蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ   作:その辺の残骸

3 / 21
対決!アルカディウス姉妹!

「独立傭兵結月ゆかり及び弦巻マキ! 貴様達は私達が排除する!」

「覚悟してください!」

 

 アルカディウス姉妹の宣告と共に、地下駐機場内で激しい火力の応酬が起こり始めた。

 野生動物の機敏さがある、無限軌道で駆けまわりながら、カタフラクトは機甲中隊を粉砕する火力を投じる。

 

 高速のロケット弾幕が吹き付けられる。多数の火砲が織成す、整然たる破壊の交響曲が響き渡る。

 マキのオーデルブレイカーは垂直発射型ミサイルをQBで回避。レーザーキャノンに注視しながら旋回運動をして、攻撃の機会を窺う。

 

 ゆかりのベルゼルガはロケット弾幕と火炎放射の壁を鋭角的な跳躍で回避。

 小ジャンプとQBを組み合わせた機動を連続で取りつつ、ライフルの高速徹甲弾を浴びせる。

 

「ちぃっ! いい腕してますね!」

 

 が、ぎりぎりのところで装甲に弾かれている。

 QTをかけ、重力加速度の横殴りに操縦桿を握って耐える。

 回転を利用して、機体を転倒寸前まで傾けることで、グレネード弾を素通りさせる。

 壁で炎と金属片の華が咲き誇り、ベルゼルガの装甲にささやかな金属音が鳴る。

 

 ゆかりは唇をちろりと舐め、妖艶に微笑み、ベルゼルガにジグザグ機動を取らせた。

 

「いける! これなら勝てる!」

 

 複雑な兵装システムを巧みに操りながらエセルは声を弾ませた。シエルは冷徹の兵士の表情で静かに

 

「気を抜くなエセル。相手はネメア小隊を――――少佐達を葬った奴らなんだ」

 

 と妹を窘める。HCと盾持ちLCで編成された部隊のことだ。彼らは古参兵であり、封鎖機構の理念に忠実な尊敬する上官だった。

 

 アルカディウス姉妹が操るカタフラクトを最強たらしめているのは何より機動性だ。

 高速疾走する機体に連動して砲門が可動。敵を追尾、粉砕する。

 複座型ということはガンナーとドライバーで操縦を分担ができる。アルカディウス姉妹の専用機は通常タイプより多くの武装を搭載してあった。

 

 ガンナーは兵器システムの複雑化に、ドライバーは火砲の増大によって重量バランスを欠いた機体の操縦に大きな負担を強いられる。

 ある意味では、非人間的だが、それがシステムのやり方だ。人間が機械に合わせるべきなのだ。

 

 全周囲モニタが被弾を報告する。オーデルブレイカーのミサイルとガトリングガンが右側面に着弾し、ささやかな傷を残したのだ。

 

 さらにACはレーザーキャノンを発射するが、分厚い装甲に弾かれる。

 

 エセルは重装型ACの三倍はある火力で報復し、オーデルブレイカーは慌てて回避する。

 だが、エセルには弾着の手応えがあり、実際、オーデルブレイカーはリペアリキットで損傷を復元した。

 

 シエルはオーデルブレイカーを追撃するべく、蛇行を交えた操縦でカタフラクトを操り、追い詰める。

 後方で蒼い敵意が閃いた。

 

「うぉぉぉぉ!! ゆかりさん奥義その一、ライトニングスラァァァッシュ!!」

 

 ベルゼルガを跳躍させ、決めポーズめいた構えを取りつつ、叫んでている。

 ゆかりはパルスブレードで斬りかかろうとしているのだ。

 狙いはレーザーキャノンだ。

 

「しまっ!」

 

 蛇行機動に合わせられている。シエルは狼狽えた。パイロットスーツの内側、下着さえ付けていない肌に冷や汗が滲む。

 

「大丈夫!」

 

 エセルは微笑みながら、レーザーキャノンを回頭させ、ベルゼルガに向けて発射。

 手応えがあった。

 

「ごめんエセル! こんなミスは二度としない!」

 

 妹に詫びつつ、さらなる勇猛さと冷静さでもっと鋼鉄の戦馬を操るシエル。

 被弾した敵はバランスを崩して落下するはずだ。転がってきたら轢いてやる――――!

