特異個体。

 

 ――――餓竜王スタルヴェイグ。

 

 竜でありながらも、他種族混合の群れを率いるその個体は、曲がりなりにも『王』と呼ばれる存在にまで成り上がっていた。

 

 

◆◆◆◆

 

 

《まー、特攻魔剣持ちの竜殺しに暗殺されてしまったんだがな!》

「えぇ……」

《仕方ないだろうが。現代で言うところの六神武貴の当主クラスみたいな相手だぞ? 範囲殲滅で薙ぎ払ったつもりだったのに、『ふぅ、今のは死ぬかと思ったわ』とか無傷で立ち向かってくる相手だぞ? 流石の我も普通に死ぬわ》

「逆に、うちの王国の主戦力ってそんなに強かったんだなぁ」

《いいや、我が知っている時代から血が重なってあるはずだから、今の当主はもっと強い奴になっているかもしれん》

「人類って凄い」

 

 はぁい、良い子の皆ぁー、元気ぃー!?

 生き恥お兄さんだよぉー!

 今は街の宿屋で筋トレをしながら、魔剣さんのお話(実体験)を聞いているところなんだー! 

 なんかこう……魔剣さんの中の人……人? が竜だったことよりも、後半のトンデモ人類エピソードの方が印象強かったんですけど?

 

《とはいえ、我もただでは死なん。特攻の魔剣――イグニスと呼ばれるこの剣は、斬った相手の生命力と魔力を吸い取り、持ち主の糧とする力がある》

「うわぁ、厄ネタ」

《故に、我はあえてその力に抗わず、むしろ全ての命と魔力を込めるつもりで奪わせた。そう、我の魂の情報を魔剣へと転写させるためにな。ぎひひひ、その甲斐もあってか、我はこうやって無事に魔剣に取り憑くことができたというわけだ!》

「厄ネタに呪いがプラスされている」

《まー、即座にバレて、ガチガチにギアスで行動制限を食らったのだが》

「呪いに対してセメントに対応している」

《おかげで、たった一人の人間すら乗っ取れない始末。故に、こうやって所有者である貴様と契約を結ばなければ、肉体の一つも手に入れられんというわけだ》

 

 ただまぁ、この魔剣イグニスと、取り憑いたスタルヴェイグという竜が凄まじいことには変わらない。

 恐らく、この魔剣は魔具に換算すればSランク相当の一品だろう。

 スタルヴェイグも、語った内容に虚偽が無ければ、魔剣で殺される前は相当な格の竜だということになる。

 普段ならば、そう、ギルド職員をやっていた頃の俺ならば、即座に封印処理と共に養父へ報告。後は王都へ厳重な管理の下に輸送し、更なる封印か破壊されることを望んだかもしれない。

 だが、今は違う。

 この魔剣と餓竜王の亡霊は、リスクに見合った希望がある。

 村を焼き滅ぼした奴らを皆殺しにできるかもしれない。そんな、物騒極まりない可能性が、今の俺にとっては唯一の希望だった。

 

《何にせよ、契約を果たすためには我は全力を尽くそう》

「ああ」

《あんなクソ怪しい誘いに乗った上に、こちらの都合よく肉体を差し出す契約をしてくれる持ち主など、今後現れるかどうか本当にわからんからな! 多分、それよりも先に魔剣がへし折られる可能性が高いし!》

「厄ネタだからね」

《この魔剣マジで物騒だから、本音を言えばマジで要らん。よくわからん素材で作られた所為か、くっそ丈夫なのはありがたいが》

 

 はぁー、と露骨に溜息を吐くと、スタルヴェイグは《ともあれ》と気を取り直す。

 

《まずは、貴様に力を与えることが先決だ。それ以外のことは肉体を得てから、後でゆるりと考えるとしよう》

「そうして貰えるとこちらも助かる。でも、一体どうするんだ? 言っておくが、素振りと筋トレ。走り込みと模擬戦闘ぐらいはギルド職員だった頃でも、毎日こなしていたぞ? それでも、このありさまだ。生半可な鍛錬では、奴らに勝てるようになるとは思えない」

《…………んー、それについてはまぁ、色々言いたいことはあるが、今は何を言っても無駄だろうからなぁ》

「うん?」

《何でもない。とりあえず、貴様の望み通り、生半可ではない鍛錬を与えてやろう。精々、血反吐を吐きながら後悔するのだな!》

 

 スタルヴェイグの言葉に、俺はようやく安堵した。

 

「ああ、頼む、スタルヴェイグ。俺に容赦はしないでくれ。無慈悲に、容赦なく、鍛え上げて欲しい」

 

 今までずっと落ち着かなかった。

 家族、幼馴染、友人、村の仲間たち。

 その全てが焼けてしまっているのに、生き延びた俺が何の苦痛も味わっていないのはおかしい。けれども、望んで苦痛だけを得るのは非合理だ。無駄だ。意味が無い。

 意味のある苦痛こそ、今の俺が望む全てだった。

 

《ぎひひっ、その威勢のいい言葉がどこまで続くか見ものだなぁ! 我が主、コタロウよ! あ、それはそうと、我の名前は長いから、気軽に『スー』と呼ぶように》

「お前はもうちょっと威勢のいい言葉を続けろよ……」

《愚か者が! 短く、親しみを込めた呼び方! これは戦闘中の意思伝達も短縮される上、我らの親密度が上がりやすくなるのだぞ!?》

「上げたいのかよ、親密度」

《絆の力を甘く見るなァ!!》

「呪われた魔剣に絆の大切さを説かれてる……」

 

 かくして、俺の復讐生活はようやく、本格的に始まることになったのだった。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 スタルヴェイグ――もとい、スーが大言を吐くだけのことはあって、与えられる鍛錬というのは、確かに『特別』であり、スー以外の他者が真似するのは難しいものだった。

 

《いいか? まず、考えるな。感じろ》

 

 スーは魔剣の所有者に対して、ある程度の干渉を行える力がある。

 例えば、電気信号による肉体操作。

 例えば、魂に記録された情報の転写。

 例えば、歴代の魔剣所有者――――その技術を、俺の肉体で疑似的に再現することも可能である。

 

「ぎ、が、ぎぃっ!」

 

 聖剣技。

 魔法剣。

 早撃ち。

 歴代の魔剣所有者たちの技術が、俺の肉体を動かす。

 神経が焼き焦げるような衝撃と共に、スーから流された電気信号が、俺の肉体を動かす。

 かつて、魔剣を求めた剣士たちの動きを再現する。

 

「づ、あ、がぁ」

 

 無論、その全てが正しく駆動するわけではない。

 スーがある程度、俺の肉体でも作用するように情報をコンバートしているとはいえ、所詮は俺程度の肉体だ。

 再現しようとも、その技術は紛い物に過ぎない。

 そもそも、別人の肉体での動きを再現しようとすること自体が難題なのだ。

 スーが言うには、再現率は精々五割程度。故に、この再現された剣技で戦える、と思うのは傲慢が過ぎる考えだろう。

 

