悪が斬る!   作:壟断

6 / 7
第06話

 

 蒼褪死神(ソウトンシジン)――蒼褪めた死の神の名を冠する帝具、アポカリプス。

 

 こいつと出逢ったのは、最愛の相棒たるエクスタスを失ったすぐ後だった。

 まるで謀られたかのようなタイミングだと思った。

 この出逢いを運命と謳うほど俺はロマンチストじゃない。

 こいつは帝具に対する異常な適応体質を持つ俺を狙っていたのだ。

 

「――刈り取れ、アポカリプス」

 

 俺の命令に呼応して蒼い仮面が妖しく輝きながら顔面に張り付く。

 刹那にも満たない帝具の発動に俺の感覚も寸断され、世界の停滞に魂を侵される。

 

 最愛の幼馴染と感動の再会を果たしたサヨと少年がその表情に驚愕と恐怖を広げ、少年の背後から刀を構えて駆けてくる黒髪の少女はその瞳に犠牲の覚悟と殺意の集束を宿す。

 戦闘の最中に見せたサヨの油断を見事に捉えた連続殺人鬼たる首切りザンクは、小賢しい敵の首を断たんと刃を奔らせる。

 ザンクの凶刃は確実にサヨの首を斬り落とす。

 これを覆すには、現実の法則を超越しなくては不可能。

 現実の法則――つまりは勝ち誇ったザンクが信じている常識という絶対の真理を凌駕する必要がある。

 

「サヨォォオ!!」

 

 そんなことはできるはずがないと理解する少年は、最愛の者の死を前に嘆きを声とする。

 しかし、生者の常識を死の神が律儀に守るはずがない。

 生ける者たちにとって見ることも感じることもできない絶対の摂理たる死の刃が刹那を奔る。

 

「え……?」

 

 静寂と停滞がザンクの鼓動を刈り取る。

 

「「「ッ!?」」」

 

 それは刹那の間隙だったが、この場に万分の一である好機を逃すような愚鈍は存在しない。

 致命的な一呼吸の間合いが埋まった瞬間にふたつの純粋な刃が交差する。

 間に合うはずのなかった切り返しを終えたサヨの刃が無様な停滞を見せる罪人の首に奔る。

 間に合うはずのなかった一歩を踏み込んだ少年の刃が間抜けな驚愕を見せる悪人の首に奔る。

 

「「はあああぁぁぁ!!」」

 

 瞬間、二つの斬撃が“首切りの達人”を自称する殺人鬼の首を淀んだ夜の空に斬り飛ばした。

 呆気ない結末だ。

 

 首切りザンクの死因――斬首。

 

 宙を舞った不細工な生首が硬い石畳に転がり落ちると鮮血を溢れさせる身体が倒れた。

 俺の足元まで転がってきたザンクの首を踏みつけて止めてやる。

 

「首切り役人の末路が斬首ってのは、何とも滑稽だなァ?」

 

 首を落とされたザンクの表情は何が起きたのか理解できていないかのような呆け顔だ。

 ザンクを斬ったサヨと少年の剣の技量は同じくらいのようだが、サヨの刃がわずかに早かった。

 ほぼ同じ斬撃にあるわずかな差というのは、実戦になれば致命的な差だ。

 二人が真っ向から斬り合えば、サヨの方が強い。

 反応はタツミもかなりのもののようだが、右足に『銀靴』を穿いているサヨの反応速度は帝国でも名高い皇拳寺の四馬鹿に近い。

 失った右足の代わりに与えたモノだったが,今後のことを考えて早めに左の『銀靴』も取り寄せた方が良いな。

 部下の強化方法を思い描きながら転がったザンクの首を蹴り上げて手に掴む。

 

「さて、ブドーのおつかいもこれで完了。あとは目の前に転がり込んだ手柄を取るか?」

 

 ザンクの生首からスペクテッドを取り外して生首をサヨと少年の向こう側で俺を睨み付ける黒髪の少女に放り投げる。

 転がった生首が足元に転がってきたにも関わらず、黒髪の少女アカメはまっすぐな瞳を俺に向けている。

 

