蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ   作:その辺の残骸

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イスニアの嵐Ⅳ

 

 大戦力である。星系外から召集されたノイアーキスの増援艦隊は五十隻を超えていた。

 しかし、その三分の一は艦種がまばらで、ノイアーキス所属を示す黄色いラインの入ったカラーリングも入っていない。

 COAM(カネ)で集めた宇宙海賊以下、ゴロツキの集まりである。

 

 艦隊の司令官は十分であると考えていた。どうせ弾除けである。

 

「本社付き艦隊はイスニア艦隊と交戦を開始! 予想通り拮抗しています!」

 

「サフィーロ各国は非難声明のみで、軍に動きは見られず! こちらもわが社のAIの予想通りです!」

 

 オペレーターの報告に艦隊司令はほくそ笑んだ。このまま艦隊が戦闘に参加すれば社の勝利は確実なものになる。

 ノイアーキスの戦闘計画は一から十まで中枢となる戦略AIが決定したもので、人間は指令に従うのみ。

 

 社の利益は自身の利益であるという同一化した意識を持つ彼らにとって、一国家との紛争さえも疑念や不安を抱くに値していない。

 

「三時方向、上方七十度より高速で接近する反応が二! デブリ帯に潜伏していた模様!」

 

 そんな報告が叫ばれても焦ることはなかった。予想されていた攻撃だったからだ。

 

「後続の機影は?」

「ありません! たった二機でこちらに向かっています!」

 

 そして、敵の抵抗は想定を遥かに下回るものだった。

 

「特攻兵器の類か? しかし愚かな。たった二機では艦隊への打撃など微々たるものだ」

 

 司令が迎撃せよと命じれば、紫色に瞬くプラズマ弾頭を装填したミサイルが直進してくる戦闘艇に殺到する。

 敵機が大規模破壊兵器を抱えている可能性を考慮し、全艦艇による一斉攻撃を行っていた。

 

 ミサイル群の第一陣が目標に直進する。プラズマが暗黒の宇宙に紫電を炸裂させ、戦闘艇が消し飛ぶ。

 誰もがそのイメージを抱いていたのだが。

 

「敵機はともに迎撃を全弾回避! 無傷です! 機動でこちらのミサイルを上回っています!」

 

「何だと!?」

 

 各部のブースターを猛噴射させ、戦闘艇は膨大な数のミサイルを振り切る複雑かつ高速な機動を描く。

 

『信管が作動するギリギリを抜けてやがるぞ!』

 

『あんなデカい背負い物つけて掠りもしねえなんてどうなってる!?』

 

 艦隊に加わった海賊達の粗野な声が通信回線を沸き立たせる。

 突っ込んでくるたった二機にただならぬモノを感じ、勝手な判断で砲撃開始。

 艦載機のMTもそれに釣られ、発砲する。

 

 戦闘艇の側面から光り輝く球体が多数放出され、同時にノイアーキス艦隊の火器管制レーダーの精度が著しく低下。

 

「敵機、多数のデコイ及び高出力のECM放射!――――高エネルギー反応! 砲撃が来ます!」

 

 高出力レーザーが機首から発射され、海賊の駆逐艦を撃沈。

 もう一機の戦闘艇からの砲撃で、ノイアーキスの防空艦が直掩のMT二機とまとめて射抜かれる。

 

 

 動力炉の誘爆で起こった大爆発は、船体を無惨に消し飛ばし、結月ゆかりと弦巻マキの敵を慄かせた。

 横髪だけ長く伸ばした紫髪と金髪ストレートロングの二人は二十時間の待機を終え、突撃していた。

 

「ちょうどいいタイミングで来てくれたものですね! 今日のゆかりさんは絶好調、アドレナリン全開ですよ!」

 

 見た目だけ理知的な紫髪の蛮族は、過剰なほどの弾幕に立ち向かい、恐れるどころか興奮していた。

 

 イスニア艦と本社艦隊との間で戦端が開かれ、それに呼応してマキと一緒に攻撃を開始したのである。

 

 そのとき、ゆかりは黒いCストリング状装甲に固形物を排出し、処理を終えて身軽になったところだった。それが絶好調の理由である。

 

 戦闘開始から三分が経つ。

 既にゆかりのお尻と妖艶な黒い装甲の間に、戦闘への集中を妨げる違和感はない。

 スーツを構成するナノマシンが、残さず分解したからだ。

 

