金ロー…とても良かったです。
来週からめちゃくちゃ楽しみだぁ。
今から遠い昔、世界に『超常黎明期』と呼ばれる時代が訪れた。
世界に『異能』…後に『個性』と呼ばれるものが現れ人々を混乱に陥れた。
その混乱は日本中に広まり暴力が日常的に行われるような国へと変貌した。
そんな中、混乱渦巻く世の中で人々をまとめあげた者がいた。
名は『オール・フォー・ワン』、裏社会では『魔王』とも呼ばれる人間である。
その異名に違わず彼は絶対的とも言えるほどの力を持っていた。
『個性を奪い、与える個性』────通称『オール・フォー・ワン』を使い社会を裏から牛耳った。
そんな彼には一人の弟がいた。
弟の体は細く、力が全くなかった。
だが人一倍正義感の強い男だった。
………そしてそんな弟にはたった一人…親友がいた。
白髪で耳が長く透き通った瞳をした男。
彼の名は『
後の世に伝わるトップヒーローであり…
偉大なる魔法使いである。
日本という国が混乱に塗れて数年が経過。
人々の暴走は少し沈静化したが完全に無くなったとは言い難い。
超常が発生するまで多くの子供たちが使っていた公園は今では荒れに荒れている。
滑り台は錆び、ブランコはチェーンがちぎれ、シーソーは片方が無くなっている。
そんな公園だがたった一つだけ、隅にぽつんと設置されてあるベンチだけは綺麗なままだった。
まるで誰かが手入れしたばかりのように。
そしてそのベンチに二人の男が座っていた。
その男たちの目の前では折り紙で作られた鶴が翼を動かして飛んでいた。
「…いつ見ても凄いね。君の力は」
「そんなに賞賛するようなものじゃないよ」
「ハハ…君は自分を過小評価しすぎてやいないかい?」
「そんなことは無いよ。ただ真実を述べているだけだから」
男たちは何気ない会話をしている。
片ややせ細っている男、片や白髪で耳が長い男。
「…ねえ蓮斗。その力をもっといい方向に使いたいとかは思わないのかい?」
「ん…特に思ったりはしないかな。今のところはね。でもなんでそんなこと聞くの?」
「…君の人生なんだから君の好きなように生きたらいい。ただ…兄さんみたいに悪の道に染って欲しくないだけさ」
「……『与一』はまだお兄さんのことを諦めていないんだね。こんな事言うのもなんだけどさ…なんでお兄さんを止めたいの?」
白髪の男…葬魔蓮斗がやせ細った男…『
その時の会話の流れから咄嗟に思いついた疑問。
その質問に与一は少し間を置いて答えた。
「………あの人は魔王だ…魔王を止めるには勇者が必要なんだ…」
「それって…いつの日か僕に話してくれた漫画の話?」
「そう。だけど…実際の話でもある」
「なら何?僕に勇者にでもなって欲しいの?」
「いや…友達をそんな危険な目にあわせたくない。だからそんなことは望まないよ」
「そっか…」
その言葉を皮切りに五分ほど2人は黙ってしまった。
蓮斗は異能の関係上寿命が常人を超越している。
故に他人の命の感覚が分からない点があるのだ。
「……でもさ。急に外国に行って欲しいってどういうこと?」
「…僕は最後の最後まで兄さんと戦おうと思う。望まずして得た『ワン・フォー・オール』だけど……最大限使うんだ。魔王を倒すためにね。そんな危険な戦いにたった一人の親友を巻き込めないだろ?」
「……このお人好しめ」
「ハハハ…どの口が言うんだか…」
「なんか言った?」
「いや何も?」
「ならいいけど…そんじゃもう行くよ。行くならすぐだ。荷物まとめてこの国より治安の良いとこか…人口の少ない所…いや、山でもいいな。人が出来るだけ少ないところにいるよ。飛行機は使えないから…飛んでいくかな。国境超えたりする時は『認識阻害魔法』使えばバレない。たぶん」
「君が将来密入国の罪で逮捕されないことを祈るばかりだよ」
「そりゃどーも………じゃ、またどこかで会おう」
「うん……またね」
その会話が二人の最後の会話となることはまだ誰も知らない事なのであった。
蓮斗が外国に渡っておよそ50年が経過した。
彼はこの50年間を自身の力の一部である魔法に費やした。
単純に言うと修行である。
ある時は動物を狩り、ある時は瞑想をし、ある時は魔法を開発した。
そんなある日、彼はふと思った。
「(そういえば…そろそろ与一の誕生日だな…海を渡って50年…そろそろ日本に帰ってみてもいいかな……にしても人と関わらないために新聞を取らないようにしてきたのは悪手だったな…日本がどうなってるか情報が全くない…山に籠ってばかりだったからなぁ…)」
自身の失態を反省しつつ、再び海を渡って日本へ帰国した。
50年前よりも景色は綺麗になっていた。
道路が荒れているということも無く、ビルの窓ガラスが全て割れているということも無く、間違いなく50年前よりも治安は良くなっていた。
「(へぇ…50年で結構変わるもんだな…)」
蓮斗はそう思いながら老人になっているであろう与一を探し求めた。
しかし、最後に出会った公園や与一の家があった場所に行っても与一がいることは無かった。
「(はーあ………もう辺りが暗くなり始めてる…今日はどこかで野宿しよう)」
空を飛びながらキョロキョロと辺りを見回し、ちょうどいい山があったので蓮斗は『浮遊魔法』で山へと向かった。
山に到着すると魔法で簡単なログハウスを作り始める。
その瞬間だった。
「…………………誰だ?」
背後から急に男の声がした。