「ぎ、ぎ、が、あっ!」

 

 ただ、この鍛錬は無意味ではない。むしろ、その逆だ。

 再現される技術は、俺に数多の要訣を教えてくれる。

 通常であれば、長い時間の鍛錬の下、ようやく気づけるような何かを理解――といってはおこがましいが、コツのような物を感じ取れるようになったのだ。

 さながら、自転車に乗ったことのない者が、自転車に乗ったことのある者の感覚を得られるように。

 破格と呼んでも過言ではない、効率的な鍛錬を実現させてくれるのだ。

 ――――ああ、素晴らしい。是非とも、もっとやってくれ。

 

《…………休憩だ》

「ま、だ……やれる」

《駄目だ、従え。効率が悪くなる。それに、周囲を見ろ……ドン引きされているぞ?》

 

 本音を言えば、限界の果てまでこの鍛錬に時間を費やしたい。

 だが、逆に効率が悪くなるのなら仕方がない。この鍛錬の提案者であるスーが言うのだから自重すべきだろう。

 

「ふぅ」

 

 俺は一旦、魔剣を下ろして息を吐く。

 周囲を見ると、俺と同じくギルドの鍛錬場を利用している冒険者たちが居るが、こちらの方を見て引きつった顔をしていた。

 なるほど、どうやら俺は周囲へ迷惑をかけてしまっていたらしい。

 動きを再現する際、肉体を無理に動かす関係で苦痛を味わうことになるのだが、その時にみっともなく喚いていたのが原因のようだ。

 ううむ、確かに公共の場であまりうるさくするのはマナー違反だ。

 

「わかった、次からは黙ってやろう」

《そういうことじゃないし、次はしばらく無い》

「うん?」

 

 呆れ交じりのスーの声に、俺は首を傾げる。

 

《心身を過度に損傷させる鍛錬は逆効果だ。苦痛に耐えるほど強くなる、なんてナイーブな考え方は今すぐ捨てろ》

「うぐっ」

《それよりも先に貴様がすべきことは、写し取った技術を噛み砕き、我が物とすることだ。他者の模倣ではなく、なんとなく要訣を感じ取っただけではなく、それを自分の物として扱えるまで鍛錬しろ。そうしなければ、貴様自身の戦闘スタイルと噛み合わずに、返って弱体化する羽目になるだろう》

「おお! それは確かに!!」

 

 だが、スーの説明を聞いて、すぐに納得した。

 確かにその通り。いくら『楽』だからといって、スーから技術を写し取るばかりの作業では、俺自身の地力がいつまでも育たない。

 故に、再現された動き方を自分のやりやすいように解釈するのは、紛れもなく俺が強くなるのに必要な行いだ。

 そうとも、スーから与えられる鍛錬に甘えてはいけない。

 きちんと俺自身でも、強くなる方法を考え続けなければ。

 

「馬鹿なことを言って悪かったよ、スー。そうだな、借り物の技術にはしゃがず、きちんと自分の技術にすることから始める」

《うむ、それでいい。感じた後は考えろ。思考を止めるな……だが、疲れたと感じたのなら即座に休め。疲れた頭で考え続けるのは、単なる惰性。甘えに過ぎない。故に、適度な休憩こそが貴様を復讐への最短ルートに導くのだ》

「わかった、そうしよう。確かに、自己満足はいけない……そんなもの、許されていない」

《…………》

 

 焼きつけられた動きを繰り返す。

 繰り返す動きの中で、要点を見つけ出す。

 使えそうな技術の材料を噛み砕き、飲み下す。

 凡才極まりない俺が、卓越した強者たちの模倣ができると思ってはいけない。

 俺に可能なのは、無様な欠片集め。

 素晴らしい技術を貶め、劣化させ、それを自分の糧とするだけの無様な拾い食い。

 きっと、グルカが見たら、馬鹿笑いして頭を叩かれるような無様だ。

 

 

 

《魔具は邪魔だ、我の補助が行き届かん。今後は付けずに戦うように。それに……どの道、我による肉体改造で、貴様は純人種から異なる種族にコンバートされるのだ。その内、魔具は使用できなくなるだろう》

「はい! コンバートは良いですが、その結果、俺は強くなるんでしょうか!?」

《なる。規格外の身体能力は手に入らないが、多少は動きやすくしてやる。少なくとも、貴様が上位魔具を使うよりもマシな強さにはしてやれるぞ》

「ならば、ヨシ!」

《ヨシじゃない。もうちょっと疑え》

 

 鍛錬をある程度重ねたのならば、後は実戦である。

 どれだけ練習で上手く動けたとしても、実際に命のやり取りをする場所で同じように動けなければ意味は無い。

 従って、俺はスーのお勧めに従い、モンスター討伐の中心に依頼を受けることになった。

 ちなみに、ギルド職員から冒険者には既に転職済みである。

 しばらくの間、冒険者の仕事をやっていなかったのでDランクからやり直しであるが、俺は元々、ランクBにも届かなかった半端者だ。

 過去の実績に未練なんてない。

 そもそも、未練を抱くような実績なんて持ち合わせていない。

 そして、以前とは違い――――冒険者という職業に、心が沸き立つような浪漫を感じなくなってしまっていた。

 

 

『コキャ!?』

「残心……よし。周囲確認……残敵無し。属性確認……おっと、そろそろ移動しないと」

 

 モンスター討伐は特に何事もなく終わった。

 それも当然だろう。

 何せ、倒したモンスターのほとんどは以前に倒したことがあるものばかり。

 いくらソロでの討伐とはいえ、多少群れている程度のモンスターには負けない。

 魔具を付けていないという不安はあったが、スーの補助のお陰か、さほど戦うのは辛くない。むしろ、反射速度が上がって戦いやすいぐらいだ。

 ただ、学んだ技術が上手く血肉となっているのかはわからない。

 大抵のモンスターは、その技術を上手く使う前に俺が殺してしまうからだ。

 

「はぁ。魔具無しの戦闘には慣れて来たけど、肝心の戦闘訓練がいまいちだ。かといって、強いモンスターの討伐なんて今の俺が受けたら自殺行為。大丈夫、焦ってはいない。きちんと自重はしているぜ、スー」

《…………貴様は、色々とあれだな?》

「何さ?」

《いや、なんかもう……ゆっくりと癒していくしかないか》

「一応言っておくけど、無傷で戦闘は終えたからな?」

《そういうことじゃないぞ、愚か者》

 

 その所為か、スーの機嫌が悪い。

 やはり俺が未熟な所為だろう。もっと鍛錬を積まなければ。

 

 

 

《そろそろパーティーを組め》

 