「久しぶりだなァ、アカメェ?」

 

「……ッ」

 

 俺の挨拶にアカメは無言で自慢の獲物を構えて応える。

 アポカリプスを手に入れた事件の際に可愛がってやった恩を忘れていないようだ。

 臨戦態勢のアカメと俺の間に立っていた少年少女は、そんな俺たちの状況など見えないかのように熱い抱擁を交わしていた。

 

「サヨ、無事で良かった! サヨのその格好ってお前警備隊に入ったのか? イエヤスも一緒なのか? てかその右足どうしたんだよ!?」

 

「ちょっと落ち着きなさいよ、タツミ。貴方こそ、どこも怪我とかしてない?」

 

 タツミに抱きしめられて戸惑いながら頬を染めるサヨも少年の背に腕を回している。

 互いの生存を喜び合う少年少女たちの姿は何とも甘酸っぱい空気をまき散らしてくれる。

 そんなラヴい雰囲気を俺が許せるはずがない。

 

「きゃあッ! ヴォ、ヴォイド隊長!?」

 

「あ、サヨ! テメェ、サヨを放しやがれッ!」

 

 抱き合っているサヨの襟首を掴んで強引に二人を引きはがすと空気読めよと言いたげな若者たちの視線が俺を刺してきた。

 

「は、放してくださいヴォイド隊長! というか、変なとこ触ってません!?」

 

「何言ってんだ? サヨは俺の大切な部下だ。殺し屋集団のナイトレイドから守ってやらねェといけないだろ?」

 

「サヨを放しやがれ、仮面野郎!」

 

 いきなり引っ掴まれて抱き寄せられたサヨがいつもの如く蔑むような眼を俺に向け、少年の方も剣を構えて威嚇する獣のように俺を睨む。

 

「まあ、落ち着いて状況を考えてみろ少年よ。俺とサヨは帝都警備隊隊員で、テメェらは暗殺集団ナイトレイドだ。共通の獲物であるザンクを狩った今、俺たちがすることはなんだと思う?」

 

 アカメと共に出てきた少年がナイトレイドと関係があることは間違いない。

 ザンクの一連の犯行から最近は、夜中に帝都を出歩く住民は激減していた。

 何の目的もなく、武装して夜の帝都を歩き回っているわけがない。

 剣を手にしているからには、その刃で何かを斬るつもりだったはずだ。

 それが今夜の目的がザンクだろうがどこぞの悪徳貴族や商人だろうと構わない。

 俺を狙っていたとしても気にしない。

 

「俺は、帝都警備隊隊長ヴォイドだ。俺から女を力尽くで奪えると思ったら大間違いだぞ?」

 

 言いながらアポカリプスと繋がる不可視の刃を構える。

 そんな俺に対して同じように剣を構えている少年は、しばし考えるように視線を外すと再び俺を睨んできた。

 

「警備隊隊長ってことは、オーガの奴の後釜ってことかよ」

 

「ん? オーガを知ってんのか?」

 

 意外、ということのほどではないか。

 オーガを殺害したのは、ナイトレイドの仕業というのが濃厚だった。

 ナイトレイドに組していると思われる少年がオーガを知っていてもおかしくはない。

 

「知ってるも何もあの野郎は警備隊に入れてやるって言って俺を騙して窃盗だの密売だの罪を被せて処刑しようとしやがったんだぞ!」

 

「あ~そっちの被害者か。そりゃあ災難だったな」

 

「災難ですむかッ!」

 

 オーガとガマルたちが使っていたいつもの手だな。

 サヨの知り合いということは、この少年も田舎から出てきたばかりだったのだろうからオーガたちにとって良いカモだったのだろう。

 

「しかし、オーガに騙されて生きているってことは、もしかしてオーガをやったのはテメェか?」

 

 オーガの死因となった刀傷は、アカメやブラート、シェーレのモノではなかった。

 他に刃物を使うナイトレイドが居ないとは限らないが、少なくともオーガの身体に刻まれた太刀筋はこれまでナイトレイドの犯行と思われる事件の中にはなかった。

 つまりナイトレイドにオーガ殺しが初任務だった者がいたか、オーガ殺しそのものがナイトレイドに入るきっかけとなったかだ。

 少年の口振りから後者であるようだが。

 

