スペシウム光線しか使えないけどウルトラ兄弟に入れるよね? 作:Sashimi4lyfe
前を見ても、後ろを見ても、どっちを向いても怪獣。
どう考えても助からないような状況にミーナは置かれていた。
こちらの持ち駒はなんかチンピラっぽいウルトラ戦士が一人と、右手に搭載したバレットトレーサー。ここから無事に立ち去れる算段は...ほぼない。
「慌てんなって。こーゆー時のために護衛ってもんがいるんだろ?」
そうゼルガは言ったが、フォルムチェンジもできないウルトラ戦士にこの状況をどうやって覆せるのか?
「そ...その構え...」
ゆっくりと十字に両手を組むゼルガの姿を見た瞬間、ミーナはゼルガのやろうとしていることが把握できた。
少し体を前にかがめ、腕を十字に組んで手のひらを若干くねっと曲げたゼルガの構えを彼女はよく知っていた。それもそのはず、この構えをミーナは嫌というほど訓練校生だった頃にやらされていた。
「この状況でスペシウム光線!??アンタ、冗談もほどほどにしろって言ってるでしょ!??」
「ギャーギャーうるせぇなぁ...」
バチッ。
ゼルガの両腕のエネルギーがスパークした。
(えっ?今なんかバチって音しなかった...?)
普通、スペシウム光線を撃とうとしてもこんな音は鳴らない。あまりのエネルギー出量のせいで行き場をなくしたエネルギーが軽くスパークしてしまったのだ。こう見えてゼルガは相当興奮していた。Z-24に入った時から、この怪獣たちと一戦交えたいと血を騒がせていたのだった。
「さぁて...おっ
ぐらり。
フォノン効果のせいで、ミーナは一瞬くらりとめまいを催してバランスを崩してしまった。
周りの怪獣たちもこれを感じたのだろう。先ほどまで殺気で血走っていた怪獣たちの目は一瞬にして狩人に狩られる獲物のそれに急変した。
殺戮と混沌に満ちたこの惑星で研ぎ澄まされた怪獣たちの生存本能は迫りくる脅威を敏感に感じ取り、血相を変えて怪獣たちはその場から逃げ去っていく。
「オイオイ...ここまできてドタキャンはねぇだろぉ??」
そんなことはお構いなしに、ゼルガはスペシウム光線を撃つ気満々で狙いを逃げまとう怪獣たちの背に定める。
「...ダメ!!」
今にも光線を発射しようとするゼルガの前にミーナが立ちはだかった。
「...何してんだ?」
「もうこの怪獣たちは繊維消失してる!必要もなく攻撃する必要はないでしょ!?」
「んなこと言ったって、コイツらさっきまでオレたちを殺そうとしてたんだぜ!?殺される覚悟もなしに殺しに来ようなんて、そんな甘い考えがまかり通るわけねぇだろ!?」
「甘いのはアンタの方よ!!」
唐突に声を張り上げてミーナが叫ぶ。これには思わずゼルガも黙ってしまった。
「そんな考えでウルトラ兄弟に入ろうだなんて...バカじゃないの!?」
「あぁん!?オメーに説教される筋合いはねーんだよ!大体さっきオレが助けてやんなきゃ...」
ふとゼルガが視線を向けた先に、こちらに向かってゆっくりと近づいてくる影があった。
「...オイ、まだ安心するのは早いみたいだぜ...」
何か様子がおかしいと悟ったミーナが後ろを向くと、やはり同じようにこちらに向かってくる
「へェ...キミ、強いんだねェ...」
喋った。これで謎は深まるばかりだ。奴の名前は?一体どうしてここにいるのか?疑問ばかりがミーナの脳内を交差する。
「誰だ、オメー?」
能天気にゼルガは訪ねる。
「ワシかィ?ワシは『
「誰に授かったんだ、そんな名前?」
「おやおや、質問が多いねェ...」
ジーラと名乗る男はさっと右手をゼルガに向けると、手のひらを怪しく光らせた。
「一方的に質問をする男はモテんぞォ?」
「...ッ!どいてろ!」
ゼルガはその右手に違和感を感じ、強引にミーナをどけると再び十字の構えを取った。ぐらりという違和感と共に、エネルギーがスパークする音が両腕から漏れ出る。
「ほォ、やっぱりキミ...強いねェ...」
相手の手の光が一層と強くなった。
「でもまだワシには勝てんなァ...」
ジーラが独り言を言い終えると、
「
瞬けば見失うほどの速度の電気エネルギー弾が発射された。
「ほざけよ、クソジジィ!!!」
すかさず解き放たれるゼルガのスペシウム光線。
空中で衝突する二人の膨大なエネルギーは周りの時空をゆがめ、ガラスが割れたような光景を映し出す。異次元のスケールの戦いに、ミーナはただそれを見ていることしかできなかった。
「なんなの....?この二人......」
少しでも油断すれば確実に命を落とすであろうこの戦いに、ゼルガは楽しみさえ見出しているように感じる。普段の態度からは決して予想できない彼の強さに彼女はどこか恐怖を覚えたのだった。