お嬢様のお気に入りのプリンが少し……いや、かなりおかしいんです!   作:生牡蠣

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せっかくはるかぜが吹く季節なので投稿
……5月は春だからセーフってことで…


お嬢様、プリンは空を飛ぶことは出来ません

「はぁ~…暖かい空気に綺麗な景色……本当に今日はピクニック日和ですわね!」

 

「ふふっ、本当にそうですねお嬢様」

 

屋敷から少し離れた原っぱに、私達はピクニックシートの上に座り紅茶を飲んでいた。

本来、従者である私がお嬢様と同じように座ることは失礼にあたるのだが『せっかくのお出掛けなのですから、一緒にお茶をしましょう!』というお嬢様の言葉を断り切れず、こうして隣に座っているのだ。

恐らくずっと立ちっぱなしの私への気遣いで言ってくれたのであろう。こういう優しい所は本当に奥様にそっくりだと思う。今日はそんなお嬢様のご厚意に甘えさせてもらおう。

 

「…夢みたいですわ。この間まで外に出るだけで身体のあちこちが苦しかったのに、今はそんな事を気にしなくてもいいなんて……ふふっ、きっと他の人からすれば普通の事ですのに、こんなに幸せを感じるなんておかしいのでしょうね」

 

お嬢様が独り言のように呟く。

……全然おかしい話じゃない。お嬢様は、最近まで当たり前の幸せすら感じることが出来なかったのだ。

歩くことも、食事も、時には呼吸すら思うようにできなかったお嬢様にとって、今の言葉は心の底からの本心だったのだろう。

 

「おかしくありませんよ。お嬢様、それは本来人間もポケモンも、誰もが感じることが出来る幸せです。偶にその幸せを忘れてしまう時もありますけどね……だから、お嬢様のその感情も普通の事です。ただ、それを感じるのが少し遅かっただけです。だから、これからも今まで感じることのできなかった分の幸せを感じて良いのです」

 

「マージェ……ふふっ、そうですわね」

 

お嬢様が手で口を覆いながら上品に笑う。

あぁ…あの頃はこうしてお嬢様の笑顔を見ることも難しかったが、今はこうしてお嬢様の笑顔を見て、私も幸せを感じている。

きっと、これも普通の事なのだろう。

でも、この感情はおかしいものではないのだ。絶対に

 

「……あっ!御覧なさいマージェ、プーちゃんがこちらに手を振ってますわよ!プーちゃ~~ん!!」フリフリ

 

「ハァーイ!」

 

「……えぇ、楽しそうですね…」

 

マージェは少しゲンナリとしながら答えた。

そんなマージェの反応に気が付いていないお嬢様は、()へ向かって手を振っている。

 

 

その視線の先を辿ると、そこには空を飛んでいるプーちゃんの姿があった

 

 

ここでプリンの生態について少し説明しよう。

プリンはその可愛らしい見た目からは想像できない、とある特徴がある。

それは、肺活量の多さである。

プリンの肺活量はポケモン界でもトップクラスと言われており、息継ぎなしで長時間歌う事で相手を眠らせることも可能だ。

また、その肺活量を生かして身体の中に空気を大量に取り込み、身体を大きく膨らませることも可能だ。

こうすることで風などを利用しての移動や、時に宙に浮かぶことで外敵から身を守る事ができた種と言えるだろう。

そう、プリンは空でも活動ができるのだ。

しかし、それは風力等を利用する前提の話であり、持続時間は短いものである。

鳥ポケモンのように自分で空を自由に飛べるわけではないので“飛ぶ”と言うより、風を利用して“浮かぶ”という表現の方が正しいだろう。

 

……さて、ここで本題に入ろう。

現在、プーちゃんは空の上でお嬢様に手を振っている。

その身体はふっくらと餅のように膨らんでおり、身体に空気を取り込んでいるのがわかる。

話がここで終わっていたら、なんのおかしいこともない。普通のプリンの生態としては考えられるシチュエーションだ。

 

では、プーちゃんが空に浮かんでから、もう1時間以上経過しているという条件が加わればどうだろうか?

 

……これは嘘でも何でもない。マジで1時間以上地に降りずに飛び続けているのである。

この原っぱに着いてすぐの話だ。飛んでいるポッポ達と遊びたかったのだろうか、プーちゃんが身体を大きく膨らませて宙に浮かんで行ったのだ。

『きゃー!プーちゃんが空を飛びましたわぁ!?』と驚くお嬢様をマージェは微笑ましそうに眺めながらプリンの生態について説明した。

『あれは空を飛んでいるわけではない、すぐに降りてきますよ』と

その話をしたのが約1時間前。プーちゃんは降りて来るどころか、さらに上昇しているようにも見える。

 

……わぁ、しかも結構移動スピードはやーい。すごーい

 