「確かにオーガを殺したのは俺だ。けど俺は、それを悔いちゃいねぇ。オーガは、俺にしたようなことをたくさんの人たちにしてたって聞いた。あいつ自身もそれを認めて、反省するどころかナイトレイドを雇った人の家族を目の前で殺すなんて言うようなクズだった。だから俺は、あいつを斬った。これ以上、無実の罪で殺される奴らが増えないようにな」

 

 自分の境遇を語りながら少年は俺へ向ける視線にも憎悪が混じり始める。

 大方俺のこともオーガの同類だと思っているのだろう。

 

「まあ、オーガは確かに小悪党だったが俺の上司だったんだわ。つまりお前はオーガの仇だし、その前に犯罪者だから俺が殺しても良いわけだな?」

 

「そっちこそ俺が黙ってやられると思ってんのか? サヨもこっちに渡してもらうからな!」

 

 俺の脅しに少年は怯みもせずに威勢の良い啖呵を切りやがる。

 久々に生きの良い獲物だ。

 悪徳貴族や商人たち相手だとどうしても護衛の質は財力で決まってくる。

 そういう奴らに雇われる連中は、強くはあるが獲物としては美味くない。

 どうせ喰らうならこいつのような生きることに希望を抱いている純粋な意志を持つ奴の方が何倍も腹を満たすだろう。

 良い女ならいろいろな方法で俺を満たしてくれるが、男は命を賭ける以外に俺を満たせる可能性はない。

 こいつは、俺を満たせる可能性を持った男だ。

 

「ちょっと待ってください、ヴォイド隊長!」

 

「タツミ、下がれ!」

 

 俺と少年の剣が振り上げられようとしていたところに少女たちから制止の声が割って入る。

 油断してた少年の襟首を引っ張って後ろに下がらせた黒髪の少女アカメが村雨を構えて俺を牽制。

 サヨもまた俺の腕を払いのけて少年たちを庇うように俺の前に立つ。

 

「どうした、サヨ? 帝都警備隊員のお前が、ナイトレイドのそいつらを庇うつもりなのか?」

 

「隊長、こいつは私の幼馴染なんです。根はすごい良い奴で馬鹿で単純なところもありますけど、まっすぐな奴なんです! だから……!」

 

「見逃せと? サヨ、こいつはオーガの悪事が許せないと思って、オーガを殺してナイトレイドに入ったような奴だぞ?」

 

「オーガ隊長に問題があったのは、ヴォイド隊長も言っていたじゃないですか?」

 

「帝都の中にはオーガみたいな外道は俺も含めて吐いて捨てるほどいるんだ。ここで見逃したり、こちらの仲間に引き入れてもいずれは俺の敵になる」

 

「ヴォイド隊長はオーガ隊長とは違います! 隊長は私を助けてくれたじゃないですか」

 

 よほどタツミとかいう少年のことが大切なのか、サヨは涙を滲ませながら懇願してくる。

 そんなサヨの訴えに少年が頭に疑問符を浮かべる。

 

「そいつがサヨを助けたって。サヨ、お前が帝都に来ていったい何があったんだよ? その義足も何か関係あんのか?」

 

 状況が膠着状態に落ち着いたことで少年も冷静に俺たちを観察する余裕ができたようだ。

 サヨの右足にある『銀靴』が具足の類ではなく義足であり、その下にあったはずの生身の脚が失われていることに気付いたようだ。

 いまだ剣を構える少年たちを俺から庇うような立ち位置を保ったままサヨは、少年たちに自分の身に降りかかった帝都の洗礼について話し始めた。

 

