スペシウム光線しか使えないけどウルトラ兄弟に入れるよね? 作:Sashimi4lyfe
光の国の宇宙警備隊は長引く惑星クリドとザイの間の紛争に目を付けていた。
宇宙警備隊は他の文明同士の争いには極力干渉しないようにしていたが、生物兵器の生命反応を科学技術局がキャッチした瞬間、保守的だった宇宙警備隊の姿勢は一変した。
「生物兵器などの文明制圧兵器の使用は光の国の掟に反する。我々は何としてでもこれを退けねばならない。」
それが宇宙警備隊隊長ゾフィーの出した決断だった。それに従い、ウルトラマンロッソとブルはグラジオンを倒すべくクリドへと遣わされた。
「このスケールの生物兵器はたちが悪い。くれぐれも油断するなよ」という作戦司令官の初代マンの助言を守り、ロッソとブルはルーブの姿で登場したのだった。
その初代マンの助言は、悪い形で当たることになる。
「ちっくしょー...カツ兄、どうするよ...」
「う、うるさいぞ!今作戦考えてんだ!」
(ルーブコウリンショットも、真ボルテックバスターも全然聞いてる気がしない...コイツ、どうやって倒したらいいんだ...?)
一向に変わらない戦況に、湊兄弟は苛立ちを隠せないでいた。
「うわっ、カツ兄!危ない!!」
「...!」
そんな二人の心境を攻め立てるように、グラジオンは反撃攻撃を開始する。口を大きく開き、熱光線がルーブめがけて発射される。
「「コウリンプロテクション!!」」
すかさずルーブコウリンを使いバリアを展開するも、攻撃を受け止めるだけで相当なエネルギーを二人は消耗していく。
「くっ...はぁ、はぁ...くそぉ、ここにアサヒがいてくれたらなぁ...」
「バカなこと言うな!こんなヤツ相手にアサヒを危険に合わせるワケにはいかないだろ!」
「そうだよな...俺たち二人なら、こんな敵ぐらい...!!」
「あぁ、そうさ!どんな時だって、俺たちはみんなを守ってきた!クリドの人たちを邪悪な侵略者の手から救うんだ!」
覚悟を決めた二人の心に、再び戦いの炎が呼び起こされた。がむしゃらに攻撃を繰り返していたルーブの姿にもどこか冷静さが宿り、敵の動きをじっと観察しながら次の手をうかがっていた。
「今だ、イサミ!」
「おう!」
次の攻撃を仕掛けようと口を開けたグラジオンの口内に、素早くエネルギー弾を打ち込む。
敵は不意打ちを食らい、口を大きく開けたまま隙を見せた。
「行くぜ、カツ兄!!」
「あぁ!!」
二人はこの瞬間を逃がしはしなかった。両腕に膨大なエネルギーを集中させ、切り札の必殺光線を解き放つ。
「「ルービウム光線!!」」
見事命中。あふれ出るエネルギーは敵の動きを完全に封じ、ようやくダメージを与えられたようだった。
「「うおぉぉぉぉ!!!」」
全身全霊、持つ力を全てこの一撃に注ぎ込んだ。これで倒せなければ後はない。いや、後のことなんて考えてはいけない。
今、ここでやれることをやり切ることだけを二人は考えていた。
そして、その想いは功を奏し――
大爆発と共に、グラジオンの体が爆炎に包まれる。
ルーブの決死の一撃が敵の強固な装甲をついに打ち破ったのだ。
「や、やった....んだよな?俺たち...」
「....!?」
勝利を祝おうとするイサミの期待とは裏腹に、カツミはぞっとする光景を炎の中に見る。
「くっ...まだ生きてたのかよ...!」
ヤツは外部の表皮が焼きただれながらも、確かに生きていた。
そしてゆっくりと口を開け、反撃の準備を始めている。もう二人にはバリアを張るほどのエネルギーは残されてはいない。しかし、これをかわしてしまえばクリドの人々に甚大な被害が及ぶ。
「考えろ、考えるんだ、オレ!どうすればコイツに勝てる...?」
絶体絶命のピンチに立たされたルーブの肩を、誰かがポンと叩く。
「おっす。お疲れ。」
そこにいたのはもう一人のウルトラマン。ルーブに全く気付かれず、まるでシフトに入るバイトの学生のようなノリで背後からルーブの肩を叩いたのだ。
「...ゼルガ!!?何でここに!?」
「いや、ちょっとヤバそうだからサポートに行ってこいって言われたから。でもなんだ。後もうちょっとで倒せるんじゃないの、アイツ。」
そう、彼の名はウルトラマンゼルガ。少し変わった理由から宇宙警備隊の間で知られている風変わりなウルトラマンだ。
見た目はオーソドックスなシルバー族とあまり変わりないが、所々に黒いラインが入っているのが特徴的だった。
「ゼルガ、頼む。バリアを張るのを手伝ってくれ。もうオレ達にはコイツの攻撃を受け止めるほどの力は残ってないんだ。」
「...へぇ。そんなに強いのか。コイツ。」
(カツ兄、その言い方はヤバいって!!)
