蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ   作:その辺の残骸

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遭遇!最強特務機体カタフラクト!

 

「ふはは、他愛なし!って感じだね!」

「またまたごちになってしまいましたね! Vです! V!」

 

 ゆかりとマキは市街地最後の防衛ラインらしきHCとLCを瞬殺したのだ。

 盾持ちLCを三秒で落とし、パイロットが動揺したHCを二機かかりで前後からガン攻めして叩き落した。

 

 HCは挟み撃ちを避けるために行った急速錐もみ上昇の最中にオーデルブレイカーのレーザーキャノンでブースターを狙撃された。

 さらにミサイルとガトリングガンが脆弱部に綺麗にハマった。

 

 スタッガーに陥ったHCにゆかりがすかさず重ショットガンとブレード、パイル、キックというベルゼルガ必殺コンボをお見舞い。

 

 哀れ地面に滑り落ちたHCのパイロットが飛ばす呪詛の言葉を無視して、一回転してからライフルのコクピット接射でクールにキメた。

 

 被弾は接敵時のみで済ませた。おかげでリペアの使用回数は3回のままだ。

 

「やっぱり今日はツイてますよ!」

 

 ゆかりは声を弾ませ、紫のナノスキンを張り付けた平らな胸も弾ませたつもりになる。

 

「天下のエリート、執行部隊様があんな油断した動きしてくれるなんてね! 新兵さんだったのか? まあけど、褌を締めていこうか!」

「この恰好で褌なんて締めたら、バカみたいですよ! ゆかりさんやマキさんのような美少女だけが着ることを許されるスーパーカッコいいスーツが台無しです!」

「も~そういうことじゃなくて!」

 

 他愛のない話をしながらベルゼルガとオーデルブレイカーは死した石巨人の如きビル群を駆け抜けた。着陸すると地下通路に侵入する。

 

 この地下通路は研究施設の駐機場に続いている。

 MTによって建造された建物なので天井は高い。駐機場はより広く、三次元戦闘の妨げにならないだろう。

 

 独立傭兵レイヴンはゆかりとマキよりもさらに速いペースで、近隣からも集められて膨らんだ封鎖機構部隊の大部隊を撃破。

 陽動任務を終えて既に帰還している。

 

 通路を滑走している間にお礼のボイスメッセージを送信しておいた。レイヴンがガレージに帰還すれば再生される。

 かなりの自信家のような口ぶりだが、二人とも「理不尽に生き、理不尽に死ぬ」が信条だ。大事な言葉は伝えられるうちに伝えておく。

 

「にしても凄かったねえ、レイヴン」

「本当そうですね。戦いたい気持ちとそうでない気持ちが半々にありますよ」

 

 マキの視界に投影されたゆかりのバストアップカメラが神妙の表情を映す。

 

「心が二つあるーってやつ? ところでゆかりん、迎撃がきたら――――」

「分かっています。遠慮なくマキさんの背中に隠れますよ」

 

 ゆかりはマキの背後に隠れてから反撃までの一連の動きを複数パターンイメージする。

 お調子者の蛮族だが、操縦は理論的なのが、結月ゆかりだ。

 

 スリップストリームを利用しての猛突撃を意識する。蒼き狂戦士ベルゼルガの戦闘スタイルは単純明快だ。

 被弾を恐れず神速で接近し、全力で攻撃する。狂戦士から殺戮の熱狂が抜けたら、何も残らない。

 

 オーデルブレイカーにはパルスアーマーが搭載されている。

 パルスアーマーは機体全周にエネルギー防壁を展開する。

 ACのものは持続時間が非常に短い。

 

 だが、一発程度なら艦砲クラスの直撃をも防ぎ、回避機動を行うチャンスを作れる。

 

 通路の終点が近づくとマキは少し緊張した。頭の中で危険を知らせる"嫌な予感"が鳴り響く。

 操縦桿のパルスアーマー展開トリガーに指をかけて深呼吸する。

 

 駐機場では封鎖機構の地上最強特務機体"カタフラクト"がレーザーキャノンの砲口を通路に向け、待ち伏せしていた。

 

 古代ローマの重騎兵の名を頂くタンク型の大型兵器だ。多数の強力な火器を搭載し、高速かつ俊敏に大地を駆ける。

 速力、火力、装甲全てがACでは比べ物にならない。文字通り、火力は要塞並み。単機で大軍を殲滅できるモンスターマシンだ。

 