振り返ってみると、そこに居たのは顔に少しだけヒビが入った細い男。
年齢はおよそ30代後半だろうか。
「………驚いた。まさか僕以外に人がいたとは」
「驚いたのは私も同じだ。空から急に人が来たかと思えばログハウスを作っているのだからな……自己紹介が遅れた。私は『
「よろしく。僕は葬魔蓮斗だよ」
「………!?葬魔……蓮斗!?」
「ん?僕のこと知ってるの?初代面だよね?」
「…………そうか……なら君が………」
「初代の友人か……」
「………?初代………?」
蓮斗が作ったログハウスに避影は入れさせてもらい、真実を話し始めた。
与一はもう既に死んでいること。
兄、オール・フォー・ワンはまだ生きていて社会を裏で牛耳っていること。
与一はワン・フォー・オールを次世代に継がせて兄を倒す者を待っていること。
そしてそれは今自分であるということ。
…余すことなく話した。
「…これが全てだ…嘘偽りは無い…」
「分かってるよ……『嘘かどうかわかる魔法』使ってるから…全部真実だ…」
「…私が君の名を知っていたのは三代目から聞かされていたのだ…その三代目も二代目から聞いていたと言っていた。そしてその二代目は初代から…だそうだ。そして君がオール・フォー・ワンと戦わないようにしてくれとも言っていたそうだ」
「あのバカ…まだそんなことを…」
蓮斗の目からは大粒の涙が零れていた。
その涙に蓮斗自身が驚いてもいた。
人のことで泣くとは思っていなかったからだ。
「なんだよ…あの日…また会おうって約束したのに…」
「…初代はそれは僕のせいだとも言っていたそうだ」
「そんな事ない…全部僕が悪いんだ…与一の…たった一人の親友の頼みだから聞いてやって…与一は簡単に死ぬようなやつじゃないって勝手に思って…」
蓮斗は生まれてもう数百年経つが、これほどまでに泣いたことは無かった。
人との関わりを極力しないようにしてきた彼は『人を失う』ということがどれほど悲しいことなのかを知らなかった。
だが今日、それを知った。
その姿を、避影は黙って見守ることしか出来なかった。
それから数ヶ月が経ち蓮斗は荷物を持って避影と話していた。
「…本当にいいのか?こんな立派なログハウスを貰って…」
「いいんだよ。どうせもう使わないものだしね。それに作ろうと思えばいくらでも作れるから…というか聞きたいのは僕の方だよ。今更だけどいいの?また外国に行くっていうのに止めなくて」
その問いに避影はフッと笑って
「君を戦いに巻き込ませない。それが初代の意思だ。私はそれを尊重したい」
そう答えた。
蓮斗は小さくため息を吐く。
「分かったよ…それにしてもそこまでするかね。フツー」
「それほどまでに初代は君を友として好いていたのだろう」
「ほんっと…迷惑な約束だな…いつの日か知らぬ間に破ってしまいそうだけど」
「かもな…私はこの山で修行を続ける。私ではオール・フォー・ワンは倒せない。だから次の世代に託すために力をつける」
「そっか…さて、そろそろ行くかな。アメリカとかいいかも」
「…興味本位で聞くが…外国に行って何をするつもりだ?」
「うーん………人助けとか…人と関わることかな?ヒーローにはなるつもりはまだ無いけどね。とどのつまり僕は………」
「人を知りたい」
そう言い残して蓮斗はアメリカへと旅立って行った。(もちろん密入国)
山に残されたのは避影と蓮斗によって作られたログハウスだけだった。
「葬魔蓮斗…何故だか分からないが…彼は恐らく未来でワン・フォー・オールと共にオール・フォー・ワンを打ち倒す存在になるだろう…彼のことはまだまだ後世に伝える必要があるな…」
避影はポツリと呟いてログハウスの中に入っていった。
そしてその三年後、彼は老衰で亡くなった。
そして時は経ち現代。
アメリカのとある草原にある木製の家で葬魔蓮斗は人助けをしながら暮らしていた。
今度はニュースを見れるようにしたので最新の情報を得られている。
そんなある日、彼は日本で起こったニュースを見た。
無個性の少年が人質になった少年を助けようとして飛び出したのだ。
それを平和の象徴と謳われるNo.1ヒーロー『オールマイト』が助けた。
蓮斗は何度もニュースでオールマイトの姿を見掛けるが、その力に違和感を抱いていた。
「(あの力…どこか懐かしさを感じる…昔避影の修行に付き合っていた時に見たのと似てる…もしかして彼が今のワン・フォー・オール継承者なのかな?)」
脳をフル回転させて思考を巡らすが、オールマイトがいるのは日本だ。
アメリカにいてはどうしようも無い。
「うーん…アメリカにもちょっと長居したし…ハンバーガー食べすぎて生活習慣病になりかけたし…そろそろオール・フォー・ワンってやつも倒されてるかな…?まあ今それ考えてもどうしようも無いか…よし、決めた。一旦日本に帰ろう。それからどうするか決めよう」
こうして物語は動き出す。
言うのが遅れてしまったが、これは魔法使いを名乗る一人の男の長いようで短いような旅の物語である。
「………流石に今回は正規の方法で行くかぁ…」
葬魔蓮斗
個性 エルフ
人間を超越する寿命を持つようになる。
また魔法が使えるようにもなる。
この作品の世界でも中国の病院で『発光する赤子が生まれた』ということが個性の始まりとされていますが、その数百年前に蓮斗が何故か『エルフ』の個性を持った。
それから数百年の間蓮斗は人目につかないようひっそりと暮らしていた…という設定です。