マージェはただそう思った。その顔は、まるでリンゴを見て「ばなな」と答える頭の悪い人やジャパリなパークのみんみーちゃんの様であった。

なにもマージェは最初からこんな感じではなかった。

プーちゃんが飛び続けて10分経った頃には『あの子めっちゃ上がってくなぁ…あれ?そういえば風吹いて無くね?……えっ、あの子どうやって浮いてんの?』と疑問に思ったし、20分経った頃には『あ、あれもう飛んでね?……いや、私は信じない!あんな羽も生えてないピンクボールが空を自由に飛んでいるなんて私は信じないからなッ!!』と内心めっちゃ動揺していたが、これは自分の考えすぎ、その内落ちてくると自らに言い聞かせていた。

だが、プーちゃんが30分以上も空の上にいる光景を見て現実を受け入れざる負えなくなり、やがてマージェは考えるのをやめた。

 

「はい、ポッポさん達。ビスケットをお食べ下さいまし」

 

「ポッポー…」

 

お嬢様がピクニックシートの周りで休んでいるポッポ達の為にビスケットを砕いたものを蒔いている。

ポッポ達はそれぞれビスケットを啄んでいるが、そこには隠しきれない疲れの色が見えていた。

彼らはプーちゃんと一緒に空の上で追いかけっこをしたり、レースをしたりして遊んでいたのだが、プーちゃんの脅威のスタミナについて行けず、先にバテてしまった被害者達だ。

飛び疲れた彼らは、自分たちが少しも羽を動かせない程に疲れているにも関わらず、まだ空の上で余裕の笑みを浮かべているプーちゃんをまるで宇宙の深淵を見たニャオハのような顔で眺めていた。

まぁ、普通にあの見た目の奴がずっと飛んでるとか怖いよなぁ……

 

例えば、ひこうタイプやドラゴンタイプのポケモンの中には1日で別の地方まで飛んで行ってしまう種類や24時間近く飛び続けていられる種類がいると聞いたことがある。

しかし、彼らは生き残りの為にそのように進化した為、それらが実現できる身体の造りと特性を持っているのだ。

そんな彼らからすれば、ほんわかしたピンクボールが自分たちよりも長く飛び続けているなんて、バケモノを見る様なものだろう。

 

「あら?そういえば。プーちゃんがお空を飛んでからしばらく経ちますわねぇ……」

 

ポッポ達に一通りビスケットを与え終えたお嬢様が思い出したように呟いた。

おぉ、ついにお嬢様もプーちゃんの異常さに気が付いたか!?

そう!そうですよお嬢様!あんなピンク玉が空を飛ぶのはおかしいんですよぉ!!

 

これはあの生物との距離感を見つめ直すチャンスです!!一思いにおかしいって言っちゃいましょう!!

 

 

 

 

「いけませんわ、少し休憩を挟まないと疲れてしまいます……プーちゃーん!お茶とお菓子を用意しましたから、そろそろ降りていらっしゃーい!!

 

「! プヤぁーイ」

 

…そっちかぁ……そっちが気になっちゃったかぁ……

お菓子という言葉に反応して満面の笑みで地上に急降下してくるプーちゃんをあきらめの表情で見つめながら、マージェは水筒の紅茶をカップに注ぐのであった…

 

 

 

 

 

 

 

「あむあむ…」

 

「うふふ、プーちゃんったらお菓子に夢中ですわね」

 

ビスケットを次々に頬張るプーちゃんを見ながら、お嬢様は優しく微笑んだ。

プーちゃんが降りて来てから数十分、お嬢様が2杯目のお茶を飲んだ後も、ポッポ達も休憩を終えて大空に羽ばたいていった後も、プーちゃんは夢中でビスケットを口に運んでいた。

 

「プーちゃんは食いしん坊さんですね。そんなに食べていたらころころに太ってしまいますわよ……でも、そんなプーちゃんも可愛いと思いますわぁ~♡」

 

お嬢様が「うへへ…」とにやけた顔をしながら目を閉じる。

大方、まるまると太ったプーちゃんを抱き枕にして眠る妄想をしているのだろう。

きっと、めちゃんこ柔らかいのだろうなぁ……べ、別に抱いてみたいとは思っていないから!私はあくまでクールキャラだからぁ!!

……それにしても――――

 

 

(この生物、はたして太るという概念はあるのか?)

 

 

マージェはカップを器用に持ってお茶を啜る桃色玉を見ながら疑問に思った。

 

もし、この彼女の疑問を何も知らない人が聞いたら『はぁ?何言ってんのコイツ…』と反応してしまうだろう。

その反応は当たり前だ。何せ、彼女の疑問は生物に必ずある概念を疑うような物。仮に誰かに話したら正気を疑われてしまうかもしれない。

しかし、彼女がこのような疑問を持つのも仕方がなかった。

マージェがこの疑問に行きついた理由、それはこのピンク生物の食事量の多さだ。

 

突然だが、カビゴンと言うポケモンを知っているだろうか?