 サヨは、少年――タツミと貴族の屋敷の倉庫で病に侵されて死んだ少年イエヤスの三人で田舎から出てきたが、道中でタツミと逸れてしまったというのは聞いていた。

 何とか帝都にたどり着いたサヨとイエヤスは、帝国軍に仕官しようとしたがこのご時世では採用枠も限られ、抽選に外れてしまった。

 手持ちの資金はほとんどをタツミが所持していたこともあり、サヨとイエヤスはその日の宿にも苦慮することになった。

 そんな時に外道貴族の娘――アリアとかいった娘に拾われて貴族の屋敷に招かれ、そこで出された食事に仕込まれた薬に気付かず、その家の餌食にされた。

 そこでサヨとイエヤスは帝都の闇に喰らい尽くされた。

 

「辛うじて私はヴォイド隊長たちに助けられたけど、イエヤスは罹患させられた病気のせいで……」

 

「……イエヤスが」

 

 サヨの話を聞いている途中からイエヤスの末路を予想していたのだろう。

 タツミは幼馴染の死に哀しみを滲ませながらもその手に掴む剣が軋みをあげる。

 

「やっぱり帝都の奴らは腐ってやがる……」

 

「タツミ……」

 

 友の死を嘆き、その要因となった悪に対して抑えきれない怒りが湧き上がっているタツミにサヨが気遣うように寄り添う。

 またしても良い感じな雰囲気を滲ませる二人に苛々が湧き上がる。

 

「話は終わったか? 終わったならそこを退け、サヨ。ナイトレイドの首はかなりの手柄になるんだからな」

 

「隊長!」

 

 今のお涙ちょうだいな語りを聞いて俺が情に絆されたなどと思ったわけでもあるまい。

 

「なあ、サヨ。俺がお前を助けたのは、イエヤスに乞われたからじゃない。お前が良い女になりそうだったからだ。イエヤスが生きていても傍には呼ばなかったさ」

 

「そんなことありません! 隊長なら絶対にイエヤスも助けてくれました!」

 

「そもそもイエヤスは俺が助けられなかったから死んだんだ。俺がパトロールなんて気まぐれではなく、進んで調査を進めていればもっと早くにあの屋敷を潰せたかもしれないし、もしかしたらお前らがあそこに囚われることもなかったかもしれないだろうが」

 

 帝都の貴族たちが暮らす高級住宅街は叩けば埃が出ない方が有り得ないぐらいの腐敗っぷりだ。

 俺が真面目にそういった奴らを締め上げていっていればサヨたちは五体満足で要られた可能性もある。

 

「それでも隊長なら……ッ」

 

 このままではどこまでも引きそうにないな。

 短い付き合いだが、サヨは上司だろうが強者だろうが言いたいことは言うし、間違ったことは正そうとする。

 俺のセクハラも絶対に許さないしな。

 いや、待てよ。

 今の状況とこいつらナイトレイドの存在を使えば、普段できないことができるんじゃねぇか?

 

「……しゃーねぇな」

 

「隊長!」

 

 俺のため息交じりの声にサヨが嬉しそうに表情を緩める。

 おいおい、これまでで一番良い顔見せてくれんじゃねぇか。

 それくらいサヨにとってタツミは大切な奴ってことか。

 

「タツミとか言ったな?」

 

「あ、ああ……」

 

 まだ警戒を解いていないタツミは、俺の呼びかけに応じながらもサヨを守るように前に出る。

 

「そう警戒すんな。それとアカメ、お前も村雨をおろせ。お前如きじゃ俺には敵わねぇことくらいわかってんだろ?」

 

「……っ」

 

 先ほどから一切警戒を解かないアカメは、俺の言葉にもやはり警戒を解かずに村雨でいつでも斬りかかれるようにこちらを窺っている。

 剣の技量も身体能力も俺の方が遥かに上回っていることは、アカメも理解できているはずだ。

 エクスタスからアポカリプスに帝具が変わったことで間合いも俺の方が断然有利。

 掠り傷でも死に至るという村雨の能力はそれほど脅威ではない。

 本来、実戦において掠り傷なんて概念は存在しない。

 たったひとつの傷で死に至るなんてことは戦場において常識だ。

 重厚な鎧や盾を纏う近衛隊の時であればまた違うが、軽鎧装備である警備隊は攻撃をかすらせるようなことはない。

 かわせないときは死ぬ時だ。

 

