だから、悪党のロイスを取得した後、タイタスにして昇華しますね!!
【視点変更】
【タカオ:エリュシオン所属】
才牙。
主に竜人が形成する武具。
それは並大抵の武具とは比べ物にならないほどの逸品であり、これを形成することができる竜人は一人前として同胞たちから認められるだろう。
当然、竜ならぬ身では手が届かない代物だ。
可能か不可能かはさておき、才牙を使う竜人を殺したところで、その才牙を奪い取ることは難しい。才牙とは即ち、竜人という命が作り出す武具なのだから。その命を失わせてしまえば当然、武具は形成されない。
無論、例外はある。
竜人を殺し、その才牙を奪い取ることが可能な存在も居るだろう。
この世界は常に、そういう例外に満ちているのだから。
――――ただし、これはそんな真っ当な話ではない。
ある者は考えた。
才牙の形成。
それを人間でも再現できないか、と。
だが、それはとある原式装魔具のように『人間でありながら疑似才牙を使える』という代物ではない。コンセプトが違う。
ある者はこう考えた。
『強力な龍属性の投与』と『人間一人分の生命力』を混ぜ合わせれば、疑似才牙程度ならば生成――否、生産可能ではないか、と。
つまりは、人間を材料とした武具生産手段を思いついたのだ。
けれども、肝心なのは『強力な龍属性』の確保だ。それも、できる限り人間と親和性のある者の龍属性であればいい。
古龍などの龍属性では、人間に投与しても出来損ないの化物ができるか、適合できずに死ぬだけ。目的とする才牙の生産からは程遠い。
故に、ある者は考えた。
才牙を形成できる竜人の血肉を材料にすればいいのだと。
かくして悲劇は起こる。
この世界ではありきたりの、けれども当事者にとっては地獄に等しい悲劇が。
それは小さな村だった。
ジュリと呼ばれる一人の竜人が守護する、人間たちの集落だった。
未だ、人間たちが弱い時代。竜でも魔人でもない者たちは、より強者の庇護を受けることを生存の手段とすることが多かった。
けれども、ジュリと呼ばれる竜人は、大多数の竜人よりも優しく、人間に寄り添う少女だった。
まるで、友達のように人と触れ合い、対等に言葉を交わす。
守護の対価を求めず、ただ、当たり前のように弱き者を助ける竜人だった。
――――だからこそ、とある悪意に付け込まれたのである。
過程は省こう。
外道、外法を用いれば、いくらでも悲劇は生み出せるのだから。
たった一人の守護者では、それに抗えなかった。ただ、それだけのことだ。
そして、結果を語るのならば――――ジュリという竜人は丸薬になった。
全身を砕き、粉々にして、様々な薬品と混ぜて丸薬とした。
その丸薬を、ジュリが守っていた村人たちに投与した。
大半の村人は怪物へと変化したか、適合せずに死んだが、特に若い子供たちの何人かが奇跡的に適応した。
才牙を生み出し、固定化することに成功したのである。
竜人のそれよりはいくらか品質が落ちるが、それでも才牙。しかも、子供たちを殺しても、『核』となる部分を保持すれば、生産者以外の他者でも使用可能な一品。
故に、ある者は歓喜した。
自分の研究は間違っていなかったのだと。
「贖いは要らない。ただ、無惨に死ね」
そんな確信を得た直後に、『適合しなかったはずの青年』から、不意打ちを受けて死んだ。
奇跡ではない。
この世界では良くある話だ。
死体だと思っていた者が、往生際悪く動くことも。
怪物となって死に果てた村人の死体を食らい続け、歪な形で『本物』に成り上がることも。
こうして、例外は生まれるのだ。
――――もっとも、悲劇は覆ることもなく、死者が生き返るなんてこともないが。
青年は放浪した。
村人だったものを全て弔って。
苦しむ子供たちを全て楽にしてやって。
形見の才牙を抱えて、様々な国を放浪した。
時には善を為しただろう。
時には悪を為しただろう。
もはや、青年には真っ当な意思などはなく、生活のために血なまぐさい仕事を繰り返すのみ。
死んでいないのは単に、積み重ねた修練と数多の才牙があるというだけの話。
生ける屍として、その内、意志ある強者によって屠られる。
それだけの人生だったはずなのだ。
「可哀そうに。君は死を選べないほど傷ついているんだね?」
生命に対する外道回答者。
エリュシオンの教主である、ナユタ・スイカに出会わなければ。
◆◆◆
【視点変更】
【ナユタ・スイカ:エリュシオン所属】
一つのテーマがあった。
人工的に〈神〉を生み出すためには、どうすればいいのか? という、一種の思考実験のようなテーマがあったのだ。
ある者は言った。
「隔絶した力を与えよう。〈神〉とは即ち、力の塊を意味する」
力こそが〈神〉であり、そこに宿る意思は肝心ではないのだと。
ある者は言った。
「真理を教えよう。〈神〉とは即ち、抗えぬ真実である」
真実こそが〈神〉であり、それによってもたらされる絶望なのだと。
そして、最後にある者は言った。
「尽きぬ試行を重ねよう。〈神〉とは即ち、我々の予想を超越する偶然である」
偶然こそが〈神〉であり、それは無数の試行から発生するものなのだと。
もっとも、所詮は他愛なき思考実験。
口では大層なことを言おうとも、『彼ら』の全ては失敗した。思考実験から現実的な案に落とし込み、開始された実験の全ては破綻し、失敗した。
当然、『彼ら』の全ては死に絶えたし、その遺志を継ぐ者などは誰も居ない。
ただ、実験の過程で生まれた失敗作が、いくつか残っているだけだ。
――――ナユタ・スイカという少女も、その失敗作の一つである。
理論はシンプルだ。
人は経験を積み重ねるほどに強くなる。
ならば、その経験を『引き継ぎ』させながら、何度も繰り返せばいい。
目的とする『段階』に至るまで、何度でも何度でも繰り返せばいい。
素体のレベルは、一般的な魔人程度で十分だろう。
干渉するのは、最初と最後だけ。
最初は、ある程度の装備を持たせた素体を、適当な街に放置。
最後は、死亡した素体から記憶データを回収して、次の素体へ移す。
後はこれを繰り返すだけ。
何度も、何度も、何度も。
ぐるぐると生死を繰り返すだけ。
繰り返しの中、積み重ねた経験がいずれ、〈神〉の素養を持つ者を生み出すと信じて。
何十年も――何百年も、この『人工輪廻』の実験は続いた。
そしてある時、ついに待ち望んでいた神の器たる実験体が誕生したのである。
「この世界は生きるに値しない。故に、幸福な死で全て救済しよう」
全生命体の抹殺こそが、ただ一つの救済であるという悟りを得た状態で。
後は、どこにでもよくあるような『実験体による破滅』が起こっただけ。
悟りを――『外道の回答』を携えた実験体は、あらゆる枷を解き放って世界へ飛び出した。
誰もが幸福に暮らせる居場所を作るために。
誰もが幸福の中で死ねる『当たり前』を布教するために。
実験体――――ナユタ・スイカは〈神〉に至らんとする。
それだけが唯一、この世界の救いであると信じて。
ダークファンタジー成分の補給完了!!