蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ   作:その辺の残骸

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嵐砕きの蛮族ふたり

 

 遠方に巨大な爆光が起こり、ノイアーキスの本社付き艦隊の一部を消し飛ばした。

 艦砲としても驚異的な威力。プラズマの蒼い輝きを纏った砲弾が、複数の艦を真横から貫通していた。

 

 その光景をモニターに拡大表示して、金髪の蛮族は、「おっ」とまず一言。

 

『ヒュージキャノンの炸裂はいつ見ても心が踴りますね』

 

「だねぇ〜茜ちゃん達もうまくやってるみたい」

 

 ヒュージキャノンは、ゆかりとマキの母星で製造されたオーバード・ウェポンと称されるAC用武装の一種、他薬室長距離砲だ。

 

 AC用とは言ったものの、本来規格に合わないスケールの武器を外付けジェネレーターと、ハッキングによる制御系の上書きによって強引に使用する野蛮な代物である。

 

 コトノハ丸は、ヒュージキャノンをスケールアップして、ギガキャノンと名付けた砲を搭載している。

 製造したのは当然、メカニック少女の葵だ。

 

 イスニア軍を援護するコトノハ丸の砲撃は、敵軍の数的な優位を確実に削いでいる。

 カモフラージュ用の外装をパージして、主砲を露わにした高速貨物船は砲艦のシルエットに様変わりにしている。

 

 

 艦橋では、ピンクと水色の髪の姉妹が声を張り上げ、連携していた。

 

「ミサイル接近、数は三百! 艦砲射撃も来るよ!」

「うひゃー、ごっついな! ムキになってウチらを狙ってきとる!」

 

 葵の警告に、茜は回避運動の舵を取る。航空機のような操縦桿、タッチパネル、フットペダルを組み合わせての操船だ。

 

「砲撃はウチが避ける!」

「ミサイルは私が!」

 

 各部にあるミサイルランチャーから迎撃の誘導弾が発射される。

 良好な運動性でレールキャノンやレーザーキャノンを躱した改造貨物船に迫るミサイルが叩き落され、無数の爆発が宇宙にぱっと広がる。

 

「全弾撃墜! さすが葵や!」

 

 絶大な威力の艦砲射撃で、ノイアーキス艦隊を攻撃しているコトノハ丸は、ギガキャノンのチャージによる放電現象と高いエネルギー反応のため、目立っている。

 

 だから集中砲火を浴びている。

 判断を誤ればナノスキンスーツ姿の琴葉姉妹は跡形もなく消し飛んでしまう。

 

 緊張感や恐怖は確かに感じており、勇ましく振る舞う茜と葵は、スーツの下に冷や汗を滲ませている。

 

 しかし、ピンク髪のお姉ちゃんは獰猛に笑って見せた。

 

「ウチらばっか見てると、ほら、そうやってタコ殴りにされるで」

 

 正面のイスニア艦隊とついさっき参戦した援軍が、一斉攻撃をかけ、ノイアーキスの主力艦を含めて撃沈したのだ。

 

 自分たちの攻撃や存在が戦況に貢献している、その実感が姉妹を奮い立たせた。

 

「ギガキャノンチャージ完了! これが最後の一発だよ!」

 

「ナイスタイミングや! なら、狙うは大将首やな!」

 

「敵旗艦との距離は十五万km、遠いけど十分当てられる!」

 

 火器管制システムがアテにならない距離だが、葵は自ら直撃コースを計算。茜の操船で、コトノハ丸を軌道に乗せる。

 

 船体をレールキャノンが掠め、艦橋が揺れたが茜は動じなかった。

 

「琴葉商会からのサービスや! ありがたく受け取りや!」

 

 ギガキャノンが発射される。蒼い輝きの軌跡を曳いた砲弾が、旗艦のパルスアーマーごと装甲を撃ち抜き、艦の中心まで食い込む。

 一秒経たずに弾頭が起爆。核融合爆発の閃光が広がった。

 

「やったぁ!」

 

 跡形もなく消し飛んだ敵艦に姉妹の歓声が重なる。

 

 

 紫髪の蛮族は、母船からのコールに応じて回線を開いた。人体が耐えられる限界領域を超えた加速荷重に苛まれているが、

 

「はい、こちらゆかりさんです!」

 

 明るい声と笑顔で応えてみせる。

 

『こっちは何とかなります。ついさっき、自衛権行使を宣言した各国の艦隊がノイアーキスへの攻撃を開始しました』

 

 ゆかり達が増援を殲滅したことで、イスニアとノイアーキスとの戦力差は逆転。

 そこにサフィーロ各国の軍が加わったので、ノイアーキスの勝ち目は完全に無くなっている。

 