「アカメとタツミ、お前らナイトレイドを辞めて俺の隊に入れ」

 

「……っ!?」

 

「「……はぁ!?」」

 

 俺の言葉にアカメもサヨとタツミも驚愕を表情と声に出した。

 

「驚くことはないだろ? ナイトレイドを生かすわけにはいかないが、俺の部下になるなら別だ。アカメは当然としてタツミもそこそこ実力はあるんだろ? 十分採用基準は満たしている」

 

 もともとアカメは狙っていた女だし、この際だからこぶ付きでも良いから手元に入れておいても良いだろう。

 アカメが居れば暗殺部隊のクロメを引き抜く良い餌になる。

 セリューにサヨ、アカメにクロメと容姿も実力も十分な女たちを手駒にできれば言うことはない。

 

「さ、採用基準って、ナイトレイドって時点で駄目じゃないのか?」

 

「というか、アカメさんは手配書まであるんですよ? いくらなんでも帝国軍に入れるわけないじゃないですか!?」

 

 タツミとサヨが有り得ないという表情で俺の提案を否定する。

 こいつら俺に生かしてほしいんじゃないのか?

 

「上の意見なんて関係ない。俺が部下にするんだ。大臣にも大将軍にも文句は言わせねぇさ」

 

「あ、あんたは大臣や大将軍まで言うことを聞かせられるってのか?」

 

「聞かせられるってよりは、余計な手を出させないだけさ」

 

 帝都において俺を動かすことができるのは、ただ一人。

 その一人の命令も条件を満たさなければ俺は動かない。

 まあ、神級淫乱巨乳美女が性的なご奉仕をしてくれるなら動いてやらないこともないが。

 規律に従う生き方を辞めた俺を貶めることは大臣にはもうできない。

 忠誠や出世の為に行儀よくしていたから俺は落ちぶれてしまったが、もう底辺に落とされるのは我慢ならない。

 やりたいようにやれるだけの権力を俺は得たのだからこれ以下になるつもりはない。

 

「いや、それが本当でも俺は帝国には入らない」

 

「タツミ……」

 

 俺の提案を拒んだタツミにサヨが真意を問うようにつぶやく。

 

「悪い、サヨ。俺は今の帝国の在り方が許せない。だから、ナイトレイドに入ることを決めたんだ。俺は一度決めたことは最後まで責任をもってやるつもりだ」

 

「ここで死ぬことになってもか?」

 

「男に二言はねぇ!」

 

 俺の確認に即答で応えるタツミの意思は好ましく思わなくもない。

 

「なるほど……。アカメはどうだ?」

 

「私の意思は変わらない。貴様も必ず……葬る」

 

 かつて対峙した時と変わらないセリフで俺を拒む。

 

「どいつもこいつも救いようがない馬鹿どもだな」

 

 俺の好意を無視するのはいけ好かないが、ここで簡単に応じるような奴らなら俺は欲しいとは思わなかっただろう。

 それならばせめて俺の手で刈り取ってやるのがせめてもの情けとしようじゃないか。

 

「た、隊長ッ!」

 

「悪いな、サヨ。――熾きろ、アポカリプス!」

 

 サヨの制止を無視して俺は力を解放する。

 不可視の刃は色と質量を持ち、仮面から滲みだしていた霞みは俺の全身を包み込む。

 

「ま、まさかこれって兄貴の帝具と同じ……?」

 

「アポカリプスも……鎧の帝具だったのか!?」

 

 俺の全身を包んだ霞みが質量を持って形を成す。

 重装甲に慣れ親しんだ近衛隊時代、軽鎧に身を包んだ警備隊としての経験。

 その二つをもって俺に最適な形状を齎す蒼褪めた死神。

 

「刈り尽せ――蒼褪死神アポカリプス」

 

 ナイトレイド、お前たちを利用する代わりに始皇帝や帝具を開発した製作者たちすら見たことのない真なる解放を魅せてやる。

 今宵は、生と死を嘲笑う怪物の誕生祭だ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。