蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ 作:その辺の残骸
最初に異変に気付いたのは、ビーチの海水浴客達だった。
人工の海の彼方に二つの黒い点が見えたかと思うと急速に近づいてくる。
それは戦闘兵器であった。二機のアーマードコア。アサルトブーストの排気音を轟かせ、海面に沿って飛んでいる。
四脚型による二機編隊の動きには大きなブレがあり、機体の装甲版に凹みや傷が目立った。
完全武装したACはコロニー外壁のハッチから忍び込んだ侵入者だった。
困惑したり携帯端末で動画を撮る無防備な人々で一杯のビーチの上を通り過ぎ、市街地を目指す。
砲撃が市街を襲った。二機の攻撃は威嚇射撃というには大きな被害をもたらし、混乱を加速させる。
ちょうどビーチから引き揚げようと、更衣室に入っていたゆかり達は外の騒ぎに気付くと、水着姿のまま飛び出した。
MTが続々とコロニーに侵入し、市街地の占拠を目指して治安部隊との交戦を開始する。
「宇宙海賊! 企業の海賊狩りで追い立てられてきた連中ですか!」
走りながらゆかりは叫んだ。
ルビコン星系から撤退したアーキバスとベイラムを待っていたのは、自社経済圏内外からの壮絶なバッシングであった。
ルビコン3で行った悪行の数々が他企業お抱えのメディアによって多数の証拠付きで報道されたことになるものだ。
この追い打ちに危機感を募らせた両企業はイメージ回復のため、大きく損なった現状の軍事力で可能な手段を採った。これまで些事と放置してきた中小規模の宇宙海賊の掃討作戦に乗り出したのである。
民間船舶の安全な航行を妨げる宇宙海賊を駆除し、治安回復に励む私設軍部隊の勇姿を大々的に打ち出し、民衆のご機嫌を取りをしようとしたわけだ。
この試みは功を奏し、他の企業や独立傭兵までもが参入して海賊狩りブームが起こった。
治安は回復したが同時に追い立てられた宇宙海賊による破れ被れの暴挙などの弊害も起きていた。
この観光コロニーを襲っている海賊のその類で、追い詰められた挙句コロニーの一角を占拠して人質を取るという杜撰な計画を立てて乗り込んできた。
彼らにとっては幸運なことに、コロニーの治安維持部隊は兵器こそ優秀だが練度は低く、整備不足が目立つAC二機と二流企業の戦闘用MTによる襲撃が成功してしまった。
「ゆかりん、あの車が使えそう! あれでアリーナに向かおう!」
スリングショット水着姿で路上に放置された車に乗り込むマキ。紐が食い込んだ、裸の巨尻を座席に乗せる。
エンジンをかけている最中に、宇宙海賊の機体が傍を通過したことで持ち主はパニックに陥り、キーを放置したまま逃げ出したのだろう。
「よし、エンジンがかかった! 行くよゆかりん!」
「お願いします、マキさん!」
ゆかりも助手席に乗り込み、競泳水着で覆われたマキ以上の巨尻を座席に乗せた。
このコロニーにはアリーナがあるので、試合に参加するために機体を運び込んであった。
実弾は模擬弾しかないが、エネルギー兵器は出力制限を解除するたけでいい。
マキはアクセルを限界まで踏み、車を走らせる。渋滞が起きていないコースを的確にゆかりがナビして進んでいく。
同時に携帯端末でアリーナとの連絡を取っている。
治安部隊との戦闘や海賊の示威目的の攻撃で市街地に多大な被害出ており、黒煙が上がっていた。
車を乗り捨て、水着姿の胸やお尻を激しく揺らしながら、アリーナに飛び込む。
背後で撃破された警備隊のMTが倒れ込み、地面を揺らした。
この施設は非常時に用いられるシェルターの一つであり、ACを駐機させたハンガーのある地下は特に強固だ。
アリーナ地下に避難していた人々は煽情的な水着姿で駆けてきたゆかりとマキに驚いた。
二人は体中に感じる視線を無視して、アリーナの責任者とやり取りをする。
水着姿の美少女達が真剣な表情でやり取りを始めると観衆の驚きは困惑に変わった。
移動中に連絡していたこともあり、すぐに話はついた。
砲弾は都合できなかったが、エネルギー兵器のリミッターは解除しておいたとのこと。
「それだけでも十分です! ありがとうございます!」
