蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ 作:その辺の残骸
一国の将来を左右するかもしれない依頼を遂行することになったゆかりとマキ。二人は今回の仕事道具として琴葉姉妹に用意してもらった陽炎とヴィクセンの慣熟に励み、試合当日を迎えた。
高額な観戦料にも関わらず、チケットは完売であった。
イスニア王国とノイーキス社合同のスペシャルマッチが開催されるアリーナ。観客席の熱気は物凄いもので熱狂的といっていい。アリーナという興行がイスニアに深く根付いているのがはっきりと判る。
トップランカー、ヴィクター・マーシャルの二脚『レオヘッド』とノイアーキスのエースが駆る四脚『グッドライフ』の入場を誰もが心待ちにしていた。
葵は前日に二機の調整を全て終えており、茜と一緒に関係者用出入り口からアリーナに入れてもらった。
琴葉姉妹は都合してもらったVIP席で試合開始を待っている。テーブルには紅茶とお菓子がずらりと並ぶ、相変わらずの好待遇だ。
「凄い盛り上がりやな葵」
「この国の人達のアリーナ好きは本当なんだね。なんだか私もドキドキしてきちゃった……けど」
「なんや、気になることでもあるんか?」
茜は最愛の妹の顔を覗き込んで微笑む。葵が「ほらあそこの人達」と観客席の一角を指差した。黄色の上下で身を固めたその出で立ちは反王政運動賛同者達のユニフォームだ。
満員の観客席だというのに、横断幕やらプラカードやらAR投影やらで頼んでもいないのに自己主張している。
それらの主張は現体制を批判、というより中傷する陰謀論めいた内容で見ていて気持ちのいいものではない。
「あーちらほら見かけた連中やな。皆楽しそうにしてるのに、あいつらだけ空気が違うわ」
黄色い集団が殺気立っているのがモニター越しでも茜には見て取れた。
「まっどこにでもいるであんな連中。真面目に相手したら疲れるだけや。気にしたらあかんで葵」
「うん……」
姉は気楽に流したが、葵はこの時点で妙な胸騒ぎを覚えていた。
一方。イスニア南部。ノイアーキス社が本社を移転した都市の各所では、ノイアーキスの社章と同じ黄色を纏った人々による反王政運動のデモが起こっていた。
モニターにかじりつき、生中継される試合の開始を心待ちにする者達は数多い。彼らが望んでいるのは両雄による白熱した試合ではなく、ノイアーキスのグッドライフが勝利を収めることだ。
卑劣で邪悪で残忍らしい王室を崇敬するトップランカーが勝ったのはならばそれは不正であり、陰謀だと信じ切っている。
「愚か者どもめ、我々に踊らされているとも知らずに」
ノイアーキス本社ビル最上階。そこに集う四人の取締役は研究中止命令に逆らいアーキバスを追われたAI技術者だった。彼らは自分達が造り上げたAIによって選ばれ、今の立場を担っている。
全員が技術屋一筋で会社経営のための知識やコネクションの一切を持ち合わせていない。企業経営者としてはあり得ないことだった。
会議室のサブモニターが街の様子を映しており、ノイアーキスがネットに流した多数の"真実"に憤慨し、王政国家の後進性を述べた記事で羞恥心を煽られた人々が繰り広げる大騒ぎを取締役達は揃って嘲笑ってた。
扇動に乗せられた者達は少数だが、その熱狂具合は人々を恐怖させている。子供連れがデモ隊から急いで離れたり、部屋のカーテンやシャッターを閉める者達の怯えた姿は四人を大いに楽しませた。
ノイアーキスAIの予測では試合はレオヘッドの勝利に終わり、反王政運動はそれによって極限まで加熱する。暴動を煽り、徐々にイスニアを不安定化させ内戦を起こす。それが四半世紀をかけて完遂される計画の第一歩だ。
ノイアーキスの最終的な目的は静止軌道上のフラガラッハの掌握にある。ルビコン3におけるベイラム、アーキバス、ルビコン解放戦線、そして惑星封鎖機構による熾烈な戦いをモデルケースにイスニアから惑星サフィーロ全土に戦火を招き、惑星封鎖機構の介入によって事態を極限まで混迷させる。
そうしてフラガラッハ周辺宙域の警戒網が機能しなくなったところを狙い、特殊部隊を送り込み、ノイアーキスAIが艦のメインフレームを掌握。フラガラッハのコントロールを握ることで計画は完遂される。
その間、ノイアーキスも損害を被り株価は大きく下がる。
しかし《大破壊》以前の技術による超戦艦を確保できれば株価のV字回復は容易かつ今後は軍事行動によって莫大な利益を上げられると高い確度で予測されている。
「さあ、諸君。我々の計画の輝かしい第一歩を見物しようではないか」
取締役の一人がテーブルに置いた端末でノイアーキスAIが提案する無数の案件を一目見ることもせず承認しながら宣言する。他の取締役達も忙しそうに端末をタップしながらモニターにかじりついた。
彼らは人工知能に選択を依存し切った愚者だったが、それを指摘してくれる者は誰もいなかった。
スペシャルマッチの数日前から部外者立ち入り禁止となったガレージ。そこに併設されたシャワー室で結月ゆかりと弦巻マキはシャワーを浴びて仕事に備えた。体を拭き、髪を乾かすと二人は引き締まった裸体にナノスキンスーツを纏い始める。
ナノスキンスーツの裏地は既に汗の分解を終え新品同然の着心地になっている。ゆかりの肌に紫と黒のナノスキンが、マキの肌には赤と白のナノスキンが密着した。豊満なお尻が縁取られ、蛮族らしく鍛えられた腹筋を強調するように被膜が張り付く。
「よし、準備完了♪」
軽くシャドーボクシングをして自慢の巨乳を揺らす金髪の美少女蛮族弦巻マキである。
一方、紫髪の美少女蛮族結月ゆかりはマフラー、手甲、肘当て、膝当てを装着していた。さらに額当てを付けて準備完了。
「マキさん! これより私結月ゆかりは忍となり、闇に潜みます!」
マキに向き直り、大袈裟に忍者っぽいポーズを取って肉感的な臀部を弾ませながら宣言するゆかりであった。
忍者めいた外観のAC陽炎に乗っているうちに自らも忍に相応しい恰好をすべきと考えるようになっていた。
「ゆかりんの忍者のイメージは漫画だねぇ♪」
悪気なくマキはゆかりの忍者姿を評した。
「なんですと! マキさん、忍を愚弄する者はこうですよ! えい!」
「きゃっ! 何すんのさゆかりんのエロ忍者!」
それに憤慨したゆかりは素早くマキの突き出るような巨乳を鷲掴みにした。この攻撃を皮切りに二人は格闘し始めた。
ヒュン、シュバババババという風切り音が聞こえるほどの高速で四肢を動かし打撃を打ち込み合う、かなり本気の戦いである。
「あだっ!」「いたっ!」
最後はヒップアタックでゆかりとマキのデカいお尻同士がぶつかり合い、強烈な衝撃で弾き飛ばされ床に転がっていた。
「そろそろ時間ですね」
「うん、通路で待機しないとね」
ナノスキンが硬化して形成された、ハードスキン装甲がI字に食い込んだ魅力的なお尻をさすりながら、ゆかりとマキはそれぞれのACに向かう。
おふざけでヒートアップしていても、時間になれば仕事モードになるのは流石であった。