蛮族な結月ゆかりと弦巻マキがルビコン3で暴れるやつ 作:その辺の残骸
プロローグ
高機動MTによる部隊は三分の一に減りながらも陣形を組み直し、圧倒的な物量の敵部隊からベイラム製スペースクルーザーを必死に防衛していた。しかし、また一つ、また一つとオレンジ色の火球となって散っていく。
恒星間航行を可能にするほどに発達したテクノロジーは、皮肉にも星間航行のリスクを増大させていた。
レーザーとパルスによる攻撃を浴びせているのは、十数年前、ある星系での戦争に用いられ、百億の人口を死に至らしめる原因にもなった、完全自律無人機の一群だ。
こうした兵器は人類が宇宙で繰り広げる闘争に伴って広がり、彷徨っているのだ。
センサー剥き出しの頭部が埋め込まれた胴部。前傾姿勢、異様に長い四肢。
非人間的なシルエットのそれらは防衛MTの何倍もの物量でクルーザーを襲撃してきた。無人機の母艦である輸送艦は後方で不気味に漂っている。
ベイラム幹部社員とその家族を乗せたクルーザーが直面した、自動攻撃モードのまま回遊する自律艦との遭遇は、天文学的確率の不運であった。
クルーザーを取り囲むように、高速で飛び回っている無人機は護衛機をあらかた撃ち落すと、攻撃をクルーザーに集中し始めた。
船体側面にベイラム・グループの社章が威圧的に輝く、大型クルーザーを守るパルスシールドは、泡状に放射される電磁パルスエネルギーにより、みるみるうちに減衰し破られてしまう。
ここにきて、船内の混乱と恐怖は最高潮に達した。無人機が全方位からフルチャージしたレーザーキャノンを発射する直前。
救いは遥か遠方から超高速でやってきた。ミサイルと電磁加速された砲弾が無人機を爆散させる。それらを先触れとして参戦した二機のACは、次々に無人機を打ち落していく。
無人機群はレーザーキャノンの目標をそちらに変更した。
パルス弾幕で近接防御しながら放たれる青い光条を、二機のACは超高速のマニューバーで回避しながら、巧みに反撃する。
ブースト噴射による軌跡を曳き、危険な戦闘機動を愉しむかのようにかっ飛ぶ二脚のACはまるで旧世代のロボットアニメ主人公機の如き、白、青、赤のトリコロールカラー。
『エインセル』と名付けた新型ACを駆る紫髪の美少女は紫と黒のナノスキンスーツを身に着け、平坦な胸と筋肉美が特徴的が肢体を露わにしている。
宇宙の蛮族にして傭兵、結月ゆかりである。
「この程度の数の無人機に遅れを取るとは、ベイラムの部隊も腑抜けていますね!」
尊大に言い放ちながら、ゆかりはベイラム製リニアライフルで遠方の、重ショットガンで近距離の敵機を打ち落としていく。散弾の一粒さえ無駄にしない、百発百中の射撃だ。
ゆかりの射線の外から、パルスガンを撃ちまくりながら接近していく無人機が一機。
「突っ込めば実際有利、というのは素人の考えです――――よっと!」
各部のブースターを駆使した、体操選手めいた動きで、泡状パルス弾幕を潜り抜けたエインセルはショットガンの分厚いバレルでパルス発射口を叩き潰しつつ、スタッガーに陥れた。さらに銃口を密着させてトリガーを引き、貫通して無人機の背中を飛び出した散弾がさらなる敵機を撃墜する。
射撃の直後にエインセルはクイックブースターを炸裂させて離脱。何もない空間をレーザー光が通り過ぎた。
アサルトブーストによる噴射で鋭角な戦闘軌跡を描きながら六連ミサイルを射出。猟犬のように駆り立てたミサイルが無人機の編隊を乱し、そこにゆかりのエインセルが躍り込んで薙ぎ払う。
『母艦は私のカラサワでやるからゆかりんは艦載機をお願い!』
「了解です、マキさん!」
相方である金髪ロングヘアの弦巻マキは、アーキバス製のフレームを中心に構築した深紅の重量級AC『キルドレ』を駆っていた。
