千年を越える歴史を重ねた帝国の首都たる帝都は、かつての栄華など見る影もないほど腐敗しきっている。
貧富の差なんてものは当たり前であり、帝都の大通りとスラム街など同じ人間が住む場所だと思えないほどに世界が違う。
人も政治も歴史さえ腐り切った魑魅魍魎の跋扈する魔窟に俺は生きている。
帝都警備隊副隊長の肩書を持って酒浸り、女漁りに精を出しながら欲望の赴くままに遊び呆けている。
腐った世界で生きるなら同じように腐った方が過ごしやすい。
自分の今の生き方を腐っていると思う時点でそれは性に合っていないのかもしれないが、自分の生き方を恥じる殊勝な心はない。
真昼間から警備隊隊舎に安酒を持ち込んでほろ酔い気分で寝こけるという警備隊としての責務を放棄しているような勤務態度の俺を注意する者はいない。
今の帝都において権力・財力・武力がモノを言う。
この三つの強弱がそのまま帝都での弱肉強食の法となっている。
俺が有する帝都警備隊副隊長という肩書は、武力において強者である証だ。
数年前までは皇帝が最も信頼するブドー大将軍直属の近衛隊に所属し、最強クラスの帝具を与えられたことで個人戦において最強の称号を貰っていた程度に俺は強い。
もっともちょっとした失態で与えられていた帝具を賊に奪われ、その責を取る形で一兵卒まで降格された。
最年少での将軍職すら夢ではなかったのだが、俺個人の資質と帝具喪失の失態が合わさった結果が今の堕落の原因だ。
一兵卒に落ちた後は、数か月で警備隊の副隊長にまで上がったんだがな。
自分の欲望に忠実であることこそがマイスタイル!
酒・金・女さえ充実しているのなら文句はない。
将軍職になったらなったで面倒な事務職も増えるだろうから警備隊隊長補佐くらいがちょうど良い寝床なのだ。
何もかも自身が望む最高のものでなければ満足できないなんてのは歴史の中において限られた者の特権だ。
それを考えれば妥協を許さないブドー大将軍やエスデス将軍は、分不相応な大根役者だな。
たまたま常人の領域を超える武力を有し、多少なりとも軍隊を指揮できる程度の統率力と知能を持っているだけでいろいろと面倒な義務や枷がくっついている。
あいつらがそれを苦としていないのは分かるが、俺からすればくだらないことに縛られ過ぎなんだ。
「俺みたいに肩の力を抜いて生きた方が健全なんだよ」
「貴方ほど不健全な軍人はいないと思います、ヴォイド副隊長!」
気怠い昼下がりにほろ酔い気分な俺の独り言を聞いた茶髪ポニテの少女が机の上に投げ出していた俺の足を払いながらプンスカ怒り顔で言う。
「そう思うのは、テメェの目が腐ってて何にも見てねぇからだ」
「副隊長にだけは言われたくないであります!」
上司に向かって面と向かって声を荒げることができる奴はこの帝都では貴重だ。
俺好みの女じゃなければ、こいつ自身が従えているキモかわペットの餌にしているところだ。
女が手に持つリードの先に繋がれて床で服従の姿勢を見せる犬のぬいぐるみのような謎生物の無防備な腹をつま先で弄りながらもう一杯安酒を煽る。
「にしても、何で年頃の女が汗と獣と血と油が混ざったような体臭してんだよ。色々と萎えるぞ、セリュー」
「女性に体臭がどうのとセクハラにもほどがあります! コロもこんな人に懐くなであります!」
上司の非礼とペットの服従姿勢に抗議する女の名は、セリュー・ユビキタス。
帝都警備隊に所属する女性隊員にして、生物型帝具ヘカトンケイルの主だ。
なんでもかつて警備部隊に所属していた父親が“凶賊と戦い殉職した”ことになっている父の後を追う形で警備隊に入ったバカ女だ。