別名いねむりポケモン。毎日ぐうたらと食っては寝てを繰り返しているポケモンで、でっぷりと肥えた体型をしている。

その見た目通り食事量も桁違いで、1日に400キロ以上の食べ物を摂取しないと気が済まないという歴戦のフードファイターも裸足で逃げだすような大飯食らいだ。

 

さて、何故今ここでカビゴンの話題に触れたかと言うと、プーちゃんの食事量もカビゴンと同レベル……否、もしかしたらカビゴン以上かもしれないと思っているからだ。

最近の例だと、今朝の献立でパンとベーコンエッグ、サラダを出したのだが、プーちゃんは20人前をペロリと平らげていた。

今思い出してもカオスな状況だったなぁ…お嬢様と旦那様が談笑されている横で皿のタワーを次々に作り出していくピンク玉、その空いた皿を下げては新しい料理を配給するメイド達。親子団欒の横でわんこ蕎麦みたいな事すんなよ……

20人前を平らげた。これだけでも十分やばいが、ほとんどの人間は『カビゴンの方やばくね?』と思うだろう。

 

しかし、これはプーちゃんに食事量を抑えて貰えるように料理長が頼み込んだ結果であって、本来の食事量はもっとやばい。

例えば、初めてお屋敷に来た時にお嬢様の奇跡の回復を祝って食事会を開いたのだが、その料理のほとんどがプーちゃんの胃袋に収められた。

お嬢様の初めてのポケモンとあって、料理人たちも『こいつに腹いっぱい飯を食わせてやろう!』と意気込んで大量に作った料理が一瞬でなくなる様は、皆驚きすぎてその場の時間が停まったかと思えるほどであった。

それでもなお『おかわり!』と言う様に皿を差し出すプーちゃんの姿を見て、料理人たちは『上等だゴラァ!満足させてやるよぉ!!』と変なスイッチが入ったかのように料理を提供し続けていたのだが、結局プーちゃんは満腹になる事はなく、災害用に最低でも7日間分の食糧を備蓄しておく食糧庫が空になるという事態にまで陥った。

あのでかい食糧庫が空になるとか想像できなさすぎて、私を含めた使用人一同は呆然としていたのは今でも思い出せる。

食糧庫を空にしたことは旦那様が笑って許してくれたが、次の日の買い出しが地獄だったり、その食料もプーちゃんが全て平らげてまた買い出し地獄になったりした為、その日からプーちゃんには食事制限が設けられたのであった。

『制限して20人前はどうなんよ…』と思わないでもないが、あんまり制限をキツくすると、お嬢様が『プーちゃんが可哀そうですわぁ!』と駄々をこねるし、これがお互い譲歩できるギリギリなのだ。

 

……本当に旦那様が世界でも五本の指に入る程の大富豪で良かった。並の金持ちだったらプーちゃんを1か月養うことも難しかっただろう。

食事制限なしのピンク玉とカビゴン10匹なら、まだカビゴンの方がお財布的に良心的だと心底思う。

にしてもあの身体のどこに食べ物が入っているのやら……明らかに自分の身体以上の食べ物さえも丸呑みにしてしまうのは胃下垂とかそういうレベルじゃないぞ…

もしかして、身体の中にブラックホールがあったりして……ははっ、ないな流石に

 

マージェが色々と思い出している間も、プーちゃんは両手にビスケットを持ってご機嫌な様子であった。

可愛い、フィギュア化して欲しい…はっ!私は何を考えているんだ!?れれれ冷静になれ私!

ただでさえ最近屋敷内でプーちゃんにメロメロになってしまった使用人が増えてきているのだぞ!私が最後の砦にならなくては…!!

 

……そういえば、今はこうして手を使ってものを食べてるけど、最初の頃は酷かったなぁ…

まさかこのピンク玉が大口を開けたかと思ったらあんなことに…あぁ、思い出したら頭痛がしてきた。できればもうあんな思いはしたくないぃ……

 

マージェが眉間に手を当て、頭痛に耐えていると――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その子はあなたのポケモンさん?」

 

 

 

聞いたことのない、女の子の声が響いた。

お嬢様とマージェ(プーちゃんはビスケットに夢中で気が付いていない)が振り向くと、そこにはイーブイの着ぐるみの様な服を着た女の子が立っていた。

 

 

「ねぇ、私とバトルしようよ!!」

 

 

女の子は、モンスターボールをお嬢様に向けながら純粋で眩しい笑顔を向けた。

 




最近の作品だとカービィも長時間飛べないものも多いけど、どうせならチート性能の方が面白いと思うので今作では無限ホバリング可能な設定
なお実際にゲームで無限ホバリングすると指に乳酸溜まってタヒぬ模様……

この間東京見物に行った時にカービィカフェ行ったんだけど、予約必須なの知らなくてお土産コーナーしか見れなかった……(アホ)
みんなは気を付けてね~…
言付けリベンジしてぇ~な~、俺もな~

次回はバトル描写……書けたらいいなぁ…


ここまでご拝読ありがとうございました
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