「すぐに海賊を追い払うから安心してください!」
戦場に出るとは思えない、明るい笑顔で責任者に言葉をかけるゆかりとマキであった。
エレベーターで地下ハンガーに降りていく。
その途中でマキはおもむろにスリングショット水着を脱ぎ、完全な全裸になった。
時間を少しでも節約するためだ。
マキさんが脱いだのならば私も、とゆかりも着脱に時間がかかる競泳水着を強引に脱いだ。
「一気に駆け抜けますよ!」
「うん! 急ごう!」
水着をエレベーターに放置して、素っ裸で全力疾走するゆかりとマキ。ACはハンガーの奥にある。
速度を重視した、理想的なフォームで走っている。局部を隠したり、気にする素振りはまるでない。
巨乳の持ち主であるマキだが、全力疾走の乳揺れに気を取られたりはしない。
ゆかりとマキのお尻は、大きく弾むように揺れていた。
「すみません、機体のスタンバイをお願いしていた結月ゆかりです!」
「同じく弦巻マキでーす!」
全裸の美少女二人に周りの整備員は仰天している。その視線を気にすることなく、風のように駆け抜けてACに飛び移る。
体温が上がり、汗を掻いた裸体をコクピットに押し込んだ。
収納スペースからナノスキンスーツを取り出し、裸体に纏う。
スーツの真ん中には切れ込みが入っている。前を開いて足を通すだけで装着できる。
装着すると、前を閉じて切れ込みを指で一直線になぞる。
すると着用者の動作と意志にナノマシンが反応。接着して切れ込みが消えた。
スーツ内に残った空気は押し出され、四肢を保護するハードスキンから音を立てて放出された。
空気を排除したナノスキンが美少女達の素肌に張り付く。強烈な密着感で体も心も引き締まる。
操縦桿を握り、戦闘態勢を取るゆかりとマキ。ナノスキンスーツがその動作で伸縮して、キュッというラバーめいた衣擦れ音を立てた。
アリーナに持ち込んだのは、全損した元々の乗機をルビコンで手に入れたパーツで修復した機体だ。
ゆかりの乗機は白い中量二脚型だ。
マシンガン、ミサイル、グレネードキャノンという定番の兵装だが、左腕には三日月状の大型レーザー発振器を装備している。
"X100 MOONLIGHT"のコードを持つ、アーティファクトめいた高出力ブレードは『月光』の系譜の一つだ。
マキの乗機は赤く塗られた中量二脚。右ウェポンハンガーにハイレーザーライフル"X000 KARASAWA"を装備。
KARASAWAシリーズの中でも、装弾数を犠牲にした最強の威力を誇るハイレーザーライフルはパルスアーマーを張った宇宙戦艦さえ一撃で撃沈する。
手持ちの武器はライフルのダブルトリガー、お気に入りである実体ブレードを左ハンガーに懸架してある。
搭乗者を迎え入れた白と赤のACがアリーナへと続くリフトに向かう。
「よーし、では行きましょうマキさん!」
「私達のバカンスを台無しにしてくれたお礼をしないとね!」
宇宙海賊の威嚇射撃の時点で市街地は被害を被り、今では多数の負傷者が出ている。
追い払っても、観光地の明るい空気を取り戻すには時間が必要だ。
マキの怒りを物語るかのようにハンガーシフトで右手に握られたKARASAWAが青い光を蓄えていく。
アリーナに出ると、マキは天井に向かってハイレーザーライフルを発射。
ACを覆い尽くすほどの巨大な蒼い閃光が射線上の構造物を蒸発させる。
ACが離陸するに十分な穴が出来た。
「先に行きます!」
ゆかりの駆る白いACが急速に垂直上昇。空中で射撃武器をぶっ放して海賊の襲撃部隊を牽制する。
演習用の模擬弾なので、ダメージは少ないがACSへの負荷はそれほど変わらない。
アリーナ周辺のMTは負荷限界に達して身動きできなくなった。
そこにマキの赤いACが加わる。
ライフルの精密攻撃で建物に身を隠そうとしたMTのコクピットに衝撃を与え、中身を気絶させ、機体は転ばせた。
「おっ通信の復号化ができますね。一応やっておきます」
ゆかりは海賊達の通信を傍受してマキに繋ぐ。
「ACが出てきたからって怯えることはねえ! どうせアリーナ用の弾しか積んでねえんだ囲んでやっちまえ!」
「おおっ!」
最初はACの出現に動揺していた海賊達だが、ゆかりとマキの武器が模擬弾だと気付くとすぐに勢いを取り戻した。
