お嬢様のお気に入りのプリンが少し……いや、かなりおかしいんです! 作:生牡蠣
朝。それは大地が光に包まれ、様々な生物が生きるために活動する時間だ。
ある者は食事をし、ある者は身体を清め、ある者は自分に割り振られた仕事をし、ある者は遊び始める。一日の新たなる始まりにそれぞれ思い思いに行動をしている。そこに、人もポケモンも何の変りもないのだ。
「ポ…ポ………ポッポぉーーーーー!!!」
威勢の良い鳴き声と共に、ポッポ達が朝日の日差しが溢れる大空へ向かって羽ばたいた。
しばらく大空を飛び、ポッポ達はとある屋敷の屋根に停まった。
ポッポ達が停まった屋敷は、まるでおとぎ話の貴族が住んでいるのかと思ってしまう程に大きかった。その大きさたるや、一般的な民家なら10軒はそのまま中にすっぽりと入ってしまいそうなくらい大きかった。
そんな屋敷の窓から中を覗くと、一人の女性が歩いているのが見えた。
その女性は、白と黒を基調としたエプロンの様な服……いわばメイド服を着て歩いていることから、この屋敷のメイドであることが分かる。
「まったく…お嬢様が相変わらず寝坊助ですわね……」
メイドは呆れたようにため息を漏らしながら廊下をスタスタと歩いている。
廊下には高価そうな壺や昔の甲冑、多分有名な作家が書いたであろう絵画が飾ってあった。
そのすばらしさに何度見ても見惚れてしまい、目移りしそうな光景であるが、メイドはそれらに気を取られずに歩き続ける。何故なら自分にはもっと重要な、やるべきことがあるのだから。
やがて、メイドはとあるドアの前で止まった。
彼女は部屋に入る前に息を整え、ドアを叩いた。
“コンコンッ”
「お嬢様、朝でございますよ」
………………。
部屋の中から返事はない。
メイドは「ハァ…」とため息をつく。いつもそうだ。朝早く起きると決意するのは良いのだが、結局起きられない毎回のパターンなのだから…。
……まぁ、良い。同じパターンなら、いつもと同じことをやるだけだ。
「………失礼します」
“ガチャッ”と彼女はドアを開けた。
ドアの先には、高価そうな装飾で飾られた部屋が広がっていた。
シャンデリアや暖炉といった名のある職人が作ったのであろう家具が部屋を飾っている。しかし、それだけではなくピッピ人形やメロメロマット等、部屋の主の趣味が所々に垣間見えている、なんとも不思議な部屋であった。
部屋の中心は、チルタリスの羽のようにふかふかな天蓋付きベッドが配置されていた。
そのベッドを見ると、一人の少女が眠っていた。
美しい金髪の長い髪、フランス人形のように整っているが、年相応の幼さを残している愛嬌のある顔、キッサキシティに降り積もる雪の様な透き通った白い肌。
この少女の姿を見た人間のほどんどは、彼女の魅力の虜になってしまうだろう。そう言ってしまえるほど、少女は美しさと可愛さを持ち合わせていた。
そんな少女が“すぅ…すぅ…”と可愛い寝息を立てて眠っている。
その姿を見たメイドは“くすりっ”と優しい笑みを浮かべる。その姿は、まるで年の離れた妹を見守る姉の様だ。
やがてメイドは元の無表情に戻り、少女の耳元に顔を近づけた。
「お嬢様、朝でございます。起きてください」
メイドが耳元で言うと、少女は「んぅ…」と息を漏らす。どうやら夢の中から戻ってきたらしい。
「ふぁー……おはようマージェ。今日はずいぶん早く起こすのね」
少女はメイド―――マージェを見た後、壁掛け時計を見ながら言った。
その言葉の端々に『もっと寝ていたかったのに…』という様な意思が読み取れた。
「…お嬢様が言ったんですよ?明日は近隣の原っぱにピクニックに行くから早く起こしてと」
「……あぁ!そうでしたわね!