 ナノスキンの被膜装甲によって完全に戦闘に適したコンディションになっている。

 ゆかりは強力な戦闘兵器を動かす部品であるかのように冷徹に優美な肉体を動かしていた。

 

 メカニック少女、琴葉葵お手製の戦闘艇のようなナニカ――――突撃強襲外殻とでも呼べる追加装甲を纏ったエインセルが、機首のハイレーザーキャノンを連射する。

 

 専用サブジェネレーターと冷却装置がセットなので、レーザーの発射感覚は短い。また一隻――ノイアーキスの巡洋艦を撃沈した。これは中々の獲物だ。

 

「やりました!」と喜ぶが気を抜かず、視線を奔らせ、抜け目なく反撃を躱す。

 

 サイドブースターの燃焼は良好そのものだ。強烈な推進力で機体を押す。強引に回避機動。

 バレルロールで視界が逆さまになり、頭から脚に向かって血液が押し出されていく感覚。

 

『わっわっっ! ちょっとヤバいかも!?』

 

 不意に響いたマキの悲鳴に、後ろにいる彼女のキルドレに振り返り、やや険しくなるゆかりの表情。

 

「フォローします! マキさんはそのまま直進しちゃってください!」

 

 ランチャーからミサイルを発射。敵もECMとチャフフレアで妨害しているから誘導は端から当てにしていない。

 直進コースで命中させる、ロケット弾のような使い方をしている。

 

 ブロックモジュール構造なので撃ち尽くしたランチャーは切り離せる。

 

 ミサイルで敵の気を散らしながら、機首をマキに向かっていく誘導弾の塊に向けた。

 トリガーを引く。青い光柱が空間を貫き、ミサイルを纏めて破壊。

 

「ふんっ!」

 

 さらに、ゆかりは機首は起こす。ブースターの力技で跳ね上げたため、引き締まった少女の体に強烈な圧がかかり、ゆかりは思わず苦痛に美貌を歪める。

 

 マキを狙った本命のレールキャノンを撃墜した。桁違いの初速を誇る砲弾に反応し、集中砲火をいなしがら迎撃したのである。

 

『サンキューゆかりん! いやー先に処理してなかったらチビってたかも』

 

 明け透けな事を言いながら、マキのキルドレが収まった戦闘艇は三隻纏めて敵艦を射抜いている。

 

『やってくれたね! これはお返し! ゆかりんには後でちゃんとお礼するからね!』

 

「楽しみにしていますよ」

 

 攻撃に怯えて放出するなど恥極みという蛮族価値観である。

 ナノスキンスーツで処理すること自体には何の抵抗もない。

 実際、マキは敵に向かって突っ込んでいるときに、液体を何気なく放出していた。

 

 隙間なく股座に張り付いた曲部装甲の内側は、金髪の美少女が排出した液体を吸い取り、あっという間に乾いていた。

 

(やはりナノスキンスーツは便利ですね。コクピットに缶詰になる度に実感します)

 

(このスーツなしで戦うなんて考えられないよ! もうヤミツキってヤツ?)

 

 あらゆる環境から着用者を保護し、快適に保ち、様々な点で厄介極まる老廃物のリサイクルまで行う魔法のようなハイテクぴっちりスーツは、二人にとって最高の戦装束だった。

 

『こっちのキャノンは弾切れ! そっちは?』

 

「私もです――――では、ここは同時にお披露目といきましょうか」

 

『いいねそれ! なんかカッコいい!』

 

 いよいよノイアーキス艦隊との距離が縮まると、エネルギーを使い切った機首をパージ。突撃強襲外殻に接続されたACの姿を露わにする。

 

 紫髪のゆかりが駆るエインセルは、惑星ルビコン3の企業エルカノの新型ALBAフレーム――その試作品のプライベートカスタム。

 白青赤のトリコロールカラーが似合うヒロイックな姿のACである。

 

 マキのキルドレはノイアーキスの独立元であるアーキバスのフレームだ。

 

 頭部はVP-44D、コアはVE-40A。腕部と脚部はそれぞれ、VE-46A、VE-42A。曲線的なフォルムの重量級だ。

 

 ルビコン星系からの撤退時にいただいた最新パーツも含まれたアーキバス製ACは企業私設軍のカラーと真逆の深紅に塗られている。 

 

「懐に潜り込んでしまえばこちらの物です」

 

『よっしゃあ、ばりばり撃ちまくるぞ!』

 