大豊製ガトリングガンによるダブルトリガーは集中的なキルゾーンを形成して、迎え撃つ無人兵器を全機撃墜している。
赤と白のナノスキンスーツで余さず縁取られた、豊満なバストとヒップを躍らせる激しい操縦で吶喊する。
三桁に上りそうな数の高機動無人機をAC単騎で任される、普通に考えれば無茶振りでしかないのだが、ゆかりの例外的な戦闘技術であれば朝飯前だ。
「ゆかりさん必殺マニューバー! コメットアクセルステップ! とおおりゃぁぁぁぁぁ!!」
包囲攻撃を仕掛けてくる無人機の性質を利用して、敵を蹴る。蹴る。蹴りまくる。
その反動で跳び回ることで、ルビコン解放戦線経由で報酬として受け取ったALBAフレーム試作モデルの機動性を最大以上に発揮する。
紫髪の蛮族美少女に翻弄されたことで、フレンドリーファイアを繰り返し、無人機は瞬く間に数を減らした。
あまりにも脅威度の高い、結月ゆかりという敵機の存在に残った無人機は自爆特攻を選択。
トリッキーな機動で突っ込んでくる六機に対して、エインセルは左の兵装を切り替え、三日月状の無骨な発振ユニットを装着。
蒼い炎が噴出するように超高出力のレーザーブレード『X100 MOONLIGHT』が展開される。このレーザーブレードは、ゆかりが故郷の惑星から持ち出した、ロストテクノロジー兵器である。
素早くコマンドを入力して、ゆかりは機体のエネルギーをブレードとブースターに集中させる。加速度を増したクイックブースターの噴射炎が炸裂し、猛烈な慣性を心地良く感じながら、エインセルの左腕を振るう。
突然の急加速に特攻の狙いを外した無人機達は、ゆかりが振るったブレードの刀身が僅かに触れただけで融解して爆散。
文字通り、ゆかりは無人機を全滅させた。
「さてマキさんの方はっと――――あちらもカタが付きそうですね」
無傷で特攻を切り抜けたエインセルは垂直上昇、急速反転をかけ、母艦に突っ込むマキに機体を向ける。
「今更逃げようたってそうはいかないよ!」
退避しようとする無人母艦に向かってマキは吼え、ハイレーザーライフル『X000 KARASAWA』を構えた。ゆかりが機体に装備している『X100 MOONLIGHT』と同じく、ロストテクノロジーの産物たる超兵器だ。
退却を援護するために突っ込んでくる無人機。レーザーをキルドレの強固な装甲で弾き、パルスガンの射程に入る前に、フルチャージした右腕の『X000 KARASAWA』を発射。横薙ぎに照射して直掩の無人機群ごと母艦を打ち抜き、撃沈させた。
『やりましたね、マキさん!』
なぜか守り抜いたクルーザーに銃を向けながら、ゆかりが通信を入れてきた。
「楽勝だったね! それじゃあ本番を始めよっか!」
それを窘めることはせず、キルドレのアサルトブーストを点火して宇宙を駆けるマキである。
『私の方で船は止めておきますので、制圧をお願いしてもいいですか?』
「まっかせて!」
停止を命じるクルーザーからの通信を無視して、カタパルトに突っ込む金髪の蛮族美少女。
客船として登録されている船だが、その実態は軽空母であり、カタパルトから乗り込んだ格納庫は軍用そのものだ。
内部を破壊しない程度に加減したガトリングガン制圧射撃を行ってから、ナノスキンが形成したヘルメットを被り、重機関銃などの火器で武装したマキが飛び出した。
キルドレは自動防衛モードに設定してあるので、登録されている者以外が接近すれば即座に応戦する。
カタパルトに艦載機を上げるために、真空となっている格納庫のエアロックに接近。
ハンドヘルドデバイスによるハッキングをかけロックを解除して船内に乗り込む。
すぐに駆け付けたパワードスーツ装備のセキュリティ部隊は次々と薙ぎ倒されていた。
鍛えられた肉体美を誇る金髪ロングヘアの美少女蛮族は、重機関銃を軽々と振り回して無力化しているのだ。
