ポケミクさんがタイプ相性でわちゃわちゃする話   作:kasyopa

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筆が乗ったので続きました。


じめんミク×みずミク

 

 はがね少女とのポケモンバトルを終えて、フライゴンと共に空を駆る。

 

「少しお節介だったかもしれないな」

 

 軽い忠告のつもりが思いの外白熱した戦いになってしまった。

 

 ジラーチを引き連れ人の願いを叶える少女、というのは旅人の間で語り草となっている。一部の者は憧れ、一部の者は馬鹿者だと煽っており、私はどちらかと言えば後者だった。

 

 しかしその者の真意を知ることが大事であり、煽ることはしない。先のバトルでも噂に驕らぬ確かな信念を感じ取れた。

 

「しかし、私の真意が伝わらなかったらしい」

 

 健闘と(はなむけ)のきずぐすりも突っ返されてしまった。やはり私は物事を伝えるのが苦手だ。

 

「♪」

「笑ってくれるなフライゴン、それは私に効く」

 

 茶化すような鳴き声に苦い笑みを浮かべる。こいつとはもう長い付き合いだった。

 

 旅を常とする部族に生まれ、成人の儀として踏み込んだ砂漠。砂嵐に飛ばされて、起きた時にはあるポケモンが私の髪に齧っていた。

 

「まさかあの時のお前がこうなるとは思ってもみなかったよ」

 

 その時のポケモンがナックラーであり、ビブラーバを経てフライゴンに至った。今や私の相棒であり、旅の足としても欠かせない存在となっている。

 

 そして何より。

 

『──♪ ───♪』

「(お前の音色はいつも心地いい)」

 

 その羽ばたきは歌声にも似て美しく、共に歌うのが楽しみの一つだった。ただし嵐が伴うのがたまにきずで、こういった荒野や砂漠といった人の少ないところでしか聞くことが出来ない。

 

 視線の先で街が見える。荒野の真ん中にしては規模が大きく、久々にゆっくりと休めるだろう。

 

「さあフライゴン、もう一踏ん張りだ」

「!」

 

 私の発破に力強く応えてくれる。やはり相棒とはこうでないとな。

 

 

 

 フライゴンをボールに戻し街の中へ。夜だというのに電飾で彩られたビルが立ち並び、多くの人々が行き交っていた。

 

 なぜこんな荒野の真ん中で都市を築けたのか、そんな疑問が浮かぶだろう。その答えは豊かな土壌と隣接する巨大な川にあった。

 

「さながらここは旅人達のオアシスといったところか」

 

 ホテルや娯楽施設が立ち並び、行く先々でショーが開かれている。通りすがる人々は足を止め魅せられる技の数々に歓声を上げていた。

 

「………」

 

 しかし砂と土の臭いが染み付いた私にとって、浮ついた見せ物は刺さらない。いつしか喧騒を避けるように街を抜け、川を一望できる場所までやってきた。

 

「ゆっくり休めるかと思ったが、これではな」

 

 らしくもないため息を吐きながら、月明かりに照らされた川を見つめる。ここも観光名所の一つだったろうが、今では手付かずになっており転落防止の柵も形を無くしていた。

 

 そんな水面にパシャリと音立て影揺らぐ。目を凝らせば水球を浮かべるポケモンの姿がそこにあった。

 

『──♪ ───♪』

「これは、歌? あのポケモンが歌っているのか」

 

 月光を背に水球と舞い踊る姿は幻想的だった。群れの一つでも連れているかと思いきや、寄り添うのは一人の人間。そんな一人と1匹は私の目に輝いて見えた。

 

「綺麗だ」

 

 その姿を間近で見ようと歩み寄る。しかし踏み出した一歩は空を切り、崖下の川へと私を導いた。

 

「(しまっ、た……!)」

 

 水場と縁が程遠い私は泳げない。必死に手足をもがいても水底へと落ちていく。

 

 意識を手放し霞む視界の中で、一つの影が手を伸ばした気がした。

 

 

 

 澄んだ水のような青が私の顔を映している。おっとりとした瞳はまるで絵本に描かれた女神のようだった。どうやら、私は今天国にいる──

 

「ゴフッ!?」

 

 その瞬間、体に渾身の一撃がお見舞いされ水を吐き出す。たまらず咳き込めば、フライゴンが尻尾を叩きつけていた。

 