「ご安心を。今日は一日快晴でございます」
『そう!それはよかったわ!』と満面の笑みで喜ぶ少女。その姿を見てマージェは思わず口角が上がってしまうのを何とか抑える。
「お嬢様、旦那様が一緒に朝食を取ろうとお待ちですのでご準備を」
「まぁ!今日はお父様と一緒に食事ができるのですね!今日は最高の1日になりそうですわ!」
マージェの言葉を聞いて少女はベッドの上で跳ねる。
少しはしたない気もするが、これも仕方がないことだとマージェは目を瞑る。
少女の父は仕事で忙しく、普段は色々な地方を飛び回っているのだ。今まで一緒に過ごせる時間もあまりなかったのだ。ここまで喜ぶのも頷ける。
少女の姿に微笑ましさを覚えながら、マージェはいつものように少女の着替えを手伝おうと声を掛けた。
「それではお嬢様、お着換えを「そうだわ!朝食には『プーちゃん』も招待しましょう!!」………」
少女の言葉に、マージェは固まった。
「お父様とお食事だけでも最高なのに、親友のプーちゃんとも一緒に食事なんて楽しいに決まってますわ!最高と最高のベストマッチ!!2倍楽しいですわ!!」
少女は、これから起こるであろう最高の時間に興奮し、ヒートアップしていく。
しかし、マージェはそれに待ったをかけた。
「お、お嬢様!久しぶりの旦那様とのお食事なのですから、誰にも邪魔されず一家団欒を……「大丈夫ですわよマージェ!私がお父様に頼めばきっと喜んでプーちゃんの同席もお許しになりますわ!それに、私にとってはプーちゃんも家族。一緒に食事をすることはおかしいことではありませんわよ!」
あぁ、駄目だ。お嬢様はこうなってしまったら決して意志を曲げることはない。こういう所は奥様に似ていらっしゃる…。
しかし、お嬢様が何と言おうと私は譲るわけにはいかない。
マージェの脳裏に、少女が『プーちゃん』と呼んだ生物の姿が映る。
あの生物は危険だ。あんな生物をこれ以上お嬢様に近づけてはならない。
旦那様は…頼れないな。あの人子煩悩だから、きっとお嬢様の頼みは何でも聞き入れるだろう。
……こうなったら、私が止めるしかない…!!
お嬢様に嫌われてしまうかもしれないが、これもお嬢様の安全のためだ。やるしかない!!
「お嬢様!あの生物に近づいてh「それじゃあマージェ。プーちゃんを連れてきてね。お父様には私から言っておくから!」…………………かしこまりました」
マージェは少女のキラキラの笑みに屈した。
あの期待に満ちた笑みを曇らせてしまったら、自分はもう生きていけない程の罪悪感に捕らわれると確信したからであった。
あの顔はずるいって…。
「はぁ…また言えなかった……」
マージェはため息をつきながら、屋敷の中庭を歩いていた。
この屋敷の中庭は広大で、花のトンネルやらティータイム用の東屋等があり、いかにも金持ちの庭という風景であった。
広い分、野生のポケモンが侵入し、遊んでいる光景も珍しくはない。現に先程もウパーやヒメグマ、ピチュ―なんかが横切ったのを見ている。実はこの庭は意外と騒がしかったりするのだ(せっかく整えた庭が台無しだと庭師はぼやいているようだ…)
そんな中庭を歩くマージェの足取りは重い。今からやることに対して、胃がキリキリ痛むような錯覚も覚える。
こんな風になる原因はわかる。これから呼びに行く生物……プーちゃんのせいだ。
突然だが、『プリン』というポケモンを知っているだろうか?
プリン。主にカントー地方に生息するポケモンで、通称・風船ポケモン
ころころと転がる丸い体と大きな目が特徴で、ふわふわとした毛並みは手触りが良く、抱き心地も良い。ポケモンの中では人懐っこい方で、その愛くるしい見た目も合わさって女性人気が高いポケモンだ。お嬢様も小さい頃から『わたくしがさいしょにげっとするのはぷりんですわぁ!』と言っていたなぁ…かわいい。
今から会いに行くのはお嬢様がプリン
……えっ?プリンと思い込んでいるとはどういうことだって?それは――――
「……あぁ、ここですね」
色々考えこんでいる内に、マージェは目的地に着いたようだ。
マージェの目の前には、自分よりもはるかに大きい木が生えていた。この木は珍しいもので、旦那様がわざわざ他地方から取り寄せたと自慢げに語っていたが、今はどうでもいい。
そう、件の生物はこの木の上に居るのだ。
……本当はあまり関わりたくないが、お嬢様の頼みだ。仕方がない、腹をくくろう。
そう自分を奮い立たせたマージェは、ポケットからベルを取り出し“チリンチリーン!”と鳴らす。
あの生物は一度眠るとなかなか起きないが、このベルの音…すなわち食事の合図を聞くと飛び起きて、テッカニンもびっくりのスピードでこちらへ向かってくるのだ。いやしいったらありゃしない…。
ベルを鳴らした瞬間“ガサガサァ!”と葉っぱが揺れる音がした。
瞬間、マージェの手の中に、何かが落ちてきた。
ピンクの丸い身体
愛嬌のある顔
赤いほっぺに可愛らしい手足
そう、みんな大好き――――――
「ポヨッ!!」
プリンである
(んなわけねぇだろおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!)
