蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ 作:その辺の残骸
フラガラッハの破壊は惑星サフィーロにおける、その日の唯一と呼べるニュースになった。
ノイアーキス本社にて籠城を続けていた経営陣は観念して降伏。私設軍の武装解除が進んでいる云々とった事柄は些事として隅に置かれている。
替えが効かない中枢を失ってしまったノイアーキスには抵抗する意味もその意志もなかった。
フラガラッハを掌握するために送り出されたMTは他ならぬノイアーキスの戦略AIを搭載したモノだったのである。
無人戦艦の再起動に呼応して、惑星封鎖機構が惑星サフィーロに内政干渉を試みた一件は既に広く知れ渡っている。
ルビコン3における敗走以後強まる惑星封鎖機構の専横への批判は、さらに勢いを増していた。
政治的にも経済的にも強い影響力を持つサフィーロの国家に対しての一方的な干渉は高くついたというワケだ。
星系規模の災厄となった半世紀前のアイビスの火に端を発する治安維持特権は失われることはなくとも、弱められることは必定であった。
少なくとも今夜、パーティーの出席者の中から、血眼になって金髪と紫髪の美少女を探すことはできないだろう。
パーティー。そう、結月ゆかりは親友と一緒に戦勝を祝う宴に参列しているのである。
歓談を遮らない、それでいて優雅な音色をホールに奏でる楽団の技量にゆかりは感心していた。
茜から借りた夜会用の衣装に身を包み、颯爽と歩んでいる。長く伸ばした艶やかな横髪が靡く。
鍛え抜かれた脚線美が剥き出しになる和風の衣装、というべきなのだろうか。
サイドをカットアウトした露出度の高いドレスで着飾っている。横から見たら帯を締めた腰以外は裸という大胆な恰好だ。
保守的なイスニアの夜会にあっては挑戦的であったが、絶滅をもたらす脅威が取り除かれた開放感から誰もが寛容になっていた。
それに、ゆかりの理知的な美貌と他者を惹きつける綺麗な立ち姿が、過激なドレスに気品を添えている。
宇宙のあちこちで権力と権威に楯突いて暴れる蛮族であり、口調と態度の割に脳筋かつ狂暴。
そんなゆかりだが、必要とあらば淑女に擬態できる器用さがある。
「どうゆかりん、楽しんでる?」
「勿論ですよ」
深紅のドレスで大人びたカラダを着飾った、陽気なマキと合流する。ゆかりが以前着ていたドレスのような、バックレスで白い肌の背中を露わにしている。
こちらも布面積が少ない。マキの素晴らしい長身の肢体と相まって、扇情的だ。
マキは生まれてはじめて経験する、豪華なパーティーに大興奮だった。探検するみたいに壮麗な宮殿のホールを歩き回っていたのである。
「その顔。ちょっと気遅れてしているね?」
「やっぱり、マキさんには分かっちゃいますか」
「とーぜん! ゆかりんとの付き合いは長いからね」
恥ずかしそうにゆかりは頬を掻く。
結月ゆかりは宇宙を駆ける蛮族であり傭兵だ。決して讃えられることなく、自ら欲することもない生き方を貫いてきた。
だから、ここが場違いに思えて気後れてしている。
本来はこの宴に参加するつもりもなかった。
だが、惑星の全住民が不安と共に見上げてきた巨大戦艦を破壊した救星の英雄として、ゆかり達を讃えたいとイスニアの国王自らに申し出を受けた。
こうなっては断るわけにはいかず、ドレスで武装して宮殿に赴く他に道はなく。
大々的に取り上げられることだけは丁寧に断り、いち参列者ということにしてもらったのである。
コトノハ丸の四人は魅力溢れる美少女なのであちこちから声がかかっていた。
それを受け流しながら、ゆかりは会場を歩んでいた。
「ここも一つの戦場と思って楽しむのがいいと思うんだ」
スペシャルマッチの乱入者を務める依頼を請けた際、高級なレストランに圧倒され、紫髪の相棒に勇気をもらった。
そのときに見出した境地を語ってみせるマキであった。
「なるほど。マキさんの姿勢に倣うとしますか」
無邪気な金髪ロングヘアの相棒の笑顔に向かって、紫髪の蛮族娘は言った。
それから、同じく招かれた茜を遠目に見つめる。
「茜さんは抜け目ないですね」
妹の葵と一緒に参列客と歓談している
明るい笑顔で他愛もない会話しつつも、コネを作っているのである。
二人のドレスはお揃いで、古代ギリシャの巫女を連想させる清廉な白の衣装だ。
際どいスリットから肉体美を魅せる紫髪と金髪と違い、露出は控えめだ。だが、十代後半の体のラインはくっきり出ている。
「ちょっとお邪魔できない雰囲気。あっそうだ!」
琴葉姉妹に声をかけようとして金髪の蛮族娘であったが、諦める。代わりにマキはゆかりの手を取った。
ダンスホールを指し示すと、
「せっかくだしさ、踊ろうよ!」
と誘ってくる。
「女同士でですか?」
「変かな?」
ホールを見渡しても、男女のペアで踊っているだけで、女同士はいない。
過激なドレスに冴え渡る美貌の二人が踊れば注目の的になるだろう。
普段は容姿を誇示することに抵抗のないゆかりだが、ここでは、あまり目立ちたくない気分。
「超絶美少女であるゆかりさんに釣り合うパートナーは、マキさんの他に居ないでしょう。では、リードをお願いしても?」
「まっかせて!」
だが、マキのキラキラした眼差しには抗えない。堂々とダンスホールに躍り出た蛮族娘二人。
間近で感じるマキの豊かな双丘に圧倒されながら、金髪娘のリードでステップを踏む。
戦闘とは異なるリズムで呼吸を合わせるのは正直、楽しかった。
だんだんと興が乗ってくると紫髪の蛮族は、マキからリードを奪う素振りをする。マキはあっさりと明け渡す。
「あはは、ゆかりんも楽しくなってきたんだね?」
「ええ。ここからは激しく行きますよ」
「望むところ!」
マキの美脚を持ち上げる。片脚を上げたまま、マキが身を翻し、それにゆかりが合わせる。
素早く華麗な動作に沿って、薄らかな布地がひらりと躍る。脚の付け根まで、見えてしまうような動きだ。
「やばっスカートの下が見えちゃう」
はっとなる金髪。髪が長いので背中は隠れるが、正面は無防備になる。
「今更ですよマキさん。それに念の為、見えてもいい下着をつけてきたじゃないですか」
ゆかりとマキは一見インナーが付けられないほどのサイドスリットのドレスを着ている。
実際は鋭角なレオタード状のインナーを装着している。なので、はしたないことにはならない。
色はお揃い。大人な黒の逆三角形がちらりと覗く。
「そうだった! じゃあ、ちょっとサービスしちゃおうかな?」
注目が集まるなか、ゆかりはマキと視線を交わし合い、思うがままに踊り続けた。