 特に長射程、高初速、高威力を誇るレーザーキャノンには一撃でACを破壊する威力がある。

 

 コアである重装甲MTの中では銀髪の美少女姉妹が緊張した面持ちで敵を待っている。

 このカタフラクトはアルカディウス姉妹が搭乗する複座型。双子特有のコンビネーションを活用するための特別仕様だ。

 

 姉はシエル、妹はエセルという名だ。

 惑星封鎖機構のエリートパイロットである少女達は十六歳だ。十四歳で空港を占拠したテログループを排除する任務で初陣を飾っている。

 

 姉妹は戦争孤児であった。鎮圧にやってきた封鎖機構の執行部隊に保護され、高いパイロット適正を見い出された。

 

 民衆にとっては無関係な理由で終わらない紛争が続いていた。飢えと渇きに苦しんでいたシエルとエセルにとって封鎖機構は救い主であった。

 封鎖機構に身を捧げたのは自分の意志だ。

 

 機構は衣食住、高度な教育、尊敬できる仲間達。それにアルカディウスという、美しいファミリーネームも与えてくれた。

 機構の最高意思決定者たるAIシステムの判断は常に合理的で公平だった。

 

 だからシエルとエセルは今日まで迷を持たない、完璧な機構戦士として振舞えた。

 

 しかし、前方ガンナーシートに座る妹のエセルは浮かない顔をしていた。

 実際に顔が見えているわけではないが、姉妹ゆえに気持ちが分かる。

 

「待ち伏せはシステムの命令。だから、きっと間違っていない」

 

 姉であるシエルの口調はいつも断定的だ。

 

「そう……だよね」

 

 妹エセルの口調は柔らかい。姉以上に純真で心優しい気質だ。エセルは自分を納得させるように言葉を紡いだ。

 

 システムはいつも私達を助けて、正義の道をを示してくれる。

 戦闘中も常に機体のCOMと同期して的確な指令を下し、情報の照会まで行ってくれる。

 

 妹を諭したシエルの胸中にも疑念が渦巻いていた。

 

 コーラルを動力源とした危険な兵器、世界のバランスを一変させるものが封印されているとはいえ、味方を捨て石にする命令が下されていたからだ。

 他の部隊と共に敵を迎撃しようとしていた姉妹にこの地下駐機場での待機命令が下されたのだ。

 

 戦場は過酷で残酷なものだ。それはシエルもエセルも理解している。

 いかに強大な兵力、強力な兵器、優秀な兵士が揃っていても状況次第で追い詰められ、殲滅されてしまうこともある。

 

 今、ルビコン3の惑星封鎖機構が陥っている状況がそれだ。通信で聞こえた部隊の仲間達、人類社会の守護騎士たる先輩たちの悲痛な断末魔。

 アーキバスの再教育という名の洗脳施設や劣悪極まるベイラム捕虜収容所に収容されている兵士達の事も考えてしまう。

 

 犠牲ありきの戦術はシステムにとっても苦渋の決断なのだろう。姉妹はそう思うことにした。

 それを見越したようにシステムは襲撃者であるACのパイロット、結月ゆかりと弦巻マキのプロフィールを提供した。

 

 極めて危険かつ、反社会的な傾向を持つ独立傭兵二人組だ。

 あちこちの星系の紛争に首を突っ込み、企業だけでなく封鎖機構に対しても打撃を与えている。

 資料の写真には撃沈された封鎖機構強襲艦の残骸、それも崇高な理念の象徴たるエンブレムの前で笑顔でピースしているゆかりとマキが映っている。

 自分達で撮影してネットワークに"宣伝"としてアップロードしたものだという。

 

 冒涜に怒りが込み上げ、体が震える。

 

 資料では結月ゆかりは"黒い鳥"。弦巻マキは"赤い鳥"である可能性大と最後に付け加えられていた。

 エラーだったようで、その記述はすぐに削除された。

――――"黒い鳥"

 その不吉な名は最悪のテロリストにして、ルビコン3に戦火を招き、封鎖機構が追い込まれる原因にもなった独立傭兵レイヴンを想起させた。

 

「それにしても、こんなスーツを着て外を出歩いて平気だっていうの?」

 

 姉であるシエルの呆れた声がドライバーシートから聞こえる。

 

