人を知るためにヒーローを目指すんだ   作:論 外之助

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はい、というわけで二日連続の投稿です。


第2話 平和の象徴

 

 葬魔蓮斗、およそ数十年ぶりに日本に帰国。

 成田空港は人で賑わっていた。

 見渡す限りの人、人、人。

 その人の流れに蓮斗は簡単にもみくちゃになってしまった。

 

「(くおぉ……まさか成田空港がこんなことになっているとは…すごい数の人がいるとネットで情報を得ていたけど…これは想像以上だ…潰されりゅうぅ…)」

 

 結局人混みから脱出するのに10分ほどかかった。

 


 

「はぁ…はぁ…『人混みを抜ける魔法』を開発しようか真面目に検討しようかな…」

 

 葬魔蓮斗、この男の趣味は魔法の創作である。

 これまでに様々な魔法を開発してきた。

 攻撃魔法や防御魔法、浮遊魔法などなど…

 しかし、この男が興味を持つのは『生活を楽に送ることが出来る魔法』である。(蓮斗はこれを『民間魔法』と命名した)

『布団が敷かれる魔法』、『油汚れを綺麗にとる魔法』、『割れたお皿を戻す魔法』…etc…

 正直周りから見たらくだらないと鼻で笑われるような魔法ばかりを開発している。

 だが蓮斗はそれでもやめない。それが彼の趣味なのだから。

 

「はぁ…とにかく…お金に関しては『お金を作る魔法』でどうにかなるけど…」

 

 サラッと言ってるけど世界経済を余裕で動かせるヤバい魔法である。

 

「問題は…住まいだな。流石にこの見た目でホームレスを疑われたら確実にめんどくさい事になる」

 

 蓮斗の見た目は傍から見れば15、6歳である。

 本人は見た目が永遠に変わらない事に少しコンプレックスを抱いたことはあるが『永遠(実質)の15、6歳』を名乗れるからまあいいか。と割り切っている。

 

「どこか適当なところにログハウス…いやいや。土地の所有権とかの確認をしなくちゃならないのか…めんどくさ。仕方がない。どこか適当にホテルにでも泊まるかな」

 

 そう思いタクシーをつかまえて東京の街へと出た。

 


 

 東京、六本木。

 

「………人……多い……与一……助けて……」

 

 蓮斗は六本木に着いて実に10分で涙目になりながら亡き友人に助けを求めていた。

 彼は『人を知りたい』という目標を掲げているが人混みに巻き込まれるのはごめんである。

 

「はあ〜あ…まさか日本がこんなに変わってるだなんて…やっぱネットの情報を簡単にあてにしちゃダメとはよく言うけど…たまには鵜呑みにした方がいいのかな…」

「ちょっと君」

「ん?」

 

 近くの公園のベンチで休んでいると、一人の警察官らしき男に声をかけられた。

 近くにはパトカーが停められて、その中には猫の姿をした警察官もいた。

 

「…僕ですか?」

「そうだよ?君、学校は?」

「学校?行ってないよ。そんなの…アメリカから帰ってきたばかりなんだし…」

「アメリカ?ご家族でかい?」

「いや?一人だけど?」

 

 この時蓮斗はつい反射的に答えてしまった。

 この答えに警察官は懐疑的になった。

 

「……君見たところ15、6歳だよね…ちょっと話を聞かせてもらってもいいかな?」

「…まあいいけど」

「君……ご家族は?今どこにいるの?」

「たぶん…天国じゃないかな」

「……すまない。デリカシーに欠けていたよ」

「別に構わないよ。もう昔の話なんだから。受け入れたよ」

「…君は強いな」

「そうかな?」

 

 それから警察官は少し黙ってしまった。

 

「……君、もしかして警察官?」

「え?ああ…そうだけど…」

「何か困っていることはある?」

「え?どうしたんだい?急に…」

「いや…旅をしている身でね…人との関わりを大切にしてるんだ」

「へぇ…いい心がけだね…それにしても困っていることか…」

「どんなことでもいいよ」

 

 それから少し警察官は考える。

 その時だった。

 

 パン!!