「ゴホッゴホッ……ちょっと何してっ、フライゴン、もういい! やめっ、やめて、本当に死ぬ!!」

 

 こっちが起きてるのにベシベシするから本当に死んでしまう。

 

 ここまで言ってようやく向こうも気づいたのか、嬉し泣きしながら突っ込んできた。おかしいな、ずつきとか覚えないよね。

 

「そんなに心配しなくても大丈夫。ちょっと油断しただけ」

 

 軽く頭を撫でて落ち着かせる。そんな傍には、1匹のポケモンと一人のトレーナーが居た。

 

「よかったぁ気がついて。あなたのポケモン、すぅっごく心配してたの」

 

 ニコニコ微笑む様子に、さっきの会話が聞かれたかと冷や汗を流す。普段は気取っているものの友人や一人の時はあんな感じだ。とりあえず、気を取り直して。

 

「んんっ! 心配をかけてしまったな。助けてくれたのは君か?」

「そうよぉ。ショーの練習をしてたらあなたが落ちてきて、びっくりしちゃったわぁ」

「そ、そうか。ありがとう」

 

 なんとも気の抜けた声に調子を崩されながら、感謝の言葉を伝える。どうやらさっきのが私の素だと気付かれてはないらしい。

 

 話題を変えるためにも何かないかと辺りを見渡す。誰も、何もないような見慣れない土地でひっぱり出せたのは、彼女らに対する問いかけだった。

 

「しかし、どうして君達がここに?」

「ショーの練習をしていたの。ここは人が来ないからぁ」

 

 夜に輝く街に視線を移しながら少女は答える。ショーをするというのなら他でもないうってつけの場所があるではないか。

 

「ならあの街ですればいいんじゃないのか? 嫌でも鍛えられるだろう」

「わたしみたいなのじゃ全然ダメよぉ。だってあの街は……」

 

 ワッ、と黄色い歓声が響き立ち並ぶホテルに一際大きな影が映る。ここまで聞こえてくるとなると、トップスターのお出ましといったところか。

 

「もっと痺れるようなショーを望んでいるんだもの」

 

 諦めたように目を伏せる彼女だが、私はそうは思わない。彼女には自信の一つが必要だった。

 

「なら、私が一つ証明して見せよう」

「証明ってぇ、何を?」

「君の実力が確かなものだということをね」

 

 寄り添うフライゴンに合図を送って臨戦体制を整える。そんな様子に彼女はキョトンとしながらも、すぐに理解したのかポケモンを傍に呼び寄せた。

 

「ショーがダメならバトルで、ってこと? ふふっ、面白いわぁ」

 

 笑みを浮かべる周りに二つの水球が浮かび上がる。なるほど、それはショー専用というわけではないらしい。

 

「アシレーヌ、一緒に頑張りましょう?」

 

 月だけが見つめる場所で、小さな戦いが繰り広げられた。

 

 

 

 相手の出方を見てから仕掛けようと思ったが、こればかりは先手を譲る方が悪手。先のバトルと同じように仕掛けさせてもらおう。

 

「フライゴン、『ばくおんぱ』!」

「──!」

 

 美しい音色を掻き消すような声に水球が揺らぐ。力任せに壊そうとしても難しいようだ。

 

「すごい声ねぇ、びっくりしちゃった。じゃあお返しよ」

 

 構えるアシレーヌから冷気が漂う。身震いするような寒さに嫌な予感が頭をよぎる。

 

「『こごえるかぜ』」

「っ! 『かえんほうしゃ』!」

 

 ほぼ同時に放たれた冷気と熱気は拮抗し、譲る気配はない。じわりと漂う水気が辺りを包み込む。

 

「いけると思ったけど、うまくいかないわねぇ」

「旅をしているとどうしても敏感でね」

 

 自然の怖さは身をもって経験しているから、自ずと体が反応する。こうやって今もバトルで役に立っているのだから捨てたものじゃない。

 

 しかし浮かぶ水球を操りながら宙を移動する姿は空中戦も可能にしている。おそらく制御しているのはあのポケモンの声だろう。先手のばくおんぱで歌声を勝れば破れるかと思い試してみたのだが、大した意味はなかった。

 

 音の大きさが関係ない。なら波形だとどうだ。

 

「フライゴン、『いやなおと』」

「!」

 