 ゆかりとマキは見たことのないモデルの、スキンタイトスーツを着ている。

 裸同然の恰好だ。胸や尻の形が丸わかり、どころか煽情的に強調するスーツ姿で治安の悪い街を歩いている映像もある。

 やはりまともな神経をしていないようだ。

 

「これだってかなり恥ずかしいのに」

 

 エセルは下を向き自分と姉が支給されたパイロットスーツを見つめた。

 シエルも緊張感のある表情を保ちつつ、妹の呟きに心の中で同意する。

 

 十代の少女である姉妹の身体能力をサポートするために専用のパイロットスーツが支給されている。

 

 薄灰色のボディ・スーツと白いハードシェル・ユニットで構成された、まさに宇宙時代の戦乙女の甲冑と呼べるもの。

 上半身と体の側面が重点的に保護されており、高い防御力を誇る。

 

 お腹から下は極薄のスーツが大半を占め、ラインが剥き出しであった。

 ヘソの形は浮き出てるし、お尻部分だって、割れ目に食い込んでいる。

 股間部分を保護する頑丈な装甲板の上。

 薄灰色に染まった下腹部には惑星封鎖機構のエンブレムが金色が刻まれている。誇らしいが、なんだか恥ずかしかった。

 

 パワードスーツとしての機能があり、護身用にもなる。

 アルカディウス姉妹は常に着用が義務付けられており、制服の代わりになっていた。

 

 セクハラや盗撮といった卑劣な行為をする者は機構に一人もいない(いたとしてもシステムがすぐに捕捉して懲罰する)。

 だが、常に体のラインを曝け出すのは恥ずかしかった。

 

 特に後ろにいる人の視線が気になる。妹のお尻を庇うべく、シエルはいつもエセルに前を歩かせていた。

 

 急に湧き上がってきた、戦場に相応しからぬ気持ちは通路の監視カメラを見た時に消え去った。

 それぞれ蒼と白を基調としたブリキの騎士めいたACが高速で接近している。

 

 カスタマイズパーツを用いた旧式機体だ。

 

 言葉で伝えずともエセルは動く。

 

「お願い……これで終わって!」

 

 フルチャージしたレーザーキャノンを隔壁越しに発射。この戦場で散った戦友達の無念が晴らされることをシステムに祈った。

 

 通路を覆い尽くすほどの巨大なレーザーが一瞬で二機を飲み込む。当然、監視カメラは全滅だ。

 シエルは操縦桿を握り、万が一に備える。

 

 通路の向こう側で役目を果たしたパルス・エネルギーの光が散った。白い装甲に熱を帯びながらACが突撃してくる。

 その背後から蒼いACが飛び出し、見たこともないほどの加速で突っ込んでくる。姉妹は息を呑んだ。

 何らかの方法で砲撃を察知して、パルスアーマーで防御したのだ。

 

「エセル! 全砲門開け!」

「分かった! お姉ちゃんは好きに動いて!」

 

 シエルはカタフラクトを疾走させ、装甲の厚い側面を敵に向けて防御姿勢に。

 

 そのまま敵を翻弄する急速ドリフトを行い、エセルのトリガーで火砲の嵐が巻き起こる。

 

 破壊の嵐に飲み込まれる前にAC二機はカタフラクトに肉薄した!

 

 ACのパイロット・シートに座するナノスキンスーツ姿の美少女は同時に笑った。

 獰猛に、残忍に、愉快そうに。

 

「敵機、惑星封鎖機構特務機体カタクラフトです! なんか最強なやつです!」

 

 ゆかりが叫び、相棒に報告する。急加速をかけたベルゼルガは弧を描く機動で敵に襲い掛かる。

 

「ゆかりん、カタ"フラクト"だよ!」

 

 レーザーの熱が伝播して、コクピットの温度が急上昇したことで、汗を掻きつつマキが訂正。苦笑いしている美貌に汗が伝う。

 

 白い装甲に熱を帯びたまま、オーデルブレイカーはミサイル、レーザー、ガトリングの一斉射撃で真っ向勝負する。

 その様は信仰という狂気に駆られ、虐殺に邁進する聖騎士のよう。

 

「おおっと大博識ゆかりさんともあろうものが間違えてしまいました! ですが無問題です! どんなご立派な名前であれ、これから"スクラップ"に改名するんですから!」

 

 結月ゆかりは回線をオープンにして、わざわざ敵パイロットに聞こえるように叫んでいた。

 

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