「ならば、残るは私たちが追ってるヤツだけですね――っと、失礼!」

 

 大型ブースターを背負い、猛然と宇宙を駆けるエインセルは、立ち塞がる巡洋艦を叩き斬った。

 MOONLIGHTの燃え盛る焔の如き刃にかかれば造作もない。

 

 茜と喋っている間も、渦巻くようなバレルロールで迎撃の砲火を躱していたのだ。

 

 マキと一緒に殲滅した艦隊とは別の小規模な別働隊である。そこから発進した大型MTがフラガラッハに向かって進んでいた。

 クラゲを彷彿とさせるフォルムの機体だった。

 

『もう、邪魔ぁ!』

 

 深紅のキルドレが金髪美少女の怒声と共に、レーザーとプラズマを解き放つ。

 ノイアーキスの残り少ない戦力はゆかりとマキがMTに近づけないよう、全力で邪魔している。

 

『よっし! 道が開けた! ゆかりん、お先に!』

 

 一気にペダルを踏み込み、トリコロールカラーの僚機を追い越す。

 

 あのMTはフラガラッハを乗っ取るために誂えた機体なのだろう。何として撃墜しなければならない。

 

『よーし、そのままそのまま〜』

 

 マキはチャージしたKARASAWAで、敵機を狙う。ノイアーキスの大型機は全身のスラスターを吹かして逃げ回っている。

 

「あと少しだったのに!」

 

 引き金を絞ろうとしたとき、マキは集中を乱す警告音に舌打ち。

 既に絶対不可侵宙域に踏み込んでしまっている。何百にも及ぶ火線が侵入者を狙い、殺到してきた。

 

『うわっ!』

 

 回避マニューバーで、弾む金髪娘の巨乳。

 

『危ない!』

 

 一方、ゆかりの平坦な胸はどんな激しい機動でも揺れることがなかった。

 

 二人は敵機が撃墜されることを期待したが、クラゲのようなMTはしぶとく生き延び、ゆかり

 

 ついに封鎖圏内を抜けた。ターゲットであるノイアーキスのMTは依然として先行している。

 

「あーこれは大変だぞ」

 

 思わず、弦巻マキは呟く。白い艦体の巨大戦艦に動きがあった。

 

 あっこれヤバい。緑色の粒子を収束、加速したエネルギー兵器が照射されたとき、蛮族二人は最大級の危機を感じて緊急回避。

 

『ふんっぬぅぅぅ!!』

『うぉぉぉぉッ!!』

 

 生き延びるための強引な機動で、これまで以上に激しく揺さぶられるゆかりとマキ。

 

 両脚で力強く踏ん張る姿勢になっている。極薄スーツの数少ない装甲に覆われた股間を開けっぴろげにする、羞恥が刺激される格好であった。

 

 拡散照射され続ける薄緑色のレーザーを躱す。やはり、フラガラッハはゆかりたちの故郷で時折暴れる無人兵器の同類のようだ。しかし、これほどのスケールのモノは見たことがない。

 

 艦体の整波装置が粒子の流れに指向性を与え、パルスアーマーのような球形の防護膜として纏う。

 

「なんてコトをしてくれたんでしょう!?」

 

「ホンット禄なことしないなぁノイアーキスって会社っ!」

 

 余所者である蛮族二人でも怒る所業であった。ノイアーキスが送り込んだMTを感知したフラガラッハは、危惧されていた通り再起動。

 再び本来の目的を達成するべく動き出した。つまり、惑星サフィーロの殲滅とさらなる目標を探して宇宙を彷徨うというハタ迷惑なフルオートの殺戮兵器。

 

 粒子兵器によるダメージを食らうギリギリで弾幕を潜り抜けて突き進むエインセルとキルドレ。引き返すために減速すれば、撃墜されてしまう。

 だから前に進むしかないのである。

 

 不意に、あらゆるチャンネルでの布告と共に新たな艦隊がサフィーロに接近してきた。

 

「惑星封鎖機構!? 今更になって!」

 

 苛立ちを隠せず、ゆかりは吼えた。艦載機のLCやHCを展開した大艦隊が堂々と接近している。

 元々、フラガラッハの監視を名目に惑星サフィーロ近辺に駐留していた艦隊である。ノイアーキスの動きには干渉せず素通りさせていた。

 

 そして、フラガラッハが動き出した途端に進軍を開始したのである。

 封鎖機構は権限を行使し、事態収拾までの惑星サフィーロ国家の主権の制限及び国軍の指揮権を要求している。

 