 

「きゃあ!」

「なっなにっ!」

 

 青天の霹靂の如く、コクピットに激しい衝撃が奔り、姉妹に年相応の悲鳴を上げさせた。

 

 車体とMTとの接合部に被弾したのだ。ベイラム製の重ショットガンによる強烈な一撃だった。

 蒼いACが意気揚々とカタフラクトの車体を飛び越え、こちらを向いて挑発してくる。

 なんとあの蒼いACはバランスを取り直し、QBで直進。瞬間的に攻撃を加えてきた。

 偶然、ではない。凄まじい技量と命知らずが為せる技だ。

 

 シエルとエセルは揃って蒼いACを睨んだ。

 

 ですます口調で理知的を装う、野蛮な少女の下品な笑い声が飛び込んでくる。

 

「どうですか! びっくりしたでしょ!? あは! もしかしてションベンちびって綺麗なおべべをダメにしちゃいましたか!? 今すぐ機体下りて全裸土下座して下されば、ゆかりさんのスペシャルカッコいいスーツの予備を一着提供しますよ! 姉妹で仲良く使ってくださいね!」

 

 まんまと弱点に命中させた高揚感で、ギャハハと下品に笑う結月ゆかりは戦術的な煽り屋であった。

 煽りで冷静さを奪えそうな相手にはオープン回線でまくし立てる。

 

 真面目なアルカディウス姉妹は格好の獲物だった。

 

「なっなぁ!?」

「えっええ!?」

 

 あまりにも下品過ぎる煽り文句は、機構の教育機関で上流階級の令嬢さながらに育ってきたシエルとエセルを絶句させた。

 

 

「ばっ馬鹿にしないでください! 私達には一週間連続使用できるナノトイレパックが配備されています! スーツが汚れることは絶対にありえません! 私は四日、お姉ちゃんは六日間交換していませんけど、清潔で快適そのものです! 値段だってあなた達が使っているパーツでいえば――――!」

「エセル! そんなこと教えなくていい!」

 

 ゆかりの煽りに真面目に反応し、言わなくてもいいプライバシーを暴露してしまったエセルははっとなった。

 エセルは温厚で優しい美少女戦士だが、アドレナリンが出ると、変なことを口走る悪癖が最悪のタイミングで出てしまった。

 

 流石のシエルも赤面し、生の感情を剥き出しにして叫んでしまった。

 

 二つの陣営に分かれて戦う乙女達の間に気まずい沈黙が走った。

 

「ゆかりん、いくらなんでも言い過ぎ」

「はっ反省してまーす……です…ごめんなさい……マキさん、ゆかりさんを嫌いにならないでぇ……!」

 

 マキは攻撃を避けながら、ゆかりのバストアップ映像をジト目で睨んでいた。

 ゆかりは「たった一週間!? 機構の技術も意外と低レベルですね! 私達のスーツは半永久的に大小ともに処理できるので超快適でーす! あっ大小って意味分かりますか? お二人が何日もスーツの中に溜め込んだ――――」

 

 等々とさらに下品に煽るつもりでいたが、マキの視線が怖いので止めた。

 

「えーと、うちのゆかりんがごめんね。ちゃんと後で言っておくか――――」

 

 マキの謝罪の最中にシエルは通信を切った。

 これ以上、こんな小学校も出ていなさそうな、下品で、卑劣で、野蛮な奴らと言葉を交わしたらおかしくなってしまう。

 

 深呼吸をして冷静になる。姉に倣い、エセルもそうした。

 あの二人は必ず倒して、今エセルが口走った内容が広まらないようにしなければ。

 

 シエルの中に猛然と戦意が湧いてきた。

 

 改めて、戦士として敵を分析する。

 なるほど。カタフラクトをスクラップにする、と宣うだけある。

 疾風か稲妻のような見たこともない速さで駆け抜ける二機のACには、カタフラクトという名の鋼鉄の嵐を拭き晴らすような強さがある。

 