父親が所属していた警備隊=正義みたいな妄想をしており、現警備隊隊長であるオーガを妄信し、その友人であるDr.スタイリッシュの実験材料にされている。
オーガは使える身内に対して、Dr.スタイリッシュは協力的な面白い研究材料に対してはそれなりに良い奴に見えるだろう。
俺の目から見てもオーガは粗雑だが豪快で頼りがいのある良い上司だからな。
馬鹿で無様で憐れで醜い低能な正義(笑)中毒の狂った可愛い女だ。
「俺が嫌いだからってコロに当たんな。意思がある帝具は俺に逆らえないんだからよ」
「別に嫌っているわけでは……。というか、帝具が持ち主以外に服従するとかありえないであります」
セリューが俺の言葉を信じないのは今に始まったことではない。
自分が見たくないものは現実だろうと見ようとしないのは、人間特有の悪習だ。
そんな人間らしい腐り具合も可愛いところなんだが、帝具に関していえば俺は現在最高級の適性がある。
これは俺の体を調べたDr.スタイリッシュが俺の遺伝情報から帝具適性を向上させる新薬を開発できたぐらいだ。
もっともこれを投与されると大分寿命が縮むようなので、Dr.スタイリッシュの実験体や帝都暗殺部隊の出来損ないたちに試験的に投与されるにとどまっている。
俺の体を調べる際にあのオネェがやりすぎそうになったんで自慢の腕を片方捩じ切ったもんだから今では大分毛嫌いされている。
その点、オーガのヤツは俺が駒として使える内は自由にして良いと言えるくらいには懐が広いので助かっている。
「それで俺の平常勤務を邪魔してくれたセリューちゃんは、何の用事だ?」
単に勤務態度が気に入らないからという理由で俺の微睡みを邪魔したのなら残っている肉の部分に対してこれでもかというくらいチョメチョメしてやる。
そんな俺の邪な感情を察したのかセリューは身を掻き抱いた。
「今日はオーガ隊長が悪に濡れ衣を着せられることが多い商人さんとお話があるから代わりに副隊長が稽古をつけてくれると約束していたではありませんか!」
「……うん、覚えていたぞ」
「嘘であります! この人絶対忘れていたであります!」
「俺が女との約束を忘れるわけがねえだろ? さっさと練兵場にいくぞ」
男として最低限、女との約束は守らないといけないのだ。
このぶっ飛んだ馬鹿女に健全な男女のスキンシップはできないので、たまに鍛練と称して乳尻揉みしだいて遊んでいる。
Dr.スタイリッシュによる人体改造を受けたと言っても全身機械化までは行っていないセリューの身体は、辛うじて女の柔肉が残っている状態だ。
身体能力は強化されているが、ブドーやエスデスほどではないので単純な殴り合いならセリュー程度は俺の足元にも及ばない。
いつも数分間の殴り合いを演出してから寝技に持ち込んで四肢の武器をもぎ取って抵抗できないようにして弄り回すのはすごく楽しい。
気の強い女を抵抗できなくしてエッチないたずらをするのは変態のマナーである。
そろそろあるかどうかも怪しい純潔の方ももらっておきたいのだが、さすがにそこまでするとセリューに悪認定されてしまいそうなので我慢している。
そんなリスクを冒さなくとも合意の上で抱ける女はオーガ経由で手に入る。
だからセリュー自身が求めてくるようになるまでは最低限の相手をしてやろうと思っている。
この狂った正義の執行者が俺みたいな三下悪党に媚びるようになると想像するだけで笑いが止まらなくなる。
いや、すでにオーガ程度の小悪党に尻尾を振る道化なんだがな。
「今日の訓練指導料もパイ揉みで良いよな?」
「サイテーであります、このセクハラ上司は!」
蔑んだ眼差しで吠えるセリューは、それでも正義の執行のために鍛練を怠れないから今日も今日とて俺におっぱいを揉みしだかれることになる。