(し...しまった!!!)
ゼルガの目つきが変わったのが二人にははっきりと見えた。そもそもウルトラマンに
両手をゆっくりと十字に構え、ゼルガは攻撃の姿勢を取った。
「オ、オイ!ゼルガ!聞こえなかったのか?バリアだよ、バ・リ・ア!!」
「これぐらいの攻撃、相殺できなきゃダメでしょ。それにオレ、バリアの張り方知らないから。」
((う、嘘だろ...))
そう言い争っている間にもグラジオンの口の奥が赤く発色し、今にも熱線を浴びせようとしている。
「ま、まさかだけど、その光線技、もしかして...」
「何言ってんの。スペシウム光線一択に決まってるじゃん!?」
終わった。
二人は怒る気力もなく、ただただゼルガを見守るしかできなかった。
単体ならともかく、ルーブとして合体した姿の二人の光線技を耐え抜くような相手に、光線技の基本中の基本のスペシウム光線で立ち向かう...
他のウルトラマンなら気が狂ったとしか考えようのない決断だが、ただこの男には...ゼルガにはそれが当てはまらなかった。
「さぁ来いよ、全身火傷野郎ォォ!!」
ゼルガの挑発に乗るように、グラジオンの口から熱光線が発射される。
ぐらり。
ゼルガのクロスされた両腕が光ったと同時に、異様な感覚がルーブの体を突き抜ける。
体中を
それは、ゼルガの両腕のエネルギーがスパークした
もちろん、大抵のウルトラマンがスペシウム光線を放ってもこんなことにはならない。ごくひと握りのウルトラマンたちが光線技を使う際に起きる、フォノン現象と呼ばれる現象だった。もちろん、このことをカツミとイサミは知らない。
何が起きているのか、二人にはわからなかった。気が付いたときにはゼルガの放った光線が敵の熱線を貫き、そのままグラジオンの口へと炸裂していた。
いや、あれは光線と呼ぶにはあまりにも激しく、ガサツだった。光の波、と呼んだほうが適切かもしれない。
とにかく、二人は目の前で起きていることに理解が追い付かなかった。
そしてゼルガの攻撃を食らったグラジオンはあっけなくバタリと崩れ去り、先ほどとは比べ物にならないほどの大爆発と共に木っ端みじんとなった。
その爆発を背に、業火の中からゼルガがゆっくりと姿を表す。彼の目の光と、カラータイマーの輝きがごうごうと燃え盛る炎の中でうごめいている。
「ゼルガ...お前...」
スペシウム光線を一発撃っただけで、ゼルガのカラータイマーが点滅を始めている。
「へへっ...ついマジになっちまった。」
ゼルガはあの一発で敵の攻撃を相殺し、そのまま敵を倒すことしか計算に入れていなかったのだ。尋常じゃないレベルの己の腕への自信と誇りがなければ決して起こせない行動だ。
カツミとイサミは背筋が凍り着いた。強敵を前にした時とも、万策尽きて出す手がなくなった時とも違った感情だった。
((コイツには一生追い付ける気がしない。))
敗北感に似た後味の悪い何かを、何もなかったかのようにのうのうと歩くゼルガの姿に二人は感じ取ったのだった。