二機の四脚もアサルトブーストで向かいながら、攻撃を加えてきた。
「あはっ! なんですかその攻撃!」
「止まって見えるよ♪」
宇宙海賊達の攻撃をクイックブーストにより無傷で躱して、アサルトブーストで接近戦に持ち込む。
高機動戦を想定したACのFCSが追いつかない激しい戦闘機動だった。
MT部隊は見失った敵を探して体を振っている。
「コロニー内の雑魚は私が引き受けます。マキさんは母艦をやっちゃってください!」
ゆかりは宇宙海賊の首にかかった賞金で埋め合わせる気だ。
「りょーかい! 任せておいて!」
アサルトブーストをかけ、赤いACが音速を突破して宇宙空間に繋がるハッチを目指す。
「うわ、危ないってばそういうの!」
果敢にも低推力のブーストジャンプでマキに立ち塞がったMTがいた。
ライフル弾を装甲で弾きながら、赤いACは実体ブレードを構え、一瞬で二度斬りつける。
敵の装甲は柔らかく、紙のように裂けた。
「出てこなけばやられなかったのに!」
推力偏向をかけて右にスライドすることでMTの残骸を避ける。マキのACが上昇していく。
単機で市街地を駆ける白いACに海賊達は未だ一発の有効打も与えられていない。
ゆかりは四脚のうち一機に接敵し、まずはブーストキックで路上に叩き落した。
そこに急降下をかけて追撃する。左腕の大出力レーザーブレードを振りかぶり、蒼く輝く長大な刀身を抜き放つ。
直撃すればACを丸ごと融解させ、斬撃によって消し飛ばす、規格外の威力を備えている。
僚機が格闘戦に持ち込まれたというのに、滞空しているもう一機の四脚はリニアライフルとグレネードを浴びせてくる。
「ここは一つ敵の火力を利用させてもらいましょう」
肌で感じる敵の技量の低さと焦りに悪巧みが浮かび、ゆかりは笑った。
蹴り飛ばされた四脚ACは整備の行き届いていないパーツのためACS負荷限界から立ち直れていない。
ガトリングガンを乱射して、近距離から至近に間合いを詰めていく白いACを食い止めようとする。
「来るな! 来るなぁぁ!」
薄汚れたコクピットで半狂乱になりながら引き金を引き続けるパイロットの願いが叶ったのか、ブレードを抜いたまま、ACは跳び上がった。
助かった。
そう思った矢先、僚機のリニア加速砲弾とグレネードが容赦なく降り注ぎ、機体とパイロットを木っ端微塵にした。
「ふふん、上手くいきましたね。流石は天才ゆかりさんです」
ゆかりは振り返って誤射で味方を殺した上空の四脚が茫然とするのを眺めた。
二秒後。四脚が怒気を孕んで全砲門を解き放ってくる。
白いACはアサルトブーストをかけ、機体を蹴り上げるように傾けてから鋭角急上昇を開始する。
南国の解放感を演出するため、コロニーの天井は高く取られていた。
戦闘機めいたハーフループ軌道を描き、コクピット内の天地が反転。
人工重力による加速をつけて、白い閃光と化したACは月光の刃で残った四脚を消し飛ばした。
高速飛行で航跡雲を曳きながら飛び去るゆかり。滑るようにビル屋上に着陸してクイックターン、自ら海賊達に姿を晒す。
「さあ、次の相手はどなたですか!?」
オープン回線で呼びかけながら、ACの左手で挑発の仕草を取らせる。
残ったMTの海賊達は一斉に降伏し、駆けつけてきた治安部隊に取り囲まれた。
一方その頃。海賊が侵入してきたハッチから宇宙に飛び出したマキを迎えたのは母艦の砲火だった。
「そんなヘボ弾には当たらないよ!」
強襲艦に比べれば悲しいほどお粗末な砲しか積んでいない海賊艦の攻撃をアサルトブーストで駆け抜けて躱す。
右腕のKARASAWAの砲口は蒼い稲妻を放ちながら解放の時を心待ちにしている。
「はい、これでおしまい!」
海賊の抵抗空しく、赤いACは後部のエンジンブロックに狙いをつけ、巨大な蒼い閃光を解き放ち、艦を航行不能にした。
英雄扱いされるのは蛮族としてこそばゆかったし、彼女達自身が多数の企業に懸賞金を懸けられている身なので目立つことはできなかった。
数日後。コロニー行政府からの礼金と海賊の懸賞金を受け取ると、エレベータに放置した水着も忘れず回収して、ゆかりとマキはすぐに新たな戦場へと出発した。