 これまでの任務でも多くの強力なACと戦い、排除してきた。

 カタフラクトの火力の前に皆すぐに消し飛び、これほど長く反撃してきた者はいなかった。

 

 だが、強化人間であったとしても長時間続かないような激しい機動をしているのだから、大きく消耗していると見て間違いない。

 システムが示した最適戦術を続ければ敵はいずれリペアを使い果たし、致命的な操作ミスを晒すだろう。

 

「辛いけど、乗り切ろう」

「うん、お姉ちゃんとならどんな事でも乗り越えられるよ! 絶対に!」

 

 ひたむきに、言葉を交わすアルカディウス姉妹。

 それは、短時間ながら、猛烈な勢いで推移する戦闘による自分達の消耗を誤魔化すためでもあった。

 

 一方、ゆかりとマキの感覚は戦いによって研ぎ澄まされ、血が滾り、力が漲っていく。

 

「私、あの子達気に入っちゃったな」

「奇遇ですね、私もです」

 

 骨をへし折るような重力加速度により、シートに押し付けられながらも、年下を可愛がるお姉さんのように笑い合う二人。

 封鎖機構の兵士でありながら、生の感情をぶつけてくる姉妹は好ましかった。

 機械の一部に成り果てたコード暗唱マシン連中とは違う。

 

「それじゃ私が囮になります」

「悪いね」

「マキさんのためならえんやこらです……けど、やるからにはばっちりキメてくださいね!」

「もちろん! 凄いのを見せちゃうよ!」

 

 高速滑走するベルゼルガの後ろにオーデルブレイカーがぴったりとくっつく。

 かと思うと、ABを起動して急加速し、スリップストリームで後方のオーデルブレイカーに速度を与え、散開する。

 

 オーデルブレイカーはカタフラクトを中心に大きく回るような機動で駆ける。

 一方、ベルゼルガはパルスブレードをパイルバンガーと切り替え、カタフラクトに側面から猛襲する。

 

「甘い、です!」

 

 エセル、スピードスケート選手めいて奔るオーデルブレイカーに七割の火砲を向けて機動を割り出してから、必中の砲撃を加えようとする。

 平行してベルゼルガにロケットと機関砲の時間差攻撃を見舞う。

 

 ベルゼルガはロケットを回避するが、爆風で煽られ機関砲弾の餌食になった。

 パイルバンカーに取り付けられた特注の大盾を翳してコクピット・ブロックを守っているが、コントロールを失い、今にもスピンしそうだ。

 

「よし! これで終わり!」

 

 スタッガーしたベルゼルガに散弾砲を浴びせる。

 

「かかりましたね」

 

 にぃっとゆかりは狂暴に笑い、アサルトアーマーを始動させた。

 パルスエネルギーがベルゼルガを中心に炸裂し、カタフラクトの砲撃を飲み込み、機体そのものにまでエネルギーの奔流が届いていた。

 

 パルスの残光を押し退けるようにベルゼルガが飛び出し、カタフラクトの後ろからパイルバンカーを叩き込んだ!

 

「しまっ!」

「懐に入られた! これじゃ攻撃できない!」

 

 衝撃がコクピットにまで響き、アルカディウス姉妹の可憐なお尻がシートから浮き上がった。

 

「さあ、これで動けませんよ!」

 

 さらに推力偏向をかけた上でABを点火して、ベルゼルガを踏ん張らせる。

 ABに機体維持のためのリミッターを切り、最大以上の出力を発揮させたベルゼルガのパワーを加え、カタフラクトを抑え込んでいる。

 

「動けないっ! けど砲は使える! エセル!」

「解ってる!」

 

 エセルは正面から突っ込んでくるオーデルブレイカーに残りの砲門を解放した。

 こちらもパルスアーマーで大半を無効化するが、パルスが破れてもレーザーキャノンとロケット弾が残っている。

 さらに機関砲塔を回転させ、オーデルブレイカーに浴びせる。

 