 そして、俺が冒険者として復帰してから二か月ほど経った頃。

 スーは《次のステップだ》と言って、俺に課題を告げた。

 その内容は、他の冒険者とパーティーを組んで依頼を達成することだった。

 ただ、なんというか、ありきたりというか、あまりにも普通の内容だが……ふむ。

 

「はい、質問。パーティーを組んだ場合、その相手を俺の事情に巻き込むと思いますか?」

《二か月も放置されているのだから、今更追手を出さんだろう。そもそも、領主の兵士たちに情報を話した後に貴様を殺そうと行動すれば、その分だけ無駄に情報を与えるだけだ。奴らに少しでも知恵のある存在が居るのならば、そんな愚行は犯さぬだろうよ》

「ああ、うん……この二か月、割と平和だったから薄々そうだとは思っていたけど」

《大体、事情なんて良くも悪くも冒険者の誰にでもあるものだ。そんなことをいちいち気にしていてパーティーは組めんだろう?》

「…………そうだな、うん。俺はちょっと思い上がっていたみたいだ」

 

 スーの言葉により、俺は自分を戒める。

 そうとも、珍しくも無い。この王国ならばきっと、故郷を燃やされた人間なんて探せば、それなりに出てくるはずだ。テロリストと敵対したり、殺さなければならない相手を探している者も多くいるだろう。

 思い上がってはいけない、自分は特別などではないのだ。

 そう、自分だけが不幸だなんて思い上がるな。

 

「となると、パーティーを組む意図は、多人数戦闘の予行練習?」

《それと、貴様の復讐を果たすための情報収集だ。できるだけ多くの冒険者とパーティーを組み、依頼をこなしながら情報を集めるのだ》

「まぁ、確かに。まともな情報収集なら、領主が派遣している人たちがやっているだろうから、俺たちは別のアプローチで攻めた方が効率的か」

《そうそう。多くの冒険者とパーティーを組めば、その分、コネクションも広がるぞ》

「…………なんか、人間の俺よりも社交的じゃない?」

《これでも生前は『王』と呼ばれていたからな》

 

 スーの言葉は、少しだけ誇らしそうに、けれどもどこか寂しそうな声で紡がれていた。

 どうにも、この竜は奇妙なほどに人間らしい。

 理性的でありながら、人の情も理解する『真っ当な性格』の持ち主だ。

 仮に、復讐を果たした後、俺の肉体を得たとしても無辜の民に暴虐を働くことはないだろう。そんな無駄で、愚かなことはしないだろう。

 そう思えるだけの『魂』を感じるのだ。

 ――――こんな俺なんかよりもよほど、気高い魂を。

 

 

◆◆◆◆

 

 

【視点変更】

【餓竜王スタルヴェイグ】

 

 

 

 コタロウという人間は異常である。

 それが、スタルヴェイグ――スーが二か月かけて導き出した結論だった。

 

 身体能力は上等。

 幼い頃から真面目に鍛錬を積んでいたおかげか、魔具を付けない状態でも純人種の中では、かなりの上澄みに位置する身体能力だ。

 魔術は不得手。

 何かしらの希少属性に属しているのか、ほぼ全属性の魔術は使用可能である。

 ただし、それは一節か、それにも満たない威力での発動でしかない。コタロウ曰く、鍛錬の合間を縫ってずっと勉強をしてきたが、まともに魔術は使えなかったらしい。

 だが、魔力自体はそれなりの量がある。

 故に、魔術が使えないのはコタロウの属性に関わる問題であると考えた方がいいだろう。

 剣技は生真面目。

 師匠であるAランクの冒険者がそうしたのか、コタロウは基礎――特に、『受け』と『弾き』に関しての技術に秀でていた。

 魔力撃や微弱な魔法剣なども使えなくはないが、コタロウの本質は守護剣士だ。

 ただし、それは誰かを守るための技能ではなく、あくまでも自分自身を守護するための技能だった。

 

 ――――と、ここまでならば、まだ『優秀な冒険者』であるとして片づけられる。

 このまま真っ直ぐに成長すれば、ランクAの冒険者まで成り上がれるかもしれない。そんな希望を抱かせる『優秀な冒険者』として。

 だが、スーがコタロウと異常と評した点は、ここからだ。

 

 

「亜竜五体にボコボコにされた時の話? いや、勘弁してほしいな、スー。あれはいわゆる挫折の記憶なんだ。殿のためとはいえ、あそこまで良いようにやられて心が折れるなんて、冒険者としては恥――えっ? いいから話せって? いや、まぁ、わかったよ。退屈だと思うが、我慢して聞いてくれ」

 

 契約したばかりの頃、スーは能力を測るため、コタロウの過去を知ろうとしていた。

 現在だけを知っても仕方がない。人とは過去の積み重なりで出来ている。

 だからこそ、コタロウの過去を知り、コタロウの能力を正確に測ろうとしたのだ。

 すると、出て来たのが『亜竜五体にボコボコにされた』という経験である。

 ――――馬鹿なんじゃないのか? 

 それが、スーが真っ先に抱いた感想だった。

 

「亜竜が一体だけなら、俺は普通に殺されていたと思う。でも、あの場には五体も居たんだ。何かの縄張り争いの途中だったんだと思う。そう、『俺よりも強い』亜竜が五体も居たんだ。だったら、自然と俺に対する攻撃の優先順位が下がるのは当然だろ? 後は、普通に亜竜たちの攻撃を最小限のダメージになるようにして受け流して、その余波で亜竜同士の縄張り争いを激化させる。冷静になりそうな亜竜が居たら、ちょっかいを出して怒りを持続させる。それを助けが来るまで続けただけだ」

 

 平然と言っているが、そもそも普通の冒険者は亜竜五体に囲まれたら死ぬ。

 生き延びるのは一握りの強者か、優れた逃亡手段を持っている者だけだ。

 問題は、そのどちらでもないのにコタロウが生き延びたということ。

 

「いやぁ、あの時は本当に怖くてなぁ。おかげで、Aランク冒険者になる夢も諦めたもんだ。まぁ、元々分不相応な夢だったんだろうけど」

 

 心が折られた程度で、五体満足に、後遺症もなく、生き延びたということ。

 亜竜を倒すほどの力が無いというのに、亜竜が五体集まる死地を乗り越えた理由。

 その答えをスーが知ったのは、コタロウを魔具の無い状態でモンスターと戦わせた時だ。

 

「よーし、やるぞぉ」

 

 大前提として、純人種が、魔具が無い状態でモンスターと戦うのは自殺行為である。

 一部の変態や、体術に傾倒する強者。そもそも付ける必要が無い絶対者などを除けば、魔具は付けるべきだ。付けなければ普通に死ぬ。

 そのため、スーはこれを『断られて当然』の要求としてコタロウに突きつけたのだが、平然と受け入れられてしまった。

 