あくまで無力化であり、命は取っていない。
「ちっ弾切れかぁ」
マキは乗客が避難しているパーティーホールの扉の前に陣取るセキュリティに向かって弾の切れた重機関銃を投擲して、頭部にぶち当てた。
のけ反ったパワードスーツの放った銃弾は、肉食獣のような肢体にぴったりとしたスーツを纏った蛮族は掠りもしない。
十分に加速をつけてからマキは踏み込み、セキュリティの胸板を蹴りつけ、ひしゃげさせた。人外の脚力から繰り出された蹴りにより、パワードスーツは扉ごと吹っ飛んでいた。
セキュリティを踏み越え、パーティーホールにエントリーしたマキはナノマシンで構築されたヘルメットを解除。
グレネードランチャーを突き付けて、ベイラム幹部とそのご家族に笑顔で挨拶。
極薄のナノマシンが形成した被膜と局部を覆うだけの装甲によるスーツを、健康的な裸体に張り付けた金髪美少女でしかないマキだが、その艶やかな姿を侮る勇気がある者はホールにはいない。
マキの明るい笑顔と綺麗な腹筋を備えた豊満ボディから放たれる気迫はそれほどに凄まじい。
「命が惜しければ、とっとと金目のモノを寄越しな」
笑顔を忘れず、弦巻マキはベイラムを脅迫する。貴金属と宝石類の略奪を手早く終え、マキを乗せたキルドレが宇宙空間へと戻った。
『見事なお手並みでした』
「えへへ、そうかな~♪」
海賊行為を終えて離脱していく二機のAC。
企業を無償で助ける蛮族どもではなく、海賊行為は無人兵器から救ってやった正統な報酬、ということに二人の中ではなっている。
二人の暴力的な対応は、以前ベイラム重役の窮地を救ってやったのに、妥当な額のコームを払うどころか攻撃して追い返そうとしたことが原因の一つだった。
現在、ゆかり達は海賊商人(ローグトレーダー)の琴葉姉妹の護衛に雇われている。ACの母艦にもなっている改造商船『コトノハ丸』への着艦コースを取っていた。
「ただいま、茜ちゃん! たっぷり稼いできたよ!」
『おお、こりゃ大漁やな!』
ブリッジで舵を取る琴葉茜はモニター越しにマキが見せた袋の中身に目を輝かせてた。
琴葉姉妹はゆかり達と同じモデルのナノスキンスーツを装着しており、茜は黒色の艶やかなスーツで十代後半のしなかやな体を縁取っている。
エインセル、キルドレの順番で着艦。格納庫に戻った二人を出迎えるのは、姉と対照的な白いナノスキンを着た葵だ。
『ナイスランディングでした、お二人とも』
「葵ちゃん、ただいまー!」
ナノスキンのヘルメットバイザー越しに柔らかに微笑む葵に、コクピットから出たマキが手を振って応え、貴金属と宝石で一杯の袋を担いで飛び出す。
「葵さんが仕上げてくれた機体、最高でしたよ」
同じくコクピットから無重力の格納庫に身を躍らせたゆかりが葵に近寄り、声をかけた。
「ありがとうございます、ゆかりさん。気合を入れて整備した甲斐がありました」
バイザー越しに笑顔を交わし合うゆかりと葵。
ゆかりのエインセルとマキのキルドレはコトノハ丸内の設備でカスタマイズを施して仕上げた機体なのだ。
葵は整備と設計双方に長けた天才的なメカニックであり、最新型のACパーツや未知のテクノロジーで造られた旧世代の機器さえ扱うことができた。
おかげで、蛮族美少女達が並外れた戦闘能力を余さず発揮できるハイエンドな機体として二機は仕上がっている。
忌々しい緑に輝く超高エネルギー粒子によって汚染された惑星に生まれた四人の蛮族を乗せた商船は、非合法取引が行われているステーションで略奪物を捌き、ゆかりとマキの首にかかった賞金目当ての輩を残らず返り討ちにしつつ、補給を完了。
コトノハ丸の目的地は自然豊かで平和な一級惑星の王政国家『イスニア王国』だ。国防軍が所望した防空兵器とレーダーユニットを納品するためである。