 しかし。

 

 大艦隊でやってきた惑星封鎖機構は、より大きな脅威と見なされたようで、フラガラッハはそちらの排除に火力を傾けた。

 

 剣のような艦首を向けるとそこに蓄えられたエネルギーを解放。側面に備えられた砲やミサイルとは比べ物ならない威力の粒子砲が放たれ、封鎖機構の艦隊を飲み込んだ。

 八割が一射で消滅し、残りも続いて放たれた弾幕で全滅する。

 

 壮絶な光景であったが、ゆかりとマキは圧倒されることなく、肉薄していく。

 

『あれ、ノイアーキスのもいつの間にか墜ちてる?』 

 

 迎撃の砲火は薄まったが、まだこっちに飛んできてはいる。余裕ができたマキは追いかけていたノイアーキスのMTが消し飛んでいることに今、気付いた。

 

『どうしよ、わたし達も引き返そうか?』

『冗談はよしてくださいよマキさん! この攻撃の最中にどうやって戻れというのですか!?』

『えへへ、ごめーん』

 

 軽いノリで金髪ロングのボケに突っ込む紫髪である。最初はビビったが、今はかつてない巨大な敵に興奮している。アドレナリンがドバドバ出ていてハイになっていた。

 

 一方、コトノハ丸の姉妹は大慌て。

 

「ゆかりさん! マキさん!」

 

 水色髪の葵が蛮族二人に呼び掛ける。

 

「こっこりゃえらいこっちゃやで! ウチらも加勢に行かんと!」

 

 他が後退していくなか、茜は船をフラガラッハに向けて加速させようとする。

 

『だいじょーぶ。すぐ片付けてくるよ。二人は下がっていて』

 

 そんな琴葉姉妹にマキが言う。

 

『葵さんが仕上げてくれたACならば、あんな戦艦の一隻や二隻、へっちゃらですよ』

 

『けっけどあの粒子装甲はACの武器ではとても突破できませんよ』

 

『だから、これをぶつけさせてもらうよ。ごめんね!』

 

 意気揚々と葵に言ってのけるゆかりである。金髪ロングの蛮族美少女は素早く背負ったブースターをパージする。キルドレとエインセルは時間差でブースターを射出した。残った燃料を燃やし尽くし、弾幕に撃たれることもなく、粒子装甲に激突した推進器が強固な守りを揺らがせる。

 

「そこに私が切り込むというわけです!」

 

 さらにゆかりの振るうMOONLIGHTの炎刃が、眩い粒子の膜を完全に切り裂いた。エインセル、さの後に続きキルドレが装甲の内側に飛びこむ。

 

「突破口はキルドレが! 狙い目は――――よーし、いっけぇぇぇぇぇっ!!」

 

 深紅の重量級ACはKARASAWAの一射で、艦体の装甲を撃ち抜いた。最後の加速でフラガラッハに乗り込み、火花を散らしながら急減速。

 獰猛に笑う女の蛮族がふたり。

 

『わたしのほうは残弾に余裕あるけど、そっちは?』

「ノープロブレムですよ、マキさん」

 

 ジャキンと効果音が鳴りそうなほど勇ましくリニアライフルを掲げるエインセルが頼もしくて、マキは微笑んだ。二人ともAC本体の武装の弾薬は節約していたのである。

 

『本当にこれが最後のひと仕事だね』

「ですね。バカンスのつもりでしたが、こんなに滾ることになるとは」

 

 既に防衛用の無人機が起き上がり、こちらに向かってきている。ゆかりは前に出て、愛用のレーザーブレードを構える。やることは簡単だ。敵を無散らして、動力炉を破壊。それから脱出する。

 

 前方のシャッターを突き破り、直線的で鋭いフォルムの無人兵器が、緑色の粒子を纏いながら迫ってくる。

 

「ふふん、慣れているんですよ私達は!」

 

 機先を制して、アサルトブーストの速度を載せてゆかりは斬りかかった。

 

 

――――二機のアーマード・コアが艦内に突入してから十五分後。最初の爆発が起こった。

 さらにフラガラッハの各部で連鎖的な爆発が発生。

 か惑星サフィーロの総力をもってしても傷つけられなかった巨大戦艦が損壊していく様に、見守る全ての人々が目を剥いた。

 

 やがて、艦の中心部から緑色の光が爆ぜた。それが示す事実に文字通り惑星のあらゆる場所で歓声が起こる。

 

 爆光に照らされて浮き彫りになったシルエットが二機。全身に損傷を負いながらも、力強く宇宙を翔けて、破滅から逃れていくアーマードコアの姿だった。

 

 

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