「うん、まぁ…………魔具がないとこんなもんかぁ」

 

 しかも、虚勢や楽観視による判断ではない。

 コタロウは魔具を付けない状態でも、あっさりとモンスターを討伐してみせた。

 魔剣イグニス。

 スーによる肉体補助。

 この二つがあったとしても、無謀極まりない行動を当然のように成し遂げてしまったのである。

 

《…………うっわ》

「いや、だからその反応は何? どういう感情?」

 

 その光景を見て、スーが思わずドン引きしたのも仕方がない反応だっただろう。

 ともあれ、コタロウが戦う姿を観察することにより、スーはその異常性をある程度までは解析することができた。

 

 ――――場の流れを掌握する力。

 

 強いてコタロウの異常性を説明するのなら、このようなものになる。

 鋭い観察眼。

 相手の意を読み取る心眼。

 五感全てを用いた、危機に対する直感。

 そして、それらの下地にある――『明らかに年齢に見合わない鍛錬の積み重ね』こそが、異常なほどの見切りに繋がっているのだ。

 しかも、その見切りを大前提の基本技程度にしかスーは捉えておらず、モンスター相手に平然とフェイントや虚実を込めた攻撃を仕掛けるのだから質が悪い。

 何度も、『あれ? 今のは食えていませんでしたかァ!?』という驚愕の表情で死んでいくモンスターたちは、いっそのこと喜劇的ですらあった。

 

「うん? 魔具無しでモンスターを倒したのが誇らしくないのかって? なんで? 誰でも倒しているようなモンスターを倒して、嬉しいことなんて何もないぞ」

 

 その癖、曲芸染みた真似を平然とこなしたというのに、コタロウは一切それを誇らない。

 卓越した技術に伴うはずの自信が見えてこない。

 スーは当初、その欠落は故郷を滅ぼされたが故の自虐的な思考だと考えていたが、二か月ほど経った今では、『何かが違う』と察していた。

 もっと根底。

 コタロウの人格形成に関わる部分で、悍ましいコンプレックスに汚染されている。

 恐らくは、その精神性が故郷を滅ぼされたトラウマにより、『行きつくところまで行きついてしまった』というのが、現在のコタロウの状態なのだろう。

 

 自分には一切の価値が無い。

 そのように本気で考えてしまっているからこそ、他者の動きを――魂の情報を転写されるという苦痛に耐えられる。

 焼けた鉄の棒で、体の内側を犯されるような苦痛。不快感。

 それを平然と受け入れて笑えるのは、やはり異常なのだ。

 だからこそ、スーはコタロウに《そろそろパーティーを組め》という課題を出したのである。

 異常なほどにストイック。

 その在り方は求道者としては尊いかもしれないが、周囲からは忌避されるものだ。

 

《さぁ、その精神性できちんとパーティーを組めるかな?》

 

 故に、スーはコタロウに試練を課す。

 人は一人では生きてはいけない。

 過剰なほどの鍛錬にのめり込む契約者に、そんな当たり前のことを教えるために。

 

 

 

「パーティー結成、ヨシ!」

《はっやぁ!?》

 

 スーがコタロウに課題を貸してから三十分後。

 コタロウは冒険者の宿やら、街中やらをぐるっと回ると、あっという間に仲間をスカウトしていた。

 それはもう、二心同体のスーでさえ、唖然とする手並みでのスカウトだった。

 毎日訓練場へと通い、ストイックすぎる鍛錬に時間を費やすため、他の冒険者から『ストイックマン』と呼ばれてドン引きされているコタロウだが、これでも前職はギルド職員である。

 冒険者とのコミュニケーションはお手の物。

 多少ドン引きされていようとも、『二か月間真面目にモンスター討伐をこなしていた』という実績さえあるのならば、仲間を勧誘することぐらいは簡単なことだったのだ。

 なお、その事実を知ったスーは密かに《社会に係合できるタイプの異常者!!?》と驚愕していたが、流石に声までは出していない。

 

「というわけで、皆ぁー! 冒険者ギルドに依頼を探しに行くぞぉー!」

「「「おーっ!」」」

 

 コタロウは集まった仲間たちと共に、意気揚々と冒険者ギルドへと赴く。

 さて、ここでコタロウの仲間となった三人を紹介しよう。

 

「やー、パーティー単位での依頼なんて、私たち初めてですよー」

 

 一人目の名前は、マッジ。

 黒衣に黒のツバあり帽子。上から下まで黒ずくめの小柄の体躯。

 黒髪の癖毛に、緋色の瞳を持つ、全体的に地味で柔らかな印象を抱かせる少女だ。

 

「今まではずっと採取依頼か、モンスター駆除だけだったからね」

 

 マッジに応じるように言葉を紡いだ、二人目の仲間。

 彼女の名前はリリカ。

 動きやすいノースリーブの上着に、藍色のスカート。頑丈な安全靴。

 金髪碧眼に凛々しい顔立ちの、居るだけで周囲が明るくなるような美貌の少女だ。

 

「う、うう……大丈夫かなぁ……僕、迷惑にならないかなぁ……」

 

 そんな少女二人の会話に混ざれず、三人目の仲間は陰鬱な声を上げている。

 彼の名前はタイザン。

 赤銅色の肌を持ち、鈍色の針金の如き髪の少年だ。

 そう、筋骨隆々の巨漢であり、全長が三メートルを優に超える体躯の持ち主でも、彼はまだ少年と呼んでもいい年齢である。

 猫背と気弱な表情を除けば、上半身はほぼ裸体。下半身は簡素で丈の短いズボンだけという蛮族スタイルだが、コタロウとの会話によって、タイザンは十四歳の少年であることが判明していた。

 それもそのはず、タイザンの額には一本の角があり、『鬼人』という純人種よりも遥かに巨大な肉体を持つ種族なのだから。

 

 マッジのポジションは後衛。役割は魔法使い。

 リリカのポジションは中衛。役割は魔法戦士。

 タイザンのポジションは前衛。役割は拳闘士。

 そして、このパーティーの臨時リーダーに就任したコタロウのポジションは前衛。

 役割はスカウト兼魔剣使いである。

 純人種の少女が二人。

 鬼人の少年が一人。

 なんかよくわからない種族になりかけている少年が一人。

 合計四人構成でのパーティーである。

 

《…………》

 

 ただ、スーはこの仲間たちに対して疑念を抱いていた。

 何せ、マッジとリリカを資金不足。

 もそもそと冒険者の宿で一番安い黒パンを食べていたところを、コタロウによってスカウトされたのだ。

 マッジ曰く、『魔法の見栄えが悪すぎて一緒に戦う仲間が集まらない』らしく、前衛不足で大きな仕事を受けるのに躊躇していたようだ。

 なお、魔法の見栄えが悪すぎるのはマッジだけであり、リリカ単独ならば他のパーティーからの誘いも来ているようなのだが、マッジから離れるつもりはないらしい。

 そのため、二人そろって資金不足にあえいでいたのが、マッジとリリカなのである。

 

 一方、タイザンは鬼人の中でも特に見事な肉体の少年だが、メンタルが弱い。

 それはもう、コタロウが声を抱えるきっかけとなったのが、タイザンが近所の悪ガキたちに絡まれていたことだったぐらいには、メンタルが弱い。

 その気になれば、自分の腰にも満たない背丈の悪ガキたちなど、軽く触るぐらいの力加減で吹き飛ばせるが、タイザンはそれ故に力を振るうことを恐れていたのだ。

 コタロウが『へーい、身の程知らずのガキどもぉ!』と悪ガキたちの尻を蹴り飛ばして追い払わなければ、いつまでも絡まれていただろう。

 

 本当にこの三人が仲間で大丈夫なのか?