心の中でマージェは叫んだ。
マージェがこの生物…プーちゃんを異常なまでに警戒する理由。それはプーちゃんが明らかにプリンではないからである。
(こんな奴がプリンであってたまるかい!プリン特有の尖った耳は!?大きい目は!?フサフサの毛は!?耳も鼻もない!目はつぶら!毛は一本も生えてない!ピンクで丸いとこしか一致してねぇじゃん!?どこの世界にこんなプリンがいるんじゃあぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?)
マージェの心の叫びは続く。
少し調べればプリンではないとわかりそうなものの、お嬢様は『この子はプリンですわ!』と譲らない。屋敷の人間も『まぁ、お嬢様もこういってるし…プリンじゃね?』というガバガバな理由でプリン認定をしている状態。
しかし、マージェにはわかる。あれはプリンではない。それどころか、今まで発見されていないポケモンの可能性が高いことを。
本当は、すぐにでも研究機関に通報してこの生物をどこかへ連れて行って欲しい。しかし、そんなことをしては、お嬢様が悲しんでしまう。お嬢様の笑顔が曇ることはなるべく避けたい所だ。
だからこそ、マージェにできる事はこの未確認生物を監視し、なるべくお嬢様に近づけず、できれば自然とフェードアウトしてくれるのを待つしかない…!!
「…おはようございます。プーちゃん様」
「うぃ!」
元気よく短い腕を上げて挨拶をするピンクの生物。
可愛い見た目だが油断してはならない。この生物は、いつ何をしてもおかしくはないのだ。
「それではお食事に参りましょう。本日はお嬢様と一緒に召し上がっていただきます」
「! ハァーイ!!」
嬉しそうに手をパタパタとさせる生物。
超かわいい。……だが、私は騙されんぞ!
「では、参りましょう」
「ポヨッ!」
こうしてマージェはピンクの生物を抱きかかえながら食堂へと向かった。
(私の目が黒いうちは好きにさせんぞ!ピンクの悪魔ぁ!)
心の中で最大限の警戒をして…。
それにしても、酷い言いようである。
(にしても、こいつ触り心地いいなぁ…おりゃ!おりゃ!)プニプニ♪
「ポヨ~♪」キャッキャ!
なお、マージェ自身もすでに少し堕ちかけているのは本人も気づいていない。
彼は、はるかぜと共にやってきた。
その小さい姿と変な言葉から、周りから変な奴と認識されていた。
しかし、彼には無限の可能性とパワーが備わっていたのだ。
ある者は言う。彼は友人だと。
誰に対しても分け隔てなく接し、好意を振りまく。
そんな彼の事を皆好きになり、いつの間にか彼の周りにはたくさんの友人がいるのだ
ある者は言う。彼はお人好しだと。
どんな困難が待っていようと、どんなに面倒くさくとも、相手が困っているのなら、それだけで彼は『ハァイ!』と二つ返事で了承し、それらに立ち向かっていくのだから。
たとえ、最後には裏切られても、世界を滅ぼそうとする悪でも、その悪事を食い止めた後もなお、その者を
ある者は言う。彼は悪魔だと。
彼の胃袋は無限大で、星一つ分のエネルギーを吸い込んでもなお、そこが見えない程の大食らいで恐怖を覚えるからだ。
また、彼が歌った後にはぺんぺん草さえ枯れ果てることからそう言われている…。
ある者は言う。彼は英雄だと。
悪夢の化身、暗黒の一族、虚言の魔術師、美に捕らわれた女王、狂った大企業の社長、破壊の神、侵略の獣……星を滅ぼしてしまえる程の強大な敵に勇敢にも立ち向かい、何度も星を、民を救ってきたのだから。
たとえ身体がボールになろうが、毛糸になろうが、身体が4つに、10つに分裂しようが、彼は困っている人々の為に戦った。これを英雄と呼ばずに、何を英雄と呼べるのか。
そうして何度も星を救い、いくつもの縁を紡いできた彼はいつしかこう呼ばれるようになった。
伝説の星の戦士
『星のカービィ』
「あむあむ…」
「カジュジューー!?」
「プーちゃん様、それはリンゴではなくカジッチュです。食べてはいけません」
なお、彼の功績を知る者は、どうやらこの星にはいないようだ…。
きっとネットの海を探せばいくらでもあるだろうポケモン×カービィネタ
何番煎じかわからんが……書きたいじゃん?
続きは……気が向いたら…
というか誰か続き書いて…
ここまでご拝読ありがとうございました