 

「おわ!?なんだ!?」

 

 パトカーのタイヤが一つパンクしたのだ。

 

「あちゃー…こりゃ酷いですよ…」

「参ったな…ここまで酷いと業者を呼ばないと…」

「…困り事、見つかったみたいだね」

 

 蓮斗はパトカーに近づく。

 

「はは…どうやらそうみたいだね…。業者を呼んで直すとするかな…」

「いや。その必要は無いよ」

「え?」

 

 蓮斗は愛用の両手杖を呼び出して魔法を使う。

 その瞬間、パトカーのパンクは直った。

 

「うお!?直ったぞ!?」

「『パンクした部分を直す魔法』、成功したみたいだね」

「君がやったのか…だが個性の無断使用…」

「人助けしたということでチャラにしてくれない?」

「…ハハハ!一本取られたね。いいよ。今回は見逃してあげよう。パンクも直ったことだし、コレで仕事に戻れる」

「いやー!ありがとう!」

「いえいえ…そういえば警察官さん。あなた名前は?」

「ん?僕かい?僕の名前は『塚内(つかうち)直正(なおまさ)』さ。小さなヒーローさん」

 

 そう塚内は答えてパトカーを出発させた。

 

「むふー…日本に戻ってきて初の人助け…成功…」

 

 蓮斗は満足した表情で再び歩き出した。

 


 

「オラァ!!こいつがどうなってもいいのかァ!!」

 

「(なんでこんなことに…)」

 

 日本に到着して5時間が経過。

 数十年前とは変わった街並みを楽しみながらぶらついているとたまたまスーパーがあったので入ってみたところ、その数分後に一人のヴィランが侵入してきてしまったのだ。

 その様子を蓮斗はワゴンの後ろに隠れながら観察している。

 

「(にしてもヴィランも馬鹿だなぁ…ここは六本木。オールマイトの活動区域だってのに…余程のバカか、それともなにか秘策でもあるのか…いずれにせよヒーローはまだ誰も来てないな…それに…)」

 

 蓮斗はヴィランの右腕に拘束されている幼い女の子を見た。

 

「(人質がいるってのがまた厄介なんだよなぁ…抵抗するってなったら最悪あの子に魔法が当たる…まあコントロールすればそんなことは起こらないんだけど…)」

「はよ金持ってこんかい!!」

「パパァ!!ママァ!!」

「うっせーぞクソガキィ!!」

 

 蓮斗が思案している間もヴィランの行動は止まる様子を見せない。

 ハアと小さく息を吐き、両手杖を出してヴィランの前へと歩き出した。

 

「うっ!?なんだテメェ!!くんじゃねぇ!!」

「怒鳴らないでよ。頭に響く」

「寄るな!こいつぶっ殺すぞ!!」

「こいつ…?こいつってもしかしてこの子?」

「は!?」

 

 ヴィランは驚愕のあまり声を上げた。

 さっきから自分が人質にとっていた幼女が蓮斗のすぐ側に移動していたからだ。

 

「なっ…!?(馬鹿な…!?全く気づかなかった…!?いや!それより!いつ取られた!?)」

「なんで人質だったこの子が僕のそばにいるのか不思議でならないんだよね?僕はただ高速で動いてこの子を奪取しただけさ」

「高速だとぉ!?(となると…こいつの個性か!!)」

 

 この時ヴィランの考えは当たっていた。

 蓮斗が使ったのは『高速で移動する魔法(ジルヴェーア)』。

 その名の通り高速で移動できる魔法だ。

 

「へ!!自分から個性明かすとか!!命取りになったなぁ!!」

 

 ヴィランはまだ諦める様子はなく、腕に力を込めた。

 

「なら俺も教えてやるよォ!俺の個性は『発砲』!!パンチやキックが大砲みてーな威力になる個性だ!!学生時代からこの個性のおかげで喧嘩は負け知らず!!警察も恐れおののく個性だァ!!」

 

 そう言うとヴィランは蓮斗の元へ走り拳を突き出す。

 

「終わりだァァァァァァァァァァァ!!」

 

 拳は蓮斗の顔面に炸裂………………しなかった。

 

「ハハハ!!ハハハハハハハハハ……………ハ?」

「ふーん。なかなかいい個性持ってるじゃん」

 

 ヴィランの拳は蓮斗の目の前にある正六角形のパネルのようなものに防がれていた。

 これも蓮斗の魔法の一つ『防御魔法』である。

 

「なんっ!?俺の拳が!?」

「………もう終わり?なら……今度はこっちの番」

 

 蓮斗はヴィランの方へと杖を向ける。

 杖の先からは白い魔法陣のようなものが描かれ、ヴィランにとってそれはあの世への片道切符の代わりに見えた。

 

「ヒッ……!やめっ………!!」

 

人を殺す魔法(ゾルトラーク)

 