 スーの疑念に対して、コタロウは次のように答えた。

 

「誰だって貧乏な時はあるし。誰だって心が竦む時がある。何か問題があれば、その時は俺が上手くフォローすればいい」

 

 ならば、お守りのような気持ちでパーティーに誘ったのか?

 そんな不満と疑念を察知したのか、スーが何か言葉にする前に、コタロウは更に言葉を付け足した。

 

「それに、彼らには素質がある。今のうちに、コネクションを作った方がいい……はは、大丈夫。これでも冒険者を見る目はあるつもりなんだ。前職がギルド職員だからな」

 

 その言葉はコタロウには珍しく、『矜持』の残滓を感じさせるものだった。

 

 

 

 簡単な採取依頼のはずだった。

 何せ、四人は全員がCランクの冒険者である。誰か一人でもBランクの者が居れば話は別だろうが、全員がCランクでは信頼度の問題で大層な依頼は受けられない。

 従って、『日帰りで戻って来られるが、実際に行くとなると億劫』ぐらいの距離にある、薬草を何種類か取って来る依頼を受けることになった。

 マッジには薬草の知識があり、コタロウにはスカウトとしての技術がある。

 魔物除けの準備も万全。

 よほどのことが無い限り、四人パーティーで失敗するはずのない依頼だった。

 

「ひゃっはぁ! 皆殺しだぁ!」

「そこの商人もぉ! 護衛の冒険者も皆殺しだぁ!」

「女は殺せェ! 男は犯せェ!」

「そこは逆だろ、兄弟ぃ!?」

 

 けれども、『よほどのこと』というのは、この王国だと割と起こってしまう。

 そう、盗賊が数十人規模で一人の商人と、数人の冒険者を襲っているという光景に。

 

《あん? 何か変だぞ、コタロウ》

「そうだな。明らかに――リスクと利益が見合っていない行動を盗賊が取っている。あの規模の盗賊団なら、護衛付きの商人一人を襲うよりは、商隊あたりを狙っていくはず」

 

 スーとコタロウは、その光景を発見すると、まず違和感を覚えた。

 何かがおかしい。仮に、護衛されている商人が貴人や重要な立場にいる人間ならば、盗賊たちも仲間が殺されるリスクを承知で襲いに行くかもしれない。

 だが、そうなると護衛となる冒険者の戦力が弱すぎる。

 Aランクとは言わないが、せめて戦闘特化の冒険者パーティーを選ぶはず。

 スーとコタロウが観察した限りでは、冒険者たちはBランクとして『弱くはないが、強くも無い』程度の実力だった。

 まるで、何かの歯車が噛み合っていない。そんな状況だった。

 

「た、助けましょう!」

「助けようよ!」

 

 コタロウの考察を中断させたのは、マッジとタイザンの必死な声だ。

 二人は木々の幹に姿を隠しながらも、心配そうに戦いの様子を窺っている。

 

「……リリカは?」

「んー、私もマッジが行くならやろうかな。あれぐらいの盗賊団だったら、私とマッジの二人だけでも勝算はあるからね」

「ふむ。スーの意見は?」

《助けに行くとしても、自分たちの身を最優先。いざとなったら助けようと思った相手を見捨ててでも生存を優先すること。これが守れるのなら、我は賛成だ》

 

 スーは既に、インテリジェンスウェポンとしてパーティーメンバーへの紹介は済んでいた。

 詳しい説明はまだだが、『相応に長生き』という事実は伝えてあるので、スーの意見はコタロウ以外の三人にもしっかりと警句として伝わっている様子だ。

 

「そっか。リリカ、勝算について詳しく教えてくれるか?」

「あの規模ならマッジの魔法で、半分ぐらいは消し飛ばせる」

「…………本当?」

「本当です! この前、亜竜の胴体も消し飛ばしました!」

 

 思わぬアクシデントであるが、立ち位置は悪くない。

 盗賊団はコタロウたちのパーティーに気づいておらず、魔法の射程圏内。

 パーティーが身を隠しているのは、街道の脇にある林の中。

 奇襲と共に近づけば、盗賊たちが飛び道具で攻撃するよりも前に、乱戦の中に飛び込んでいくことも可能だろう。

 つまりは、無謀ではなく『十分に勝てる戦い』だとコタロウは判断した。

 

「わかった、信じよう。タイザン、マッジの魔法で奇襲した後は、俺と君の二人で突っ込むぞ」

「う、うん! 僕、頑張るよ!」

 

 油断は無く、勝算はあり。

 ならばと、四人のパーティーは冒険者としての道理に従う。

 己が強さと優しさを証明するため、無法を働く悪を挫くのだ。

 

「行きます! ホーリージャッジメント!!」

 

 詠唱と正しい魔力操作の後、マッジは魔法を放つ。

 それは光属性の魔法。

 収束させた光を雨のように降らせる、範囲殲滅系の魔法である。

 

「なん――」

 

 盗賊の一人が、魔法の前兆を察知したがもう遅い。

 地面を焦がすほどの光の奔流は、盗賊たちの肉体を焼き貫き――数十人は居た盗賊たちの半分を、一瞬にして消し飛ばしたのだ。

 無論、商人と護衛の冒険者たちを巻き込まない範囲で。

 

 これこそが、魔法使いの利点。

 たった一人で戦況を覆しうるほどの火力を持つ魔法使いは、一種の戦術兵器に等しい。

 

「助太刀する! 前線は受け持つから、負傷者の救護を!」

「や、やるぞぉ!」

 

 コタロウは声掛けと共に、乱戦の中に飛び込んで、盗賊たちを切り伏せていく。

 その剣筋に躊躇いなどは無く、人を斬ることに対する罪悪感もない。

 盗賊という名の二足歩行の獣を狩ることに、罪悪感を覚える必要なんてないからだ。

 

「――――っ! すまない! すぐにこちらも前線に戻る!」

 