 美しい羽音を転用した逆位相の音。相手を怯ませるための技に、アシレーヌは堪らないと地面へ降りた。

 

「今だ、『じしん』!」

 

 着地の勢いを合わせたじしんは相手を完全に捉えたと、そう思っていた。

 

「『アクアジェット』で舞って」

 

 水を纏った高速移動で宙を泳ぎ、そのまま技の途中だったフライゴンに突き刺さる。ただ一撃をもらったものの、致命傷とまでにはいかなかった。

 

「なかなかに素敵な戦い方をする。私とは大違いだ」

「褒めてくれるの? ふふっ、ならとっておきを見せちゃいましょうかぁ」

 

 水流に乗ったまま歌うアシレーヌは無数の水球を作り上げ、フライゴンの周りに配置した。

 

「『うたかたのアリア』。とっても綺麗でしょう?」

 

「でも、とっても壊れやすいから気をつけて」

 

 その言葉を合図に全ての球が飛んでくる。壊れやすいなら、壊すまでだ。

 

「『ばくおんぱ』で迎え撃て!」

 

 声には声で、小細工なしの力技。全ての泡が音圧に耐えかねて壊れていく。

 

「こっそり『ムーンフォース』」

 

 しかしその中に紛れた一際輝く光の玉はかき消せず、フライゴンに直撃した。

 

 ドラゴンにとって天敵の技では耐えきれなかったのか、そのまま地に伏せ目を回す。このバトルは彼女の圧勝だった。

 

「お見事。戦いの中でも魅せられるとは」

「ありがとう。こっちもひやひやしちゃったわぁ」

 

 勝者への餞に手を差し出せば、柔らかい笑みと共に握手を交わしてくる。こんな形でもバトルは一級品だった。

 

「これを機に君も自信を持つといい。その実力は私が認めよう」

「嬉しいわぁ。でも……」

 

 こちらの方をチラチラ見つめる彼女は何か言いたそうだった。顔に何かついているのだろうか。

 

「さっきのバトル、必要だったかしら? ちゃんと口で言ってくれたらよかったのにぃ」

「な、君だって乗り気だっただろう?」

「だってあなたってば強引なんだもの。その性格、治した方がいいわよぉ」

 

 こちらの気にしていることを簡単に口にしてくれるが、それが出来れば苦労しない。

 

「わかっている。だが、どうにもならなくてな」

「そうねぇ、それなら……」

 

 考えるそぶりを見せた後、思いついたようにポンと手を叩いた。

 

「起こしてもらった時みたいに、もっと素直になればいいと思うわぁ」

「なっ!?」

 

 それだけ言い残して彼女は再び川へと飛び込む。どうやらさっきのが素の私だと知られていたらしい。その上で今までの私の言葉を聞いていたとなると……

 

「ああああ……!」

 

 彼女の放った言葉は、私に対してこうかばつぐんであった。

 

 

 

 フライゴンを癒しに立ち寄ったポケモンセンター。その一角では見覚えのある三度笠が揺れていた。

 

「もう、今度会ったらけちょんけちょんにしてやるんだから!」

 

 隣に座っているのはジラーチ。忘れるはずもない、願いを叶えて旅する少女が大量の料理に囲まれていた。

 

「(あれだけの料理を掻っ込んで……喉を詰まらせないといいが)」

 

 少しだけ心配になってセルフの飲み水を汲んでくる。少しだけ先の少女が目に映ったが、平常心でいこう。

 

「んぐっ!? んーんー!」

 

 案の定苦しそうに胸を叩いている。誰かの助けが入るよりも先に、私は水を差し出した。

 

「どうぞ」

「んぐ、んっ、んっ、はぁー。ありがとうございます、助かりまし……た……」

「それは何より」

 

 多くは語らずその場を後にする。一度きずぐすりを跳ね除けた手前、バツが悪いに決まっていた。

 

 ポケモンセンターの外では、今もなお黄色い歓声と共にショーが繰り広げられている。

 

「あの少女も、その輪の中に入れるといいが」

 

 そんな私の願いは、夜空の星に消えていくのであった。




・おまけ ポケミクさんの技構成

じめんミク:フライゴン(剣盾基準)
ばくおんぱ・かえんほうしゃ・いやなおと・じしん

みずミク:アシレーヌ
うたかたのアリア・ムーンフォース・アクアジェット・こごえるかぜ


次回、みずミク×??? お楽しみに。
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