 レーザーキャノンは通常ブーストで慣性を乗せたQBで見切って交わす。

 

 チャンス!ミサイルを砲口に打ち込んで、二度と撃てないようにする。

 

 残りの攻撃には装甲でも、機動でもなく、火力で対処する。

 

「凄いの、行くよ! 観ていてね!」

 

 マキは意識を集中させる。時間が止まる。砲弾が止まる。

 ガトリングのトリガーを引いて、全てのロケットと砲弾を撃墜した。とても簡単だった。

 

 シエルもエセルもマキとオーデルブレイカーが起こした奇跡に言葉を失っていた。

 オーデルブレイカーは鴉の如く力強く羽ばたく。赤い翼を持った戦の司だ。

 

 フルチャージで放たれるオーデルブレイカーの背部レーザーキャノン。

 ベルゼルガが重ショットガンで撃ったMTと車体の接合部に命中。青白く融解し始める。

 さらにガトリングガンを接射することで徹底的に解体する。

 

「お姉ちゃん!」

「エセル!」

 

 コクピットの中の姉妹は、白いACが繰り広げる残酷解体劇にただ震えて、互いを想いながら見ていることしかできなかった。

 ACSが完全にイカレてしまったのだ。

 

「そーれ!」

 

 最後に跳び跳ねて、ACの重量でコアMTを車体から切り離してしまう。スパークが散る。

 

 コクピットは無事だ。脱出したければできるだろう。

 生殺与奪の自由は勝者の特権であるとこの女蛮族たちは信じているから、姉妹の命を今は奪わない。

 

 突如、即時の総員退避を指示する警報が響き始める。

 これほどの戦力を投入してまで保持した施設を放棄する理由は施設管理AIが自律型C兵器を起動させたことだった。

 

「それじゃあ進もうか!」

「ええ、そうしましょう! 私もベルゼルガもまだまだ力が有り余っています! それにタイムイズマネーと言いますからね!」

 

 そんな事は関係ないとばかりに、ベルゼルガとオーデルブレイカーはABを吹かして施設の奥に突っ込んでいく。

 戦闘中、ベイラムから通達があり、主力部隊を進発させたとのこと。

 

 二人には到着までの現場保持の追加依頼とその報酬が提示されたのだ。

 

 さらに封鎖機構の捕虜が整備エリアに撃破したACや鹵獲した補給コンテナを集めて、戦力として再利用するつもりでいたという情報を明かした。

 今更だが、有難い話であった。現場を保持するためには補給が必須だからだ。

 

「エセル、怪我はないか?」

「大丈夫。ちょっとぶつけたくらいだから」

「……見せてみなさい」

 

 ブースト音が遠くなると、シエルとエセルはコクピットの脱出ハッチを開き、這い出るように外に出た。

 

 妹の怪我が本当に軽傷だと確かめると、二機のACが走り去った通路を睨んだ。

 

 非常警報が五月蝿く鳴り響く。シエルもエセルも今、何が正しいのか、何を為したいのか、分からなくなっていた。

 

 システムは答えてくれない。

 気持ちの整理をして、考える時間が欲しい。

 

 エセルが姉の手を握る。

 

「ここから出よう。私はまだお姉ちゃんと生きていたい」

 

 エセルに手を引かれ、シエルは駆け出した。そうだ。今は生き延びたい。

 

 システムが退避指示を下したからではない。崇高な使命に比べたら、塵芥に等しい浅ましい生存本能。

 だけど、今は大切な妹と一緒にいられる時間が欲しかった。

 

 パイロットスーツが奏でる硬質な足音が二人分、通路に反響する。

 

 薄灰色のスーツが張り付いた、少女達の可憐なお尻が悔しそうに揺れる。

 長大な地下通路をパワーアシストされた脚力で走り抜けた。

 

 ルビコンの空を見上げながら、シエルとエセルのお尻は新たに抱いた、強い意志を示すように、"きゅ"っと引き締まった。

 

 それは何が何でも生き抜いてやるという決意であった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。