 コタロウとタイザンの援護を受けた冒険者たちは、即座に状況を理解。

 負傷した仲間や、護衛対象を下がらせるために乱戦から退いていく。

 

「ちぃ! あの剣士は手練れだ! てめぇら! ビビっているでくの坊から狙え!」

「へへへっ! デカブツがァ!」

「俺たちのニュー魔具でファックしてやるぜぇ!」

 

 盗賊たちは予想外の被害を受けつつも、退却しようとはしない。

 そこそこに気合の入った屑なのか、気弱な態度のタイザンへと狙いを定める。

 

「う、ううっ」

 

 それが悪手であるとも気づかずに。

 

「僕も、頑張って守るんだ! ええいっ!」

 

 ――――きゅぼっ。

 

 弱々しい掛け声とは異なり、タイザンの拳は破壊の体現だった。

 拳闘士としての動き自体は、基本的でシンプルな物だった。何も特別なことなどは無い。

 そう、鬼人の中でさえも『怪物』と呼ばれていた異常強度の肉体を、潤沢な魔力で強化した状態で、シンプルで正しい武術の動きを体現する。

 

「おぼっ」

「なんっ」

「ひ、ひぃっ! ばけもぼっ」

 

 ただそれだけのことで、敵は穿たれ、弾けていくのだ。

 さながら、赤色の水袋を地面にぶちまけていくかのように。

 

《うっわぁ、メンタルは赤点なのに、フィジカルは飛び級だぞ、あれ》

「仲間のことをあれとか呼ばない!」

 

 ドン引きするスーに応えながらも、コタロウの剣は鈍らない。

 タイザンの暴威によって腰が引けた盗賊たちを、順当に斬り殺していく。

 派手な動きも無く、特別な技術でもなく、淡々と地味に当たり前な動きで殺していく。

 

「ちぃっ! テメェら逃げろぉ! あの林の中に逃げこめぇ! あっちにはこいつらの後衛が隠れているはず! そいつを――――」

 

 それでも、残った盗賊は冷静だった。

 損切の判断を下し、逃走が可能な経路へと仲間たちを向かわせる。その過程で、忌々しい襲撃者たちの仲間の一人でも捕まえるか、殺すか出来れば最善だと。

 

「ほいっと」

 

 だが当然、コタロウたちも後衛を孤立させるわけがない。

 

「ぐはっ!?」

「なんだぁ!?」

「っだぁ……っべ、骨が……」

「爆弾!? ちが……くそっ! 何だこれぇ!?」

 

 林に向かおうとした盗賊たちは、例外なく吹き飛ばされる。

 不可視の砲撃によって、肉体が弾き飛ばされる。

 

「百本ノック、いってみようか!」

 

 不可視の砲撃の主は、マッジを守る魔法戦士――リリカだ。

 リリカは風の魔術により空気を圧縮し、固めて、それを野球バッドの如き魔道具で打ち出していく。

 かきん、という澄んだ打球音と共に、固めた空気を打ち出して。

 ぼんっ、という爆発音と共に、固められた空気が一気に膨張する。

 これが不可視の砲撃の正体だ。

 

「う、がぁ……舐めやがってぇ」

 

 無論、所詮は空気による砲撃だ。

 盗賊の中でも頑丈なものならば、立ち上がって戦闘に復帰することも可能だろう。

 故に、この『コンビネーション攻撃』の恐ろしいところはここからだ。

 

「もういい! 死ぬ前に、あいつらを一人でも道連れに……あ、え?」

 

 立ち上がった盗賊たちは、己の肉体に異常を覚える。

 蔦だ。

 緑色の蔦が、何故か自分たちの肉体から生えていて。

 

「いや、いやいや! まて、待てよ! それは! それはいくらなんでもぼおふぁれぇ?」

「あ、ああぁぁあああふぇあふぇあふぁえ?」

「ひゅふぁえあら?」

「は、花っ! 俺の頭から、花が生えびゃっ」

 

 盗賊たちの肉体を浸食し、瞬く間に『苗床』としてしまう。

 これこそが、マッジとリリカのコンビネーション攻撃。

 リリカの砲撃に混ぜて、マッジが森属性の魔術を仕込んだ種を打ち出す。

 そして、他者に打ち込まれた種は、マッジが放つオドの合図によって発芽。他者のオドを媒体としてどんどんと成長し、最後には思考能力を奪い、『苗床』とする。

 控えめに言っても、『ちょっと一緒にパーティーは組みたくないな』と断られたとしても仕方がない、グロテスクな魔法だった。

 

「ねぇ、マッジ。この魔法って本当に合法?」

「何度も言っていますけど、本当に合法ですよ! ちゃんと王都にも申請書を出して! 悪用されないように種には何重にもセーフティをかけて! 月一で王都に所在確認の手紙を出しているんですから!」

「それって危険人物扱いされてない?」

「そんなーっ! 由緒正しい魔女魔術なのに!」

「これで見栄えが悪いはちょっと詐欺だから、後でコタロウさんやタイザン君に謝ろうね」

「それは……はい」

 

 ともあれ、マッジとリリカによって盗賊たちが逃げ場を失った事実。

 後は狂乱した盗賊たちを、順当にコタロウとタイザンが刈り取って行った。

 

「…………ふぅ」

 

 そして、盗賊の最後の一人を倒した後、タイザンはほっと息を吐いた。

 油断したわけではない。

 残心を怠らなかったわけでもない。

 ただ一瞬、緊張の糸を緩ませただけ。

 ほんの数秒もすれば、護衛の冒険者たちも応急処置を終えて戻って来る。盗賊は既に壊滅させた。騒音に集まって来たモンスターはマッジとリリカが散らしている。

 故に、修羅ならぬタイザンがただ一瞬、緩んでしまったのを咎めることはできない。

 

 ――――とんっ。

 

「避けろ、タイザンっ!!」

 

 コタロウの警告とほぼ同時に、タイザンへと渾身を撃ち込んだ盗賊――の死体に擬態していた、覆面の男以外は。

 

 

 

 警告は間に合った。

 とっさにタイザンは、己の左腕を打ち込まれる拳の盾にしたのだ。

 タイザンの腕は、元々頑強である上に、魔力で強化すれば銃弾程度ならば皮膚で防ぐ。それだけの強度を持った盾である。奇襲とはいえ、体格に劣る覆面の男の打撃では痛打にはならない。

 そのはずだった。

 

「ぐ、がっ!?」

 

 タイザンが驚愕する声と共に、その左腕が凍結を始めた。

 拳を打ち込まれた箇所から、霜が走るように凍結範囲が広がっているのだ。

 しかも、攻撃はそこで終わりではない。覆面の男は更に追撃を放たんと一歩踏み込み――急所を狙って放たれた剣閃を避けた。

 

「タイザン、負傷は!?」

 

