それぞれの道は延びて行き、やがて運命は廻りだす 作:タク-F
結社にてアダムとの邂逅を済ませ今後の筋書きを作っていた。そしてその為に【キャロル・マールス・ディーンハイム】との接触は不可欠だった。その為に【結社から来たシャトー建設の協力者】という肩書きを以て今、眼の前に立っていた。
「お前が結社の人間か。オレの目的の為に働くなら何も言う事はない。努めを果たしたらさっさと消える事だな」
さも関心が無いと言わんばかりのキャロルの一言目。しかし育美は既に彼女の内面を識っていたので動揺は無い。その代わりにこう切り返す。
「貴女は自分が何を作っているかわかっていますか? 私はここに来るまでに貴女の事を調べました」
「だからどうした? オレはオレの成すべき命題を果たす。それ以外に言うべき事もお前に語る事も無い」
「なるほど。私は初対面では関係構築の有無を判断したいのですが……まぁそういう事であれば……」
キャロルは尚も興味無しと判断して背を向ける。しかし育美の続けた言葉はキャロルの心を激しく揺さぶる。
「聞いていた肩書きと年齢の割に幼いんですね♪ 本当ならレイラインマップのスキャンをさせて貰う為にシャトーの建造に協力するつもりでしたが気が変わりました。親不孝のクソガキにはね?」
「ッ! 貴様……!」
「いやいや立派な親不孝のクソガキですよ? あぁ……お父様は聡明で立派な方だったそうですね。私の上司に経歴の確認をしたので
「なぜ……」
「しかしお父様唯一の失敗は御息女の教育に失敗したことでしょうね。なにせ御息女は世界に怒りを振りまく親不孝のクソガキですから♪」
「………………………………殺す」
キャロルは震えた。怒りで、殺意で、悲しみで。自分のみならず偉大な父親を侮辱されたことで育美を必ず殺すと決めた。故にダヴルダヴラのファウストローヴを纏い育美に無慈悲で凄惨な死をもたらす為に。
「場所を変えましょう。この場所で戦うのは互いに損でしかありませんから」
育美は冷静にテレポートジェムを起動した後に光が2人を包んだ。
「お前は殺す。凄惨に殺す手向けとして遺言を聞いてやる。言葉を選べば死に様ぐらいは選ばせてやろう」
「では……とある少女の話をします。その少女は親子3人の平和な日常を過ごしていました。しかし少女の日常は突然発生した上空からの光によって両親を殺され崩壊しました。程なくして街は業火に包まれてしまいます。少女は混乱した後に周囲を伺いました。そして上空にて親の仇らしき【天使】を見つけます。しかし同時に両親の死を再認識した少女のストレスは限界を迎え意識を手放します。その間際に親の仇へと殺意と憎しみの言葉を遺して」
「………………………………」
キャロルは無言で育美を見据える。この少女の話が自分に何を紐付けるのか理解に苦しんだ為に。
「少女は仇討ちの為に力を欲しました。その為に軍に入隊し実力を着実につけました。そして少しずつ積み上げた実績を元に新兵器の使用許可を得ました。そして入隊期間中に少女には業火の中で自身を救ってくれた人物……【少年】と再会しました。しかし少年の周囲にはその世界の人類にとって脅威と言われる存在………………所謂怪物がいました。それも何人も。更に皮肉なことに少女は少年を介してその人物達と
「……………………ッ!」
キャロルは少女の抱いた復讐の下りを聞いてほんの少しだけ興味を抱いた。しかし育美は構うこと無く言葉を続けます。
「少女は復讐の為に情報を集める過程で自身の探す【天使】は怪物と言われる人物と同質の力を持つ者達であり、その力は
「叶わぬ復讐……か。虚しいな」
「少女は悲しみました。友に手を掛けてでも果たすとした覚悟、最新の兵器を扱えた事で得た自信、そしてそのどちらも砕かれた現実に絶望しました。そんな少女の前に現れたのです………………【天使に力を授けた者】が。少女はいくつかの問答の後に力を授かり少女もまた怪物へと至りました。そしてもう1度少女を降して今度こそ仇討ちの為に……と友人と交戦しました。しかし不幸にも【少年】に見つかった少女は撤退しました。そして【時渡りの力を持つ怪物】にコンタクトを取り、両親の殺された日に遡行して【仇討ち】を決行しました」
「…………その【少女】とやらは復讐を果たしたのか?」
最初は興味の無かったキャロルは不思議と聞き入っている自分に気付きつつも態度を崩さない。
「確かに少女は遡行先にて
「………………両親の仇は
「でしょうね。でも所詮は子供ですね。
「小賢しい!」
育美は語りながらキャロルの周囲を埋め尽くす程の術式を展開し、無数の術式から不可視の真空弾が放出された…………が、
「なるほど……確かに油断していた。だがそれだけだ。お前の攻撃はオレには届かない。この鎧を砕く事は不可能だからな」
「でしょうね! でもコレならどうですか!」
次いで術式から氷が放たれ周囲の温度を著しく低下させた。しかしキャロルが展開した炎により一瞬にて蒸発した。
「フン……見せかけの攻撃…………では無くオレの体温を奪うつもりだったか? 見通しが甘い! 」
「奇策は重ねてこその奇策です!」
育美は懐に入り込むとキャロルの腹部に蹴りを入れて上空へと打ち上げた。
「クリアブレイク!」
「っ……! そういう事か!」
キャロルが打ち上げられた先には
「散々オレの精神を揺さぶり意識を散らし、初手からの質量と寒暖差による環境変化、ソレを布石に罠を構築して誘導する胆力……確かにお前は本物だ。だがオレには及ばない」
キャロルは剣を展開すると四元素を用いて斬撃を放った。更にその威力は育美が事前準備をして展開したモノを凌駕する。
「怪物……ですね。でも迂闊ですよ!」
接近するキャロルにカウンターの蹴りを放つ。風属性を付与して切れ味と速度を向上させたがその動きは回避された。
「見切れ無いと思ったか! 舐めるな!」
「っ……!」
無防備な筈の体勢から最小限の動きで軌道を変え背後を取る。そして斬撃ではなく拳が顔面を捉え吹き飛ばした。
「剣はフェイク……騙し合いには火力差が明白……マズイ……」
「貴様の脳は今の一撃で大きく揺れた筈だ。しばらくは立つことは愚か思考すらも纏まらんだろう。戦いに免じてせめてもの情けで一思いに殺してやる」
横たわる育美の傍に立つキャロルは心臓へ剣を下ろす。その瞬間
「ぬぐぅ…………ガハッ!」
思わぬ反撃に吐血するキャロルだがダヴルダヴラには傷1つ無い。透過した衝撃を内臓へと響いた為だ。
「やるな……今の一撃は素晴らしい。それ故に残念だ……
「流石に……嘘でしょ? 今の一撃……これ以上無いほど最高の一撃だったのにあれだけしか効いて無いの……?」
肩で息をする程の疲労と脱力感を育美は抱いた。このままでは勝てないと。
「さらばだ……愚かな小娘。貴様の話と実力はオレの記憶に残しておこう」
そう告げてキャロルは育美を斬り伏せた。鮮血が地を染め育美は倒れ伏す。
「終わりだが……あっけなかったな」
キャロルは背を向けた。しかし聞こえてしまった…………
「やっぱこのままじゃ駄目だ。コレじゃキャロルちゃんは救えない……」
次回決着です。というか……この主人公本当に言動がよろしくない……
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