 蓮斗がそう呟いた瞬間、魔法陣から白い光が放たれてヴィランに直撃した。

 これが蓮斗が多用する魔法、『人を殺す魔法』…通称『ゾルトラーク』である。

 与一と出会う前の数百年間、蓮斗は人目を忍んで生活していたのだが時々目の前のヴィランのような輩が蓮斗の前に現れる事があった。

 その時に蓮斗が使っていたのが『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』だった。

 当時は現代よりも法が整備されていなかったので人を殺しても消し炭にしてしまえばバレない。

 つまり、蓮斗は人を殺した経験があるのだ。

 しかし、蓮斗は数十年前に人を失うことの悲しみを覚えた。

 それにより…『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』の威力の調整に励んだ。

 その結果

 

「…………ゴボッ…………」

 

 人を殺さない『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を完成させたのだった。

 『人を殺す魔法(ゾルトラーク)』を超至近距離でくらったヴィランはその場に倒れ伏した。その様子を見届けた蓮斗は杖を消して人質だった女の子の方へと顔を向けた。

 

「大丈夫?」

「…うん!お兄さん!ありがとう!!」

「…お兄さんか……(本当はおじいさんなんだけどな。まあ見た目は若いんだから仕方がないか)」

 

 気がつくとスーパーの店内は蓮斗への賞賛の嵐で包まれていた。

 

「タハハ…ちょっと気恥しいな…さて、警察が来る前にここから……」

 

 とんずら、そう言おうとしたその時店内に一人の男が入ってきた。

 

「もう大丈夫!私が………あれ?」

 

「………最悪だ………」

 

 蓮斗の目に入り込んだのはNO.1ヒーロー、オールマイトの姿だった。

 

「え!?あれ!?ヴィランは!?」

「このお兄さんがやっつけてくれたよー!!」

「ああそうか…君が……ええ!?」

「(不味い。ここで捕まったら確実にめんどくさい。オールマイトに会うことが日本に来た目的だけど…まさかこんな時に出会うなんて…!ヒーロー免許持ってないからこれヴィジランテ行為だし!)」

 

 思考した結果、蓮斗は…………

 

「…………そうです。僕がやりました」

 

 お縄に着くのであった。

 


 

 それからさほど時間はかからず警察もやって来た。

 結局蓮斗はオールマイトと一緒に警察と事情を話すことになった。

 

「……あれ?君は公園の!」

「あ。誰かと思えば塚内じゃん」

「呼び捨てなんだね……まさか君がヴィランを倒した子とはね……」

「塚内くん?彼と知り合いなのかい?」

「ああ。と言っても公園でちょっと話し合った仲さ」

 

 蓮斗とオールマイトの元に現れたのは塚内だった。

 

「さてと…君に助けて貰ったことがあるとはいえ今回は事情が違う。まず個性の無断使用だ。さっきみたいにパンクを直してもらったものとは訳が違う」

「だよね…あれでも威力めちゃくちゃ下げたんだけどね…」

「………まあそれでも多くの人を助けたという点で見逃してあげよう。オールマイトもそれでいいですか?」

「ああ!構わないさ!少年!これから危険な行動は慎むようにな!」

「分かった」

 


 

「そんじゃ!皆さんお疲れ様!今後とも応援よろしくね!」

 

 そう言ってオールマイトはどこかに跳んで行った。

 

「ふう…まさかひょんなことから出会った少年がまさかヴィランを倒すとはね…世の中何が起こるかわかったもんじゃないなぁ………」

 

 塚内はそう呟き、スーパーの中に入ろうとした。

 その時にふと思ったのだった。

 

「…あれ?蓮斗くんどこいった?ついさっきまでここにいたのに………宿とか探しに行ったのかな?」

 

 そんな塚内の予想とは裏腹に、現在蓮斗は……

 

「ごめん、オールマイト。もうちょっとだけお話しよう」

「What's!?さっきの少年!?何故ここに!?てか飛んでる!?」

 

 オールマイトを浮遊魔法で追っかけていた。

 

「ちょっと!?さっき個性の無断使用でも注意されてたよね!?」

「そうだね」

「全く反省してなくない!?」

「まあまあ。君と話がしたいだけなんだ」

「ノー!時間が無いし行くとこがあるから話せない!!」

「ふーん。いいの?『ワン・フォー・オール』の事なのに?」

「何!?」

 

 ワン・フォー・オールという名前を聞くとオールマイトは急に減速を開始して近くのビルの屋上に着地した。

 

「君!!何故それを!?」

「やっぱり当たりか。ということは君が現ワン・フォー・オール継承者か」

「!? 継承の事まで!?」

 