 コタロウは覆面の男の前に立つようにして剣を構え、自らの背後にタイザンを置く。

 その間、ずっと覆面の男からは意識を逸らさない。

 

「う、うう……だ、大丈夫! 相性がよかった! 内部で『火属性の魔力』を巡らせたから、まだ凍り切ってない……でも、集中してないと――」

「マッジとリリカの場所まで下がれ。後は、俺が……俺たちがやる」

 

 タイザンへ短く指示をすると、呼吸を整えつつ相手を観察する。

 推定、純人種の体躯。

 精人や魔人みたいな独特の魔力も感じない。

 外見は覆面を被った黒ずくめの男だ。武器と呼べるものは、両手に備えた無骨な手甲だけであり、それもまた魔具のようには見えない。単なる頑丈な手甲だろうとタイザンは判断する。

 この場、この条件で奇襲を仕掛けてなお、即座に離脱しないということはつまり、そういうことなのだと。

 

「俺が死ぬまで、誰も手を出さないでくれ! こいつはヤバい! 下手に攻撃をすれば、そこからこっちを崩して一気に皆殺しにするつもりだ!」

 

 覆面の男。

 謎の襲撃者。

 この人物は明らかに、先ほどまでの盗賊とは比べ物にもならない――否、間違いなく、この場に於いて格の違う強者だろうと。

 そして、そんな強者を囲んで叩くにも連携が足りていない。

 即席のパーティーと消耗しきっている護衛の冒険者たちでは、返って足手纏いになる。

 

「頼む、スー」

《はははっ! 中々に絶体絶命じゃないか、コタロウ!》

 

 故に、ここからは竜の時間だ。

 

「《竜装憑依》」

 

 二人が声を揃えて紡ぐのは、肉体の主導権を切り替えるためのキーワード。

 駆け出しのCランクではなく、歴戦の怪物へと切り替わる合図。

 

「さぁて!」

「――――っ!」

 

 コタロウの声でスーは気合のひと声を吐く。

 踏み出す足には、二か月の間で慣れ親しんだ龍属性での強化。

 コタロウのそれよりも遥かに滑らかに。素早く。軽やかなモーター音の如く、魔力を脈動させる。

 

「しぃやっ!」

 

 スーが振るう剣は紛れもなく、『竜殺し』の剣だ。

 竜の鱗を剥がし、穿ち、抉っては啜るための剣。

 途絶えることのない、連続の高速剣。

 鋭く、軽やかなる暴風の如き剣技だ。

 僅かでもその刃が相手を切り裂けば、そこから生命力を奪い、弱体化を重ねて殺し尽くす。

 暗黒剣による死の暴風。

 

「――――こ、お、おっ」

 

 ならば、静かなる呼吸と共に対応する覆面の男は、さながら木の葉。

 暴風の刃を手甲で流し、絶死の空間を舞い踊る。

 たった一つの間違いをした瞬間、肉体が切り刻まれる間合いにあって、けれども退くことは無い。

 

「はぁっ!」

 

 むしろ踏み込み、スーへと拳を振るう。

 内部で極限にまで高めた氷属性の魔力。それを極小の針として拳と共に打ち込む。

 己が血液を媒体とした、魔拳。

 絶対零度の小針。

 

「ぎひっ!」

 

 その拳を、スーは軽々と魔剣を持たぬ腕で弾いて見せる。

 未だ改造が足りない肉体ながら、一瞬だけ竜闘気を発動。肌に打ち込まんとする小さな針を砕いて、弾く。

 

「ぎひひひっ!」

「――――」

 

 一合だけでも即死のやり取り。

 高速で己の手札を展開し、相手の手札を殺し、勝利への道筋を掴む。

 敗北の要素を覆し、相手のあらゆる勝因を削る。

 まさしく、スーと覆面の男の戦いは、この場に於いて隔絶した力量を持った者同士の殺し合いだった。

 割って入るだけの余地はなく、下手に手を出せば次の瞬間、その介入者が死んでいてもおかしくない死闘。

 実力が拮抗した者同士の戦いだった。

 ――――そう、拮抗している。

 

「ぎひひひっ。あーあ、運が悪いなぁ、我もコタロウも」

 

 拮抗しているということは、すぐに決着はつかないということ。

 つまりは――――竜装憑依の制限時間である、三分間では倒せずに。

 

「修羅の如き者が、こんなところに居るとは」

 

 竜の時間は終わりを告げる。

 

 

 

【餓竜王スタルヴェイグ タイムアウト】

【視点変更 → コタロウ】

 

 

◆◆◆◆

 

 

 現実はいつだってこんなものだ。

 ゲームみたいに序盤からちょうどいいレベルの敵なんてぶつけてこない。

 難易度調整なんて、できちゃいないんだ。

 

「―――はっはっ、ぜぇ、はっ」

 

 荒い呼吸。

 竜装憑依の反動。

 しばらくの間、スーは補助にも回れない。

 

「…………」

 

 覆面の男から感じるのは、失望の視線。

 当然、攻撃は止まらない。

 即死に繋がる針を打ち込む魔拳。

 俺は必死に剣を振り、それを弾く。

 間合いで牽制。

 相手の呼吸を読み取り、少しでもマシな回避行動を取る。

 

「マッジ、駄目だ!」

「で、でも! このままだとコタロウさんが!」

 

 周囲から焦る気配が伝わってくる。

 全ては、俺が弱いからこそ。

 ああ、弱い。なんて弱い。何時だって弱い。

 

「はぁ、はぁ、はぁ――」

 

 荒れる呼吸。

 失われる酸素。

 剣を握る両手は緩んで。

 走馬灯の如く、過去の記憶が再演される。

 

 

『お前には素質があるんだがなぁ。ま、真っ当に暮らせるのなら、そっちの方がいいか』

 

 残念そうなグルカの言葉。

 悪い、師匠。

 本当に俺は駄目な弟子だ。

 

『ずるい! ずるい! コタロウにまだ勝ち越してないのに!』

『我が侭を言うな、馬鹿』

 

 冒険者を辞める時、引き留めてくれた幼馴染たちの言葉。

 悪い、お前たちに失望されるのが怖かったんだよ。

 

『妹はあんなに天才なのに』

 

 遠い昔、前世で俺を嗤った言葉。

 そうだな、妹たちは天才なのに、俺だけは退屈な凡人だった。

 

 ――――走馬灯の間も拳は止まらない。

 ――――剣を弾き、確実なる死を与えんと迫る。

 

 そうだ。

 俺は弱くて、才能が無くて、何もなくて。

 魔剣を持ったところで、鍛錬を重ねたところで何も、何も為せることなんてない。

 だから、俺はきっと、この退屈な走馬灯の中で命が消えていく―――。

 

 