 同時に外装に隠してあった補助アームが突き出された。すべてのアームには剣呑な武器が接続されている。

 

「今回は攻める側! つまり!」

 

『わたしとゆかりんの大得意なお仕事ってわけ!』

 

 一心同体の攻撃で、積んできたあらゆる火器を同時にぶっ放す。反動を推力で打ち消し、止まることなく撃ち続ける。

 葵はメリニットや大豊の大口径火器を掻き集めてくれた。

 

 無理やりACの火器管制システムに繋いでいるので、操作はマニュアルかつ殺人的。しかし、それを手足のように操るのが蛮族な二人の技量である。

 

「十七隻目!」

 

『こっちは十六隻! だけど戦艦と軽空母をそれぞれ一隻仕留めてるよ!』

 

「やりますねマキさん! ならば私も戦艦喰いといきますか!」

 

 補助アームに持たせた銃火器で瞬く間に十数機もの空間戦闘用MTを撃墜し、迎撃のミサイルを叩き落し、バレルロールで蒼いブースト噴射の軌跡を残しながら、艦隊を蹂躙するエインセルとキルドレ。

 

 既に艦隊は半数を割っている。悪夢よりも酷い、デタラメなキルスコア。しかも機体の損傷はごく僅かという理不尽さ。

 

 必死で一斉射撃するMTが、電磁加速された弾丸に次々に射抜かれる。ジグジグな機動で挑発するように飛び回るトリコロールカラーのAC。

 

「戦艦のパルスアーマーとて撃ちまくれば破れる! そして――――」

 

 拡散バズーカを撃ち込み、その間にも右手に持ったガトリングガンでパルス防壁を減衰させ続ける。

 薄れた防護膜を高速で突き抜け、邪魔な護衛機にミサイルを浴びせて叩き落とし、エインセルは戦艦の底面に向かうべく急降下。

 

「強烈な一撃で落とすというわけです!」

 

 強襲外殻にマウントしたVE-60LCA、三連装レーザーキャノンで戦艦の真下から動力、ブリッジまで撃ち抜く。

 

「しっ信じられん……! あれはアーキバスの新兵器なのか!?」

 

 火力と機動性を高める追加装備を付けているとはいえ、たった二機のACに一方的に艦隊が叩きのめされる異常事態。

 片割れがアーキバス製ACなので、そんな推測が艦隊司令の口を突いて出る。

 

「敵機急速接近! 赤い方です!」

 

 殆どの者が強力なレーザーライフルを連射しながら肉薄してくる深紅の重量二脚ACを見ていた。

 

「迎撃だ、何として撃ち落とせ!」

 

 二機のACは好き勝手に動いているようで、緊密に連携するようでもあった。

 壊滅した艦隊の生き残りをトリコロールカラーのACが引き付け、深紅のACが頭を潰しに迫る。

 

 対空砲火が赤い装甲に当たり、歓声が起こった。だが、レーザーであったため、エネルギー防御に優れた装甲に弾かれるに終わる。

 

「邪魔臭い! 大人しくしていて!」

 

 プラズマキャノンの炸裂が旗艦の武装を破壊していく。ブリッジめがけて加速をつけたキルドレは脚を突き出して、

 

「あり得るのか、こんなイレギュラーが!!」

 

「必殺! ハイパーソニックマキマキキィィィク!」

 

 大型ブースターを活かした強烈なブーストキックで艦橋を粉砕。蹴飛ばしてそのまま、遥か遠くまで飛び去る。

 

 強烈な反転機動でぶるんと弾むマキの双丘。本当に大きくて魅力的なカタチのバストだ。

 

 キルドレは要らなくなった武器と燃料切れのプロペラントタンクを投棄する。

 

 ノイアーキスの旗艦は沈黙し、残った敵機はゆかりに銃を向けられると慌てて星系の外に向かって逃走していく。

 

 周辺に漂うのは残骸と航行不能になった艦だけだ。

 

「残念ですが、勝利の余韻に浸る暇はありませんね」

 

『だね、急ご。これは本当にヤバそう。弾と燃料をキープしていて良かったよ』

 

 すぐさま宙域を離脱する。戦闘中に新たなノイアーキスの動きがあり、ゆかり達は対応を要請された。

 エイルセルとキルドレが向かう先は、絶対侵入禁止宙域。旧世代の無人戦艦フラガラッハが封じられた領域である。

 

 

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