 次々と蓮斗の口から放たれる言葉にオールマイトは驚きを隠せないでいた。

 

「というか…継承しているなら前の継承者からとある男の話を聞かなかったの?葬魔蓮斗っていう名前なんだけど…」

「!?………確かに聞いてはいるが………まさか!?」

「やっぱりね。それ僕。僕が葬魔蓮斗だよ」

「!!!!!!!!!!」

 

 その事実にオールマイトは過去一番であろう驚きの表情を見せた。

 

「…では君が…いや!あなたが…!!初代のご友人……!!四代目とも一度会ったことがあるという…!!」

「そうだよ。つい最近までアメリカにいたんだけど…たまたま君のニュースを見かけてね。君の個性が過去に見た事がある個性にとても似てたから…まさかとは思っていたんだけれども…」

「そう…だったんですね…」

「そう。だからさ。あれからどうなったのか聞かせて欲しいんだ。君の口からね」

「………分かりました。初代のご友人と言うのならば聞く権利があります」

 

 それからオールマイトは話した。

 自分が8代目継承者ということ。

 自分の代でオール・フォー・ワンを打ち倒したということ。

 だがその代償に腹に穴を空けられたこと。

 オールマイトはその証拠にとトゥルーフォームで話している。

 

「へぇ…あいつ倒したんだ。流石は平和の象徴だね。その姿になっているのも頷けるよ」

「…まさか初代のご友人からそのような言葉が聞けるとは…恐縮ですね…」

「なら僕は安心してもう日本にいられるね」

「日本にいて何をするおつもりですか?」

「うーん…そうだね…人助けかな?」

「ですがあなたは個性の使用許可証を持っていないようですが…」

「そうなんだよねぇ…それが一番の問題なんだよね…この国そういうとこ結構厳しいみたいだし…」

 

 どうしたものかと蓮斗が考えている時、オールマイトはとある提案をした。

 

「…ならばヒーローを目指してみるのはいかがでしょうか?」

「ヒーロー?僕が?」

「はい。それなら思い切り人助けが出来ますし…何より個性の使用許可証も貰えますからね」

「一石二鳥ってやつ?うーん…たしかに悪い話じゃないし………それに……」

「それに?」

「…多くの人と関われそうだ。いいよ。ヒーロー目指そうか。どうせなら君みたいなトップヒーロー目指すとするかな」

「おお!そうですか!!」

「でもどうしたらいの?僕そういうとこよく分かってないんだよね」

「まずはヒーローの基礎から学ぶことが重要です…なので高校受験が必須です!」

「受験?どこの?」

「もちろん『雄英高校』です」

「雄英…確かこの国が誇る最高峰のヒーロー育成校…」

「そうです。私もそこを卒業しています。そこを卒業すればトップヒーローへの大きな一歩を踏み出せるでしょう!」

「ふーん。いいとこじゃん。OK、そこ受けるよ」

 

 蓮斗は口角を上げながらそう答えた。

 彼の心の中にあるのは溢れるほどの好奇心のみであった。

 

「分かりました。まずは校長に掛け合ってみます。ワン・フォー・オールの件もご存知ですから…きっと通してくれるでしょう…ああ後もう一つ…」

「ん?何?」

「実は私はワン・フォー・オールを他の者に継承しようと思っているのです。名は『緑谷出久』…私は彼が次世代の平和の象徴になる男だと思っています」

 

 その言葉を聞き蓮斗は緑谷出久と言う男に興味が湧いた。

 平和の象徴でありオール・フォー・ワンを倒した男が評価する男が気になるのだった。

 

「ふーん。君がそんなに言うんだ。緑谷出久ね、覚えておくよ。そんじゃ僕は適当な宿探しに行くよ。家探すのは明日からでいいや。それじゃ、ヒーロー活動頑張れ」

「はい!ありがとうございました!」

 

 蓮斗は浮遊魔法で飛び去って行った。

 オールマイトはマッスルフォームに戻りヒーロー活動を再開する。

 

「葬魔蓮斗…まさか出会うことになろうとは…このことは緑谷少年にはまだ話さないでおこう。きっと雄英で出会うことになるからね………さ!切り替えていくぞ!オールマイトよ!」

 

 そう呟き、屋上を思い切り蹴って跳びたつ。

 その表情にはいつものように人々の心に希望の光を照らす笑顔が浮かんでいた。

 





ちなみに作者は最近葬送のフリーレンを読み始めたばかりなので至らぬ点があったら申し訳ありません。
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