『うぉおおおおおおっ! 命を燃やせェ!! 行くぞ、世界一位ぃ! これが! 俺たちのあっちむいて、ホイだぁあああああああああ!!』

 

 

「いや、流石にこの記憶で死ぬのは御免だぁああああああ!!」

 

 自虐と後悔を断ち切るように、俺は覆面の男の腹部を蹴り飛ばす。

 

「――――ぐ」

 

 無論、この程度ではダメージにもならない。

 蹴りの衝撃を逃がすように後ろに飛ばれたし。

 だが、魔拳は打ち込まれなかったし、こうして距離も取れたし、まぁ、良いだろう。

 

「あー、はいはい! そうだな! まったく、もう! 人が忘れようとしてもなぁ! つーか、あっちむいてホイで命を賭けるなァ! いや、山籠もりする俺も相当だけど!」

 

 喚きながら、俺は大きく息を吐く。

 この隙を見逃さないとばかりに、覆面の男が必殺の魔拳を放ってくるが、問題ない。

 思い出したんだ。

 あっちむいてホイの勝ち方を。

 

「は、ははっ。俺もお前も、お互いに時間をかけ過ぎた」

 

 ざん、という音は俺の魔剣が覆面男の腕を斬った音だ。

 ただし、傷は深くない。軽く肉まで斬ったが、筋は断てていない。

 次は、骨も含めて切断しよう。

 

「…………」

 

 警戒と共に、覆面の男は再度間合いまで踏み込む。

 拳だけではなく、蹴り技や針の長さを変えた変調のアプローチ。

 でも、お前自身が変わったわけじゃない。

 

「違う。技じゃない。俺が読み切っているのはそこじゃない」

 

 あっちむいてホイの勝ち方。

 その一、相手の心を読み切ること。

 

「まぁ、わからなくていいさ。教えるつもりもないし」

 

 言葉に惑わされず、動揺もしない覆面の男の魔拳。

 順当に勝てばいい、と言わんばかりの正道。

 鍛え上げた技を用いた、経験差による圧殺。

 ――――という方向に動かしたので、刃を合わせて剣を振り切る。

 ざん、ともう片方の腕を斬る。

 相変わらず筋は断てない。だが、肉は大分斬ってやった。

 

「そろそろ終わりにするつもりだしなぁ」

 

 あっちむいてホイの勝ち方。

 その二、相手を動かすこと。

 

「さぁて」

 

 俺は魔剣を構えて、覆面の男と対峙する。

 呼吸は既に盗み切った。

 上手く『動かす』ための伏線動作は仕込み終わっている。

 それでも、勝てるかどうかはわからない。

 

「次は殺す」

 

 だが、虚勢を張ろう。

 俺はどうしようもなく弱い凡人かもしれないけれど。

 今度こそ守ると決めたんだ。

 

「………………くはっ」

 

 覆面の男はしばらく俺を見合った後、不利を悟って退いていく。

 最後の最後、『次はどちらかが死ぬまでやろう』みたいな笑い方をしてやがったが、できれば二度と戦いたくない所存である。

 そもそも、次は絶対に対策してくるだろうしなぁ!

 

「マッジ、治療の準備!」

「はいっ! 待っていてください、コタロウさん!」

「うわぁああ! 死なないでぇ!」

 

 死なねーよ、無傷だよ。

 無傷じゃないと死んでいるような相手だったよ。

 

「はぁ、疲れた」

 

 仲間たちが集まって来る気配を感じつつ、俺はその場に倒れ込んだ。

 どうやら俺は、今度も生き延びることができたらしい。

 

 

◆◆◆◆

 

 

 後日談。

 結局、盗賊たちと覆面の男の目的はわからなかった。

 襲われた商人は、特に目立った業績もない普通の男性。襲撃の際に、多少は商品を落として失くしてしまったが、それも全ては二束三文の価値しかないガラクタだそうだ。

 上手いことガラクタを芸術品っぽく飾り立てれば、安値ならば誰か気まぐれで買うかなぁ? という気持ちで仕入れた品らしい。

 聞く限りの情報では、あれだけの人数の盗賊と、凄腕の――推定傭兵が襲ってくる理由は見つからない。

 …………まぁ、これ以上は俺たちの領分ではないので、さくっと手を引かせてもらったが。

 

 商人に怪我はなく、護衛の冒険者たちも負傷者だけで、死者は出ていない。

 俺たちは助太刀のお礼として、美味しいレストランに連れて行って貰えたので大満足。コネクションもできたし、悪くない結果だ。

 

 マッジ、リリカ、タイザンの三人とは今後もパーティーを続けていくことになった。

 三人とも善良な人間性の持ち主であり、戦闘能力も高い。何かの事情が無ければ、とりあえずはこの面子でパーティーを組むことになるだろう。

 

 

《コタロウ》

「はい」

《何か我に隠しているな?》

「ふむ」

 

 そして現在、俺は宿屋で不機嫌そうなスーと対話している。

 覆面の男との戦いに生き残ってから、何やら様子が変だったが、どうやら俺の素性に関して疑っていたらしい。

 とはいえ、この二か月の間で、大体の経歴は話したしなぁ……うーん。

 

「わかった。あっちむいてホイの真髄を、スーにも教えよう」

《違う! そうじゃない……いや、そうなのか? 無関係ではないが、本題ではなくて!》

「うん?」

《コタロウ! あの時に見せた、明らかに年齢に似合わぬ練度の技術はなんだ? あそこまで到達するまで研鑽を積むには、貴様の経歴とは矛盾があるだろう!?》

 

 スーからの追及に、俺はふと気づいたことがある。

 ああ、そういえば『どうせ信じないから、別に言わなくていいや』と黙っていた経歴があったな。

 

「いや、まぁ、うーん……」

《契約者に隠すんじゃない! これからの鍛錬に差し障るだろうが!》

「ん、そうか? だったら、言わないと駄目か」

 

 とはいえ、鍛錬に差し障るのは困るので、俺は渋々スーへと告げた。

 

「スー、実は俺…………異世界からの転生者なんだよ」

《………………???》

「ほらやっぱり、そういう反応になったぁ!」

 

 そう、絶対に気まずい沈黙を生むことになるだろう、話題を。

 この後、俺が必死にスーへと説明を繰り返すが、まともに信じてくれるまで、ここから更に三日ほどの時間を要することになったのだった。




●原作付きの奴ら

・マッジ:
 魔法使い。魔女魔法を操る。
 『六畳一間の魔女ライフ』のマッジ。
 原作ではこんなグロい魔法を使ってこない

・リリカ:
 魔法戦士。風を操り、空を駆ける。
 『六畳一間の魔女ライフ』のリリカ。
 原作でも似たようなことはできると思う。

・餓竜王スタルヴェイグ:
 魔剣付きの悪竜。
 『サモンナイト』の餓竜スタルヴェイグより。
 原作では影が薄い。
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